痩果 痩果の概要

痩果

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/04/29 01:58 UTC 版)

1a. イチゴバラ科)の花托上の痩果
1b. タンポポキク科)の冠毛をつけた痩果(下位痩果)

狭義には子房上位雌しべにおいて種子のもととなる胚珠を含む部分である子房が、花弁雄しべ基部よりも上部についていること)で1枚の心皮(雌しべを構成する葉的要素)からなるものに限られるが、ふつう子房下位や複数の心皮からなるものでも同様の特徴をもつものは痩果とよばれる。ただしキク科の痩果のように下位子房に由来するものは、特に下位痩果(菊果)とよばれることもある。1つのから複数の痩果が形成され、集合果を形成することもある。痩果からなる集合果であり、かつ花托に由来する構造が多くを占める偽果として、イチゴ状果バラ状果がある。また複数の花がそれぞれ痩果を形成し、まとまって複合果(多花果)を形成する例もプラタナスなどに見られる。痩果は裂開しないため、種子を含んだ果実が散布される。


注釈

  1. ^ 複数形は achaenia[1]
  2. ^ 複数形は acheniums または achenia[1]
  3. ^ カヤツリグサ科の果実は、堅果(小堅果)とされることもある[2][13]
  4. ^ タデ科の果実は、堅果(小堅果)とされることもある[2]
  5. ^ 複数形は cypselae または cypselas[15]
  6. ^ 複数形は caryopses または caryopsides[16]
  7. ^ 複数形は samaras または samarae[17]
  8. ^ 複数形は cynarrhodia[19]
  9. ^ 複数形は cocci[20]
  10. ^ このような果実は胞果(嚢果、utricle)ともよばれるが[5]胞果(utricle)はふつうヒユ科などに見られる果皮種子をゆるく包んだ果実を意味しており[2]、果実が果胞で包まれたスゲ属のものとは構造的に異なる。
  11. ^ 複数形は syconia[21]

出典

  1. ^ a b c achene”. WordSense Online Dictionary. 2022年5月2日閲覧。
  2. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t 清水建美 (2001). 図説 植物用語事典. 八坂書房. pp. 96–108. ISBN 978-4896944792 
  3. ^ a b c d 巌佐庸, 倉谷滋, 斎藤成也 & 塚谷裕一 (編) (2013). “痩果”. 岩波 生物学辞典 第5版. 岩波書店. p. 822. ISBN 978-4000803144 
  4. ^ a b c d e f g h i j k 大橋広好, 門田裕一, 邑田仁, 米倉浩司, 木原浩 (編), ed (2015). “植物用語の図解”. 改訂新版 日本の野生植物 1. 平凡社. pp. 10–17. ISBN 978-4582535310 
  5. ^ a b c d e 山崎敬 (編集), 本田正次 (監修), ed (1984). “1. 果実”. 現代生物学大系 7a2 高等植物A2. 中山書店. pp. 101–110. ISBN 978-4521121710 
  6. ^ a b c d e f 清水晶子 (2004). “果実と種子”. In 大場秀章. 絵でわかる植物の世界. 講談社. pp. 95–106. ISBN 978-4061547544 
  7. ^ a b c d e f 原襄・西野栄正・福田泰二 (1986). “果実”. 植物観察入門 花・茎・葉・根. 培風館. pp. 47–68. ISBN 978-4563038427 
  8. ^ a b c d e f 矢野興一 (2012). “果実”. 観察する目が変わる 植物学入門. ベレ出版. pp. 150–165. ISBN 978-4860643195 
  9. ^ a b 痩果”. コトバンク. 株式会社DIGITALIO. 2022年4月29日閲覧。
  10. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文 (2012). 草木の種子と果実. 誠文堂新光社. pp. 22–249. ISBN 978-4-416-71219-1 
  11. ^ 伊藤元巳 (2016). “マツモ”. In 大橋広好, 門田裕一, 邑田仁, 米倉浩司, 木原浩 (編). 改訂新版 日本の野生植物 2. 平凡社. p. 101. ISBN 978-4582535396 
  12. ^ a b Armstrong, W.P.. “Fruit Terminology Part 2”. Wayne's Word. 2022年5月6日閲覧。
  13. ^ a b c 勝山輝男・早坂英介 (2015). “カヤツリグサ科”. In 大橋広好, 門田裕一, 邑田仁, 米倉浩司, 木原浩 (編). 改訂新版 日本の野生植物 1. 平凡社. p. 294. ISBN 978-4582535327 
  14. ^ a b 米倉浩司 (2017). “タデ科”. In 大橋広好, 門田裕一, 邑田仁, 米倉浩司, 木原浩 (編). 改訂新版 日本の野生植物 4. 平凡社. p. 84. ISBN 978-4582535341 
  15. ^ cypsela”. WordSense Online Dictionary. 2022年5月2日閲覧。
  16. ^ caryopsis”. WordSense Online Dictionary. 2022年5月2日閲覧。
  17. ^ samara”. WordSense Online Dictionary. 2022年5月3日閲覧。
  18. ^ a b 原襄 (1994). “果実と種子の多様性”. 植物形態学. 朝倉書店. pp. 166–169. ISBN 978-4254170863 
  19. ^ cynarrhodium”. WordSense Online Dictionary. 2022年5月2日閲覧。
  20. ^ coccus”. WordSense Online Dictionary. 2022年5月6日閲覧。
  21. ^ syconium”. WordSense Online Dictionary. 2022年5月16日閲覧。
  22. ^ a b c 小林正明 (2007). “かぎで動物にくっ付いて”. 花からたねへ 種子散布を科学する. 全国農村教育協会. pp. 172–184. ISBN 978-4881371251 
  23. ^ a b 小林正明 (2007). “毛で飛ぶ”. 花からたねへ 種子散布を科学する. 全国農村教育協会. pp. 49–63. ISBN 978-4881371251 
  24. ^ a b c 多田多恵子 (2010). “風散布”. 身近な草木の実とタネハンドブック. 文一総合出版. pp. 9–11, 15–18, 26. ISBN 978-4829910757 
  25. ^ a b 小林正明 (2007). 花からたねへ 種子散布を科学する. 全国農村教育協会. pp. 81–89. ISBN 978-4881371251 
  26. ^ a b 小林正明 (2007). “水に浮いて移動する”. 花からたねへ 種子散布を科学する. 全国農村教育協会. pp. 200–209. ISBN 978-4881371251 
  27. ^ 小林正明 (2007). “水中に浮遊したり、沈む”. 花からたねへ 種子散布を科学する. 全国農村教育協会. pp. 209–214. ISBN 978-4881371251 
  28. ^ a b c 多田多恵子 (2010). “付着散布”. 身近な草木の実とタネハンドブック. 文一総合出版. pp. 70–84. ISBN 978-4829910757 
  29. ^ a b 小林正明 (2007). “粘液で動物にくっ付いて”. 花からたねへ 種子散布を科学する. 全国農村教育協会. pp. 185–194. ISBN 978-4881371251 
  30. ^ a b 小林正明 (2007). 花からたねへ 種子散布を科学する. 全国農村教育協会. pp. 139–154. ISBN 978-4881371251 
  31. ^ a b c d 多田多恵子 (2010). “被食散布”. 身近な草木の実とタネハンドブック. 文一総合出版. pp. 89, 91, 102–103, 122. ISBN 978-4829910757 





英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「痩果」の関連用語

痩果のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



痩果のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの痩果 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS