紅葉
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/27 13:59 UTC 版)
紅葉と進化
紅葉の至近要因については知られているが、そもそもなぜ紅葉があるのか、紅葉の進化的要因、進化的機能については長らく研究対象となってこなかった[3]。
1999年(平成11年)に北半球の262の紅葉植物とそれに寄生するアブラムシ類の関係が調べられ、紅葉色が鮮やかであるほどアブラムシの寄生が少ないことが発見された。
紅葉の原因となるアントシアンやカロテノイドはそれを合成するのに大きなコストが掛かるが、直接害虫への耐性を高めるわけではない。またアブラムシは樹木の選り好みが強く、一部の種は色の好みもあるとわかっている。そのため、紅葉は自分の免疫力を誇示するハンディキャップ信号として進化した、つまり「十分なアントシアンやカロテノイドを合成できる自分は耐性が強いのだから寄生しても成功できないぞ」と呼びかけているとみなせる[4]。
アブラムシ以外の寄生者に対するハンディキャップ効果はまだ調べられていない。紅葉の進化的機能についてはまだ議論が続いている。
紅葉する植物
- 紅葉:カエデ科(イロハモミジ、ハウチワカエデ、サトウカエデ、メグスリノキ)・ニシキギ科(ニシキギ、ツリバナ)・ウルシ科(ツタウルシ、ヤマウルシ、ヌルデ)・ツツジ科(ヤマツツジ、レンゲツツジ、ドウダンツツジ)・ブドウ科(ツタ、ヤマブドウ)・バラ科(ヤマザクラ、ウワミズザクラ、、ナナカマド)・スイカズラ科(ミヤマガマズミ、カンボク)・ウコギ科(タラノキ)・ミズキ科(ミズキ)
- 黄葉:イチョウ科(イチョウ)・カバノキ科(シラカンバ)・ヤナギ科(ヤナギ、ポプラ、ドロノキ)・ニレ科(ハルニレ)・カエデ科(イタヤカエデ)・ユキノシタ科(ノリウツギ、ゴトウヅル)
- 褐葉:ブナ科(ブナ、ミズナラ、カシワ)・スギ科(スギ、メタセコイヤ)・ニレ科(ケヤキ)・トチノキ科(トチノキ)・スズカケノキ科(スズカケノキ)
紅葉にまつわる文化
もみじ(紅葉、黄葉)
もみじ(旧仮名遣い、もみぢ)は、上代語の「紅葉・黄葉する」という意味の「もみつ(ち)」(自動詞・四段活用)が[5]、平安時代以降濁音化し上二段活用に転じて「もみづ(ず)」となり[6]、現代はその「もみづ(ず)」の連用形である「もみぢ(じ)」が定着となった言葉である[7]。
- 上代 - もみつ例
- 「子持山 若かへるての 毛美都(もみつ)まで 寝もと吾は思ふ 汝は何どか思ふ (万葉集)」
- 「言とはぬ 木すら春咲き 秋づけば 毛美知(もみち)散らくは 常を無みこそ (万葉集)」
- 「我が衣 色取り染めむ 味酒 三室の山は 黄葉(もみち)しにけり (万葉集)」
- 平安時代以降 - もみづ例
- 「雪降りて 年の暮れぬる 時にこそ つひにもみぢぬ 松も見えけれ (古今和歌集)」
- 「かくばかり もみづる色の 濃ければや 錦たつたの 山といふらむ (後撰和歌集)」
- 「奥山に 紅葉(もみぢ)踏みわけ 鳴く鹿の 声きく時ぞ 秋は悲しき(古今和歌集)」
秋口の霜や時雨の冷たさに揉み出されるようにして色づくため、「揉み出るもの」の意味(「揉み出づ」の転訛「もみづ」の名詞形)であるという解釈もある。

もみじ(紅葉、黄葉)狩り
日本では、紅葉の季節になると紅葉を見物する行楽、紅葉狩りに出かける人が多い。紅葉の名所と言われる場所、例えば奥入瀬(青森県)や日光(栃木県)、京都の社寺などは、行楽客であふれる。紅葉をめでる習慣は平安の頃から始まったとされ、特に京都市内では多くの落葉樹が植樹されている。また、「草紅葉」の名所としては四万十川や尾瀬、秋吉台等がある。「狩り」という言葉は「草花を眺めること」の意味をさし、平安時代には実際に紅葉した木の枝を手折り(狩り)、手のひらにのせて鑑賞する、という鑑賞方法があった。
実際に枝を折り取って持ち帰る行為は森林窃盗罪となる。
もみじの天ぷら
大阪府箕面市では、「もみじの天ぷら」がお菓子として定着している[8]。
芸術作品
日本において、古来より紅葉は和歌をはじめ、様々な芸術の題材となっている。関連項目の項を参照。
文様
紅葉紋は、日本では家紋や社寺の紋にも使用されている。上流公家の菊亭家の家紋や一族の由縁の施設の浄土真宗真宗山元派本山の證誠寺の寺紋、日蓮宗大本山の本圀寺の寺紋が代表格である。同様に三つ紅葉の寺紋の使用例は真言宗醍醐派大本山の転法輪寺寺紋や真宗興正派の勝覚寺寺紋である。歌舞伎一門の瀧乃屋市川家の四つ紅葉紋も存在する。
複数の紅葉の葉が配置された家紋の『三つ紅葉』や『四つ紅葉』の場合は基本、外側に葉の頭がある紋様を指す。一方『頭合わせ三つ紅葉』と呼ばれる葉の頭が内側の紋様は使用例が非常に少ない。
注釈
出典
- ^ 「植物の体の中では何が起こっているのか」 2015年 ベレ出版
- ^ 「植物の体の中では何が起こっているのか」 2015年 ベレ出版
- ^ ARCHETTI,M The Origin of Autumn Colours by Coevolution (PDF) (2007年9月27日時点のアーカイブ)
- ^ Hamilton,W.D. Brown,S.P. (2001)Autumn tree colours as a handicap signal (PDF)
- ^ 新村出「広辞苑」(もみつ)1983年 岩波書店
- ^ 「国語辞書(goo辞書) もみず」 2013年8月23日閲覧
- ^ 「国語辞書(goo辞書) もみじ」 2013年8月23日閲覧
- ^ “伝統銘菓「もみじの天ぷら」が海外で話題に “日本人は理解し難いものを食べる…””. (2014年10月13日) 2015年1月10日閲覧。
- ^ 参考文献:『大人の紅葉旅2010』三栄書房 主にp91
- ^ “全国紅葉”. 社団法人 日本観光振興協会. 2015年10月29日閲覧。
- ^ 一度は訪れたい世界の紅葉スポットBEST10
- ^ 息をのむほど美しい世界の紅葉13選
- ^ Scenes from Vermont’s Route 100 in Fall (New England Today, 2020)
- ^ ニュージーランド特集:花・黄葉を楽しむ
- ^ 2018年の紅葉最新情報 第2弾 : この秋絶対に訪れたい世界の紅葉名所10選
- ^ 気象庁 | 生物季節観測の情報
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