看護教育 日本

看護教育

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/27 07:22 UTC 版)

日本

日本においては保健師助産師看護師法に基づく国家資格であり、看護師になろうとする者は看護師国家試験に合格し、厚生労働大臣の免許を受けなければならない(法第7条3)。

看護師養成所

日本において看護師は、看護専門学校、看護短大、看護系大学看護高等学校専攻科といった看護師養成所で養成されている。これらの看護師養成所を卒業することで看護師国家試験の受験資格が得られる。これらの養成所については、保健師助産師看護師学校養成所指定規則によって基準が定められている。さらに看護系大学や看護短大では、これ以外に大学設置基準を満たす必要がある。受験資格の取得には最低3年必要であり、看護専門学校が全日制の場合3年、看護短大が3年、看護系大学は4年である。また、高等学校衛生看護科と衛生看護専攻科の一貫教育をとっている場合は中学校卒業後5年であり、普通科高校から専攻科への入学はできない場合が多い。

准看護師の養成は、准看護専門学校や高校の衛生看護科で行われている。これらの准看護師養成所を卒業することで准看護師試験の受験資格が得られる。受験資格の取得には最低2年必要である。准看護師養成機関の卒業生の多くは、そのまま2年制の進学課程に進み、日中は医療機関に勤務し、午後または夕方から看護学校に通うといった形態で看護師免許を取得している。看護師の専門性と質の高さを保障するために、准看護師の養成教育は、縮小・廃止される方向にあり、全日制高校の衛生看護科も専攻科との一貫制による看護師養成所に移行しつつある。

これらの養成所を卒業することで得られるのはあくまでも受験資格であり、その後国家試験に合格しなければ看護師(あるいは准看護師)となることはできない。

また、10年以上の経験を有する准看護師を対象とした看護師への移行教育課程(2年課程通信制)も2004年度から開設されている。

歴史

日本においては、大正後期から昭和初期にかけての日本赤十字社による戦時救援看護婦養成が主流となり、全国の看護婦養成所の模範となって全国に広まった。「日本赤十字社の看護教育は, 日本陸軍の教育方針に通じ,上官の命に絶対服従する,克己,忍耐,奉仕が指導精神の柱であった。日本赤十字社の教育の特徴は、看護技術教育であり、臨床に先立つ教室における実習やデモンストレーションは殆ど行われることなしに、臨床での実践によって訓練された。指導体制では婦長一卒業生一上級生一下級生といヒエラルキーがあり,上位の人には絶対的権威があった。看護行為の判断と実行には,すべて上位者の指示が必要で、あった。状況に応じて熟練した方法を他者に示すことはあっても,その根拠を他者に納得いく方法で教えることは少なかった」[3]

特に、日本における看護倫理の歴史は浅い。「日本では戦後長らく、看護学研究に関する倫理の問題はおろか看護倫理一般についての空白期が1980年代初頭まで続いた。かつて日本の看護師には、清楚さ、奉仕的精神、医師への従順さ、組織への忠誠、規律と秩序の維持等の、専ら内面的な美徳を備えた者であることが期待され、それに応答することが看護倫理であった。しかし、戦後民主主義が浸透し、経済的に豊かになる中で、過去の看護師像に対する強い反発と反動が日本の看護界に広まり、抑圧された過去の看護師像を想起させる看護倫理そのものが敬遠されたことが,この空白の背景にあるといわれている。その結果,米国では1960年代からすでに看護学研究に伴う倫理的課題に対する積極的応答が看護界全体においてみられたのに比して、日本の看護界における対応は1980年代中頃になるまでほとんど皆無であった」[4]

課題

2006年現在、看護師となるためには最低3年間の教育が必要とされているが、医療の高度化に伴い看護に必要な知識も増大していること、医療ミスの予防、医療倫理的問題への対応能力の育成といった観点から、4年間の教育を義務とする意見や、卒後1年間の臨床研修を義務化する意見などがあり、検討されている。

2008年1月に保健師助産師看護師学校養成所指定規則が改正され、平成21年度から実践能力の向上等を目標に4単位の単位数の増加や「統合的な科目」として新たに講義や実習科目が追加される予定である。

また、2008年7月7日には厚生労働省の「看護基礎教育のあり方に関する懇談会」で、高度医療へ対応するため、専門学校が中心だった看護師の養成を、将来は大学に移行させるのが望ましいとの提言をまとめ、厚労省は大学教育の拡充に向けた教員確保やカリキュラムの検討に入るとの答申を表明した[5]


  1. ^ a b c d e f g h i 国名 アメリカ合衆国 一般社団法人日本看護学教育学会、2021年5月7日閲覧。
  2. ^ a b c 白瀨由美香「イギリスにおける医師・看護師の養成と役割分担 (特集 医師・看護師の養成と役割分担に関する国際比較)」(PDF)『海外社会保障研究』第174号、アーバン・コネクションズ、2011年、52-63頁、NAID 40019186427NDLJP:10990095 
  3. ^ 吾妻知美「ナイチンゲールの看護の本質はどのように伝えられたか」『教授学の探究』第23号、北海道大学大学院教育学研究科教育方法学研究室、2006年、111-121頁、ISSN 0288-3511NAID 120000959066 
  4. ^ 看護における研究倫理指針の歴史的展開 国立循環器病研究センター医学倫理研究室 /「看護研究」誌(医学書院) 2018年7月8日閲覧
  5. ^ 看護師: 「大学で養成を」 厚労省の懇談会が提言、2008年7月7日、毎日.jp


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