結核
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歴史
紀元前1000年頃のエジプト第21王朝のミイラには、骨の結核である脊椎カリエスとみられる遺体がある。2009年末、エルサレムで発見された1世紀前半の男性の骨から結核菌とらい菌のDNAが発見され、イエス・キリストの時代のエルサレムの上流階級では、既に流行していたことが確認された[4]。
中国前漢時代のミイラから結核にかかった痕跡が確認されている。2006年に韓国南部の勒島(ヌクト)の遺跡から出土した若い女性の人骨の脊椎3か所にカリエスを発見した[4]。
日本では青谷上寺地遺跡(鳥取市)で出土した弥生時代後期の弥生人の骨の中に脊椎カリエスとみられるものがあり、朝鮮半島の島に埋葬されたほぼ同時期の人骨にも結核の痕がある。日本古病理学研究会会長の鈴木隆雄(桜美林大学教授)は、結核は中国から朝鮮半島に広がり、渡来人を通じて日本列島に上陸したと推測している[35]。
2019年2月4日、鳥取大学の岡崎健治らの研究チームが、中国の上海にある広富林遺跡で出土した女性人骨から約5千年前の結核発症の痕跡を発見したことを明らかにした。東アジアでは最古の結核症例という。人骨は埋葬された20~30代の女性のもので、2010年に出土した184体の人骨を分析する過程で発見した[36]。特徴的なのは、背骨の胸椎と腰椎の一部に、脊椎カリエスが認められた。結核は縄文時代の日本列島では未確認で、研究者は弥生時代に渡来したと考えており、今回の発見は、結核はこの地域から稲作文化とセットで日本にもたらされた可能性を示唆するという。研究内容は、アメリカ合衆国の学術誌『INternational Journal of Paleopathology』に発表された[37]。
軍隊と結核
集団生活が基本なため集団感染の危険が高い軍隊では流行で兵力が急激に減ることから、結核には非常に気を使っており、軍の防疫部隊や軍病院では独自に予防研究も行われていた。
徴兵検査では特に厳重な胸部検査をし、さらに陸軍士官学校などでは、度々ツベルクリン反応検査をしたり、寝台は頭と足の向きを交互にしたりするなどして対応していた。
肺浸潤や胸膜炎など結核と関連する症状が見つかるといったん丙種合格として様子を見るため、煙草で肺や気管を傷めて徴兵を免れようとする偽装もあった。山田風太郎は胸膜炎のため丙種合格となった後、軍需工場で働きながら旧制東京医学専門学校に合格して医学生となり、徴兵免除となり戦地に赴くことなく終戦を迎えた。三島由紀夫は日本軍の徴兵検査には合格したが、招集される数日前に、母親から移された風邪を軍医が結核と誤診して即日帰郷となった。このように兵の不足や兵役逃れに厳しい国家でも、呼吸器系の病気が疑われる者は、安全を考慮して入隊させないなど、厳重な水際対策が行われていた。しかし検査時に潜伏期間だった者から感染する事例が度々発生し、軍を悩ませていた。
治療法が未発達だった時代には、結核が原因で早期に退役した者も多い。兵役中に結核を発症した場合「軍隊で結核にかかった」などの悪評が広がることを防ぐため、「肺病」などの「ぼかした表現」を使うことも多かった。
アメリカ軍では、結核で退役した者にも負傷者と同じく軍病院の利用、大学への進学補助、障害年金の支給があった。また第二次世界大戦では、完治した者がアメリカ本土で勤務する軍属などとして、徴兵されることもあった。SF作家ロバート・A・ハインラインは、1929年にアナポリス海軍兵学校を卒業してアメリカ海軍に入隊したが、結核により1934年に退役。アメリカ軍の施設で治療を受けるも、障害年金が少ないため困窮し、職を転々とした。また完治していたため、1943年から技術士官として海軍に復帰している。
隠語
死亡率が高かった頃は、病名「結核」はあまりにも直接的で人々の口に出しづらかったため、学名の Tuberculosis から、医師は診療録に "TB" と略した。また、ドイツ語読みが当たり前だったため、「テーベー」と言い習わした。ここから出発して一般人も「テーベー」と呼ぶことが多かった。
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