筋肉 筋肉の概要

筋肉

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/16 09:18 UTC 版)

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骨格筋の構造 筋肉は複数の筋束からなる(中央上)。筋束は筋繊維(筋細胞)の集まりである(右上)。複数の筋原繊維が束ねられて筋繊維を形作る(右中央)。筋原繊維はアクチンタンパク質ミオシン質が入れ子状になった構造を取る(右下)。
種々の筋肉。左から骨格筋(: Skeletal muscle)、平滑筋(: Smooth muscle)、心筋(: Cardiac muscle

動物の運動は、主として筋肉によってもたらされる。ただし、細部に於ける繊毛鞭毛による運動等、若干の例外はある。なお、筋肉が収縮することにより発生する力を筋力と呼び、これは収縮する筋肉の断面積におおよそ比例する。つまり筋力は、筋肉の太さと密接に関係している。

また、食用に供する食肉は主に筋肉であり、脊椎動物の骨格筋は湿重量の約20%をタンパク質が占め[1]、主にこれを栄養として摂取するために食される[2]。(ただし、食料品店でと表示されているものは筋肉だけでなく脂身(脂肪分の塊)も一緒になった状態で、タンパク質ばかりでなく、かなりの高脂肪の状態で販売されていることが多い。)

中医学では肌肉とも言われる。

語源

英語の「muscle」(マッスル)は、ラテン語で小さなネズミを意味する「musculus」から派生している。これは、筋収縮の様子が皮膚の中でネズミが動く様に見えた事に由来すると考えられる[3][4]

分類

腔腸動物以上の動物は筋肉を持つ[1]

骨格を持つ動物の筋肉は、その配置から大別すると骨格に付随して身体を構成し、姿勢制御に貢献する骨格筋と、骨格に直接付属せず、身体構成・姿勢制御に直接関わらない内臓筋に分けることができる。しかしこの分類方法は便宜的な分類であり、もっとも良く用いられる分類方法である組織学的分類によれば、多骨格筋、単核の平滑筋心筋に分けることができる[1]。また、意識して動かすことができるかという点で随意筋(骨格筋のみ)と不随意筋(心筋・平滑筋)に分けられる。

この他にも、筋肉は見た目のから赤筋(赤色筋) (red muscle, typeI) と白筋(白色筋) (white muscle, typeII) の2種にも分類される。これは含有するミオグロビンミトコンドリアの量に左右され、多くミトコンドリアが活発なものが赤く、少なく不活発なものが白く見える[5][6] 。またこれらの筋繊維の本数とそれに伴う割合は個人差があり生まれつきほとんど決まっている。白筋は収縮の筋原繊維が発達しているため素早く縮むことができるため、速筋 (fast muscle) とも呼ばれる[6]乳酸性閾値から上の運動強度では速筋が多く使われるようになる[7]。速筋の筋肉繊維は、運動速度や発揮する力によってさらにIIa, IIx, IIbの3種類[8] に分けられる[9]。赤筋は脂肪や炭水化物を消費する酵素が豊富で[9]ゆっくりした運動を持続的に行うのに適し、心臓や呼吸に関する器官の筋肉を構成する[5]。乳酸の代謝では細胞膜を通過して乳酸が輸送される必要がある場合があり、例えば、グリコーゲンが速筋で分解され乳酸を生成し、その乳酸が遅筋や心筋ミトコンドリアで使われている場合がある[7]。一般的な話題で「筋肉」と呼ばれているのは主に骨格筋であり、パワーやスピードの向上に直結するためスポーツでは重要視される。

構造

解剖学的構造

(a)骨格筋、(b)平滑筋、(c)心筋

骨格筋

骨格筋 (skeletal muscle) は、関節など骨格の可動部を動かす筋肉である[10]。脊椎動物では両端がを介して骨と繋がった形で配置され、昆虫エビなどの節足動物ではクチクラ(角皮)を動かすために使われる[10]。関節に関してその筋肉が収縮すると曲がるものを屈筋、伸ばすものを伸筋と言う。その他は回転筋・索引筋・括約筋などに分類される[10]。随意筋であるが、体躯の姿勢制御や反射などでは無意識に動く。体重比で成人男性の42%、同女性の36%を占める[11]。哺乳動物の骨格筋の密度は1.06kg/lであり、脂肪よりも約15%重い[12][13]

平滑筋

平滑筋 (smooth muscle) は、横紋が無い筋肉であり、脊椎動物では心臓を除く内臓および血管を構成する筋肉である。無脊椎動物の身体を構成する筋肉はほとんどが平滑筋である[14]。収縮する速度は遅く数十秒かかる場合もあるが、一方で伸び縮みする率は大きく、その状態を保持する能力に優れる[14]自律神経系から運動の促進・抑制双方の制御を受けている[14]

心筋

心筋 (cardiac muscle) は心臓を構成する筋肉である。心筋の特徴として、動作に必要な神経繊維が通常の神経繊維ではなく、特殊心筋と呼ばれる筋群によって興奮が伝達される。従って、肉眼的には神経繊維は存在しない。

微細構造

筋肉の機能は、神経の制御を受けながら収縮する事と、その収縮度合いを測定しフィードバックすることである。ここでは主な構成要素を、骨格筋を例にして解説し、後に心筋と平滑筋の違いを述べる。

筋繊維(筋線維)/ 筋細胞

骨格筋を構成する細胞単位。筋芽細胞の融合によって生じる、細長く大きな巨大多核細胞である。骨格筋が発生し分化する過程で、単核の筋原細胞同士が融合してつくられる[15]

筋原繊維(筋原線維)

横紋筋の筋繊維中に存在する収縮性の構造体で、細胞内器官。直径約1μmの円筒状をしており、骨格筋では筋肉の長方向に沿って多くの筋原繊維が並行に並んでいる。微細な構造は、多くのサルコメアが厚さ2〜8nmのZ膜(Z線)と呼ばれる隔膜で仕切られながら10nm間隔で連結している。横紋筋の縞模様はこの並びが見えている[16]。ミオフィブリル、筋フィラメント、ミオフィラメントとも呼ばれる[16]

サルコメア(筋節)

筋原繊維の最小構成単位。これが縦につながったものが筋原繊維である。個々のサルコメアは、ATP存在下で収縮が起こる。骨格筋の縞は、このサルコメアのアクチンフィラメントとミオシンフィラメントが並行に一部分が重なっている配列に由来する。筋小胞体から放出されたカルシウムイオンにより、アクチンフィラメントがミオシンフィラメントな間に滑り込み筋肉が収縮する。したがって、そのときにはサルコメア全体の長さはアクチンフィラメントが滑り込んだ分だけ小さくなる。

サルコメアには、中央部に密度が高いA帯と、両側に密度が低いI帯がある。A帯は約1.5μm長のミオシンフィラメントで構成され、Z膜に接続したアクチンフィラメントがA帯に入り込んでいない部分がI帯である[16]。両フィラメントは、中心にあるミオシンフィラメントを六角形状にアクチンフィラメントが取り囲んだ断面構造を持つ。ミオシンフィラメント同士の中心間距離は40〜50nm、取り囲むアクチンフィラメントまでの距離は約15nmである[16]

エネルギー

筋繊維はアデノシン三リン酸 (ATP) を使い、フィラメント同士がお互い重なり合うように引き付け合い収縮する[1]

筋肉の制御

筋肉は、神経からの刺激で収縮を行っている。神経と筋肉は、神経筋接合部というシナプスの一種を介して刺激の伝達を行っている。神経末端からは、アセチルコリンが放出され、筋肉の側にあるアセチルコリン受容体に結合し、筋線維の細胞膜を脱分極させる。これがT管系を伝わって筋全体に広がり、T管系に接する筋小胞体からカルシウムが放出される。このカルシウムをシグナルとして、アクチン繊維とミオシン繊維の間の滑り運動が起こるのである。

その他

筋繊維は本来積極的に伸展する能力は無く、弛緩したときに伸展するのは、骨格筋の場合、対立筋の働きによる外的な作用による。運動後の筋肉の疲労は、解糖系の最終生成物である乳酸によってもたらされるとの説があるが、医学的根拠は無い。

心筋の微細構造

心筋は、普通心筋と特殊心筋に分類される、特殊心筋としては、洞房結節房室結節ヒス束等が挙げられる。特殊心筋の働きは、心筋の統合された収縮を目的とした、興奮の伝達である。普通心筋は、骨格筋と同じように横紋があるが、骨格筋ほど整然と並んでは居ない。

平滑筋の微細構造

平滑筋を構成する細胞は紡錘形状で単一の核を持つ[14]。アクチンフィラメントを大量に持ち、ミオシンフィラメントは少量が不規則に分散している。細胞の形状はデスミン中間径フィラメントが存在して保たれる[14]。収縮にはカルシウムイオンによって制御されるが、小胞体があまり発達していないため、細胞膜にあるくびれの外側にイオンを溜め込んでいると考えられる[14]


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  55. ^ Roche, Alex F. (1994). “Sarcopenia: A critical review of its measurements and health-related significance in the middle-aged and elderly”. American Journal of Human Biology 6: 33. doi:10.1002/ajhb.1310060107. 






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