竹取物語 竹取物語の概要

竹取物語

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/11/25 01:56 UTC 版)

かぐや姫を籠に入れて育てる翁夫妻。17世紀末(江戸時代)メトロポリタン美術館蔵。

概要

主人公・かぐや姫と竹取の翁 (満谷国四郎筆、笠間日動美術館蔵)

竹取の翁(たけとりのおきな)によって光り輝くの中から見出され、翁夫婦に育てられた少女かぐや姫を巡る奇譚。

源氏物語』に「物語の出で来はじめの祖(おや)なる竹取の翁[2]とあるように、日本最古の物語といわれる。9世紀後半から10世紀前半頃に成立したとされ、かなによって書かれた最初期の物語の一つである。現代では『かぐや姫』というタイトルで、絵本・アニメ・映画など様々な形において受容されている。

題名

『竹取物語』は通称であり、平安時代から室町時代には次のように呼ばれていた[3]

古写本の外題では『竹取物語』の他にも、『竹とり』(久曾神甲本・流布本第1類)、『竹物語』(高松宮本・同第3類)、『竹取翁物語』(古活字十行甲本・同第3類 など)と呼ばれている[4]

成立

伝・後光厳天皇筆古筆切の1つ。「火鼠の皮衣」の一節が記されている。京都府毘沙門堂旧蔵(現在所在不明)

成立年は明らかになっていない。原本は現存せず、写本後光厳天皇の筆とされる室町時代初期(南北朝時代14世紀)の古筆切数葉が最古といわれ、完本では室町時代末期の元亀元年(1570年)の奥付を有する「里村紹巴本」、無奥書だが永禄 - 天正頃とされる[注釈 1][5]吉田本」が発見されているものの、いずれも室町時代を遡るものではない。

しかし、10世紀の『大和物語』、『うつほ物語』や11世紀の『栄花物語』、『狭衣物語』、また、『源氏物語』に「絵は巨勢相覧、手は紀貫之書けり」と言及されていることから、遅くとも10世紀半ばまでに成立したと考えられている。

またこの物語に関連あるものとしては、『丹後国風土記』、『万葉集[6]、『今昔物語集[7]などの文献、謡曲羽衣』、昔話『天人女房』、『絵姿女房』、『竹伐爺』、『鳥呑み爺』などが挙げられる。当時の竹取説話群を元に、とある人物が創作したものと考えられる。

作者

作者についても不詳。

作者像として、当時の推定識字率から庶民は考えづらく、上流階級に属しており、貴族の情報が入手できる平安京近隣に居住し、物語に反体制的要素が認められることから、当時権力を握っていた藤原氏の係累ではないと考えられている。

さらに、漢学漢語漢文訓読体の使用)・仏教民間伝承に精通し、仮名文字を操ることができ、和歌の才能もある知識人で[8]、貴重であった紙の入手も可能な人物で、性別は男性だったのではないかと推定されている。また、和歌の技法(掛詞縁語の多用、人名の使用)は六歌仙時代の傾向に近いことが指摘されている[9]

以上をふまえ、源順源融遍昭紀貫之紀長谷雄菅原道真[注釈 2]など数多くの説が提唱されている。


注釈

  1. ^ 中田剛直阪倉篤義慶長頃の書写とするが、吉田によれば、「題簽朱地短冊に模様のある料紙が、三条西実隆公条などがその書写本に用いているものと同じであり、本文の書風から推しても、慶長まで下るものとは思われない」という。
  2. ^ 文章博士などを歴任し、仁和2年(886年)から仁和6年(890年)まで、竹取の翁の名・讃岐造と同じ讃岐国の讃岐守に遷任したことがあり、自身の出生も余呉羽衣伝説で語られる。
  3. ^ 久曾神昇や田中登は、後光厳院筆断簡を古本とも流布本とも異なる別系統とする。
  4. ^ 伊賀守上原元純の書写本を、中院通勝安土桃山時代の1592年(天正20年)に一度校正、1596年(文禄5年}に「松下民部少甫述久本」を以て重校した旨の奥付を有する。紹巴本の発見までは最古の写本と言われていた。国文学者武藤元信の旧蔵で、現在は天理大学附属天理図書館所蔵、重要文化財
  5. ^ 後述するように古本書入を有する。現在は國學院大學図書館蔵。
  6. ^ 高山市図書館ではなく高山市郷土館の方である。
  7. ^ 現在は國學院大學図書館蔵。
  8. ^ 武藤本の校正者でもある中院通勝慶長3年(1598年)以前に書写した本の転写本であるが、427項(誤写等を除いても205項)もの独自異文を有し、これは古本系と流布本系との異文数546項に匹敵する。中田は、異文に本文を簡略化する傾向が極めて多い点から、「絵巻の絵詞本文ではなかつたらうか」と指摘している。
  9. ^ アイルランド共和国のチェスター・ビーティ図書館蔵。江戸初期、1630年代の写と見られ、狩野長信の近辺で制作されたのではないかとする指摘がある。
  10. ^ 西洞院時慶の筆と見られており、中田は武藤本に校合されている「松下本」(時慶と知己であり、今川氏真の師であったといわれる上賀茂神社神官の松下述久蔵本か)と同一とする。
  11. ^ 巻第309・物語部3に収載。松平織部正乗尹蔵本に「古写本三本」(うち二本は滋岡本、内閣文庫本か)「活版本」「流布印本」(正保3年刊本)を校合した旨の識語を有する。
  12. ^ 紹巴による1570年(元亀元年}の奥書を持ち、年代が明らかな写本としては現在最古。中田剛直『竹取物語の研究 校異篇・解説篇』塙書房、1965年には未収載だが、p.211を始めとする第3類第2種の分類基準に従う。
  13. ^ 現在国立歴史民俗博物館蔵。中田剛直「竹取物語の研究 校異篇・解説篇」塙書房、1965年には未収載だが、p.211を始めとする第3類第2種の分類基準に従う。
  14. ^ 大阪天満宮の神職家。
  15. ^ 行数と刊行時期による分類で、十行甲本・乙本・(丙本)、十一行甲本・乙本・丙本・丁本がある。このうち十行甲本・十一行甲本は慶長の頃のもので、最も古いとされる。
  16. ^ 年代に関しては諸説あるが、小松茂美鎌倉時代末期(14世紀初期)、久曾神昇や高田信敬は室町時代初期以前、片桐洋一は室町時代中期から後期としている。
  17. ^ 書写者名と見られるが未詳。
  18. ^ 流布本系第1類第1種の平瀬本への書入本文のこと。
  19. ^ 「◯伝阿仏筆竹取物語切 竹取物語は、新井信之氏の紹介された伝後光厳院筆小六半切以外全く知られてゐなかつたが、京都のG書店で伝阿仏筆と云ふ、下絵のある六半切を最近売つたと聞いた。好事家に渡つたらしく、紹介される見込は少ないが注目すべきものと思はれ、公開が望まれる」と述べられているのみで、本文などの情報は一切不明である。
  20. ^ 武藤本(流1-1)・高山図書館本(流1-1)・武田本(流1-2)・島原本(流2)・蓬左文庫本(流3-1)・吉田本(流3-1)等に「さかき」。山岸本(流1-3)・群書類従本(流3-2)に「さぬき」。他流布本、並び古本に「さるき」。
  21. ^ この物語には「三」という数字が頻出する。
  22. ^ 室戸斎部とも。斎部氏朝廷の祭祀を司る氏族。
  23. ^ なよ竹は「しなやかな竹」という意味で、ちらちらと揺れて光ることを「かがよう」という。
  24. ^ 「夜這い」の語は本来結婚を求める「呼ぶ」に由来する言葉とされている。ここでは「夜に這い回る」を語源とする新解釈を創作している。
  25. ^ 神仏が人の形をとって顕現した姿、または化物の類。
  26. ^ 「鉢を捨てる」と「恥を捨てる」。
  27. ^ 「玉(玉の枝)が悪い」と「魂(性質)が悪い」。
  28. ^ 「阿倍なし」と「敢へなし」("敢えない"、張り合いがない)。
  29. ^ 「あな食べ難」(ああ食べにくい)と「あな堪へ難」(ああ耐え難い)。
  30. ^ 「貝無し」と「甲斐なし」。
  31. ^ 『年を経て浪たちよらぬ住吉のまつかひなしときくはまことか』。"幾年も経って浪が打ち寄せなくなった住吉の浜の「松」のように待っていたのに「貝がない」なら、「待つ」「甲斐がない」と聞くけれど、本当なの?"
  32. ^ 「かひはなく有りける物をわびはててしぬる命をすくひやはせぬ」。"かい(貝・甲斐)は無かったけれど、思い悩んで死んでいく命を、かい(匙)で掬うように、救ってはくれないのか"。
  33. ^ 人間界での長い年月は天人にとって僅かな時間に当たる。
  34. ^ 周囲を壁で塗り籠めた部屋。
  35. ^ 未熟者。天界と人界では時の感覚が異なり、翁といえど「幼き人」。あるいは単に「幼稚」(=愚かな)の意味か。
  36. ^ 最後だと、天の羽衣を着るまさにその時に、ふとあなたをしみじみと思い出してしまうものね。
  37. ^ 月世界への思いを表現する仕事に相応しい氏。新井本(古2)「いはかど」。その他流布本「いはかさ」。
  38. ^ 富士の山(士に富む山)」と「不死の山」。これは適当でないという説もある。
  39. ^ 「筒木」は筒状の木と解すれば竹、また「星」の古語「つづ」との関わりもあり、同音の「綴喜(山城国綴喜郡)」には月読命を祀る樺井月神社と月読神社を祀る式内社が鎮座する。
  40. ^ 中川浩文は『竹取翁物語解』を主な典拠にしていると推測している。
  41. ^ 長谷川武次郎のちりめん本の英訳。
  42. ^ 著書『日本文学史』に収載。
  43. ^ 文学者
  44. ^ 慶應義塾大学名誉教授で東洋史専門
  45. ^ 法政大学教授で古代文学専門
  46. ^ 徳島文理大学教授で国文学専門
  47. ^ イギリスのロンドン市のチェスター楽譜出版社の作曲コンクールに応募し入賞。これは日本人初の国際的作曲コンクール入賞作品で報道もされた(現在その楽譜は失われたとされる)。

出典

  1. ^ 第137回常設展示 「竹取」物語 (PDF)”. 国立国会図書館 本の万華鏡. 2022年9月7日閲覧。
  2. ^ 源氏物語 第十七帖 絵合
  3. ^ 南波浩「日本古典全書 『竹取物語・伊勢物語』」朝日新聞社、1960年 p. 5
  4. ^ 『竹取物語本文集成』王朝物語史研究会 編 勉誠出版 2008年9月、p. ⅴ
  5. ^ 吉田幸一「竹取物語 古写本三種」古典文庫、1973年 p. 254
  6. ^ 巻16第3791歌 - 第3793歌。
  7. ^ 巻31『本朝付雑事』第33「竹取翁、見付けし女の児を養へる語」
  8. ^ もはや推理小説「かぐや姫」の壮大なカラクリ | 日本人が知らない古典の読み方 | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準
  9. ^ 上原作和安藤徹・外山敦子編『かぐや姫と絵巻の世界 一冊で読む竹取物語 訳注付』武蔵野書院 p. 174
  10. ^ 『国語教育』15巻第10号、1930年5月
  11. ^ 新井信之『竹取物語の研究 本文篇』国書出版、1944年 p.2
  12. ^ 南波浩「日本古典全書 『竹取物語・伊勢物語』」朝日新聞社、1960年 pp. 36-40
  13. ^ 中田剛直『竹取物語の研究 校異篇・解説篇』塙書房、1965年 pp.170-171
  14. ^ 曽根誠一「『竹取物語』奈良絵本・絵巻の本文考 : 正保三年刊整版本の独自異文を視点とした粗描」『花園大学文学部研究紀要』45号、 1-17、2013年 p.8
  15. ^ 中田剛直『竹取物語の研究 校異篇・解説篇』塙書房、1965年 p.258
  16. ^ 小松茂美『古筆学大成』第23巻「物語・物語注釈」講談社、1992年6月 p.363、高田信敬「竹取物語断簡新出二葉 ―(付)延べ書き「富士山記」―」『国文学研究資料館紀要』第10号、1984年3月 pp.13-14
  17. ^ 古筆学研究所編『古筆学のあゆみ』八木書店、1995年 pp.119-120
  18. ^ 池田和臣、小田寛貴「新 古筆資料の年代測定Ⅲ―加速器質量分析法による炭素14年代測定―」『文学部紀要 言語・文学・文化』, 127, 中央大学文学部, 2021年3月 pp.43-45, http://id.nii.ac.jp/1648/00013268/
  19. ^ 吉川理吉『古本竹取物語校註解説』龍谷大学国文学会出版部、1954年 p.4
  20. ^ 中川浩文『竹取物語の国語学的研究 中川浩文論文集 上巻』1985年 思文閣出版 p.8
  21. ^ 中田武司「竹取物語 解説」p.12(『竹取物語 田中大秀旧蔵』笠間書院、1982年)
  22. ^ 中田剛直「竹取物語の研究 校異篇・解説篇」塙書房、1965年 p.140
  23. ^ 中川浩文『竹取物語の国語学的研究 中川浩文論文集 上巻』 思文閣出版、1985年 p.296
  24. ^ 中田剛直「竹取物語の研究 校異篇・解説篇」塙書房、1965年 p.135
  25. ^ 藤井隆「物語系古筆切について(補遺篇)」『名古屋大学国語国文学』第14号、1964年4月 p.10
  26. ^ 南波浩「日本古典全書 『竹取物語・伊勢物語』」朝日新聞社、1960年 p. 40
  27. ^ 片桐洋一「校訂付記」『新編日本古典文学全集 12 竹取物語、伊勢物語、大和物語、平中物語』小学館、1994年12月 p.78
  28. ^ 『竹取物語』の「不審本文」ー文学史料の「編纂」: 保立道久の研究雑記、2010年8月
  29. ^ 中田剛直『竹取物語の研究 校異篇・解説篇』塙書房、1965年 p.282
  30. ^ 絶望の言説-『竹取翁物語』の物語る世界と物語世界、1998年9月
  31. ^ 南波浩「日本古典全書 『竹取物語・伊勢物語』」朝日新聞社、1960年 p. 141
  32. ^ 上原作和安藤徹・外山敦子編『かぐや姫と絵巻の世界 一冊で読む竹取物語 訳注付』武蔵野書院 p. 105
  33. ^ 南波浩「日本古典全書 『竹取物語・伊勢物語』」朝日新聞社、1960年 p. 17
  34. ^ [1]孫崎紀子「『竹取物語』のかぐや姫はイラン人だった」,現代ビジネス、近藤大介「北京ランダム・ウォーカー 革命から33周年 過去10年で最高の危険水域に達しているイランの危機」2012年2月13日
  35. ^ 関裕二著『古代史謎解き紀行 I ヤマト編』ポプラ社、2006年
  36. ^ 大高康正「富士山縁起と「浅間御本地」」『中世の寺社縁起と参詣』竹林舎、2013年
  37. ^ 植松章八「杉田安養寺本『冨土山大縁紀』翻刻・解題」『富士山文化研究』11号、2013年
  38. ^ a b c 第137回常設展示 「竹取」物語 IV 外国語訳国立国会図書館、平成17年5月19日
  39. ^ a b c 川村ハツエ「F.V.Dickinsと『竹取物語』」 『英学史研究』 1994巻 26号、1993年 p.1-16, doi:10.5024/jeigakushi.1994.1
  40. ^ 中川浩文『竹取物語の国語学的研究 中川浩文論文集 上巻』1985年、 思文閣出版 p.325
  41. ^ 松居竜五、月川和雄、中瀬喜陽、桐本東太編『南方熊楠を知る事典』講談社(講談社現代新書)、1993年4月
  42. ^ 幸田露伴「月上女(日本の古き文学の一つに就きて)」『心の花』九巻五号、竹柏会、1911年5月
  43. ^ 田海燕編『金玉鳳凰』少年児童出版社、中華人民共和国・上海、1961年 に収載/邦訳:田海燕編・君島久子訳『チベットのものいう鳥』岩波書店、1977年
  44. ^ 伊藤清司『かぐや姫の誕生 ― 古代説話の起源』講談社、1973年
  45. ^ 益田勝実「「斑竹姑娘」の性格−『竹取物語』とのかかわりで」『法政大学文学部紀要』33号、1987年
  46. ^ 奥津春雄『竹取物語の研究 - 達成と変容』翰林書房、2000年
  47. ^ 宋成徳『竹取物語』、「竹公主」から「斑竹姑娘」へhttps://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/bitstream/2433/137331/1/kkr00012_072.pdf






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