種の起源
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/23 18:32 UTC 版)
書誌情報
本書の完全な題名は『自然選択という手段、または生存闘争の中で好ましいとされる種が保存される事による種の起原について』[6]"On the Origin of Species by Means of Natural Selection, or the Preservation of Favoured Races in the Struggle for Life"(右上図)である。なおここで races とは種族の意味である。
改版は、第2版(1860年1月7日)以降、13年間に渡り加筆・修正を加えて、1872年の第6版まで継続された。特に、第6版では、「自然選択説にむけられた種々の異論」の章を新たに追加し、それまでに寄せられた異論について回答を述べている(挿入場所は、第5版の第7章「本能」の前。したがって、旧7章以降の章は、第6版では1つずつ番号が繰り下がる)。また、第6版では、タイトルの先頭の "On" が取り除かれた。なお、第6版についても修正が続けられ、ダーウィンによる最終的な編集は1876年であったという。版を重ねるにつれて批判に応じて自然選択以外の要因も認めるようになっていった。
自然選択説につながる記録や考察は、ビーグル号の航海中(1831年-1836年)およびその直後から続けられていた。本書につながる直接的な源流は、航海から6年後の1842年6月にノート35枚に纏められた「スケッチ」(小論文のこと)、および1844年6-7月に231ページに纏めた「エッセー」であった[7]。これらは、ダーウィン自身で保管しており、執筆当時は公表されていなかった。1856年から、ダーウィンは『種の起源』に関する本の執筆を始めたが、1858年にウォレスからの手紙によって、その本の執筆を中断することになった。その中断された著作の要約版(抄本・アブストラクト)として著されたものが本書『種の起源』である。
日本での翻訳刊行
最初は1896年(明治29年)に、立花銑三郎により『生物始源』という題で翻訳された[8]。1905年(明治38年)に、東京開成館が『種之起原』と題して出版[9]。1915年(大正4年)に大杉栄による翻訳本『種の起原』も出された[10]。
今日最も入手が容易な翻訳書は、岩波文庫版『種の起原』(上・下、八杉龍一訳)である[1]。これは原書第一版を基本とし、後の改訂が脚注として補完されている。2009年(平成21年)には、原書初版の翻訳『種の起源』(上・下、渡辺政隆訳)が、光文社古典新訳文庫で上梓された[2]。
翻訳書一覧
- チャーレス・ダーウィン『生物始源 一名種源論』立花銑三郎 訳、経済雑誌社、1896年3月22日。NDLJP:994042。
- チャーレス・ダーウイン『種之起原』東京開成館 訳、東京開成館、1905年9月13日。NDLJP:832148。
- ダーウイン 著、文献書院 訳 編『種の起源』文献書院〈世界名著梗概叢書 第10編〉、1922年12月20日。NDLJP:972196。
- ダーウィン『種の起原』松平道夫 訳、太陽堂、1924年10月20日。NDLJP:982298。
- チヤールズ・ロバアト・ダーウィン『種の起原』内山賢次 訳、春秋社〈世界大思想全集 第27巻〉、1927年。
- ダーウィン『種の起原』三宅驥一 訳、潮文閣〈万有文庫 第3巻〉、1928年。
- チャールズ・ダーウィン『種の起源』 上巻、小泉丹 訳、岩波書店〈岩波文庫 568-570〉、1929年。
- チャールズ・ダーウィン『種の起原 附・解説』 中巻、小泉丹 訳、岩波書店〈岩波文庫 571-572〉、1938年。
- チャールズ・ダーウィン『種の起原』 上巻、小泉丹 訳・解説(改訂版)、岩波書店〈岩波文庫 568-570〉、1939年。
- ダーウィン『種の起原』 上、八杉龍一 訳、岩波書店〈岩波文庫〉、1963年。
- ダーウィン『種の起原』 中、八杉龍一 訳、岩波書店〈岩波文庫〉、1968年。
- ダーウィン『種の起原』 下、八杉龍一 訳、岩波書店〈岩波文庫〉、1971年。
- ダーウィン『種の起原』 上、八杉龍一 訳(改版)、岩波書店〈岩波文庫〉、1990年2月16日。ISBN 4-00-339124-1 。
- ダーウィン『種の起原』 下、八杉龍一 訳(改版)、岩波書店〈岩波文庫〉、1990年2月16日。ISBN 4-00-339125-X 。
- ダーウィン『種の起原』 第1巻、第2巻、内山賢次 訳、春秋社〈春秋文庫 第3部 第36、37〉、1933年。
- ダーウィン『種の起原』 上巻、下巻、大杉栄 訳、新潮社〈新潮文庫 第97、98編〉、1934年。
- ダーウィン『大杉栄全集 第8巻 種の起原』大杉栄 訳(限定版)、世界文庫〈近代文芸資料複刻叢書 第5集〉、1964年。 - 注記:大正14-15年刊の複刻版。
- ラマルク、ダーウィン『ラマルク動物哲学・ダーウィン種の起原』小泉丹 訳、岩波書店〈大思想文庫23〉、1935年12月5日。NDLJP:1771638。
- チャールス・ダーウヰン『種の起源 全訳』松平道夫 訳、太陽堂書店、1939年。
- 『種の起原』内山賢次・石田周三 訳、白揚社〈ダーウィン全集 第2巻〉、1939年。
- ダーウィン『自然淘汰による種の起原』 上、内山賢次・石田周三共訳、改造社〈改造選書〉、1948年。
- チャールス・ダーウヰン『種の起源』 上巻、堀伸夫 訳、クラルテ社、1948年。
- ダーウィン『種の起原』 下巻、堀伸夫 訳、クラルテ社、1948年。
- C・ダーウィン『種の起原』堀伸夫 訳(5版)、クラルテ社、1950年。
- 『種の起原』 上巻、山内賢次・石田周三 共訳、改造社〈ダーウィン全集 第5巻〉、1950年。
- 『種の起原』 下巻、内山賢次・石田周三 共訳、改造社〈ダーウィン全集 第5巻〉、1950年。
- ダーウィン『種の起源』 上、内山賢次・石田周三 共訳、創元社〈創元文庫 D 第14〉、1952年。
- ダーウィン『種の起原』 中、内山賢次・石田周三 共訳、創元社〈創元文庫 D 第15〉、1952年。
- ダーウィン『種の起源』 下、内山賢次・石田周三 共訳、創元社〈創元文庫 D 第16〉、1952年。
- ダーウィン『種の起源』内山賢次・石田周三 共訳、河出書房〈世界大思想全集 [第2期] 第33 (社会・宗教・科学思想篇 第33)〉、1954年。
- C.ダーウィン『種の起原』 上巻、堀伸夫 訳、槙書店、1958年。
- C.ダーウィン『種の起原』 下巻、堀伸夫 訳、槙書店、1959年。
- チャールズ・ダーウィン『種の起源』堀伸夫・堀大才 訳、槙書店、1988年6月。ISBN 4-8375-0575-9。
- ダーウィン 著、徳田御稔 編『初版「種の起源」 訳と解説』三一書房、1959年。
- Charles Darwin 著、リチャード・リーキー 編著 編『図説 種の起源』八杉貞雄・守隆夫 訳、平凡社、1982年1月。ISBN 978-4-582-53701-7。 - 原タイトル:The illustrated origin of species.
- チャールズ・ダーウィン 著、リチャード・リーキー 編『新版・図説 種の起源』吉岡晶子 訳(新版)、東京書籍、1997年11月。ISBN 4-487-76166-2。 - 原書名:The illustrated origin of species.
- チャールズ・ダーウィン『種の起原』堀伸夫・堀大才 訳、槙書店、1988年6月。ISBN 4-8375-0575-9。 - 原タイトル:The origin of species by means of natural selection or the preservation of favoured races in the struggle for life. 6th ed.
- チャールズ・ダーウィン『種の起原』堀伸夫・堀大才 訳、朝倉書店、2009年5月。ISBN 978-4-254-17143-3。 - 原タイトル:The origin of species. 6th ed.
- ダーウィン『種の起源』 上、渡辺政隆 訳、光文社〈光文社古典新訳文庫 K-Dター1-1〉、2009年9月8日。ISBN 978-4-334-75190-6 。
- ダーウィン『種の起源』 下、渡辺政隆 訳、光文社〈光文社古典新訳文庫 K-Dター1-2〉、2009年12月8日。ISBN 978-4-334-75196-8 。
漫画版
- ダーウィン 作、バラエティ・アートワークス 漫画『種の起源』イースト・プレス〈まんがで読破〉、2009年7月。ISBN 978-4-7816-0167-0。
- ^ a b ダーウィン & 八杉 1990a、ダーウィン & 八杉 1990b
- ^ a b ダーウィン & 渡辺 2009a、ダーウィン & 渡辺 2009b
- ^ “科学史”. oasis.andrew.ac.jp. 2020年6月29日閲覧。
- ^ “The evolution of a misquotation” (英語). Darwin Correspondence Project (2016年11月25日). 2020年6月29日閲覧。
- ^ “「ダーウィンの進化論」に関して流布する⾔説についての声明”. 日本人間行動進化学会. 2020年6月29日閲覧。
- ^ ダーウィン & 八杉 (1990a)の解説を修正。
- ^ ダーウイン & 阿部 1905
- ^ ダーウィン & 立花 1896
- ^ ダーウィン & 東京開成館 1905
- ^ ダーウィン & 大杉 1934
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