発泡プラスチック フェノールフォーム

発泡プラスチック

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/09/23 21:50 UTC 版)

フェノールフォーム

フェノールフォーム(PFフォーム)は1940年代には開発され、ドイツの航空機にバルサの代替として用いられた。その後PURフォームが市場で大きく受け入れられて生産量はわずかに留まっていたが、1985年6月に準不燃材料試験方法が大幅に改訂され、日本ではPFフォームの優位が見直された。なお、ガラス繊維強化フェノール樹脂(PF-FRP)を多孔質体とみなし、広義のPFフォームに加える場合もある[32]

他有機物材料の中でPFフォームを上回る難燃性、耐熱性、低発煙性は現実的には無く、原料のホルムアルデヒド残留問題は解決している[33]。しかしPFフォームは強度に劣り、また硬化剤の残留から酸性を示す点、および技術開発が浅く生産性やコストには改善の余地を残している。

原材料
フォーム用フェノール樹脂はノボラック型・レゾール型の両方とも利用される。発泡剤は、ノボラック型には熱分解型が使われ、フェノール型には以前はフロン類が用いられていたが研究開発の結果炭化水素類に切り替わった[33]。ノボラック型は架橋剤としてヘキサメチレンテトラミンなどが使われる。その他の原料は、整泡剤としてシリコーン系化合物、発泡剤がレゾールや硬化剤との相溶性に劣る場合は界面活性剤が用いられる。PFは酸性であるため、用途によっては亜鉛やアルミ粉末などを加える場合もある。
製法・性能・用途
ノボラック型PFフォームの原料は固体であり、これに架橋剤や発泡剤などを加えコンパンウンドした粒状体を金型またはプレスにて加熱加工する。化学プラントのパイプカバーなど工業用途にて採用されるが、建築分野ではあまり使われていない。
レゾール型は硬質PURフォームと同様に多様な製造方法が取られる。ブロック発泡法は用途例が少ないが、華道剣山用フォームは連続気泡をつくるためにアニオン系界面活性剤などを加えてこの方法で作られている。注入発泡法ではオープンモールドからクローズトモールドまで利用され、サンドイッチパネル類の製造に用いられる。同じサンドイッチ構造を得るには、生産性が高い連続ラミネート法が主流を占める。現場発泡は硬質PURフォームと同じ建設分野の断熱剤用途のうち、難燃性が特に求められる箇所で採用されている。

注釈

  1. ^ この他にも、引き伸ばされた壁面では界面活性剤の濃度低下が起き、これを戻そうとする作用も影響すると章を執筆した岩崎和男は考察している。Marangoni効果(表面弾性効果)と呼ばれるこの作用の実証されていないが、岩崎は現実的に矛盾しないとして当てはめることは妥当としている[5]
  2. ^ 厳密には「ウレタン変性ポリイソシアヌレートフォーム」と呼ぶべきである[18]

出典

  1. ^ 発泡プラスチック”. 科学技術総合リンクセンター. 2010年1月15日閲覧。
  2. ^ a b c 本山卓彦『おもしろいプラスチックのはなし』(初版9刷)日刊工業新聞社、1995年10月20日、130-131頁。ISBN 4-526-02381-7 
  3. ^ 樹脂成形体の製造方法/志熊治雄」、j-platpat、2022年3月10日閲覧 
  4. ^ 足立廣正「マイクロセルポリウレタンフォームにおける動的圧縮弾性率による耐熱性の評価」『高分子論文集』第63巻第6号、社団法人 高分子学会、2006年、440-443頁、doi:10.1295/koron.63.4402010年1月15日閲覧 
  5. ^ 『各種高分子の発泡成形技術』p41
  6. ^ 1-6-1 食品の保護性を追及した包装容器/低音保持性・熱遮断性包装容器/発泡包装フィルム・シート” (PDF). 経済産業省特許庁. 2010年1月15日閲覧。
  7. ^ プラスチックの知恵袋”. 昭栄化工. 2010年1月15日閲覧。
  8. ^ ASTM D2856:Standard Test Method for Open Cell Content of Rigid Cellular Plastics by the Air Pycnometer
  9. ^ 角倉敏彦、黒江秀男、青木信明. “応用物理第33巻 第9号 寄書:軟質ポリウレタンフォームセルのセル構造と機械的性質”. 2010年1月15日閲覧。
  10. ^ 牧広、小坂田篤『プラスチックフォームハンドブック』日刊工業新聞社、1973年、29-65頁。 
  11. ^ a b c 軟質ウレタンフォームとは”. 日本ウレタン工業協会. 2010年1月15日閲覧。
  12. ^ 軟質ウレタンフォームにはフロンが使用されていますか?”. 日本ウレタン工業協会. 2010年1月15日閲覧。
  13. ^ ㈱山城精機製作所 超高速加硫ゴム射出成形機「SANPICS」 : 滞留防止構造と射出発熱均一化機構により,超高速加硫を実現, Polyfile, 国立国会図書館書誌ID:024955624 
  14. ^ a b 工場では軟質ウレタンフォームはどのような方法で製造するのですか?”. 日本ウレタン工業協会. 2010年1月15日閲覧。
  15. ^ (WO/2009/098966)低反発軟質ポリウレタンフォーム”. World Intellectual Property Organization. 2010年1月15日閲覧。
  16. ^ 軟質ポリウレタンフォームシーリング材の製造方法”. j-platpat. 2022年3月10日閲覧。
  17. ^ 硬質ウレタンフォームの特徴”. 日本ウレタン工業協会. 2010年1月15日閲覧。
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  22. ^ a b c ポリスチレンのリサイクル”. 日本スチレン協会. 2010年1月15日閲覧。
  23. ^ 安全性と環境問題 地球温暖化抑制に「ノンフロン」”. 日本スチレン協会. 2010年1月15日閲覧。
  24. ^ a b c 古本宏二『プラスチック技術全書 8 ポリスチレン樹脂』工業調査会、1970年、133-134頁。 
  25. ^ US Pat. No. 3,067,147
  26. ^ Brit. Pat. No.899,389
  27. ^ 特公昭40-8840
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  29. ^ Brit. Pat. No.1,126,857
  30. ^ 三石幸夫監修、PETフィルム、技術情報協会、1990年
  31. ^ 宇野敬一、接着31巻12号、1987年、10
  32. ^ 岩崎ら『発泡プラスチック技術総覧』p195
  33. ^ a b 高性能フェノールフォーム”. フェノールフォーム協会. 2010年1月15日閲覧。
  34. ^ ブラウンズフェリー1号機の火災と米国の火災防護の取り組み - 原子力規制委員会(平成24年11月21日/2017年5月11日閲覧)
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  40. ^ 2004年度 海辺の漂着物調査 報告書”. 日本財団. 2010年1月15日閲覧。
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  42. ^ a b c 発泡プラスチック系断熱材による火災災害”. 労務安全情報センター. 2010年1月15日閲覧。
  43. ^ 4年前の火災事件にやっと和解成立”. ANAP. 2010年1月15日閲覧。
  44. ^ 相次ぐ発泡プラスチック系断熱材の火災”. 日経BP. 2010年1月15日閲覧。
  45. ^ TVCCの火災に思うこと”. 改正総一郎/東邦レオ・NPO法人外断熱推進会議関西支部理事、副支部長. 2010年1月15日閲覧。






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