群青のマグメル 原本と日本語版

群青のマグメル

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/11/24 09:24 UTC 版)

原本と日本語版

ストーリーの表面上や基本的な設定は中国語の原本と変わりない。だが設定の細部や名称などにおいてアレンジが加えられている他、台詞などがまったく別のものとなっている箇所が多い。そのため原本でのストーリーの流れが読み取れなくなっている部分が少なからず存在する。

作者は連載開始時点で日本語を未習得。また他媒体化に合わせた改編も創作の一工程であり、どんな形であれ自他の創作の制限は好まない[4]というスタンスを以前に表明していた。

アレンジは多岐に渡るため以下に挙げるのは代表的なもののみである。

設定

  • 現実と繋がりのある部分の設定がぼかされ、ファンタジー色の強い設定の割合が相対的に大きくなっている。例えば日本語版ではマグメルは大洋上に出現したとなっているが、原本では「太平洋上」と現実の場所が明示されている。また現代中国語において「联合国」とは日本でいう「国際連合」のことだが、文字通りの「連合国」という訳がなされ原本での国連旗なども修正されている。『少年ジャンプ+』掲載時は「国連」となっていた箇所も単行本収録にあたり「連合国」に改められた。
  • 原本では1界幣(簡体字:界币)つまり1エクスは0.86人民元(約15円[注 16])相当という設定が示されているが、日本語版では省略されている。
  • 原本では聖暦(聖跡)36年がストーリーの開始時期だが、日本語版では聖暦35年が開始時期となっている。
  • 登場人物の「漫画的」な口調の多くが日本語訳の独自のものである。特にゼロやリーなどの非常に特異な口調は原本にて受けるイメージからの飛躍が大きい。一方でクーのやや文語風の口調[注 17]やカーフェの慇懃無礼な口調など原本の要素を活かしたものも存在する。
  • ある場面での発言がその後の回想では異なる言い回しに翻訳され、発言をめぐる場面の繋がりがわかりにくくなっている箇所が存在する。

名称と読み

マグメルという名称そのものがケルト神話を元にした日本語版独自の呼び方であり、連載初期を中心に、聖洲関連の名称の多くがアイルランド神話用語を中心としたケルト語に置き換わっている。連載中期以降は元の名称の音からもじった日本語名や法則性の見いだせない日本語名が中心となる。

構造力関連においては日本独自のルビ演出が多用されている他、能力名そのものがアレンジされている場合もある。

『群青のマグメル』 ← 『拾又之国』
この「拾又之国」という言葉の真実の意味が後半のストーリーにおいて明かされるという[29]
『群青のマグメル』の英語サブタイトルは『MAG MELL of the SEA BLUE』。
マグメル ← 聖洲
アイルランド神話における極楽浄土であるマグ・メルから。
イン ヨウ ← 因又(ピン音:Yīn Yòu)
日本語では「又」を「ヨウ」とは読まないためカタカナ表記。
拾因と牙牙格(クー)は原本でも因又を又と呼ぶが、中国では一文字の名を呼び捨てにするのは愛称以上に親密な呼び方、または非常に無礼な呼び方[30]
阿零(ゼロ)からは坊っちゃん・ボンボンを意味する「少爷」と呼ばれる[注 5]
葬送鋼刃 ← 合刃構造(簡体字:合构造)
遍く右手・遍く左手 ← 手装構造(簡体字:手装构造)
原本では基本的に現実構造には特別な能力名は存在しない。
ルビはブラックラック、クラックライト、クラックレフトといずれも「ラック」が入っている。
ゼロ ← 零(ピン音:Líng、愛称:阿零)
三歩後ろの子供達 ← 多様家族(簡体字:多样家族)
ルビのファミリアナンバーズの方が原本の意味に近い。
エミリア・チェスター ← 艾米利亚・邓斯特(ピン音:Àimǐlìyǎ・Dèngsītè)
Emilia Dunst(エミリア・ダンスト)の中国語表記から[注 18]
拾因 ← 拾因(ピン音:Shí Yīn、愛称:阿因)
ヨウの拾因に対する阿因という呼び方はかなりくだけたもので、師匠というよりも同等の友人に対する愛称。
因果限界 ← 因律辺界(簡体字:因律边界)
クー・ヤガ・クラン ← 牙牙格双魄(ピン音:Yáyágéshuāngpò、愛称:牙牙格)
アイルランド神話の英雄クー・クラン(クー・フーリンとも)からクー、牙牙格からヤガ、クー・クランまたはケルト語で氏族を意味するクランからクラン。
原本の聖国真類の名には「鬼」が含まれる。
喰い現貯める者 ← 真実収割者(簡体字:真实收割者)
収割者を日本語に直訳すると収穫者となるが、中国では収割者は”Reaper”つまり死神の訳語として用いられる。
日本語版での漢字に沿った読みは「くいあらためるもの」。ルビのクラウド・ボルグは、喰らう、クラウド・ストレージ、古アイルランド語で腹・膨張を意味するボルグ[注 19]
ミュフェ ← 魎衣(簡体字:魉衣、ピン音:Liǎngyī)
忠愛の鬼兵 ← 鎧骨構造(簡体字:铠骨构造)
ルビはグロー・グ・クラン。
デュケ ← 魂寺(ピン音:Húnsì)
神明阿一族 ← 未神明阿一族
英語版ではFuture Gods Minga。
神明阿アミル ← 未神明阿弥額勒迦(簡体字:未神明阿弥额勒迦、ピン音:Wèishénmíngē Míélēijiā)
中国語での天使長ミカエル(Michael)の一般的な表記は「弥额尔」や「米迦勒」。
英語版ではMichael。
ルシス ← 路西斯(ピン音:Lùxīsī
中国語でのルシウス(Lucius)の表記は「路西乌斯」など、魔王ルシファー(Lucifer)は「路西法」。
英語版ではLucius。
神明阿アスス ← 未神明阿亜伯撒斯(簡体字:未神明阿亚伯撒斯、Wèishénmíngē Yàbósāsī)
中国語でのアベル(Abel)の表記は「亚伯」、アブラハム(Abraham)は「亚伯拉罕」。
英語版ではAbelsans。
神明阿ウェイド ← 未神明阿阿温哈伊(Wèishénmíngē Āwēnhāyī)
英語版ではElvenhail。
黒獄小隊 ← 十九獄小隊
日本語版では黒獄小隊を通称とし第19部隊を正式名称とする形式に改められた。
リー長官 ← 厲組長(簡体字:厉 ピン音:lì)
中国語で組長(组长)は「(小班の)リーダー」に近いニュアンスで幅広く使用される。
「长官」と呼ばれることもあるが、中国語で「长官」は具体的な役職だけでなく上官全般を指すことも多い。
原皇ブレス・ティトール ← 原皇 安帝図爾(ピン音:Āndìtúěr、簡体字:安帝图尔)
第33・34話での表記である安帝図児(ピン音:Āndìtúér、簡体字:安帝图儿)が誤植なのか、設定として異なる名前なのかは不明。
アイルランド神話の魔神族であるフォウォレ族の指導者の1人ブレスからブレス、安帝図爾の発音をもじってティトール。日本語版独自の要素である「ブレス」は名の一部。
英語版ではAnditool。
フォウル国 ← 多原国
フォウォレ族(フォモール族とも)から。
エリン ← 原著者
原著者は中国語でも日本語と同様に原作者を意味する。構造者の原著者は構造原著者と表記される。
古アイルランド語でアイルランド島を意味するエリン[注 20]から。
ダーナの繭 ← 空想之国/空想生態国(簡体字:空想生态国)
アイルランド神話の地母神であるダーナから。
聖暦 ← 聖跡(簡体字:聖迹)
構造力(ラクト)/構造者(ラクター) ← 構成力(簡体字:构成力)/構造者(簡体字:构造者)
コンストラクトは英語で構成・構造を意味する。

日本未発表の番外編(完全な楽屋ネタを除く)

  1. 『漫画行』で『拾又之国』の連載に先駆けて掲載された4Pの新連載告知漫画。作者の過去作である『5秒童話』と『長安督武司』の主人公、作者、『拾又之国』の1話冒頭で死亡する探検家が登場して『拾又之国』の主人公のヒントを読者に与えるという内容で、1話冒頭での主人公のミスリードにつながっている。
  2. 『拾又之国』単行本第2巻収録の8Pの特典漫画。ヨウはマグメルで道を見失ったとおぼしき少女を見かける。しかし彼女は自ら食獣草に飛び込み……。

注釈

  1. ^ a b c d e f g h i 日本語版では省略された説明。
  2. ^ 原本での第33・34話のサブタイトル『决定过去的未来』より。
  3. ^ 第35話が第32話のおよそ半年後の話になるという予告は、第34話の公開直後の休載の告知時に行われていた。この2話は、原本での第33話の最初の文章の「光阴荏苒,日月如梭。」「舞台总会迎来新的开幕,抑或是……」「落幕……」「或许什么都不是……」(光陰は緩慢に流れ 日月は梭のごとく巡る 舞台は必ず新たな幕開けを迎え もしくは…… 幕切れを迎え…… あるいは何も迎えずに……)と第34話の最後の文章の「时光荏苒,日月如梭。」「舞台总会迎来谢幕。」「或许,」「是再次开幕。」(時光は緩慢に流れ 日月は梭のごとく巡る 舞台は必ず幕引きを迎える あるいは 再びの幕開けを迎える)が、日本語訳では全く異なる内容に改変されている。そのためこの話が前後の時間軸から独立していることが読み取りにくくなっている。その現象と理由に迫ることが以後のストーリーの主題である。
  4. ^ a b 中国語においても「拾」は「十」の大字
  5. ^ a b 中国語の原本では初対面のときにゼロはヨウを「主人」と呼ぼうとしたが断わられ、「少爷(坊っちゃん・ボンボン)」と呼ぶように提案され受け入れた。日本語版での「主様」が、原本ではゼロを「私有财产(私有財産)」と呼び、自身を「主人」と呼ばせていた。中国語において「主人」とは店舗・家畜・奴隷などの財産の所有主としての意味合いが強い。主客関係でなく主従関係で用いるときは単なる雇主というよりも旧体制的な主人を指す。
  6. ^ 原本では随机炮として総称される。随机(随機)の意味はランダム。6号の背面の弾薬架らしき部分には「随机」という文字がある。第49話の『少年ジャンプ+』掲載分では原本からの改変により砲弾が出る前に「徹甲砲!」と発言したことになってしまったが、単行本では修正された。
  7. ^ 面の下に歯を剥いた口がある。
  8. ^ a b 第34話の『少年ジャンプ+』掲載分で「千二百年」となっている部分は原本では「一两百年(一、二百年)」。単行本では修正された。
  9. ^ 日本語版の第71話で「その頃のアタシは青春真っ盛りのピチピチの若者で 一族と一緒に暮らしてた」となっている部分は、原本では「那时朕在自己这一族类,还处于未成年的状态。」であり「その頃のアタシは 自分の一族ではまだ未成年の状態だった」という意味。
  10. ^ 第36話の『少年ジャンプ+』掲載分では原本からの改変によりティトールが解析の幻想構造について「これは私の幻想構造」と説明したことになってしまったが、単行本では「これは部下の幻想構造」と修正された。
  11. ^ アミルは日本語版では「若様」と呼ばれているが、原本では目などの顔の特徴が確認できる場面で役職で呼ばれる際は「长官」か「阁下」と呼ばれ、左の手のひらは詳しく確認できない。顔の特徴が確認できない人物が「少爷(若様)」と呼ばれている場面では、左の手のひらに一族のシンボルである目の斑紋が確認できる。
  12. ^ 日本語版では、第3話の台詞の「こいつのせいで」と意味が繋がっているのが「みんな死ぬ」の方でなく「危険なのは怪物だけじゃないんだ!」の方だと読み取りにくくなる表現上の改変がなされている。兄の台詞の「みんな死ぬ」のみんなが指すのはクリクスや兄の探検隊のことでなく一般論としての人間のことである。原本では、危険なのが猛獣だけでない(人間も危険になる)のはエポナの涙の価値のせいだという内容(「你不明白!这里的危险不仅仅是那些猛兽啊!」「全都是因为这个……」)と、人間はみんな死ぬという内容(「所有人都会死……」「但……在老死之前…… 人一定要活得有价值!」)で区切られている。
  13. ^ a b 兄が懐から1つ目の実を取り出してヨウに見せた際、中文版では「再带上剩下的两颗果实……」(さらに残る2つの実を手に入れて……)と語っているが、日本語版では省略された。
  14. ^ 日本語版では「幻想構造に目覚めた」となっているが中文版では「你的构成力发生变化」とされるのみ。元は現実構造者だが幻想構造にも目覚めた、あるいは元は幻想構造者だが現実構造にも目覚めたなどの変化の内容は明言されていない。
  15. ^ 日本語版で「マグメルに愛された」人間・者と訳された言葉は原本では「聖洲眷顧之人(簡体字:圣洲眷顾之人)」と「聖洲饋贈者(簡体字:圣洲馈赠者)」の2種類の言葉である。マグメル産の強身薬を摂取した者を指す「聖洲饋贈者」と、マグメルから優れた身体能力や構造能力の才能を授かった者を意味する「聖洲眷顧之人」が日本語訳の際に混同されている。「聖洲眷顧之人」は神名阿の若様がダーナの繭の救助隊メンバーの資質に言及する際などの限られた場面で使用される。
  16. ^ この設定の初出である第1話の掲載時点(2014年9月)でのおおよそのレート。
  17. ^ 牙牙格(クー)の原本での一人称は古語の「吾」であり、使う単語も時代がかったものが多い。
  18. ^ チェスターの中国語表記は切斯特。
  19. ^ クー・クランの槍として有名なゲイ・ボルグは破裂する槍などと意訳される。またボルグの意味については異説が多い。
  20. ^ エリウという伝説上の女王または女神の名が語源。
  21. ^ 2015年4月に出版された単行本第1巻と、第2巻発行と同時期の2016年4月に再版された第1巻は表紙が異なる。

出典






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