統合幕僚監部
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統合幕僚監部 とうごうばくりょうかんぶ Joint Staff Office | |
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統合幕僚監部が設置される防衛省庁舎A棟(左) | |
役職 | |
統合幕僚長 | 吉田圭秀(陸将) |
統合幕僚副長 | 南雲憲一郎(空将) |
統合幕僚監部総括官 | 田中利則 |
組織 | |
上部機関 | 防衛省 |
内部組織 |
総務部 運用部 防衛計画部 指揮通信システム部 首席参事官(文官) 参事官(文官) 報道官 首席法務官 首席後方補給官 |
共同の部隊 |
自衛隊情報保全隊 自衛隊サイバー防衛隊 |
付置機関 | 統合幕僚学校 |
概要 | |
所在地 |
〒162-8805 東京都新宿区市谷本村町5番1号 |
定員 | 約500人 |
年間予算 |
予算235億円 (2011年度) |
設置 | 2006年(平成18年)3月27日 |
前身 | 統合幕僚会議 |
ウェブサイト | |
防衛省・統合幕僚監部ホームページ |
外国軍の統合参謀本部に相当し、陸上幕僚監部・海上幕僚監部・航空幕僚監部と併せ、高級幹部の間では「四幕」と称される。
前身は統合幕僚会議(とうごうばくりょうかいぎ、英: Joint Staff Council、略称: JSC)、略称:統幕会議(とうばくかいぎ)であった。
概要
防衛省において防衛大臣を補佐する機関には2種類ある。一つは「文官」として「政策的補佐」をする「内局」(大臣官房と各局からなる内部部局)であり、もう一つが「自衛官」(武官)として「軍事専門的補佐」をする統合・陸上・海上・航空の各幕僚監部である。統合幕僚監部は防衛大臣に対する補佐に加えて、陸・海・空自衛隊の部隊運用や統合運用(統合作戦)を担い、自衛官最高位の統合幕僚長が司る。
統合幕僚監部は前身である統合幕僚会議と比べ大幅に権限を強化された。すなわち、統合幕僚会議では、各自衛隊の行動等において統合部隊(2以上の自衛隊から成る部隊)が編成された場合のみ、当該部隊の運用(作戦)に関する指揮・命令を執行していたが、統合幕僚監部では、有事・平時、数及び規模を問わず各自衛隊の運用に関する防衛大臣の指揮・命令が全て(単一の自衛隊の部隊のみの運用であっても)統合幕僚監部を通じることとなり、自衛官最高位のフォースユーザー(事態対処責任者)としての統合幕僚長の立場が明確化されることになった。この運用形態の変更に伴い、陸上幕僚長、海上幕僚長、航空幕僚長は、平時の人事、教育訓練、防衛力整備、後方補給などを司るフォースプロバイダー(練度管理責任者)としての立場が明確化され、有事の際にはフォースユーザーの統合幕僚長に隷下の各自衛隊部隊を提供する役目を担うことになった[1][2]。これに伴って、陸・海・空の各幕僚監部の防衛部運用課の人員が統合幕僚監部運用部に集約され、陸・海・空の各幕僚監部には運用支援課が編成された。また、自衛隊全体の作戦立案を担当する都合上、統合幕僚監部運用部の部長職は、他の部長級が将補によって充てがわれるのに対し、一段上の師団長級の将を以て原則着任することとされた。陸・海・空の各幕僚長は、運用以外の隊務について防衛大臣を補佐するが、各々の立場から統合幕僚長に意見を述べることができる。
沿革
創設までの経緯
旧軍時代から陸海軍の軍種対立の弊を改め、統一された軍令機関を置く構想が存在したが、一時期の参謀本部を除いて陸海軍共同の軍令機関の設置は達成されなかった。
防衛省(旧・防衛庁)の前身である保安庁の時代から指揮権を統一する機関を創設する構想はあったが、組織の規模が圧倒的である陸自に海自が飲み込まれることを危惧していたため旧海軍関係者の猛烈な反発により頓挫したという経緯がある。
統合幕僚会議の設立の背景として、第二次世界大戦時に既に統合参謀本部を設置していたアメリカ軍からの働きかけと、航空自衛隊の創設により軍種の分化が進んだことによる指揮権統合の必要性の拡大が挙げられる[3]。
統合幕僚会議
1954年(昭和29年)7月1日、統合幕僚会議および同事務局が新設(越中島)。
1956年(昭和31年)3月23日、統合幕僚会議事務局が霞が関庁舎に移転。
1960年(昭和35年)1月12日、統合幕僚会議事務局が檜町庁舎に移転。
1961年(昭和36年)6月12日、統合幕僚会議の権限が強化される(防衛2法改正)。
同年8月1日、三自衛隊共同の幹部学校(参謀学校)である統合幕僚学校を統合幕僚会議に附置新設。
1995年(平成7年)に防衛計画の大綱見直しに伴う、統合幕僚会議の機能強化を目的としたプロジェクトチームが防衛庁に設立された際には、防衛庁内局から「シビリアンコントロールの見地から、各自衛隊に権限を分散させていた方が統制が簡単だ」との反対意見が出され、統合幕僚会議から統合幕僚監部への改編が見送られている[4][注釈 1]。
1997年(平成9年)1月20日、統合幕僚会議事務局第2幕僚室と陸上幕僚監部調査部第2課別室を合同させた情報本部を統合幕僚会議に新設。
1998年(平成10年)、出動時以外でも、必要に応じて統合幕僚会議が長官を補佐できるように防衛庁設置法などが一部改正、1999年(平成11年)3月施行。
2000年(平成12年)5月8日:統合幕僚会議事務局が市ヶ谷庁舎に移転。
統合幕僚監部
2006年(平成18年)3月27日、統合幕僚会議及び同事務局を廃止し、統合幕僚監部を新設。情報本部は、防衛庁内各機関に対する情報支援機能を広範かつ総合的に実施し得る「庁の中央情報機関」としての地位・役割を明確にするため、統合幕僚監部から分離、防衛庁長官直轄組織に改編。
2008年(平成20年)3月26日、初の3自衛隊共同部隊である自衛隊指揮通信システム隊が新編、統合幕僚長を通じて指揮監督を受ける。
2009年(平成21年)8月1日、陸海空の情報保全隊を統合し、共同の部隊である自衛隊情報保全隊が新編。
同年8月1日、運用部副部長(将補(二))職及び総務調整官を新設し、総務部人事教育課を廃止[5]。
2014年(平成26年)3月26日、防衛計画部副部長(将補(二))職及び、総務部に連絡調整課、運用部に運用第3課を新設[6](スクラップ・アンド・ビルドの観点から陸幕装備部副部長職と陸・海・空幕の課を各1廃止)。また、総務部総務調整官、運用第1課運用調整官を廃止し、運用企画調整官及び及び事態対処調整官を新設、運用第2課訓練調整官を廃止し、災害対策調整官を新設、防衛計画部計画課計画班を廃止し、統合防衛戦略室を新設、指揮通信システム研究班及び統合通信体制班を廃止し、統合通信システム研究班を新設。
2015年(平成27年)10月1日、防衛省運用企画局の廃止に伴い運用企画調整官を廃止し、総括官、参事官を新設。また、総務部連絡調整課を廃止し、総務課連絡調整官を新設[7]。
2017年(平成29年)3月27日
- 総務部に人事教育課を新設[8]。
- 総務課統合人事室、国際人道業務室、教育班、連絡調整官、指揮通信システム企画課指揮通信システム調達班、指揮通信システム運用課コンピュータ・システム共通運用基盤管理室を廃止。
2018年(平成30年)3月27日、運用第1課日米共同班を「日米共同室」に改編。
2020年(令和2年)3月26日、指揮通信システム企画課に「電磁波領域企画班」を新設。
2021年(令和3年)3月18日、指揮通信システム企画課に「宇宙領域企画班」を新設。
2022年(令和4年)3月17日、自衛隊指揮通信システム隊を廃止し、自衛隊サイバー防衛隊に改編[9]。指揮通信システム企画課に「宇宙サイバー電磁波領域調整官」を新設。
注釈
- ^ 統合幕僚監部への改編は2006年(平成18年)に実現。
- ^ 統合幕僚監部の内部組織に関する訓令 第44条 幕僚長の定める部 若しくは、課 又は、参事官、報道官、首席法務官 若しくは、首席後方補給官の下に、カウンターインテリジェンス室を置く。
- ^ 統合幕僚監部の内部組織に関する訓令 第18条第2項 災害対策調整官は、運用第2課長の命を受け、運用第2課の所掌事務のうち、災害派遣班に係るもの及び運用室運営班に係るもの(海賊対処行動、在外邦人等の保護措置、在外邦人等の輸送、国際平和共同対処事態における対応措置、国際平和協力活動、南極地域観測に対する協力及び国賓等の輸送に係るものを除く。)を整理する。
- ^ 統合幕僚監部の内部組織に関する訓令 第18条第3項 国際地域調整官は、運用第2課長の命を受け、運用第2課の所掌事務のうち、運用室運営班に係るもの(海賊対処行動、在外邦人等の保護措置、在外邦人等の輸送、国際平和共同対処事態における対応措置、国際平和協力活動、南極地域観測に対する協力及び国賓等の輸送に係るものに限る。)及び国際協力室に係るものを整理する。
- ^ 防衛省の特別の機関であるという点では、統合幕僚監部と同格。
出典
- ^ 統合運用について 防衛省 2010年3月
- ^ 統合幕僚会議 コトバンク
- ^ 髙橋秀幸「自衛隊草創期の統合 : 統合幕僚会議設置に航空自衛隊創設が及ぼした影響 : 旧軍からの継続性を踏まえて」(『防衛研究所紀要 19』防衛省、2017年3月27日)
- ^ 國民政治年鑑編集委員会 『國民政治年鑑 1995年版 』日本社会党中央本部機関紙局 p.436
- ^ 防衛省人事発令、2012年(平成24年)8月1日付将補人事
- ^ 防衛省組織令等の一部を改正する政令(平成26年1月31日公布政令第20号、防衛省HP)
- ^ 防衛省設置法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係政令の整備等に関する政令(平成27年政令第334号)平成27年9月18日公布
- ^ 防衛省組織令及び自衛隊法施行令の一部を改正する政令(平成29年政令第38号)平成29年3月23日公布
- ^ 自衛隊法施行令及び防衛省の職員の給与等に関する法律施行令の一部を改正する政令(令和4年政令第57号)令和4年3月11日公布
- ^ “海上自衛隊の部内の通信において使用する常用略語について(通達)” (PDF). 防衛省 (2015年10月1日). 2020年12月27日時点のオリジナルよりアーカイブ。2010年12月27日閲覧。
- ^ 防衛省 統合幕僚監部 統合幕僚監部について 統合幕僚監部の沿革
- ^ 防衛省 訓令等の検索(訓令・達・通達等・告示) 統合幕僚監部の内部組織に関する訓令
- ^ 防衛省 訓令等の検索(訓令・達・通達等・告示) 統合幕僚監部の内部組織に関する達
- ^ 防衛省 訓令等の検索(訓令・達・通達等・告示) 特定秘密の保護に関する達 別紙第1(第8条関連)統幕における特定秘密を取扱える部署
- ^ “統合幕僚監部総括官及び参事官の職務等に関する訓令”. 防衛省. 2022年8月3日閲覧。 “第2条第2項 参事官のうち1人を首席参事官と称し、首席参事官は、前項各号に掲げる職務に関する事務を総括するものとする。”
- ^ 『報告書――不祥事の分析と改革の方向性』防衛省改革会議、2008年(平成20年)7月15日。
- ^ “閣僚会議等の廃止について”. 首相官邸(過去の主な報告書・答申等 平成21年) (2009年11月17日). 2019年3月1日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年1月29日閲覧。
- ^ “「文官統制」を全廃、改正防衛省設置法が成立”. 47NEWS(共同通信). (2015年6月10日). オリジナルの2015年6月10日時点におけるアーカイブ。 2015年6月11日閲覧。
- ^ 「統合司令部」常設を検討 自衛隊トップが言及 産経ニュース 2016年3月1日
- ^ 参議院会議録情報 第193回国会 外交防衛委員会 第20号 平成29年5月23日
- ^ “統合司令部を創設 防衛省、最終調整へ 自衛隊を常時・一元指揮”. 産経新聞. (2018年4月25日) 2022年6月7日閲覧。
- ^ “防衛力整備計画について”. 防衛省 (2022年12月16日). 2023年1月5日閲覧。
- ^ “<独自>統合司令部、来年度創設見送り 場所巡り対立も”. 産経新聞. (2022年12月29日) 2023年1月5日閲覧。
- ^ “令和6年度概算要求の概要”. 防衛省. 2023年9月1日閲覧。
- 1 統合幕僚監部とは
- 2 統合幕僚監部の概要
- 3 統合運用
- 4 主要幹部
- 5 本省運用企画局との統合
- 6 関連項目
固有名詞の分類
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