練馬事件 練馬事件の概要

練馬事件

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/06/17 05:06 UTC 版)

最高裁判所判例
事件名 傷害致死、暴行、暴力行為等処罰ニ関スル法律違反、窃盜被告事件
事件番号 昭和29年(あ)1056
1958年(昭和33年)5月28日
判例集 刑集12巻8号1718頁
裁判要旨
  1. いわゆる共謀共同正犯が成立するには、二人以上の者が特定の犯罪を行うため、共同意思の下に一体となつて互いに他人の行為を利用し、各自の意思を実行に移すことを内容とする謀議をなし、よつて犯罪を実行した事実が存しなければならない。
  2. いわゆる共謀共同正犯成立に必要な共謀に参加した事実が認められる以上、直接実行行為に関与しない者でも、他人の行為をいわば自己の手段として犯罪を行つたという意味において、共同正犯の刑責を負うもので、かく解することは憲法第31条に違反しない。
  3. 「共謀」または「謀議」は、共謀共同正犯における「罪となるべき事実」にほかならず、これを認めるためには厳格な証明によらなければならない。
  4. 共謀の判示は、謀議の行われた日時、場所またはその内容の詳細、すなわち実行の方法、各人の行為の分担役割等についてまで、いちいち具体的に判示することを要しない。
  5. 憲法第38条2項は、強制、拷問若しくは脅迫による自白または不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白の証拠能力を否定したものである。
  6. 憲法第38条3項の規定は、被告人本人の自白の証拠能力を否定または制限したものではなく、かかる自白の証明力(証拠価値)に対する自由心証を制限し、被告人本人を処罰するには、さらにその自由の証明力を補充しまたは強化すべき他の証拠(いわゆる補強証拠)を要することを規定したものである。
  7. 共同審理を受けていない単なる共犯者は勿論、共同審理を受けている共犯者(共同被告人)であつても、被告人本人との関係においては、被告人以外の者であつて、かかる共犯者または共同被告人の犯罪事実に関する供述は、憲法第38条2項とごとき証拠能力を有しないものでない限り、独立、完全な証明力を有し、憲法第38条3項にいわゆる「本人の自白」と同一視し、またはこれに準ずるものではない。
  8. 同一の犯罪について、数人の間の順次共謀が行われた場合は、これらの者のすべての間に当該犯行の共謀が行われたものと解するを相当とし、数人の間に共謀共同正犯が成立するためには、その数人が同一場所に会し、その数人の間に一個の共謀の成立することを必要とするものではない。
大法廷
裁判長 田中耕太郎
陪席裁判官 真野毅 小谷勝重 島保 齋藤悠輔 藤田八郎 河村又介 小林俊三 入江俊郎 池田克 垂水克己 河村大助 下飯坂潤夫 奥野健一 高橋潔
意見
多数意見 田中耕太郎 島保 斉藤悠輔 河村又介 入江俊郎 池田克 垂水克己 下飯坂潤夫 高橋潔
意見 なし
反対意見 真野毅 小谷勝重 藤田八郎 小林俊三 河村大助 奥野健一(4~6の論点について)
参照法条
憲法38条2項、3項、刑法60条、刑訴法319条2項
テンプレートを表示

注釈

  1. ^ 死亡した警察官の名字
  2. ^ 検察の主張によると、I巡査襲撃と同じ日に別働隊が第二組合委員長も襲撃する手はずとなっていたが、不在であったためI巡査襲撃に合流した。奪われた拳銃は現場付近の学校裏で実行犯の工員が氏名不詳の者に渡したとされる[1]
  3. ^ 殺意の立証は困難と判断された[1]
  4. ^ 検察は共同謀議によおる強盗致死を主張[1]

出典

  1. ^ a b c d e f g h i j k l m n 田中, 佐藤 & 野村 1980, pp. 67–82.
  2. ^ a b c d 警備用語辞典 2009, p. 34.


「練馬事件」の続きの解説一覧




固有名詞の分類


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「練馬事件」の関連用語

練馬事件のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



練馬事件のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの練馬事件 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS