米西戦争 影響

米西戦争

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/22 23:48 UTC 版)

影響

アメリカ軍管理下のキューバの独立

スペインは太平洋艦隊・大西洋艦隊と継戦能力を失った。交戦状態は8月12日に停止され、形式上の平和条約は12月10日パリで調印された1898年パリ条約で、1899年2月6日にアメリカ上院によって批准された。

同戦争に勝利したアメリカはフィリピン・グアム・プエルトリコを含む旧スペイン植民地のほとんど全てを獲得し、キューバを保護国として事実上支配下に置いた。以後アメリカの国力は飛躍的に拡大していき、南北アメリカ大陸と太平洋においてスペインの影響力が一掃され、代わりにアメリカが影響力を持つという、覇権の移譲とも取れる流れになっている。

戦後スペインは植民地喪失のために国力が低下し、新興国のアメリカにあっけなく敗北したこともあって、ヨーロッパでの国際的地位・発言力を同時に失った。ルネサンスから始まったポルトガル海上帝国スペイン帝国帝国主義が破綻し、産業革命に支えられた新たな帝国主義へ完全に移り変わった瞬間とも取れる。

開戦前、アメリカ連邦議会はキューバの独立を支持し、これを討論の後に承認した。アメリカ軍は1909年1月28日までキューバを占領した。アメリカはスペイン植民地のプエルトリコ(#プエルトリコ)・フィリピン(#フィリピン#米比戦争)・グアム(#グアム島)を併合した。

南北間の和解

この短い戦争には、もう一つ興味深いがほとんど注目されなかった影響があった。それはアメリカの北部と南部の関係を固める役目を果たしたということである。この戦争は、1865年5月の南北戦争の終了以来初めて両側に共通の敵を与えたものだった。1890年代は北軍支持者と南部連邦支持者の間の和解の期間で、北部と南部の政治家の政治的な調和を増加させた。

人種差別の再燃

1890年代は北部における人種差別の再燃とジム・クロウ法の可決による白人と黒人の分離を増加させた時代でもあった。それは1896年5月のプレッシー対ファーガソン裁判の最高裁判所による判決で最高潮に達し、その「分離すれども平等」主義を法律の中へ成文化した。

イエロー・ジャーナリズム

米比戦争時のニューヨークジャーナルの風刺画。フィリピン人を銃殺しようとするアメリカ兵の背後には「10歳以上の者は皆殺し」と書かれている。

さらに、米西戦争はイエロー・ジャーナリズムの影響が大きかったことで有名である。ウィリアム・ランドルフ・ハーストのニューヨーク・ジャーナル紙とジョーゼフ・ピューリツァーのニューヨーク・ワールド紙の2紙は発行部数競争で熾烈な争いを繰り広げ、無責任なニュースをでっち上げたりもした。このような競争の結果、ワールド紙が15,000部、ジャーナル紙が1,500部程度の発行数だったのがマニラ湾の戦いの時には160万部まで伸びた。オーソン・ウェルズは、映画市民ケーン』の中でこの様子を皮肉った。

アメリカ反帝国主義連盟

海外に植民地を持った「アメリカ帝国」についての考えは、ウィリアム・マッキンリー大統領と帝国主義賛同派の間で国内で激しく討議された。アメリカの大衆の大部分は植民地の所有を支持した。しかしマーク・トウェインのような、率直な批評家も多くいた。

米比戦争

1898年8月に11,000人の地上部隊がフィリピンを占領するために送られた。アメリカがスペインに代わって国の統治を始めると同時に、アメリカとフィリピンの戦争が始まった(米比戦争)。戦争はフィリピンの国家主義者の独立に対する望みを絶つために行われ、20万人から150万人と言われる犠牲者を生んだ。


  1. ^ a b c d e f g h Dyal, Carpenter & Thomas 1996
  2. ^ Trask, p.371
  3. ^ 加茂雄三『世界の歴史 第23巻 ラテンアメリカの独立』p.304
  4. ^ 「バラのつぼみ『市民ケーン』と新聞王ハースト」マジソンズ
  5. ^ メイン号の沈没事件英和学習基本用語辞典アメリカ史
  6. ^ 林義勝「スペイン・アメリカ・キューバ・フィリピン戦争--海外植民地領有のレトリックと統治の実態」2001年3月(『駿台史学112』)


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