神社
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/12/28 14:29 UTC 版)
日本列島以外の地域にある神社
日本列島以外の地域には2008年の時点で少なくとも 26 の神社が存在する[19]。太平洋戦争前には多数の神社が存在したが、戦後は激減した。かつて日本であった旧外地には国の政策によって内地と同様に多数の神社が造営された。また日本の占領地や満州国などにも造営、あるいは造営の準備が行われた。しかし、太平洋戦争後は全て廃絶となり、現在でもごく一部が再建されたにとどまっている。かつて日本では無かった地域の場合、移民政策により日系移民が多数在住した土地では、現地に住む移民のために多数の神社が創建された。他にも、神道の布教のために創建された神社もあった。しかし、連合国側の神社は太平洋戦争中に資産が没収され、太平洋戦争後も復興できなかった神社が多数存在した。その後、日本文化が国外に浸透したことで、近年になって新たに建立された神社もある。
旧外地においては、台湾では鹿野神社(龍田崑慈堂内)、林田神社、玉里社など、いくつかの神社が近年、歴史的な遺物としての価値や観光資源としての価値を認められ復興された[20]。また、台中神社の鳥居を復活させようという動きもある。だが、これらはあくまでも文化遺産としての復興であり、信仰対象としての再建ではない。しかしながら、2015年には初めて、正式な神職が奉祀する宗教施設として、かつての村の神であった高士祠が高士神社として再建された。また、旧南洋群島においては、パラオでは南洋神社、ペリリュー神社が、アメリカ合衆国北マリアナ諸島サイパン島では彩帆香取神社や彩帆八幡神社が近年になって再建された。
日系移民が多く住む土地では、特にアメリカ合衆国ハワイ州には多数の神社が作られ、オアフ島にハワイ出雲大社やハワイ大神宮、ハワイ石鎚神社、ハワイ金刀比羅神社・ハワイ太宰府天満宮、若宮稲荷神社、ハワイ島にはヒロ大神宮、マウイ島にはマウイ神社[21]などが現存する。これらには、戦後復興できなかったり、存続が困難になった神社が多数合祀されている。また、ブラジルでは当初、東京植民地神社やボーグレ神社などが存在したが、基本的には日本人小学校兼集会場の御真影が御神体の機能を果たしたため、神社はあまり作られなかった[22]。これらの神社は植民地の消滅とともになくなってしまったが、その後、神乃家厳戸神社ブラジル大神宮、南米神宮[23]、ブラジル熊野神社、ブラジル石鎚神社(スザノ石鎚神社遙拝所)[24]、太平山三吉神社[25]、パウリスタ神社[26]、パラナ州開拓神社[27]、伯国開拓大神宮(ブラジル大神宮)[28][29]など、神職が奉祀する神社が創建されている。近年では南米大神宮など、神社ではなく鳥居だけが日系移民街を象徴する建造物として建てられるケースも増えている[30]。
神道の布教のために創建された神社としては、アメリカ合衆国本土には戦前に北米大神宮本院、米国神道協会、明治神宮会、羅府稲荷神社、出雲大社教北米協会が存在したが、戦後は復興しなかった。その後、1987年になってアメリカ椿大神社が創建し、神職の資格を得たアメリカ人が禰宜を務めている。オランダには1981年にヨーロッパ初の神社として古神道の一派である山蔭神道の日蘭親善協会斎宮が創建され、オランダ人の宮司が奉祀している[31]。フランスには三重県の水屋神社の分祠として、真言宗寺院である光明院の境内にフランス和光神社がフランス初の神社として2006年に創建されている。こちらは通常、光明院のフランス人の住職が祭祀を務める神宮寺の形をとっている[32][33]。サンマリノには、神社本庁が公認するヨーロッパ初の神社として、2014年にサンマリノ神社が創建されている。神職は地元のサンマリノ人であるホテルのオーナーで、山形県の湯殿山神社で修行し、資格を取得している[34][35][36]。
注釈
- ^ 神社に寺院のような本尊というものはなく、現存する神像彫刻はすべて平安時代以降のものばかりである[5]。
- ^ 鹿島神宮・八坂神社・春日神社・宗像神社・日枝神社など。
- ^ 稲荷神社・住吉神社・八幡神社・天満宮・丹生都比売神社など。
- ^ 倭文神社など。
- ^ 平安神宮・八重垣神社など。
- ^ 招魂社・祖霊社など。
- ^ 六所宮・四柱神社など。
- ^ 浅間神社など。
- ^ 伏見稲荷大社・函館八幡宮など。
- ^ 絵馬は後世に馬の代わりに奉納されたものであるため。
- ^ 明治神宮外苑など、商業的な営みも行っている。
- ^ 大神神社、石上神宮、宗像大社など。
- ^ 熊野那智大社の元宮である飛瀧神社など。
- ^ 磐座の近くに社殿がある越木岩神社など。
- ^ 一族発祥の地や、菅原道真の場合、遠流の地(太宰府)など。
- ^ 明治神宮の造営候補地など。
- ^ 本来は山頂にあった日光二荒山神社など。
出典
- ^ “じんじゃ【神社】” (日本語). 世界大百科事典 第2版 (1998年10月). 2013年8月2日閲覧。
- ^ “じんじゃ【神社】” (日本語). 大辞林 第三版 (1998年10月). 2016年8月28日閲覧。
- ^ https://www.bunka.go.jp/tokei_hakusho_shuppan/tokeichosa/shumu_kanrentokei/pdf/h26_chosa.pdf
- ^ Template:Cite newsurl=http://mainichi.jp/articles/20160318/dde/012/010/017000c
- ^ 岡田精司 2011年 6ページ
- ^ 大阪府神社庁 第六支部 東大阪市参照。なお、ここにおける単立神社には式内社の石切剣箭神社等も含まれている。
- ^ 岡田米夫「神宮・神社創建史」5頁。
- ^ 小池, 2015 & p15.
- ^ 明治神宮, ウェブサイト & Q&A.
- ^ 日本人なら知っておきたいお寺と神社, 2006 & p211.
- ^ 直木孝次郎「森と社と宮」(1958年)など。
- ^ 稲垣栄三「本殿形式の起源」(1968年)・井上寛司「古代・中世の神社と{神道}」(2006年)など。
- ^ 桜井敏雄「神殿の諸形式とその特質」(1982年)・木村徳国「ヤシロの基礎的考察」(1982-84年)など。
- ^ 丸山茂「神社建築の形成過程における官社制の意義について」(1999年)・有富純也「神社社殿の成立と律令国家」(2009年)など。なお、有富は律令国家が幣帛を全国の神社に納めるため、一部の社にのみあった神庫と同様の施設を全国の官社に設置したとする。
- ^ 有富、2009年論文(同『日本古代国家と支配理念』、東京大学出版会、2009年所収)による。
- ^ a b c d e f g 岡田[2013:290-294]
- ^ 宮沢俊義 『憲法講話』〈岩波新書〉(第2版)岩波書店、1967年6月1日 (原著1967年4月20日)、pp. 28-29頁。
- ^ a b c d e f g h i j k l m n 岡田[2013:291]
- ^ 前田孝和「海を渡ったお伊勢さま 海外神社の今」 伊勢神宮崇敬会講演録15 伊勢神宮崇敬会(2008年)
- ^ 「リノベ」で復活する台湾の日本神社――歴史のなかの「自分探し」が背景に ジャーナリスト・野嶋剛/Yahoo!ニュース編集部
- ^ “マウイ神社(Maui Jinja Shinto Shrine)存続プロジェクト|Facebook”. マウイ神社(Maui Jinja Shinto Shrine)存続プロジェクト. 2017年3月6日閲覧。
- ^ “南米最古の神社/東京植民地神宮の夢”. 記事の墓場(過去記事集) (2007年9月4日). 2017年3月6日閲覧。
- ^ “ブラジル・サンパウロ 神社のない鳥居 祖国とのつながり求めた 日系人社会の象徴”. ブラジルニュース ~aperto de mão~ (2011年7月27日). 2017年3月6日閲覧。
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- ^ “県外の三吉神社”. 太平山三吉神社. 2017年3月6日閲覧。
- ^ “パウリスタ神社鎮座祭”. ニッケイ新聞 (2006年7月4日). 2017年3月6日閲覧。
- ^ “『パラナ州開拓神社』建立へ=ローランジアに 文連の移民100年祭事業=日本移民の恩人祭る=5種の神具(農具)も奉納”. ニッケイ新聞 (2003年5月23日). 2017年3月6日閲覧。
- ^ “「神戸の水」4万本陸揚げ=パラナ州パラナグア港で=一同口揃え「おいしい」=3万本を聖市式典に”. ニッケイ新聞 (2008年6月4日). 2017年3月6日閲覧。
- ^ “クリチーバ=兵庫会館で弥生祭=両陛下縁の記念碑で”. ニッケイ新聞 (2009年3月27日). 2017年3月6日閲覧。
- ^ “知られざる鳥居大国ブラジル=全伯に68基以上が判明=日系のシンボルとして=昨年一気に35基増=過半数を聖州占める”. ニッケイ新聞 (2009年6月18日). 2017年3月6日閲覧。
- ^ “日蘭親善協会 オランダ山蔭神道斎宮”. 日蘭親善協会 オランダ山蔭神道斎宮. 2017年3月6日閲覧。
- ^ “水屋神報177号 水屋の神様 フランスへわたる”. 水屋神社 (2008年11月20日). 2017年3月6日閲覧。
- ^ “和光神社”. 光明院フランス. 2017年3月6日閲覧。
- ^ “Girl Power サンマリノ共和国の神社に参拝”. Girl Power. (2014年6月26日) 2016年5月21日閲覧。
- ^ “実はヨーロッパに輸出されている日本の神社|東條英利コラム”. デイリーニュースオンライン (2014年11月9日). 2017年6月21日閲覧。
- ^ “サンマリノ神社”. サンマリノ神社. 2017年6月21日閲覧。
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