研究開発 共同研究開発

研究開発

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/02 09:17 UTC 版)

共同研究開発

オープンイノベーションを特に支援するため、技術研究組合制度が設けられている。技術研究組合は、組合の試験研究費を組合員の試験研究費として参入することができ、また研究開発促進税制を活用することができるため、企業財務上特に有利な制度として設けられている。2009年の通常国会で48年ぶりの抜本的大改正が行われ、鉱工業技術研究組合から技術研究組合となった。2者以上で設立ができるほか(これまで3者以上)、創立総会が不要となり、株式会社、合同会社への組織変更が可能となるなど、抜本的に拡充された。

産学官連携

企業は、市場化に関するノウハウはあっても長期に渡る研究開発に投資しつづけることは資金的に困難なことが多く、一方、教育機関大学等)は採算性を考慮せず長期に渡り研究を行うことはできるものの、市場化・製品化のノウハウはすっかり欠如していることが多い。そのため、それらの問題点を解消するために公的機関によって、企業と教育機関のマッチング(お見合い)が行われるようになり、両者が連携して活動することが盛んに行われるようになった[12]

経済産業省による「平成17年度大学初ベンチャーに関する基礎調査」によると、大学発ベンチャーは1503社に及ぶとされ、それらベンチャー製品・サービスの供給先の7割は企業、とされる[15]。供給先の内訳としては、57%が大手企業で、16%ほどが中小ベンチャー企業である[16]

職種としての研究開発

企業では「研究開発」あるいは「R&D」という名称の職種・ポジションが設定されていることがあり、研究開発はひとつの専門職として成立している。

ただし、現実には研究開発の部門に短期的な利益が期待されることもあり、本来の意味を必ずしも保持できていない。

会計

研究開発は費用かつ収益源でありまた企業の将来に渡る損益へ大きな影響を与えることから特段の扱いがなされている。例えば日本では財務諸表に対する研究開発費の注記が義務付けられている[17]

研究開発費は将来的な収益をもたらす観点からは費用性資産といえる一方[18][19]、実態としてその多くは収益へと結びつかない[20][21]。確実性の評価に基づいて費用計上・繰延資産計上を選択可能にした場合、評価方法のバラツキによって決算書の比較可能性が下がってしまう[22][23][24]。このような背景から2022年現在、多くの会計基準ではR&D費の一括費用計上を原則としている (例: 日本[25])。


  1. ^ a b c d 土方千代子、椎野裕美子『ポケット図解 最新経営学がよーくわかる本』秀和システム、2006年7月。ISBN 978-4798013978  p.202
  2. ^ 榊原清則・辻本将晴、2003年6月「日本企業の研究開発の効率性はなぜ低下したのか」(内閣府経済社会総合研究所 ディスカッション・ペーパー・シリーズ)p.13
  3. ^ 児玉文雄『ハイテク技術のパラダイム:マクロ技術学の体系』中央公論社、1991年、p.43
  4. ^ 「日本企業の研究開発の効率性はなぜ低下したのか」p.2。
  5. ^ 「日本企業の研究開発の効率性はなぜ低下したのか」p.4
  6. ^ 「日本企業の研究開発の効率性はなぜ低下したのか」p.13
  7. ^ 「日本企業の研究開発の効率性はなぜ低下したのか」p.16
  8. ^ Morbey、Reithner 1990など
  9. ^ 「日本企業の研究開発の効率性はなぜ低下したのか」p.6
  10. ^ https://japan.cnet.com/article/20345869/2/
  11. ^ https://japan.cnet.com/article/20345950/
  12. ^ a b 『ポケット図解 最新経営学がよーくわかる本』p.204
  13. ^ a b c d 『ポケット図解 最新経営学がよーくわかる本』p.207
  14. ^ 経済成長を加速させる米日、鈍化させる韓国」『』。2018年8月1日閲覧。
  15. ^ 『ポケット図解 最新経営学がよーくわかる本』p.208
  16. ^ 経済産業省「大学発ベンチャーの成長支援に関する調査報告書」
  17. ^ "一般管理費及び当期製造費用に含まれる研究開発費の総額は、財務諸表に注記しなければならない。" 研究開発費等に係る会計基準.
  18. ^ "1990年代まで、企業の試験研究や開発のための支出 ... 繰り延べ資産としてバランスシートに計上し ... 研究開発は将来の利益のために支出する投資という性質があり、単年度の費用とするよりも、複数年にわたって費用負担させる考え方には、合理性があるように思える。" 柴山 公認会計士. (2013). 研究開発費 -繰り延べ資産から費用の一括計上へ統一されたわけ.
  19. ^ "収益費用アプローチからみれば,将来の経済的便益をもたらすと予測される特定の支出である試験研究費と開発費を支出した会計年度だけに負担させるいわゆる発生時費用処理よりも,この支出が影響する将来の一定年度にわたって負担させるべきという繰延処理の方が理論上は妥当である。" 譚. (2017). 日本における研究開発費会計の変遷. 産業経済研究所紀要.
  20. ^ "いくらお金をかけて研究開発を行ったとしても、それがすべて利益を生み出すわけでもないし、途中で断念するケースもある。結局のところ研究開発の成否はまちまちで、お金をかけた研究開発が資産と呼べるものかどうかは、時間が経たないとわからない。" 柴山 公認会計士. (2013). 研究開発費 -繰り延べ資産から費用の一括計上へ統一されたわけ.
  21. ^ "研究費は,発生時には将来の収益を獲得できるか否か不明であり,また,研究開発計画が進行し,将来の収益の獲得期待が高まったとしても,依然としてその獲得が確実であるとはいえない。そのため,研究開発費を資産として貸借対照表に計上することは適当でない。" 譚. (2017). 日本における研究開発費会計の変遷. 産業経済研究所紀要.
  22. ^ "どちらかを選択できるとなると、企業によって処理がまちまちになり、企業間の財務体質の比較がしにくくなるという問題が生じる。" 柴山 公認会計士. (2013). 研究開発費 -繰り延べ資産から費用の一括計上へ統一されたわけ.
  23. ^ "資産への計上が任意となることから,内外企業間の比較可能性が阻害されていた(「研究開発費に係る会計基準の設定に関する意見書」2)。" 譚. (2017). 日本における研究開発費会計の変遷. 産業経済研究所紀要.
  24. ^ "仮に,一定の要件を満たすものについて資産計上を強制する処理を採用する場合には,資産計上の要件を定める必要がある。しかし,実務上客観的に判断可能な要件を規定することは困難であり,抽象的な要件のもとで資産計上を求めることとした場合,企業間の比較可能性が損なわれるおそれがあると考えられる。" 譚. (2017). 日本における研究開発費会計の変遷. 産業経済研究所紀要.
  25. ^ "研究開発費は、すべて発生時に費用として処理しなければならない" 研究開発費等に係る会計基準.


「研究開発」の続きの解説一覧




研究開発と同じ種類の言葉


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

「研究開発」に関係したコラム

  • 株式の投資判断とされるR&D比率とは

    株式の投資判断とされるR&D比率とは、売上高のR&Dの割合をパーセンテージで表したものです。R&D比率は、売上高研究開発費比率ともいいます。R&D比率のR&Dとは研究開発費のことです。一般的にR&D比...

  • 株式の中型株とは

    東京証券取引所(東証)では、規模別株価指数の算出のために一部上場銘柄を大型株、中型株、小型株の3つに分類しています。その基準は、時価総額や株式の流動性などによって順位づけしたものになっています。大型株...

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「研究開発」の関連用語

研究開発のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



研究開発のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの研究開発 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS