男性差別 事例

男性差別

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/09/26 05:28 UTC 版)

事例

アメリカ

  • 18歳から25歳までの永住権保持者または市民の男性には選抜徴兵登録制度英語版に郵便局で登録することが強制されている。拒否すると、州によっては罰金刑に処される他、政府の奨学金を受けられなくなるなどの各種不利益を受ける[24]。ただし、この男性限定の選抜徴兵登録については、連邦最高裁で男性差別ではなく合憲との判決が下されている。
  • 1996年7月9日付けのボストン・グローブ紙では、13歳の少年を強姦したとして訴えられた37歳の女性の事件を報道したが、その中で「少年も望んでいたに違いないさ」「夢のようなことさ」「間違いなく強姦だけど、男の子は若いうちから性的に活発じゃなきゃっていう社会通念があるから、みんなどこかで許容してしまっている」といった、男性被害者に対する偏見があるとしている[25]
  • 2005年に、8歳の少年が14歳の少女にわいせつ行為をされた際に「たとえ初めは少女が誘ったにせよ少年は対等の行為参加者だった」として少年のほうが「未成年者へのわいせつ行為」で訴えられた事件が報道された(後に検察側は起訴を取り下げた)。怒った母親は、こういう場合に親は息子が起訴されることを恐れず、州の担当部署に堂々と訴えるべきだと述べている[26]

イギリス

  • かつて男性の自動車保険の保険料は女性の2倍であった。BBCの自動車番組トップ・ギアではそれを皮肉って「ペニスを切り落とせ」と言う台詞が出てくるほどであった[27]。なおこのような格差が生まれた背景は、男性は女性に比べ運転機会が多く、女性に比して44:32で事故発生を起こす危険性が高いため、男性の保険料を高く設定する必要があるためであり、単なる性別差別ではない。また現在では、同じ保険であれば男女で同じ保険料とするよう法律で定められている。

韓国

  • 兵役の有無[28][29]韓国の男子学生の46.3%は、韓国内に兵役などの男性差別があると考えている[30]
  • 2006年に民法が改正されるまでは、婚姻可能年齢を男性は満18歳、女性は満16歳と定めていた(日本と同じ)[31]。しかし、現在は男女平等の観点から男女とも満18歳に統一されている。
  • 国家有功者・独立有功者及びそれらの遺族について、国家養老施設で保護される条件が、女性は60歳以上、男性は65歳以上と定められている[31]
  • 直系尊属家族の手当需給権者が男性尊属の場合は60歳、女性尊属の場合は55歳と定められている[31]
  • 大韓航空には客室乗務員の募集と採用において男性を排除する採用慣行が存在するため、2008年に国家人権委員会からこれを男性差別だと判断され、この採用慣行を是正するように勧告された[32]

日本

政治

  • 結婚可能年齢は男性は満18歳、女性は満16歳[33]。ただし民法の一部を改正する法律(平成30年6月20日法律第59号)により、2022年(令和4年)4月1日から男女とも満18歳に統一される[34]
  • 強姦罪 — かつて刑法177条から180条で規定されていた強姦罪では、女性に対する強姦の規定だけしか存在しなかった。これは、かつての強姦罪規定においては、強姦による妊娠が重要視されたためでもあり、男性に対する強姦と同様に肛門性交や口淫も含まれなかった。この定義の範囲を拡大して、男性に対する強姦も重大な犯罪とされることを確保することが、性差別是正の観点により国連自由権規約委員会から日本に対して勧告されていた[35]メイル・レイプ逆レイプも参照のこと。2017年7月13日に、男性が被害者の場合を含む強制性交等罪の規定が設けられることに伴い、強姦罪の名称は廃止された。
  • 助産師 — 保健師助産師看護師法では助産師資格についての規定があるが、第3条で資格対象を女性のみに限定しており[36]、男性差別の観点から疑問が呈されている[37]
  • 労働災害遺族年金 — 夫が死亡した妻に対しては、無条件で労災遺族年金支給されるのに対し、妻が死亡した夫に対しては、55歳未満の場合は支給されない[38]
  • 寡婦年金 — 夫と死別した妻に対しては寡婦年金が支給される場合があるが、妻と死別した夫に対しては支給されない[42]。こういった女性だけにしか年金が支給されない点については、男性だからという理由で年金を受ける権利が与えられないのには違和感を覚えるという、男女平等や男性差別の観点から疑問が呈されている[43]
  • 児童扶養手当 — 2010年7月までは、児童扶助手当が母子家庭には支給されるが、父子家庭に対しては児童扶養手当が支給されなかったが、父子家庭を不当に排除しているとの批判もあり[44]、2010年8月に児童扶養手当法が改正され、父子家庭に対しても支給されるようになった[45]
  • 後遺障害に傷が残る後遺障害について、女性の方が保険金額が高くなる(自賠責保障法施行令第2条別表2による 男性への14級適用に対して2階級高い12級 大きな傷の場合には男性が12級適用に対して5階級高い7級[46])。その理由として、女性の方が容姿を重要視されるという考え方がある[47]労働災害において、このような扱いは違憲であると京都地方裁判所が判例を示し[48]、これを受けて、認定業務を担当する厚生労働省労災補償部補償課は基準見直しを決定[49]。等級表の制定は1947年(昭和22年)、等級表の元になった基準が制定されたのは、労災保険法の前身の「工場法」によるもので1936年昭和11年)であるという[50]
  • 丸刈り自衛隊の新隊員への訓練、警察学校の学生、日本の刑務所受刑者においては、男性に対してのみ丸刈りが画一的に課せられている。また、一部の学校では校則や部活動の規則[51]として、丸刈りやスポーツ刈りを規定している学校もある。一方で大抵の場合、女性受刑者は髪型が自由で、収監時に染髪されている状態だった場合は、そのままでいることが黙認されている[52]

経済

  • 就職差別 — 客室乗務員秘書・受付事務・一般事務などの事務職、介護・看護・保育などの専門職、食品・菓子店等のパートタイマーは、女性が多数を占める職種である[53]
  • 育児 — 男性は女性に比べ、育児休業を取得することが困難である場合が多い。育児休暇の取得は法律によって男女平等に認められているが、厚生労働省が発表した2011年度の雇用均等基本調査によると、女性の育児休業取得率87.8%に対し、男性の育児休業取得率はわずか2.63%と極めて低くなっている[54]。この背景としては、企業・職場において女性に比べて男性の育児休暇取得に対する理解がないことや、男女を問わず「男は仕事、女は家庭」といったステレオタイプなジェンダー・バイアス(性的偏見、性差別)の風潮があることが指摘されている[55]。『日経スペシャル ガイアの夜明け』で取り上げられた際には「男性の育児休暇制度だけを整備しても休暇取得率は上がらない。企業の、職場の意識を変える必要がある」という提起がされている[56]
  • 肉体労働・命の危険が伴う労働 — 男女共同参画について、兵庫県が職員の意識、実態を調査したところ、見直すべき職場慣行として、「引っ越しなどの力仕事は男性のみでする傾向にあり、負担が大きい」「男性の方が長時間残業を強いられている」「災害時の人員配備で女性が免除されている」などの問題点が挙げられた[57]



  1. ^ 『男性権力の神話 《男性差別》の可視化と撤廃のための学問』p.34
  2. ^ 「ファレルは権力を,「自身の人生をコントロールする」[Farrell, W 1993=2014:46]能力と定義している。これは社会学の領域では,かなり特殊な権力の定義だと考えられる。より マクロな観点の権力論はありうるにしても,M.ウェーバー以降,権力は「他者の行為を,その抵抗を排しても自己の意図する方向に制御しうる能力」[長谷川他 2007:79-80]という定義が基本となってきた。ファレルの権力の定義は,他者抜きのものであり,これでは男性自身が感じる男性として生きる上での「生きづらさ」を記述することは可能でも,差別や支配を論じることはできない。」(田中 2016: 59)
  3. ^ 書評と紹介 ワレン・ファレル著/久米泰介訳『男性権力の神話 : 《男性差別》の可視化と撤廃のための学問』”. 田中 俊之. 2018年10月5日閲覧。
  4. ^ 加藤秀一(2017)『はじめてのジェンダー論』有斐閣.p.165 太字は原文。ただし傍点は省略。
  5. ^ 加藤秀一(2017)『はじめてのジェンダー論』有斐閣.p.166
  6. ^ 「女性専用車両が痴漢対策として理想的な方法だというわけではありません。本来は痴漢という犯罪自体を撲滅することが望ましいに決まっているのですが、それが実現するのはいつのことになるのか――そもそも可能かどうかさえ――わからないので、さしあたりの対症療法がとられたということです」(加藤 2017 p.165)
  7. ^ 「国税庁『平静27年分民間給与実態統計調査』によれば、2015年の1年間を通じて勤務した給与所得者の平均給与は420万円ですが、性別ごとに見ると男性の521万円に対して女性は276万円であり、半分程度の給与しか得られていないことがわかります。また、給与階級別の人口割合の分布を見ると、年収300万円以下の低所得層は男性では23.1%なのに対し、女性では64%とおよそ3分の2に及んでいます。反対に高所得層について見ると、男性の28.2%が年収600万円を超えているのに対し、女性は5.6%しかいないことから、男女間に厳然たる賃金格差があることは明らかでしょう」(加藤 2017: 170)。
  8. ^ 加藤秀一(2017)『はじめてのジェンダー論』有斐閣.p.169
  9. ^ ただしレディース・デイに対しては「男性差別」とは異なる観点からの批判がある。 「映画館はべつに収入の低い女性に対する福祉事業として割引サービスを行なっているわけではありません。それに、収入の低い人に対する割引というなら、映画好きの貧乏学生は男性であっても割引を受けるに値すると言うべきでしょう。さらに、他人の性別を判定するという作業そのものに伴う問題もあります。外見的に女性に見えない人はどのように扱われるのでしょうか。性別が記載された身分証明書が必要なのでしょうか。戸籍上は男性であるトランス女性が十分には女性としてパスできていない場合、割引を受けられるのでしょうか。」(加藤 2017 p.168-169)
  10. ^ 「女性の場合には、そもそも雇用保険や年金の対象にならない、社会保険の利用から排除された低賃金の働き方の人が大半を占めているため、男性と比べて福祉や公的扶助の利用が認められやすいのである」(丸山里美,2013,『女性ホームレスとして生きる――貧困と排除の社会学』世界思想社,p.43-44)
  11. ^ 丸山里美,2013,『女性ホームレスとして生きる――貧困と排除の社会学』世界思想社,p.43
  12. ^ 「その [公的扶助:引用者注] 利用はスティグマをともなうものであり、利用に際して必要な資力調査は、女性本人の財産や収入だけではなく、収入をもたらしてくれる可能性のある男性関係にまで及び、生活の細部にわたって監視や管理が入り込むことになる」(丸山里美,2013,『女性ホームレスとして生きる─貧困と排除の社会学』世界思想社,p.44)
  13. ^ 丸山里美,2013,『女性ホームレスとして生きる─貧困と排除の社会学』世界思想社,p.43
  14. ^ 女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約”. 外務省. 2018年10月5日閲覧。
  15. ^ (辻村みよ子,2011『ポジティヴ・アクション――「法による平等」の技法』岩波書店.p.186-195)
  16. ^ 「例えば、女性の医師を増やす必要があるからといって、国家試験の女性受験者だけ合格基準点を自動的に引き下げたりするなら、「女性は能力もないのに医師になれる」というマイナスの評価を生み出しかねません。これは適用を誤った例で、合憲性・合法性の観点からも問題があり、女性に対して劣性の烙印(スティグマ)を与えるものでもあるため、女性からも到底賛同を得ることはできないでしょう。大学教員等も同じことで、女性であることを理由に、自動的・優先的に採用することなどは、妥当な方法ではありません。(……)少なくとも、候補者の能力が採用水準を満たしている場合に限り、個別事情や必要性・緊急性・暫定性等を勘案して一定の措置をとること、さらに、それについてのコンセンサスを前提的に得ておくことが必要です。ポジティヴ・アクションの方法は多様ですので、目的に応じた措置を有効・適切に活用しなければなりません」(辻村みよ子,2011『ポジティヴ・アクション――「法による平等」の技法』岩波書店.p.26)
  17. ^ アファーマティブ・アクションの措置には「1.(逆差別が問題となりうるような)厳格な格差是正措置」「2.(性別を考慮に入れるなどの)中庸な格差是正措置」「3.(格差是正のための両立支援・環境整備など)一般的な施策を含めた緩やかな支援策」という三つの区別ができる(辻村 2011: 81)。日本の企業等で奨励されている3つめの措置についてはほとんど法的問題はないが、1つめの措置などについては、諸外国で違憲判決が出ている場合もある(辻村 2013: 37)
  18. ^ (辻村みよ子,2011『ポジティヴ・アクション――「法による平等」の技法』岩波書店.)
  19. ^ 「このような状況は、女性にとって不利益をもたらすだけでなく、男性にとっても、権利侵害や不利益を引き起こしています。過労死や自殺を強いられるほどの「会社人間」化の圧力や、育児の喜びを得ることができない長時間労働など、それはすでに明らかでしょう(辻村 2011: 3)」
  20. ^ 堀田義太郎「差別論のためのノート」”. www.arsvi.com. 2018年9月22日閲覧。
  21. ^ デボラ・ヘルマン『差別はいつ悪質になるのか』池田喬・堀田義太郎訳.p.39
  22. ^ デボラ・ヘルマン『差別はいつ悪質になるのか』池田喬・堀田義太郎訳.p.62-70
  23. ^ a b International Men's Day
  24. ^ 選抜徴兵登録制度の公式ウェブサイト
  25. ^ 『少年への性的虐待—男性被害者の心的外傷と精神分析治療』(リチャード・B・ガートナー、1999年の書物の翻訳、2005年) 68・69ページ ISBN 4-86182-013-8
  26. ^ 8-Year-Old Charged For Sexual Conduct With Sitter” (英語). CBSニュース. Canadian Childrens Rights Council (2005年7月28日). 2012年8月26日閲覧。
  27. ^ Series13 Episode2。内容としては「17歳男性の為のクルマを司会者3人がそれぞれ選べ」というものだが、保険料がネックになっていた。「ペニスを切り落とせ」はそこで登場したセリフである。Zeisel, Hans 1985 Say it with figure Harper & Row:169ff.
  28. ^ 尹載善『韓国の軍隊―徴兵制は社会に何をもたらしているか』中公新書、2004年。ISBN 978-4121017628
  29. ^ チュチュンヨン『韓国徴兵、オレの912日』講談社、2006年。ISBN 978-4062810241
  30. ^ 『韓国の男子学生「大学には男性差別がある」46.3%』 2006年08月13日付配信 朝鮮日報
  31. ^ a b c 「韓国男性を差別する法律の中身とは?」
  32. ^ “大韓航空、男性差別是正勧告を拒否”. SBS. (2010年1月18日). http://news.sbs.co.kr/sports/section_sports/sports_read.jsp?news_id=N1000694716 
  33. ^ 民法第731条
  34. ^ “民法の一部を改正する法律(成年年齢関係)について”. 法務省. http://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00218.html 2020年1月27日閲覧。 
  35. ^ 国連自由権規約委員会の最終見解2008年10月10日
  36. ^ 保健師助産師看護師法第3条
  37. ^ 女性差別撤廃条約日本政府報告書第3回審議 社団法人自由人権協会
  38. ^ 夫に冷たい、遺族年金 - 和田雅彦、All About、2006年3月24日。
  39. ^ 遺族年金、受給資格の男女差「違憲」 大阪地裁が初判断 日本経済新聞 2013年11月25日
  40. ^ 遺族年金男女差、2審は合憲 1審「違憲」判決を取り消し 大阪高裁 - 産経ニュース、2015年6月19日
  41. ^ 遺族年金の男女差「合憲」 最高裁が初判断 賃金格差踏まえ - 日本経済新聞、2017年3月21日
  42. ^ 寡婦年金を受けられるとき 日本年金機構
  43. ^ 寡夫年金Q&A
  44. ^ なぜ父子家庭を排除するのか しんぶん赤旗 2009年7月8日
  45. ^ 児童扶養手当法(昭和36年法律第238号) - e-Gov法令検索NPO法人全国父子家庭支援連絡会が児童扶養手当法改正に大きく貢献し父子家庭にも支給が実現
  46. ^ 後遺障害等級表
  47. ^ 加茂隆康法律事務所
  48. ^ 労災で顔にやけど「性別で差」は違憲…京都地裁 毎日新聞 2010年5月27日
  49. ^ 男女差「違憲」で控訴断念=顔やけど跡の障害認定-厚労省時事通信2010年6月10日
  50. ^ 記者の目:顔の傷労災補償男女差毎日新聞2010年8月27日、古屋敷尚子
  51. ^ 特に運動部
  52. ^ 福島瑞穂 『福島みずほの刑務所の話』 現代人文社、2003年10。なお、2005年に改正された法律により「受刑者に対する意に反する調髪は衛生上の必要性を除く調髪する事は無い」とされているものの、「衛生上の必要」という名目で、男子に対してのみ丸刈りが強制されている。
  53. ^ 人口・就業に関する統計表平成19年就業構造基本調査
  54. ^ 雇用均等基本調査 厚生労働省
  55. ^ 育児における男女共同参画 下夷美幸, 大原社会問題研究所雑誌, 2004年6月
  56. ^ 私が子供を産めたわけ」『日経スペシャル ガイアの夜明け』2005年5月17日放送、テレビ東京。
  57. ^ 森本尚樹 (2009年4月25日). “男女共同参画、溝くっきり 県職員意識調査”. 神戸新聞. 2009年4月30日時点のオリジナル[リンク切れ]よりアーカイブ。2009年4月25日閲覧。
  58. ^ a b 日本国憲法国立国会図書館
  59. ^ 雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律 - e-Gov法令検索
  60. ^ 教育基本法 - e-Gov法令検索




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