租税法 基本原則

租税法

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/12/11 12:46 UTC 版)

基本原則

租税法全体を支配する基本原則として、日本国憲法第30条及び日本国憲法第84条に規定された[12][13]、課税権の行使方法に関する「租税法律主義」と、日本国憲法第14条に規定された[14]、法の下の平等に基礎づけられる「租税公平主義(租税平等主義)」の2つが挙げられる[15]。ただし、地方税及び関税については、租税法律主義の例外となる[13]

地方税については、日本国憲法第92条及び日本国憲法第94条に規定された、地方自治の課税権を認める「自主財政主義(地方条例主義[16])」が基本原則として挙げられる[13][17]

関税については、関税法第3条により条約の定めによることが認められている[18]

法源

日本

日本の租税法の法源は、憲法法律政令省令告示条例規則等の国内法源と、条約等の国際法源がある[19][20]

憲法
日本国憲法において租税に関して重要な条項は、租税法律主義を規定する第30条第84条と、租税公平主義を規定する第14条である。なお、憲法を法源としない考え方もある[21]
法律
租税法律主義の原則により、租税に関する事項は法律で規定しなければならないため、法律が租税法の法源の中心となる。
命令(政令・省令)
租税法においても命令が認められ、法律と並ぶ法源となっている[注釈 2]
告示
租税法に関する告示の一部には、法律に定める課税要件の規定が補充される場合があり、そうした告示も法源の一種とされる。
条例・規則
地方公共団体が地方税の賦課・徴収をするには、地方税法の規定に基づき、地方税の税目等を条例に定め、その条例の施行に関して必要な事項を規則で定める必要があるため、地方税法の法源となる。
条約
国際間の二重課税を防止すること等を目的として、諸外国との間に租税条約が締結されており、これも法源となる。
判例
最高裁判所の判例の積み重ねによって判例法が形成されているような場合には、判例も租税法の法源の一種として認められている面もあるが、法律そのものではないため、租税法律主義の観点から、その法源性は限定的だとされる。

なお、下記のものは法源とされない[23][24][25]

通達
通達(特に租税法の解釈に関する通達)は、実際の租税に関する業務や問題解決に利用され、その果たす機能は大きいが、あくまでも行政組織内部で拘束力を有する命令・指令であり、国民に対して拘束力を持つ法令ではないため、租税法の法源とはならない[注釈 3]

アメリカ合衆国

また、アメリカの租税法は、連邦政府が課税権を有しており、さらに各州政府は連邦政府と別に独自の課税権を有し、等の地方自治体政府も州政府の許容範囲内において課税権を有している[26]。アメリカの連邦税法の法源には、内国歳入法、規則、個別通達、判例、条約が挙げられる[27]。連邦制の下で、州税(日本の地方税に相当)については、州法が規律する。

内国歳入法(Internal Revenue Code)
アメリカの連邦税(日本の国税に相当)については、日本の所得税法、法人税法、消費税法等のように独立した法律となっておらず、内国歳入法に一本化されている[28]
規則(Regulations)
アメリカ合衆国財務省(Department of Treasury)が発行する内国歳入法に対する解釈等を示したものであり、最高裁判所により違法判決が出されない限りは法的拘束力を有する。日本の命令や通達に近いものである。
個別通達(Revenue Rulings)
アメリカ合衆国内国歳入庁(Internal Revenue Service)が発行する規則の具体的処理方法等を示したものである。
判例(Court decisions)
英国法を継承しているため、判例も強い影響力を有する。
条約(Tax treaty)
アメリカでは、日本と同様に諸外国との間に租税条約を締結しているが、日本と違い、国内法と国際間条約が同順位となり、後法優先となる。また、州によっては、租税条約に反する規定を有している場合がある。

適用範囲

租税法の効力が及ぶ範囲については、地域、人、時間の3つの観点がある[29][30]

地域的限界(地域的適用範囲)
租税法は、租税法を制定した国または地方公共団体の権限が及ぶ全地域に対して効力を有する。
人的限界(人的適用範囲)
租税法は、租税法の効力の及ぶ地域内のすべての者に対して効力を有する。
時間的限界(時間的適用範囲)
租税法は、施行によって効力を有する。



注釈

  1. ^ 個別の租税法の内容は他の独立した記事で説明することになるので、当記事で取り扱う内容は主にこの部分に関するものが中心となる。
  2. ^ 一般に政令は「施行令」、省令は「施行規則」と呼ばれる。ただし、1964年(昭和39年)以前は政令を「施行規則」、省令を「施行細則」と呼んでいた[22]
  3. ^ ただし、通達に基づいて課税処分が行われた場合であっても、その通達の内容が法律の正しい解釈と合致している場合には、法律に基づいて行われた課税処分とされる[25]
  4. ^ 旧ドイツ租税調整法は、1977年の「租税基本法(Abgabenordnung)」の改正に際して吸収統一され、この規定は承継されなかった[41]

出典

  1. ^ 国税庁、「興銀訴訟最高裁判決を真摯に受け止めたい」(2005.4.6)”. 株式会社ロータス21. 2020年6月10日閲覧。
  2. ^ 金子 2019, pp. 30-31.
  3. ^ a b 清永 2013, pp. 11-13.
  4. ^ 北野 2020, p. 50.
  5. ^ a b c d 金子 2019, p. 27.
  6. ^ a b c 清永 2013, p. 58.
  7. ^ a b 金子 2019, p. 28.
  8. ^ 清永 2013, p. 59.
  9. ^ 金子 2019, p. 29.
  10. ^ 金子 2019, p. 31.
  11. ^ a b c 金子 2019, p. 32.
  12. ^ 金子 2019, p. 80.
  13. ^ a b c 清永 2013, p. 28.
  14. ^ 金子 2019, p. 89.
  15. ^ 金子 2019, p. 78.
  16. ^ 水野 2011, p. 33.
  17. ^ 金子 2019, p. 98.
  18. ^ 清永 2013, p. 29.
  19. ^ 金子 2019, pp. 107-119.
  20. ^ 清永 2013, pp. 17-22.
  21. ^ 清永 2013, p. 17.
  22. ^ 清永 2013, p. 19.
  23. ^ 清永 2013, pp. 21-22.
  24. ^ 金子 2019, pp. 115-119.
  25. ^ a b 中里ほか 2020, p. 3.
  26. ^ 須田 1998, p. 423.
  27. ^ 須田 1998, pp. 5-6.
  28. ^ U.S. Code: Title 26. INTERNAL REVENUE CODE” (英語). Legal Information Institute. 2020年6月10日閲覧。
  29. ^ 金子 2019, pp. 119-122.
  30. ^ 清永 2013, pp. 23-24.
  31. ^ a b 清永 2013, p. 35.
  32. ^ 金子 2019, p. 123.
  33. ^ 金子ほか 2016, p. 52.
  34. ^ a b c d 金子 2019, p. 124.
  35. ^ a b 清永 2013, p. 36.
  36. ^ 金子 2019, pp. 124-125.
  37. ^ 金子 2019, p. 125.
  38. ^ 清永 2013, p. 37.
  39. ^ 北野 2020, p. 81.
  40. ^ Vollständiger Gesetzestext 1934 S. 925 - 941” (ドイツ語). ALEX – Historische Rechts- und Gesetzestexte Online. 2020年12月10日閲覧。
  41. ^ a b 金子ほか 2016, p. 54.
  42. ^ 清永 2013, p. 39.
  43. ^ a b c 金子 2019, p. 126.
  44. ^ a b 北野 2020, p. 176.
  45. ^ a b c 金子 2019, p. 127.
  46. ^ 清永 2013, p. 40.
  47. ^ 金子 2019, p. 129.
  48. ^ 清永 2013, pp. 24-25.
  49. ^ a b 北野 2020, p. 8.
  50. ^ a b 金子 2019, p. 26.
  51. ^ ラムザイヤー & 中里 2010, p. 56.
  52. ^ ラムザイヤー & 中里 2010, p. 56-57.
  53. ^ 清永 2013, p. 25.
  54. ^ 北野 2020, p. 1.
  55. ^ a b 清永 2013, p. 26.
  56. ^ 金子 2019, p. 38.
  57. ^ a b 金子 2019, p. 39.
  58. ^ a b c 清永 2013, p. 27.
  59. ^ 金子 2019, p. 36.
  60. ^ 金子 2019, p. 35.
  61. ^ 北野 2020, p. 2.
  62. ^ 金子 2019, p. 37.
  63. ^ 北野 2020, p. 5.
  64. ^ 金子 2019, pp. 549-550.
  65. ^ 本庄, 田井 & 関口 2018, pp. 1-2.
  66. ^ 本庄, 田井 & 関口 2018, pp. 3-4.
  67. ^ 藤本 2005, pp. 4.
  68. ^ a b 藤本 2005, pp. 5.
  69. ^ 本庄, 田井 & 関口 2018, pp. 9-11.
  70. ^ 本庄, 田井 & 関口 2018, p. 8.
  71. ^ 金子 2019, p. 552.
  72. ^ 本庄, 田井 & 関口 2018, p. 19.
  73. ^ 本庄, 田井 & 関口 2018, pp. 11-18.
  74. ^ 租税条約に関する資料”. 財務省. 2020年11月26日閲覧。
  75. ^ 新司法試験の仕組み”. 法務省. 2020年9月5日閲覧。
  76. ^ 公認会計士試験に関するQ&A”. 公認会計士・監査審査会. 2020年9月5日閲覧。
  77. ^ 税理士試験の概要”. 国税庁. 2020年9月5日閲覧。
  78. ^ 8003 通関士試験の試験科目(カスタムスアンサー)”. 税関. 2020年9月5日閲覧。






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