生命 宗教における生命

生命

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/02/16 22:37 UTC 版)

宗教における生命

カバラに記されている生命の樹

多くの宗教においては、死後の世界もしくは、輪廻転生などがあると考えられている。この場合、人間の主体、存在の本質、あるいは人格そのものを、魂、霊魂と呼ぶ。生命と霊魂を同一視するかどうかは、様々である。

古代インドヴェーダ仏教では、人間の命と動物の命は同列的に扱われていた。仏教では、人間が動物に転生する考えなども見られるし、宗教家が動物を食べることはあまりよくないとする例もある。またジャイナ教では、虫を踏み潰して無駄な殺生をすることがないよう、僧侶は常にほうきを持ち歩くという習慣も見ることができる。

一方、キリスト教では、人間と動物の生命は全く別のものとする傾向が強く、人間という存在は「によってを吹き込まれたもの」であり特別な存在である。さらに言えば、「命を失った者」と背信者を呼ぶ比喩が存在し、「命を得た者」「永遠の命を得た者」と神を信じるようになった者、天国に至る権利を得た者を呼ぶ場合がある。

生物学における生命

生物学では、生物の示す固有の現象を生命現象と呼ぶ。生命とは、その根元にあるものとの思想があり、生気論もその一つである。

生命現象には様々な側面があるが、一般に生物学では、根本的な生命の定義に関わる部分は、その内部での物質交換と外部との物質のやりとり、および同じ型の個体の再生産にあると考えられている。また、そのような性質を持つ最小の単位が細胞であるので、細胞を生命の最小の単位と見なし、それから構成されるものに生命を認める、というのが一般的である[10]。植物の種子などのように、著しく代謝活動が不活発な状態でも代謝活動の再開が見込める場合には生きている、と呼ぶ。

(左)正二十面体様 (中)らせん構造 (右)無人探査機のような形状のファージ

ところが、ウイルスウイロイドなどの存在は判断が難しい。ウイルスを生物とするか無生物とするかについて長らく論争があり、いまだに決着していないと言ってもよい[15]

ウイルスは増殖はするが代謝を行っていない[15]。増殖について言えば、宿主となる生物が持つ有機物質合成機能のシステムの中にウイルスが入り込むと、宿主のシステムが言わば誤動作を起こしてしまいウイルスを増産してしまう。形状について言えば、ウイルスはDNAやRNAなどの核酸とそれを包む殻から成っている。概して幾何学的な形状を持っており、あるものは正二十面体のような多角立方体、あるものは無人火星探査機のようなメカニカルな形状をしており、同一種はまったく同形で、生物全般に見られる個体の多様性が見られない[15]。代謝について言えば、ウイルスは栄養を摂取することがなく、呼吸もしないし、老廃物の排泄もしておらず、つまり生命の特徴である代謝を一切行っていない[15]。また1935年にはすでにタバコモザイクウイルスの結晶化が成功している。結晶というのは、同じ構造を持つ単位が規則正しく充填される[15]。この点でもウイルスは生物というよりは物質と言える側面があることがわかった[15]。これらの相違点があるので普通はウイルスを生物とは認めない。 また、ウイロイドというのは、寄生性RNAのことで、ウイルス同様に宿主内のシステムが異常なものであることを判別できずに増産してしまう等々の特徴はウイルス同様であり一般に生物とは認めない。 ただし、これらも自己複製という点だけに着眼すれば単なる物質から一線を画しており、「ウイルスは生物と無生物の間をたゆたう何者かである[15]」とも福岡伸一は表現した。

近年の生命の定義の試みは多数あり主要なものを挙げただけでも相当な数になるが、参考までにその一例を紹介すると、例えば福岡伸一は、ルドルフ・シェーンハイマーの発見した「生命の動的状態」という概念を拡張し、動的平衡という概念を提示し、「生命とは動的平衡にある流れである」とした[16]。 生物は動的に平衡状態を作り出している[16]。生物というのは平衡が崩れると、その事態に対して反応を起こす[16]。そして福岡は、ノックアウトマウスの実験結果なども踏まえて、従来の生命の定義の設問は時間を見落としている、とし[16]、生命を機械に譬えるのは無理があるとする[16]。機械には時間が無く原理的にはどの部分から作ることもでき部品を抜き取ったり交換したりすることもでき生物に見られる一回性というものが欠如しているが、生物には不可逆的な時間の流れがあり、その流れに沿って折りたたまれ、二度と解くことのできないものとして存在している、とした[16]

生物物理学における生命

物理学者のシュレーディンガーは、著書『生命とは何か?』の中で生命を、ネゲントロピー(負のエントロピー)を取り入れ体内のエントロピーの増大を相殺することで定常状態を保持している開放定常系とした[17]




  1. ^ a b 大島(1994)、p.14-29、第1章 生命は星の一部である、(1)宇宙の生命を探る
  2. ^ Defining Life : Astrobiology Magazine - earth science - evolution distribution Origin of life universe - life beyond
  3. ^ Defining Life, Explaining Emergence
  4. ^ Can We Define Life”. Colorado Arts & Sciences (2009年). 2009年6月22日閲覧。
  5. ^ McKay, Chris P. (September 14, 2004). “What Is Life—and How Do We Search for It in Other Worlds?”. PLoS Biol. 2 (2(9)): 302. PMID PMC516796 doi:10.1371/journal.pbio.0020302. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC516796/?tool=pubmed 2010年2月2日閲覧。. 
  6. ^ Nealson, K.H.; Conrad, P.G. (December 1999). “Life: past, present and future”. Philosophical Transactions of the Royal Society of London B英語版 354 (1392): 1923–39. doi:10.1098/rstb.1999.0532. PMC: 1692713. PMID 10670014. http://journals.royalsociety.org/content/7r10hqn3rp1g1vag/fulltext.pdf. 
  7. ^ Mautner, Michael N. (2009). "Life-centered ethics, and the human future in space" (PDF). Bioethics. 23 (8): 433–40. doi:10.1111/j.1467-8519.2008.00688.x. PMID 19077128. 2012年11月2日時点のオリジナルよりアーカイブ (PDF)
  8. ^ Jeuken M (1975). "The biological and philosophical defitions of life". Acta Biotheoretica. 24 (1–2): 14–21. doi:10.1007/BF01556737. PMID 811024
  9. ^ Capron AM (1978). "Legal definition of death". Annals of the New York Academy of Sciences. 315 (1): 349–62. Bibcode:1978NYASA.315..349C. doi:10.1111/j.1749-6632.1978.tb50352.x
  10. ^ a b 大島(1994)、p.46-50、第2章 宇宙の中の生命、(1)生命の三つの特徴
  11. ^ a b c d e 『岩波 生物学事典』【生命】
  12. ^ a b c d e f g h i j k l m n o 山口裕之『ひとは生命をどのように理解してきたか』講談社、2011年 p.80-113
  13. ^ 『デカルト著作集4』p.286
  14. ^ 『ひとは生命をどのように理解してきたか』p.64
  15. ^ a b c d e f g 福岡伸一「第2章」『生物と無生物のあいだ』講談社、2007年、pp.29-46。
  16. ^ a b c d e f 福岡伸一「第9-第15章」『生物と無生物のあいだ』講談社、2007年、pp.152-272。
  17. ^ 『生命とは何か 物理学者のみた生細胞』岡小天・鎮目恭夫共訳、岩波書店〈岩波新書 第72〉、1951年。
  18. ^ "History of life through time". University of California Museum of Paleontology.
  19. ^ 新しい生物学 p.269
  20. ^ 「生命の起源 宇宙・地球における化学進化」p6-p7 小林憲正 講談社 2013年5月20日第1刷発行
  21. ^ a b c 大島(1994)、p.160-171、第5章 地球外生命の可能性、(1)隕石‐太陽系の古文書
  22. ^ a b 大島(1994)、p.60-66、第2章 宇宙のなかの生命、(3)特徴の2自己を複製する
  23. ^ "Definition of death". 2009年10月31日時点のオリジナルよりアーカイブ。2010年4月30日閲覧
  24. ^ Defining of death.
  25. ^ Thro, E.: Artificial Life Explorer's Kit, SAMS Publishing.,1993.
  26. ^ 2週間でウイルス合成 米、「人工微生物」実現に展望
  27. ^ Virus built from scratch in two weeks - Nature News
  28. ^ 「生命の起源 宇宙・地球における化学進化」p146-p148 小林憲正 講談社 2013年5月20日第1刷発行
  29. ^ 「生命の起源 宇宙・地球における化学進化」p164-p165 小林憲正 講談社 2013年5月20日第1刷発行







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