肉食 肉食の概要

肉食

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/12 02:05 UTC 版)

  • 動物のを食物とすること。
  • 一般の動物が、他の動物を食物とすること。対比されているのは「草食」という概念。

概要

狩猟採集社会では、(最近の学者らの指摘のように実際には採集のほうが基本であるにしても)自然界の鳥・獣を捕えて、その肉を食べていた。こうした狩猟は現代も行われており、獲物の肉は狩猟者本人が食用にするだけでなく、販売もされている(ジビエ)。

畜産を含む農業が発達すると、家畜として育てられた動物の肉を食べることが主流となった。飼料を与えて育てた家畜から食肉を生産することは、人間が直接的に植物性の食物を食べるよりも多くの飼料植物を必要とし、効率がかなり悪い。世界人口の増加による食肉不足への備えや、獣肉を避ける人向けに、食感を肉に近づけた植物由来の人工肉も開発・販売されている[1]

様々な宗教で、もととなる動物の種類や処理方法により、食してよい肉と食してはいけない肉を区別している。宗教とは別の個人的な価値観や嗜好、健康上の理由などで肉全体あるいは一部の肉を食べない人もいる。

動物考古学から見た肉食

動物考古学においては遺跡から出土した野生獣や家畜の動物遺体(動物の骨)を素材に、遺跡の性格などと総合して食用としての用途を考察する。イヌウマなどは埋葬されたケースもあり、遺跡から出土した動物遺体の用途の判断は、まず骨格が解剖学的位置を保った埋葬事例と区別する点が留意される[2]

動物を食肉として利用するためには刃物を用いて部位を切り分け、筋肉から剥がし、場合によっては骨自体を断ち切り、骨膜を剥離するなど様々な作業が行われ、その過程で骨自体に解体痕(切痕)や切断痕、掻痕などが残される[3]。また、食肉痕跡の可能性のある獣骨は破損した骨が散乱した状態で出土することも特徴とされている[2]。ただし、これらの特徴を有している資料も、祭祀鷹狩の餌としての利用など食肉に付随する、あるいは食肉以外の用途であった可能性も考えられる。

また、肉食の痕跡は人骨に残されるコラーゲンに含まれる炭素窒素同位体比測定から推察する手法も確立されている[3]

肉食の対象

猟/漁によって得た肉を食べる場合

魚類に関しては、自然界の魚を捕えて、つまりを行って魚を得てそれを食べている割合が圧倒的に多い。日本では伝統的に魚を食べること(魚肉を食べること)がさかんであり、これが日本人の健康に貢献していることが知られている。内陸部では川魚・ため池での養殖・小魚の佃煮などが、多く食べられていた。イナゴ・蚕なども佃煮にして、タンパク源としていた。

また、様々な獣や鳥の狩猟が行われて、食べられている。農業が盛んになってからは狩猟をして捕える量よりもむしろ肉畜を飼育する割合が増えたが、ヨーロッパでは自然界の木の実、木の芽などを食べて育ったジビエのおいしさがよく理解されており、高級料理店でさかんに食べられており、食材店でも並んでいる。日本でもようやくそれに気付く人が増えてきた。

家畜を食べる場合

家畜一覧より改変(2003-xij-20現在)。

家禽を食べる場合

養殖魚を食べる場合

その他の飼育動物を食べる場合

その他地域、文化により多数。


  1. ^ 【グローバルウオッチ】人工肉・昆虫食 未来救う『日本経済新聞』朝刊2018年3月28日(ニュースぷらす面)2018年6月8日閲覧。
  2. ^ a b 鵜澤(2008)、p.149
  3. ^ a b 鵜澤(2008)、p.150
  4. ^ 頼住光子「仏教における「食」(第3回国際日本学コンソーシアム)」『大学院教育改革支援プログラム「日本文化研究の国際的情報伝達スキルの育成」活動報告書』平成20年度 学内教育事業編、お茶の水女子大学大学院教育改革支援プログラム「日本文化研究の国際的情報伝達スキルの育成」事務局、2009年3月、301-309頁、NAID 120001591463  p.304より
  5. ^ 安井広済「入楞伽経における肉食の禁止:はしがき・梵文「食肉品」和訳・梵文訂正」『大谷学報』第43巻第2号、大谷学会、1963年12月、1-13頁、ISSN 02876027NAID 120005837524 
  6. ^ 吉田宗男「親鸞における肉食の意味」『印度學佛教學研究』 47巻 1号 p.213-215, 1998年, doi:10.4259/ibk.47.213
  7. ^ 目黒きよ「日本仏教における食の思想 (1) -肉食忌避について-」『印度學佛教學研究』 37巻 1号 p.317-319, 1988年, doi:10.4259/ibk.37.317
  8. ^ 菩薩戒円頓戒を教義上、受持する宗派。ただし肉食は菩薩戒の上では自律であり、他より処罰を受けるといった他律ではない。
  9. ^ 大澤絢子「浄土真宗の「妻帯の宗風」はいかに確立したか :江戸期における僧侶の妻帯に対する厳罰化と親鸞伝の言説をめぐって」『日本研究』 49巻 p.27-56 2014年, 国際日本文化研究センター, doi:10.15055/00000427
  10. ^ 台湾に行ったら「ベジタリアン」料理が凄すぎた - ヴィーガンではない人も満足する台湾素食
  11. ^ a b 中澤克昭「肉食の社会史」(山川出版社)
  12. ^ 福田育弘「「飲食」というレッスン: フランスと日本の食卓から」三修社、pp.74-77.
  13. ^ 日本における肉食の歴史歴史と世間のウラのウラ、2005年3月17日。
  14. ^ 犬を食っていた日本人」 歴史と世間のウラのウラ、2003年1月18日。
  15. ^ 近代日本における肉食受容過程の分析 ― 辻売、牛鍋と西洋料理
  16. ^ 飯野亮一『居酒屋の誕生』ちくま学芸文庫 2014年、ISBN 9784480096371 pp.156-159
  17. ^ 『AERA Mook 考古学がわかる。』内の松井章の説明。朝日新聞社 1997年 ISBN 4-02-274060-4 p.52
  18. ^ 中国犬猫肉について
  19. ^ 『猫狗条例』を1950年に制定。
  20. ^ 韓国犬肉食について
  21. ^ a b なぜ日本人は長寿になった? 食と栄養から探る”. リンクDEダイエット (2020年7月28日). 2023年11月5日閲覧。
  22. ^ a b Shoichiro Tsugane「Why has Japan become the world’s most long-lived country: insights from a food and nutrition perspective」『European journal of clinical nutrition』第75巻、Springer Nature、2021年、921-928頁、doi:10.1038/s41430-020-0677-5 
  23. ^ a b 津金 昌一郎「日本人にとっての“健康な食事”とは何か?-疫学研究からの考察-」『フードシステム研究』第27巻第3号、日本フードシステム学会、2020年、80-87頁、doi:10.5874/jfsr.27.3_80 
  24. ^ 日本の栄養政策に関する資料 -日本人の栄養と健康の変遷-”. 厚生労働省 (2021年). 2023年11月21日閲覧。
  25. ^ a b Hiroshi Shibata1、Nobuto Shibata「Malnutrition in Japan is Threatening Longevity in the Future」『HSOA Journal of Gerontology & Geriatric Medicine』第3巻第1号、HERALD、2017年、doi:10.24966/GGM-8662/100012 
  26. ^ a b 柴田博「高齢者の脂肪摂取と健康」『オレオサイエンス』第13巻第1号、日本油化学会、2013年、doi:10.5650/oleoscience.13.17 
  27. ^ 今井 絵理「フレイル予防に有効な食事に関する栄養疫学研究」『日本栄養・食糧学会誌』第75巻第6号、日本栄養・食糧学会、2022年、285-290頁、doi:10.4327/jsnfs.75.285 
  28. ^ a b 国立がん研究センター疾患横断的エビデンスに基づく健康寿命延伸のための提言(第一次)』(レポート) 1巻、2021年2月10日https://www.ncc.go.jp/jp/icc/cohort/040/010/6NC_20210820.pdf 
  29. ^ Ellen A. Struijk、Teresa T. Fung、Fernando Rodriguez-Artalejo、Heike A. Bischoff-Ferrari、Frank B. Hu、Walter C. Willett、Esther Lopez-Garcia「Protein intake and risk of frailty among older women in the Nurses' Health Study」『Journal of Cachexia, Sarcopenia and Muscle』第13巻第3号、Wiley-Blackwell in association with the Society on Sarcopenia, Cachexia and Wasting Disorders、2022年、1752-1761頁、doi:10.1002/jcsm.12972 
  30. ^ 国際がん研究機関 (26 October 2015). IARC Monographs evaluate consumption of red meat and processed meat (PDF) (Report). WHO report says eating processed meat is carcinogenic: Understanding the findings”. ハーバード公衆衛生大学院 (2015年11月13日). 2017年5月6日閲覧。
  31. ^ 畜産の問題点
  32. ^ ゲイリー・L・フランシオン『動物の権利入門』緑風出版、2018年、88頁。 
  33. ^ 夏目漱石吾輩は猫である」第十一話に「…君一夫多妻主義ですか」「多妻主義じゃないですが、肉食論者です」との表現がある。






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