祭 季語

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/11/17 00:30 UTC 版)

季語

季語としての(まつり)は、の季語(三夏の季語)である[3]。分類は行事/人事[注釈 2]。季語「祭」の初出[注釈 3]は、野々口立圃によって寛永13年(1636年)に刊行された俳諧論書『はなひ草』(「花火草」「嚔草」とも記す)においてであった[3]。すなわち、江戸時代初期の、史上初めて印刷公刊された俳諧の式目・作法の書に記載された。季語・季題の世界で、単に「祭」といえば、江戸京都大坂などといった都市部の神社で執り行われる夏祭を指す[3][4]。古来、夏は疫病が発生しやすく、それをもたらす元凶と信じられていた怨霊を鎮めたり祓ったりすることは人々の切実な願いであり[3][4]、その思いを籠めて行うのが夏祭であった[3]。災禍を遠ざけてくれる神様が降臨するのは夜と考えられていたため、祭はたいてい宵宮から始められる[3]。このような習俗を背景として、夏は祭の季節、夏の祭は夜行われるもの、そしてまた「祭」といえば第一に夏祭を指すようになった[4]。俳諧・俳句の世界でもそれに伴い、「祭」は「夏祭」を意味する季語となり[4]、一方で、の祭は「春祭」、の祭は「秋祭」と、季節名を冠することで季語として用いられるようになった[4]。なお、現代の夏祭には悪疫退散を祈念するところの全く見られない単なる“夏の催事(サマーイベント)”も数多く見られるが、そういったものに季語「祭」および「夏祭」を当てたとしても、間違いとまでは言えない。あるいはまた、依って立つ文化が日本古来の祭と全く異なる日本国外の祭を対象として季語「祭」を用いることも、これを認めないという考え方は、少なくとも一般的でない。

  • 例句:象潟さきかた料理れうり何食ふ かみまつり ─ 河合曾良おくのほそ道(奥の細道)』(1702年〈元禄15年〉刊)[3]
  • 例句:して 一村ひとむら起きぬ かな ─ 炭太祇 『太祇句選後編』(1777年〈安永6年〉刊)[3]
  • 例句:草の雨 の車 過ぎてのち ─ 与謝蕪村(江戸時代中期)[5]
  • 例句:万燈まんどうを 消してわびしき かな ─ 村上鬼城 『鬼城句集』(1917年〈大正6年〉刊)[3]
  • 例句:神田川かんだがは の中を ながれけり ─ 久保田万太郎[4](1925年〈大正14年〉の作。『草の丈』所収 )

「祭」を親季語とする子季語[注釈 4]は多様で数も多い。夏祭(なつまつり)、神輿(みこし)、渡御(とぎょ。意:祭礼の際の、神輿のお出まし。神輿が進むこと)、山車(だし)、祭太鼓(まつりたいこ)、祭笛(まつりぶえ)、宵宮(よいみや、よみや。歴史的仮名遣:よひみや、よみや。意:本祭の前夜に行う祭)、宵祭(よいまつり。歴史的仮名遣:よひまつり。意:宵宮と同義)、陰祭(かげまつり。意:本祭が隔年で行われる場合の、例祭の無い年に行われる簡略な祭)、本祭(ほんまつり。意:宵祭・陰祭に対して、本式に行う祭。例祭のこと)、樽神輿(たるみこし。意:神酒の空きを神輿に仕立てたもの)、祭囃子(まつりばやし)、祭提燈(まつりじょうちん)、祭衣(まつりごろも。意:祭りの装束)、祭舟(まつりぶね。意:祭りで使う[3]

  • 例句:けふ来たる サーカス銅鑼 夏祭 ─ 岸風三楼 『往来』(1949年〈昭和24年〉刊)
  • 例句:ひとの渦 おほきな神輿 のせゆける ─ 高田正子 『玩具』[3]
  • 例句:山車通りすぎたるあとの人通り ─ 清崎敏郎 [4]
  • 例句:一合いちがふの米祭太鼓かな ─ 片山依子 [4]
  • 例句:たましひ音色ねいろづる 祭笛 ─ 栗生純夫 『科野路』(1955年〈昭和30年〉刊)
  • 例句:序の調べ静かに祭囃子かな ─ 浅賀魚水 [4]

関連季語として春祭(はるまつり)と秋祭(あきまつり)が考えられるものの、歳時記には関連季語として記載されていない。なお、冬祭(ふゆまつり)は季語になっていない[6]

  • 例句:やまりて もんぺすくな春祭 ─ 石田波郷
  • 例句:石段の はじめは地べた 秋祭 ─ 三橋敏雄

注釈

  1. ^ ハイヌヴェレ型神話なども参照のこと。
  2. ^ 「行事」も「人事」も、ここでは、人間が行う事柄を指す。
  3. ^ 初出(しょしゅつ)とは、初めて出てくること。ここでは、「祭」という言葉が季語として初めて世に出ること。
  4. ^ ある主要な季語について別表現と位置付けされる季語を、親子の関係になぞらえて、親季語に対する「子季語」という。「傍題」ともいうが、傍題は本来「季題」の対義語である。

出典

  1. ^ 本段落出典:祭と斎 - 日本正教会公式サイト
  2. ^ 島田裕巳『日本人の信仰』pp.153-1456 扶桑社新書、2017年、ISBN 978-4594077426
  3. ^ a b c d e f g h i j k 祭(まつり) 三夏”. 季語と歳時記-きごさい歳時記. 季語と歳時記の会 (2011年2月16日). 2018年2月15日閲覧。
  4. ^ a b c d e f g h i 大澤水牛 (2012年). “祭(まつり)”. 水牛歳時記. NPO法人双牛舎. 2018年2月15日閲覧。
  5. ^ 日本大百科全書:ニッポニカ』
  6. ^ 祭 - 季節のことば”. ジャパンナレッジ. 株式会社ネットアドバンス (2001年7月16日). 2018年2月15日閲覧。



祭日

( から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/12/26 06:51 UTC 版)

祭日(さいじつ)とは、宗教儀礼上重要な祭祀を行う日のこと。


  1. ^ Goo辞書
  2. ^ 「祭日」「祝祭日」という言い方は? | ことば(放送用語) - 放送現場の疑問・視聴者の疑問 | NHK放送文化研究所
  3. ^ a b c d 式年祭は3年、5年、10年、20年、30年、40年、100年及び以後100年毎に実施される。


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