第三の男
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/10/14 04:33 UTC 版)
第三の男 | |
---|---|
The Third Man | |
監督 | キャロル・リード |
脚本 | グレアム・グリーン |
製作 |
キャロル・リード デヴィッド・O・セルズニック アレクサンダー・コルダ |
出演者 |
ジョゼフ・コットン オーソン・ウェルズ アリダ・ヴァリ |
音楽 | アントン・カラス |
撮影 | ロバート・クラスカー |
編集 | オズワルド・ハーフェンリヒター |
配給 |
ブリティッシュ・ライオン・フィルムス セルズニック映画 東宝東和 |
公開 |
1949年9月3日 1950年2月2日 1952年9月16日 |
上映時間 | 105分 |
製作国 | イギリス[1] |
言語 |
英語 ドイツ語 |
興行収入 |
1,225,424ドル(北米) 4,400,000ドル(世界) |
光と影を効果的に用いた映像美、戦争の影を背負った人々の姿を巧みに描いたプロットで高く評価されている。また、アントン・カラスのツィター演奏によるテーマ音楽や、ハリー・ライム役のオーソン・ウェルズの印象深い演技でも知られている。
あらすじ
舞台は第二次世界大戦後、米英仏ソによる四分割統治下にあったオーストリアの首都ウィーン。当時ウィーンの酒場で人々に親しまれたツィターのメロディ(アントン・カラスによるテーマ曲)をBGMに物語の幕が開く。
アメリカの売れない西部劇作家ホリー・マーチンスは、親友ハリー・ライムから仕事を依頼したいと誘われ、意気揚々とウィーンにやって来た。ハリーのアパートを訪ねるホリーだが、管理人はハリーが前日、自動車事故で死亡したと彼に告げる。ハリーの葬儀に出席するホリーは、そこでイギリス軍のキャロウェイ少佐と知り合う。少佐はハリーが街で最悪の密売人だと告げるが、信じられないホリーはハリーへの友情から事件の真相究明を決意する。
事件の関係者を調査すると、ハリーの恋人であった女優のアンナ・シュミットと出会う。ホリーと彼女は2人で事件の目撃者である宿の管理人に話を聞き、現場に未知の“第三の男”がいたことをつきとめる。しかし貴重な証言を残した管理人は何者かに殺害され、ホリーがその容疑者だと疑われて逃走。さらにハリーの知人であるポペスコからも追われ、キャロウェイ少佐に助けを求める。そこで初めてキャロウェイからハリーが粗悪ペニシリンを売り捌いて多数の人々を害した実態の詳細やその証拠の数々を見せられる。
友情・愛情と正義感の間で行き詰まったホリーは酒で気を紛らわせたが帰国を決意。酩酊状態のまま、別れを告げるために寄ったアンナの下宿の近くで、“第三の男”ハリーと邂逅するが、まるで幻かのごとくハリーは消え去ってしまう。ホリーはハリーを目撃したことをキャロウェイに報告。キャロウェイは疑っていたが、念のためにハリーの墓を掘り返すと、別人の遺体だったことが判明し、ハリーの生存を確信する。一方、国籍を偽っていたアンナがパスポート偽造の罪でソ連の憲兵に連行されてしまう。
ハリーのことを信じたいホリーは、彼とプラーター公園の観覧車の上で話し合うが、改めて彼の非情ぶりを悟る。その後、キャロウェイからハリー逮捕の助力を促されたホリーは、親友を売るもやむを得ずと決意し、アンナの保釈を条件に承諾。
ホリーとキャロウェイの計らいで釈放されたアンナはホリーを烈しく罵る。アンナのハリーに対する愛を知ったホリーはキャロウェイへの協力を一時断念するが、病院を視察してハリーの流した害毒を目のあたりにしてハリー狩りに参加することを再度決意し、囮となって彼をカフェに待つ。店の裏口から現れたハリーは警戒を知るや下水道に飛び込み、ここに地下の追撃戦が開始される。
キャロウェイの銃弾で重傷を負ったハリーはその後、銃を手にしたホリーに追いつめられる。銃を向けるホリーに対してハリーが頷く。下水道内に一発の銃声が響き渡る。
その後、場面は、“第三の男”であったハリー本人の埋葬に。葬儀の後、ホリーはアメリカへ帰国する飛行機の出発時刻が迫っているにもかかわらず空港へ送ってくれる少佐の車を降りて、墓地の路傍でアンナを待つ。しかし、彼女は表情をかたくしたまま一瞥もせず彼の前を歩み去って行く。
キャスト
役名 | 俳優 | 日本語吹き替え | ||
---|---|---|---|---|
日本テレビ版 | PDDVD版 | N.E.M.版 | ||
ホリー・マーチンス | ジョゼフ・コットン | 江守徹 | 咲野俊介 | 平田広明 |
アンナ・シュミット | アリダ・ヴァリ[注 1] | 松下砂稚子 | 沢海陽子 | 本田貴子 |
ハリー・ライム | オーソン・ウェルズ | 小池朝雄 | 相沢正輝 | 鈴村健一 |
キャロウェイ少佐 | トレヴァー・ハワード | 西沢利明 | 中博史 | 谷昌樹 |
カール(管理人) | パウル・ヘルビガー | 山内雅人 | 大橋佳野人 | 原田晃 |
クルツ男爵 | エルンスト・ドイッチュ | 田坂浩樹 | ||
ヴィンクル医師 | エリッヒ・ポント | |||
ポペスコ | ジークフリート・ブロイアー | 大塚智則 | 岡哲也 | |
アンナの家の女将 | ヘドウィグ・ブライブトロイ | |||
ペイン軍曹 | バーナード・リー | 和田啓 | 藤田周 | 竜門睦月 |
クラビン | ウィルフリッド・ハイド=ホワイト | 里卓哉 | ||
不明 その他 |
N/A | 藤本譲 仁内達之 |
西垣俊作 鈴木貴征 植倉大 鈴木一敦 中神亜紀 |
丸山智行 福田優生 |
- 日本テレビ版: 初回放送1971年6月15日『火曜スペシャル』20:00-21:26
- PDDVD版: マックスターなどから発売のパブリックドメインDVDに収録。
- N.E.M.版:様々な名画を現代の人気声優が吹き替える「New Era Movie」というプロジェクトによって製作されている。
※1984年3月11日、NHK-FMで放送されたラジオドラマ「チターはもう唄わない(軍司貞則の著作に基づく)」では観覧車のシーンの本編音声が短く引用され、ヴォイス・オーヴァーの形で内海賢二がハリー・ライムを吹き替えた。日本テレビの吹替版でハリーを演じた小池朝雄も、キャロル・リード役で出演している。
注釈
- ^ クレジットや当時のポスターでは「ヴァリ(VALLI)」とだけ表示されている。
- ^ この改変は、放送後の6月30日に映画職能五団体連絡協議会(日本映画監督協会、日本シナリオ作家協会、日本映画撮影監督協会、日本映画・テレビ美術監督協会、日本映画俳優協会)が抗議声明を発表する事態となった[2]。
- ^ ジェネオン・ユニバーサル・エンターテイメントより発売されたもの。キャロウェイ少佐のセリフに「行方不明だった男ださ」という誤植がある。
出典
- ^ 双葉十三郎. (1990年10月15日初版発行). 『ぼくの採点表1 1940・1950年代』. トパーズプレス.
- ^ 「[あんぐる]恐れ入った 名作映画の改悪」『読売新聞』、1971年7月5日、夕刊、9面。
- ^ 「改変された「第三の男」スポンサーに気兼ね?」『朝日新聞』、1971年7月8日、朝刊。
- ^ “Blu-ray 第三の男 4Kデジタル修復版”. 角川シネマコレクション. KADOKAWA. 2023年10月10日閲覧。
- ^ グレアム・グリーン著『第三の男』(ハヤカワepi文庫版)収録の川本三郎による解説「たそがれの維納」より、197~198頁
- ^ グレアム・グリーン著『第三の男』(ハヤカワepi文庫版)、8頁
- ^ グレアム・グリーン著『第三の男』(ハヤカワepi文庫版)収録の川本三郎による解説「たそがれの維納」より、198頁
- ^ グレアム・グリーン著『第三の男』(ハヤカワepi文庫版)、11-14頁
- ^ Charles Drazin、“Inside Information”(映画研究家チャールズ・ドラジンによる映画の紹介、クライテリオン・コレクション版DVD収録)
- ^ a b グレアム・グリーン著『第三の男』(ハヤカワepi文庫版)、10頁
- ^ a b c d Charles Drazin、“Behind The Third Man”(クライテリオン・コレクション版DVD付録の小冊子より)
- ^ a b Roger Ebert、“Great Movies – The Third Man”、1996年12月8日。(参照:2009年5月15日)
- ^ “映画鑑賞記録サービス KINENOTE|キネマ旬報社”. www.kinenote.com. 2023年5月27日閲覧。
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