破壊的技術 代表例

破壊的技術

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/16 07:25 UTC 版)

代表例

製品

iPhoneApple
携帯電話が高度に進化したことによって、既存の市場・製品のあり方に大きな影響を与えた。電話だけでなく、カメラ、音楽プレーヤー、パソコン、カーナビ、紙媒体などがその代表例として論じられる[14]
2007年6月にクリステンセンが立てた「iPhoneは破壊的イノベーションではなく成功しない」という推論は、同氏の予想のなかで最も恥ずかしいものとされる[15]

ビジネスモデル

Uber(Uber)
モバイルアプリを活用してドライバーとの契約に基づく情報サービスを提供することにより、既存のタクシー業に大きな影響を及ぼしたとされる[16]
動画配信
ネット配信技術によって、テレビ業界やレンタルビデオのシェアが奪われた[17]

訳について

「破壊的」は"disruptive"の訳である。disruptiveの動詞形disruptには「破壊する」という意味のほか、「秩序を乱す」「混乱をもたらす」などといった意味がある[18]。そのため、「破壊」という訳では誤解を招きかねないとする意見も存在する[19]

その他破壊的イノベーションの例

破壊的技術  陳腐化した技術 ノート
蒸気機関内燃機関 動力としてのや人間 それぞれの開発には世紀を要したが、以前よりも大規模な生産活動を可能ならしめた。動力としての動物や人力を駆逐した。
自動車 輸送のための 初期の道路は自動車ではなく馬のために設計されていたが、自動車がもたらす信頼性とスピードの便益は大きく、多数の政治的・技術的な障壁が存在したにも拘らず道路網は自動車用に再設計された。
油圧ショベル ケーブルによって作動する掘削機 露天掘炭鉱などで使われる超大型機ではケーブル式が主流である。
ミニ製鉄所 統合化された製鉄所 主として地域的に利用可能なスクラップと電源を使う電炉などによって、小規模だが費用対効果の高い製鉄所が実現された。
オフィスコンピュータ メインフレーム メインフレームはオフィスコンピューターによってニッチ市場へと追いやられ、小規模な市場で現在まで生き残っている。なお、オフィスコンピュータはやがてパーソナルコンピュータという破壊的技術によって陳腐化された。
コンテナ船海上コンテナ 貨物船 荷物を貨物船に積み下ろしするのには大変な労力を要した。だが、コンテナに荷物を入れてそれを機械で船に積み下ろしすることで効率化を実現した。陸揚げしたコンテナはそのまま鉄道やトラックで運ぶことが可能であり(インターモーダル輸送)、他システムとの親和性も高かった。また、盗難の危険性を低下させることにも成功した。
DTP 出版 初期のデスクトップ・パブリッシングシステムは機能や品質でハイエンドのプロフェッショナルシステムに劣っていた。しかしながら、DTPは出版業へ参入するコストを下げることに貢献した。DTPの市場規模は次第に拡大し、やがてDTPは従来のプロフェッショナルシステムを機能的に追い越すようになった。
デジタルカメラ 銀塩カメラ写真フィルム 初期のデジタルカメラの画質と解像度は悪く、シャッター遅れも長いなど銀塩カメラと比較して機能的に大きく劣っていた。だが、他のデジタル機器との接続性が高かったため(ケーブル1本でコンピュータと接続することができた)、小規模ながら市場を得ることに成功した。その後の技術開発により画質や解像度は劇的に上昇し、シャッター遅れも改善された。また、SDカードのような小さな記憶装置に何千枚もの写真も保存できるようになった。デジタルカメラは銀塩カメラと写真フィルムの市場を破壊した。
パーソナルコンピュータ オフィスコンピュータワークステーション オフィスコンピュータはパーソナルコンピュータによって完全に駆逐された。ワークステーション市場は未だに存在するが、パーソナルコンピュータの高性能化にともない差別化の程度は弱まっている。
半導体 真空管 半導体で構成された電子システムは真空管で構成された電子システムに比べて、より小さく、必要なエネルギーも少ない。
蒸気船 帆船 [20]
ディーゼル船、ガスタービン 蒸気船 蒸気(タービン)船は、原子力艦、LNGタンカー等の少数派となった。
電話FAX、(広義の)電子メール 電報
(広義の)電子メール FAX
携帯電話 固定電話

  1. ^ "「破壊的技術」... これは、少なくとも短期的には、製品の性能を引き下げる効果を持つ ... 一般的 に、破壊的技術の性能が既存製品の性能を下回るのは、主流市場での話である。... 破壊的技術は、従来とはまったく異なる価値基準を市場にもたらす。" Clayton M. Christensen. イノベーションのジレンマ 増補改訂版 Harvard business school press (p.23). 翔泳社.
  2. ^ Bower, Joseph L. & Christensen, Clayton M. (1995). "Disruptive Technologies: Catching the Wave" Harvard Business Review, January-February 1995.
  3. ^ Googleスカラー「"破壊的革新" イノベーション OR innovation」
  4. ^ Păvăloaia, Vasile-Daniel; Necula, Sabina-Cristiana (2023-02-23). “Artificial Intelligence as a Disruptive Technology—A Systematic Literature Review” (英語). Electronics 12 (5): 1102. doi:10.3390/electronics12051102. ISSN 2079-9292. https://www.mdpi.com/2079-9292/12/5/1102. 
  5. ^ "技術革新のペースがときに市場の需要のペースを上回る ... 顧客が必要とする以上の、ひいては顧客が対価を支払おうと思う以上のものを提供してしまう" Clayton M. Christensen. イノベーションのジレンマ 増補改訂版 Harvard business school press (p.23). 翔泳社.
  6. ^ "競合する複数の製品の性能が市場の需要を超えると、顧客は、性能の差によって製品を選択しなくなる。" Clayton M. Christensen. イノベーションのジレンマ 増補改訂版 Harvard business school press (p.35). 翔泳社.
  7. ^ 破壊的技術の性能は、現在は市場の需要を下回るかもしれないが、明日は十分な競争力を持つ可能性がある。 ... 破壊的技術は ... いずれ主流市場で確立された製品に対抗しうる性能を身につける ... この事態が起きたとき、競争の基盤、すなわち顧客が製品を比較して選択する際の基準が変化する" Clayton M. Christensen. イノベーションのジレンマ 増補改訂版 Harvard business school press. 翔泳社.
  8. ^ "新技術のほとんどは、製品の性能を高めるものである。これを「持続的技術」と呼ぶ。... あらゆる持続的技術に共通するのは、主要市場のメインの顧客が今まで評価してきた性能指標にしたがって、既存製品の性能を向上させる点である。" Clayton M. Christensen. イノベーションのジレンマ 増補改訂版 Harvard business school press (p.22). 翔泳社.
  9. ^ "持続的技術のなかには、断続的なものや急進的なものもあれば、少しずつ進むものもある。" Clayton M. Christensen. イノベーションのジレンマ 増補改訂版 Harvard business school press (p.22). 翔泳社.
  10. ^ Tushman, M.L. & Anderson, P. (1986). Technological Discontinuities and Organizational Environments. Administrative Science Quarterly 31: 439-465.
  11. ^ Henderson, R. and Clark, K.(1990) "Architectural innovation: the reconfiguration of existing product technologies and the failure of established firms", Administrative Science Quarterly, 35, pp. 9-31.
  12. ^ Christensen, Clayton M.;Raynor, Michael E. (2003). The Innovator's Solution. Harvard Business School Press. ISBN 1-57851-852-0.(玉田俊平太監修・伊豆原弓訳(2001)『イノベーションのジレンマ 技術革新が巨大企業を滅ぼすとき』翔泳社)
  13. ^ イノベーションのジレンマ 《要約》”. 2021年3月9日閲覧。
  14. ^ http://www.sankei.com/smp/gqjapan/news/140718/gqj1407180001-s.html
  15. ^ http://japan.zdnet.com/article/35019196/
  16. ^ http://www.circu.co.jp/x_book_magazine/526
  17. ^ 大西宏. “テレビもDVDもツタヤも、「終わり」始めている 定額動画サービスの脅威”. ビジネスジャーナル/Business Journal. 2022年11月6日閲覧。
  18. ^ wikt:disrupt
  19. ^ 山口栄一(2006)『イノベーション 破壊と共鳴』NTT出版
  20. ^ “『イノベーションのジレンマ』早わかり講座」”. Biz/Zine (翔泳社). (2014年11月15日). http://bizzine.jp/article/detail/111 





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