磁気テープ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/09/16 21:47 UTC 版)
製造方法
幅3 - 4mのフィルムの片面に磁性層を成膜し裁断。リールと呼ばれるボビンに巻き取り、プラスチック容器等に装着する。
磁性層の成膜には、塗布、蒸着、スパッタなどの方法がある。一般的には片面だけだが両面に成膜した製品も見られる。
成膜後、リールへの巻き込み前にサーボトラッキングのための情報が記録される場合もある。
規格
磁気テープを利用したメディア規格としては、以下のようなものがある。
コンピュータ用
記録装置は高価であるが、他のメディアに比べて容量が大きく、テープの容量当たりの単価が安価である。しかしながら、ランダムアクセスはできない。こうした特徴から、企業が保有する大規模なサーバなどのバックアップ[7][2][8]や、参照頻度の低いデータのアーカイブ用のメディアとして利用される。
アメリカでは、個人用の安価な装置が一定の普及を見た時期もあった。
データの頭出しに時間を要するが、LTO規格に見られるように連続したデータの読み込みは非常に高速である。また、DDS/DLT/LTOなどであれば「オートローダ」もしくは「テープライブラリ」と呼ばれる装置を用いることで、マガジンに装填されたテープを自動的に交換できる。テープ1本では容量が不足する場合の自動化のときなどに用いられる。
オーディオ・ビデオ用テープに記録できるストレージもある。
固定ヘッド
- IBM 3592 - 1/2インチ
- DLT(Digital Linear Tape) - SDLT - 1/2インチ
- LTO(Linear Tape-Open Ultrium) - 1/2インチ
- 9840 - 9940 - T10000 - 1/2インチ
- オープンリール - 2インチ、1インチ
- CMT(Cartridge Magnetic Tape), CST(Cartridge System Tape) - 1/2インチ
- 3480 - 3490 - 3490E - 1/2インチ
- 9490EE - IBM 3490互換1/2インチ
- 3590 - 3590E - 1/2インチ
- Travan - 8mm
- QIC(Quarter Inch Cartridge) - 1/4インチ
- Scalable Linear Recording(SLR)
ヘリカルスキャン
- Digital Instrumentation Recorder(DIR) - 19mm(3/4インチ)
- VHS - 1/2インチ
- Exabyte(Data 8) - VXA - 8mm - 8ミリビデオとカートリッジは同形状だが、原則としてメディアに互換性はない。
- AIT(Advanced Intelligent Tape) - S-AIT - 8mm
- DTF(Digital Tape Format) - 1/2インチ - Digital BETACAMがベースとなっている。
- DDS(Digital Data Storage) - 3.8mm - 約4mm幅 - DATとカートリッジは同形状だが、原則としてメディアに互換性はない[要検証 ]。
オーディオ用
アナログ
- オープンリール - 多くは約6mm幅(1/4インチ)のテープ。業務用マルチトラックレコーダーは最大2インチ幅まである。
- テーペット - RCAビクターが開発した規格。6.3mm幅。
- コンパクトカセット - 一般にいうカセットテープ。3.81mm幅。
- マガジン50テープカートリッジ - アイワ(初代法人、現・ソニーマーケティング)が開発した先述のコンパクトカセットに類似した規格。4.8mm幅。
- マイクロカセット - 通常のコンパクトカセットより小型のカセットテープ。3.8mm幅。オリンパスが開発した規格。会議記録用にも盛んに用いられた時期があったが、現在は留守番電話機の録音媒体に用いられる程度で、ほぼ廃れた。
- ミニカセット - フィリップス社が開発した規格。大きさはマイクロカセットに近いが、互換性はない。
- エルカセット - ソニー、松下電器産業(現・パナソニック)、ティアックの3社が共同開発した規格。A6(文庫本サイズ)でテープ幅はオープンリールと同じ6.3mmである。現在は廃れた。
- 8トラック - 1980年代までカラオケ等の媒体に利用されたが、現在は廃れた。
デジタル
- 3/4インチデジタルオーディオカセットテープ - UマチックにPCMプロセッサを繋いで使用。19mm幅。U規格テープを使用。
- DAT
- R-DAT - DAT懇談会と日本オーディオ協会が共同で開発した規格。回転式ヘッド(ヘリカルスキャン方式)のR-DAT用のテープ。3.8mm幅。
- S-DAT - 固定式ヘッドを用い、後述するオープンリール型が使用された。
- デジタルマイクロカセット - ソニーが独自で開発した規格。切手サイズの超小型カセットテープが用いられた。2.5mm幅。会議録音用を想定していたが後に登場するICレコーダーの台頭により程なく廃れた。
- DCC - フィリップスと松下電器産業(現・パナソニック)が共同で開発した規格。コンパクトカセットをデジタル記録化したもので、現在は廃れた。
- オープンリール - 業務用録音機器で使用される。
- ADAT(ALESIS DIGITAL AUDIO TAPE) - 業務用マルチトラックレコーダ。12.7mm幅。VHSテープを使用。
- DTRS(Digital Tape Recording System) - 業務用マルチトラックレコーダ。8mm幅。8ミリビデオテープを使用。
ビデオ用
デジタルとアナログで姉妹規格となっているものが多く、それゆえデジタルもアナログも記録できる製品が存在するため、デジタルとアナログは分けずに記載する。
オープンリール
ビデオカセット
- ACR-25(AMPEX) - 2インチ
- U規格 - 3/4インチ - M:256×174×38mm - S:210×147×38mm
- VX方式 - 1/2インチ
- VHS - VHS-C - S-VHS - S-VHS-C - D-VHS - W-VHS - 1/2インチ - 205×120×32mm(カセットのサイズではない)
- ベータ - ED BETA - 1/2インチ - L:271×162×32mm - S:172×112×32mm(カセットのサイズではない)
- BETACAM - BETACAM-SP - BETACAM-SX - Digital BETACAM - MPEG IMX(D10) - HDCAM - HDCAM SR
- UNIHI - 1/2インチ - 205×121×25mm
- 8ミリ - Hi8 - Digital8 - 8mm - 108×75×20mm
- DV - MiniDV - HDV - 6.35mm(1/4インチ) - STD:139×94×20mm - mini:108×78×20mm
- MICROMV - 3.8mm
- D1 - D2 - D6 - 3/4インチ - L:283×430×51mm - M:285×176×40mm - S:196×129×40mm
- D3 - D5 - 1/2インチ
テープの種類
使用する磁性体の種類によって磁気テープの商品としての種類の違いが存在する分野としてオーディオカセットテープがある。また商品グレードの例としてビデオテープの例を挙げる。
オーディオカセットテープ
- ノーマルポジションテープ
- 塗布されている磁性体が酸化第二鉄(ヘマタイト)で茶色である。メタルポジションテープに反転したパターンを記録してバイアス磁界中で重ねる事で転写する事により大量複製が可能。また、音楽用に最適化されたノーマルポジションテープは中低域のMOLに優れる。
- クロムポジション/ハイポジション/EEポジションテープ
- クロム、およびコバルトの酸化物が塗布されており、S/N比、中高音域の再現性が優れる反面、中低音域の再現性やMOLに関しては音楽用ノーマルポジションテープにやや及ばない面もある。テープによっては”Cr-O2”の表示がある。これは二酸化クロムのこと。なお、オープンリール用ではEEポジションがコンパクトカセット用のハイポジション(クロムポジション)に相当する。
- フェリクロムポジションテープ
- ノーマルが得意とする低~中音域、クロムやハイポジションが得意とする高音域を、二層塗りにすることで、双方の優れた特性を実現する。フェリクロムポジションに対応していないレコーダーやプレーヤーではノーマルポジション用テープとして代用することも可能。しかし、コンパクトカセットではその後のノーマルポジションテープやハイポジションテープの更なる高性能・高音質化の実現や後述するメタルポジションテープの登場、また、オープンリールでは先述のEEポジションテープの登場によりいずれも急速に廃れた。表記はFe-Cr。
- メタルポジションテープ
- 保磁力の優れた非酸化金属磁性体(オキサイド)が蒸着されており高密度の記録に適する。大量複製時のマザーテープとしても使用されるがメタルポジションテープ自体は転写法による大量複製には適さない。
ビデオテープ
メーカーによるテープグレードの区分(ノーマル、ハイグレード、ハイファイ、プロなど)と、記録方式の分類(VHSとS-VHSなど)による区分がある。
- ^ 例として日本の特許法(昭34法121)第27条。
- ^ a b NC特集2 - 磁気テープ、まさかの復権:ITpro
- ^ 磁気テープなぜ復活? 生産量3年連続プラスに - 日本経済新聞
- ^ a b “磁気テープ「復権」で新技術 富士フイルム、ソニーが大容量化を加速”. サンケイビズ. (2014年5月6日) 2014年5月6日閲覧。
- ^ 大容量磁気テープの実用化技術 「4K」映像で富士フイルム実証
- ^ LTOテープ
- ^ なぜ?“磁気テープ”が復活
- ^ なぜ?“磁気テープ”が復活
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