竹取物語 由縁の地

竹取物語

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/24 01:51 UTC 版)

由縁の地

日本各地に竹取物語由縁の地と名乗る地域があり、竹取物語(かぐや姫)をテーマにしたまちづくりを行っている。また以下の7市町(市町村コード順)では「かぐや姫サミット」という地域間交流が定期的に開催されてはいるものの、行政間での繋がりの交流であり、直接「竹取物語の舞台」だということにこだわった「サミット」を行っているのではない。これら地域は、上記に記されたような地名起源説などは無く、竹林の関係や天女伝説地、地名に「竹原」とある等の関係からであって物語発祥にこだわった団体ではない。

木花咲耶姫を主祭神と祀る浅間神社の総本社・富士山本宮浅間大社
「富士山縁起」という富士山の伝説・霊験等を記した史料が静岡県富士宮市や富士市といった富士山南麓の各寺社に伝来しており、かぐや姫は最後に月に帰るのではなく富士山に登って消えていくという構成となっている[35](「富士山とかぐや姫」を参照)。諸本により「かぐや姫」の表記は異なり「赫夜姫」「赫屋姫」「赫耶姫」等が確認され[36]、富士市は山麓にある竹林を由来としている。祭神の木花咲耶姫がかぐや姫のモデルだとする説もあるが、祭神を木花咲耶姫に擬するのは近世からともされる。
竹の子の里であり孟宗竹が多い。孟宗竹は江戸時代からのものである。
竹取の翁は「讃岐の造(さぬきのみやつこ)」と呼ばれていることから、竹取物語の舞台は大和国広瀬郡散吉(さぬき)郷(現奈良県北葛城郡広陵町三吉)と考えられている。また、かぐや姫に求婚をした5人の貴族が住んでいたと想定される藤原京から十分通える距離であり、「竹取物語ゆかりの神社」と称する讃岐神社も鎮座している。

かぐや姫サミット以外の市町村

日本最古の羽衣伝説の舞台となった余呉湖や、背後の山の字名が「香具山」と呼ばれる伊香具神社(いかぐ)、石作の皇子を連想させる石作神社、月を連想させる高月町といった、竹取物語に登場する事物に関係するような神社や地名が多数点在する。また、かぐや姫に求婚をした5人の貴族が住んでいたと想定される近江大津京から、馬を乗り継ぐ等すれば通えなくはない距離である。
古代歴史の舞台である飛鳥や藤原京の南に位置する高取山は、中世には高取城がそびえたち、現在も立派な石垣が残っている。この高取山が、竹取の翁が住んでいた場所だという説がある。鎌倉時代に僧・仙覚が、江戸時代にも国学者・契沖が、「竹取」は「タカトリ」と読み、高取山が竹取説話の舞台であるという説を唱えている。

注釈

  1. ^ 中田剛直阪倉篤義慶長頃の書写とするが、吉田によれば、「題簽朱地短冊に模様のある料紙が、三条西実隆公条などがその書写本に用いているものと同じであり、本文の書風から推しても、慶長まで下るものとは思われない」という。
  2. ^ 文章博士などを歴任し、仁和2年(886年)から仁和6年(890年)まで、竹取の翁の名・讃岐造と同じ讃岐国の讃岐守に遷任したことがあり、自身の出生も余呉羽衣伝説で語られる。
  3. ^ 久曾神昇や田中登は、後光厳院筆断簡を古本とも流布本とも異なる別系統とする。
  4. ^ 伊賀守上原元純の書写本を、中院通勝安土桃山時代の1592年(天正20年)に一度校正、1596年(文禄5年}に「松下民部少甫述久本」を以て重校した旨の奥付を有する。紹巴本の発見までは最古の写本と言われていた。国文学者武藤元信の旧蔵で、現在は天理大学附属天理図書館所蔵、重要文化財
  5. ^ 後述するように古本書入を有する。現在は國學院大學図書館蔵。
  6. ^ 高山市図書館ではなく高山市郷土館の方である。
  7. ^ 現在は國學院大學図書館蔵。
  8. ^ 武藤本の校正者でもある中院通勝慶長3年(1598年)以前に書写した本の転写本であるが、427項(誤写等を除いても205項)もの独自異文を有し、これは古本系と流布本系との異文数546項に匹敵する。中田は、異文に本文を簡略化する傾向が極めて多い点から、「絵巻の絵詞本文ではなかつたらうか」と指摘している(中田剛直 1965, p. 170-171)
  9. ^ アイルランド共和国のチェスター・ビーティ図書館蔵。江戸初期、1630年代の写と見られ、狩野長信の近辺で制作されたのではないかとする指摘がある。
  10. ^ 西洞院時慶の筆と見られており、中田は武藤本に校合されている「松下本」(時慶と知己であり、今川氏真の師であったといわれる上賀茂神社神官の松下述久蔵本か)と同一とする。
  11. ^ 巻第309・物語部3に収載。松平織部正乗尹蔵本に「古写本三本」(うち二本は滋岡本、内閣文庫本か)「活版本」「流布印本」(正保3年刊本)を校合した旨の識語を有する。
  12. ^ 紹巴による1570年(元亀元年}の奥書を持ち、年代が明らかな写本としては現在最古。(中田剛直 1965)には未収載だが、p.211を始めとする第3類第2種の分類基準に従う。
  13. ^ 現在国立歴史民俗博物館蔵。(中田剛直 1965)には未収載だが、p.211を始めとする第3類第2種の分類基準に従う。
  14. ^ 大阪天満宮の神職家。
  15. ^ 行数と刊行時期による分類で、十行甲本・乙本・(丙本)、十一行甲本・乙本・丙本・丁本がある。このうち十行甲本・十一行甲本は慶長の頃のもので、最も古いとされる。
  16. ^ 年代に関しては諸説あるが、小松茂美鎌倉時代末期(14世紀初期)、久曾神昇や高田信敬は室町時代初期以前、片桐洋一は室町時代中期から後期としている。
  17. ^ 書写者名と見られるが未詳。
  18. ^ 流布本系第1類第1種の平瀬本への書入本文のこと。
  19. ^ 「◯伝阿仏筆竹取物語切 竹取物語は、新井信之氏の紹介された伝後光厳院筆小六半切以外全く知られてゐなかつたが、京都のG書店で伝阿仏筆と云ふ、下絵のある六半切を最近売つたと聞いた。好事家に渡つたらしく、紹介される見込は少ないが注目すべきものと思はれ、公開が望まれる」と述べられているのみで、本文などの情報は一切不明である。
  20. ^ 武藤本(流1-1)・高山図書館本(流1-1)・武田本(流1-2)・島原本(流2)・蓬左文庫本(流3-1)・吉田本(流3-1)等に「さかき」。山岸本(流1-3)・群書類従本(流3-2)に「さぬき」。他流布本、並び古本に「さるき」。
  21. ^ この物語には「三」という数字が頻出する。
  22. ^ 室戸斎部とも。斎部氏朝廷の祭祀を司る氏族。
  23. ^ なよ竹は「しなやかな竹」という意味で、ちらちらと揺れて光ることを「かがよう」という。
  24. ^ 「夜這い」の語は本来結婚を求める「呼ぶ」に由来する言葉とされている。ここでは「夜に這い回る」を語源とする新解釈を創作している。
  25. ^ 神仏が人の形をとって顕現した姿、または化物の類。
  26. ^ 「鉢を捨てる」と「恥を捨てる」を掛けている。
  27. ^ 「玉(玉の枝)が悪い」と「魂(性質)が悪い」を掛けている。
  28. ^ 「阿倍なし」と「敢へなし」("敢えない"、張り合いがない)を掛けている。
  29. ^ 「あな食べ難」(ああ食べにくい)と「あな堪へ難」(ああ耐え難い)を掛けている。
  30. ^ 「貝無し」と「甲斐なし」を掛けている。
  31. ^ 『年を経て浪たちよらぬ住吉のまつかひなしときくはまことか』。"幾年も経って浪が打ち寄せなくなった住吉の浜の「松」のように待っていたのに「貝がない」なら、「待つ」「甲斐がない」と聞くけれど、本当なの?"
  32. ^ 「かひはなく有りける物をわびはててしぬる命をすくひやはせぬ」。"かい(貝・甲斐)は無かったけれど、思い悩んで死んでいく命を、かい(匙)で掬うように、救ってはくれないのか"。
  33. ^ 人間界での長い年月は天人にとって僅かな時間に当たる。
  34. ^ 周囲を壁で塗り籠めた部屋。平安期の貴族の邸宅建築・寝殿造の中では唯一の閉鎖的な空間で防犯性に優れるため、寝室や貴重品置き場に使用された
  35. ^ 未熟者。天界と人界では時の感覚が異なり、翁といえど「幼き人」。あるいは単に「幼稚」(=愚かな)の意味か。
  36. ^ 最後だと、天の羽衣を着るまさにその時に、ふとあなたをしみじみと思い出してしまうものね。
  37. ^ 月世界への思いを表現する仕事に相応しい氏。新井本(古2)「いはかど」。その他流布本「いはかさ」。
  38. ^ 富士の山(士に富む山)」と「不死の山」。これは適当でないという説もある。
  39. ^ 「筒木」は筒状の木と解すれば竹、また「星」の古語「つづ」との関わりもあり、同音の「綴喜(山城国綴喜郡)」には月読命を祀る樺井月神社と月読神社を祀る式内社が鎮座する。
  40. ^ 中川浩文は『竹取翁物語解』を主な典拠にしていると推測している。
  41. ^ 長谷川武次郎のちりめん本の英訳。
  42. ^ 著書『日本文学史』に収載。
  43. ^ イギリスのロンドン市のチェスター楽譜出版社の作曲コンクールに応募し入賞。これは日本人初の国際的作曲コンクール入賞作品で報道もされた(現在その楽譜は失われたとされる)。

出典

  1. ^ 源氏物語 第十七帖 絵合
  2. ^ 南波浩「日本古典全書 『竹取物語・伊勢物語』」朝日新聞社、1960年 p.5
  3. ^ 『竹取物語本文集成』王朝物語史研究会 編 勉誠出版 2008年9月、p. ⅴ
  4. ^ 『竹取物語 : 古写本三種』, p. 254.
  5. ^ 巻16第3791歌 - 第3793歌。
  6. ^ 巻31『本朝付雑事』第33「竹取翁、見付けし女の児を養へる語」
  7. ^ もはや推理小説「かぐや姫」の壮大なカラクリ | 日本人が知らない古典の読み方 | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準
  8. ^ 上原作和安藤徹・外山敦子編『かぐや姫と絵巻の世界 一冊で読む竹取物語 訳注付』武蔵野書院 p. 174
  9. ^ 『国語教育』15巻第10号、1930年5月
  10. ^ 新井信之『竹取物語の研究 本文篇』国書出版、1944年 p.2
  11. ^ 南波浩「日本古典全書 『竹取物語・伊勢物語』」朝日新聞社、1960年 pp. 36-40
  12. ^ 曽根誠一「『竹取物語』奈良絵本・絵巻の本文考 : 正保三年刊整版本の独自異文を視点とした粗描」『花園大学文学部研究紀要』45号、2013年、p.8
  13. ^ 中田剛直 1965, p. 258.
  14. ^ 小松茂美『古筆学大成』第23巻「物語・物語注釈」講談社、1992年6月 p.363、高田信敬「竹取物語断簡新出二葉 ―(付)延べ書き「富士山記」―」『国文学研究資料館紀要』第10号、1984年3月 pp.13-14
  15. ^ 古筆学研究所編『古筆学のあゆみ』八木書店、1995年 pp.119-120
  16. ^ 池田和臣、小田寛貴「新 古筆資料の年代測定Ⅲ―加速器質量分析法による炭素14年代測定―」『文学部紀要 言語・文学・文化』, 127, 中央大学文学部, 2021年3月 pp.43-45, http://id.nii.ac.jp/1648/00013268/
  17. ^ 吉川理吉『古本竹取物語校註解説』龍谷大学国文学会出版部、1954年 p.4
  18. ^ 中川浩文 1985, p. 8.
  19. ^ (中田剛直 1965, p. 12)(『竹取物語 田中大秀旧蔵』笠間書院、1982年)
  20. ^ 中田剛直 1965, p. 140.
  21. ^ 中川浩文 1985, p. 296.
  22. ^ 中田剛直 1965, p. 135.
  23. ^ 藤井隆「物語系古筆切について(補遺篇)」『名古屋大学国語国文学』第14号、1964年4月 p.10
  24. ^ 南波浩「日本古典全書 『竹取物語・伊勢物語』」朝日新聞社、1960年 p. 40
  25. ^ 片桐洋一「校訂付記」『新編日本古典文学全集 12 竹取物語、伊勢物語、大和物語、平中物語』小学館、1994年12月 p.78
  26. ^ 『竹取物語』の「不審本文」ー文学史料の「編纂」: 保立道久の研究雑記、2010年8月
  27. ^ 中田剛直 1965, p. 282.
  28. ^ 絶望の言説-『竹取翁物語』の物語る世界と物語世界、1998年9月
  29. ^ 南波浩「日本古典全書 『竹取物語・伊勢物語』」朝日新聞社、1960年 p. 141
  30. ^ 上原作和安藤徹・外山敦子編『かぐや姫と絵巻の世界 一冊で読む竹取物語 訳注付』武蔵野書院 p. 105
  31. ^ 南波浩「日本古典全書 『竹取物語・伊勢物語』」朝日新聞社、1960年 p. 17
  32. ^ [1]孫崎紀子「『竹取物語』のかぐや姫はイラン人だった」,現代ビジネス、近藤大介「北京ランダム・ウォーカー 革命から33周年 過去10年で最高の危険水域に達しているイランの危機」2012年2月13日
  33. ^ 関裕二著『古代史謎解き紀行 I ヤマト編』ポプラ社、2006年
  34. ^ 見坊行徳・三省堂編修所 編著『三省堂国語辞典から 消えたことば辞典』三省堂、2023年
  35. ^ 大高康正「富士山縁起と「浅間御本地」」『中世の寺社縁起と参詣』竹林舎、2013年
  36. ^ 植松章八「杉田安養寺本『冨土山大縁紀』翻刻・解題」『富士山文化研究』11号、2013年
  37. ^ a b c 第137回常設展示 「竹取」物語 IV 外国語訳国立国会図書館、平成17年5月19日
  38. ^ a b c 川村ハツエ「F.V.Dickinsと『竹取物語』」 『英学史研究』 1994巻 26号、1993年 p.1-16, doi:10.5024/jeigakushi.1994.1
  39. ^ 中川浩文 1985, p. 325.
  40. ^ 松居竜五、月川和雄、中瀬喜陽、桐本東太編『南方熊楠を知る事典』講談社(講談社現代新書)、1993年4月
  41. ^ 幸田露伴「月上女(日本の古き文学の一つに就きて)」『心の花』九巻五号、竹柏会、1911年5月
  42. ^ 田海燕編『金玉鳳凰』少年児童出版社、中華人民共和国・上海、1961年 に収載/邦訳:田海燕編・君島久子訳『チベットのものいう鳥』岩波書店、1977年
  43. ^ 伊藤清司『かぐや姫の誕生 ― 古代説話の起源』講談社、1973年
  44. ^ 益田勝実「「斑竹姑娘」の性格−『竹取物語』とのかかわりで」『法政大学文学部紀要』33号、1987年
  45. ^ 奥津春雄『竹取物語の研究 - 達成と変容』翰林書房、2000年
  46. ^ 宋成徳「『竹取物語』、「竹公主」から「斑竹姑娘」へ」『京都大学國文學論叢』第12巻、京都大学大学院文学研究科国語学国文学研究室、2004年9月、72-77頁、CRID 1390290699816136064doi:10.14989/137331hdl:2433/137331ISSN 1345-1723 
  47. ^ [李连荣 高木立子]藏族民间故事《斑竹姑娘》的生成及其与《竹取物语》关系谫论






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