生命
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/02/16 22:37 UTC 版)
典型的な生命現象
自己複製
生命の特徴のひとつに、自己と同じ子孫を複製し増殖する能力を持つことがある。これは核酸で構成される遺伝子を用いて行われる。地球生命の場合、4種類の塩基をD-リボース(またはD-デオキシリボース)という糖と結びついた化合物ヌクレオシドが、リン酸と結合してヌクレオチドとなり、これが鎖状につながって構成される。この各塩基には「塩基対」という水素結合で結びつきやすい組み合わせがあり、核酸は必ずこの塩基対に応じたもう1本の核酸と対をつくる。これがDNAである。対になったDNAを引き離すと、それぞれの核酸は周囲から塩基を集め、対の相手を作り、その結果同じDNAが2組出来上がる。これが生命の自己複製の基礎である[22]。
地球生命では、DNAの連なる塩基3つを1組とする意味を持ち、細胞を構成するたんぱく質のアミノ酸がどのように並ぶかを、DNAから複製したm-RNAで規定し、親と同じ構造を作り出す。生命が自己複製を行うにおいて、地球外の生命でも基本的に塩基対構造と似た働きを持つ物質を介すると考えられるが、地球環境内では塩基以外に相応する物質はほとんど無い。ただし、地球外生物では使用する塩基の数が4種以外であったり、生体の基本物質を規定する塩基数は3つ1組以外の組み合わせを利用する可能性も想定できる[22]。
エネルギー代謝
生命は、成長や増殖に必要なエネルギー源を外部から栄養の形で得る。栄養はそのまま用いることができないため、複雑な化学反応をへてエネルギーに変換するが、これを代謝という。
死
生物の細胞や臓器における生命活動が不可逆的に失なわれることを死と呼ぶ[23][24]。生命を定義することが難しいのと同様に、死を定義することも困難な問題である。そのため、生きている状態と死んでいる状態をはっきりと区別することはできない。多細胞生物においては、個体の死と細胞の死は別々に考えられるべきで、例えば、臓器移植の場合、臓器提供者が死んだとしても、移植が成功すればその臓器は生きていると考えられる。また生命体は普通、子をなしてその血統を存続させる。これを細胞レベルで見れば、細胞の分裂と融合に基づく連続性は常に維持されているため、その意味で生命は停止せずに連続していると表現する事も出来る。これを生命の連続性という。
多くの宗教では、何らかの形での死後の世界や輪廻、転生などが存在していると考えられている。
進化
|
- ^ a b 大島(1994)、p.14-29、第1章 生命は星の一部である、(1)宇宙の生命を探る
- ^ Defining Life : Astrobiology Magazine - earth science - evolution distribution Origin of life universe - life beyond
- ^ Defining Life, Explaining Emergence
- ^ “Can We Define Life”. Colorado Arts & Sciences (2009年). 2009年6月22日閲覧。
- ^ McKay, Chris P. (September 14, 2004). “What Is Life—and How Do We Search for It in Other Worlds?”. PLoS Biol. 2 (2(9)): 302. PMID PMC516796 doi:10.1371/journal.pbio.0020302 2010年2月2日閲覧。.
- ^ Nealson, K.H.; Conrad, P.G. (December 1999). “Life: past, present and future”. Philosophical Transactions of the Royal Society of London B 354 (1392): 1923–39. doi:10.1098/rstb.1999.0532. PMC: 1692713. PMID 10670014 .
- ^ Mautner, Michael N. (2009). "Life-centered ethics, and the human future in space" (PDF). Bioethics. 23 (8): 433–40. doi:10.1111/j.1467-8519.2008.00688.x. PMID 19077128. 2012年11月2日時点のオリジナルよりアーカイブ (PDF)。
- ^ Jeuken M (1975). "The biological and philosophical defitions of life". Acta Biotheoretica. 24 (1–2): 14–21. doi:10.1007/BF01556737. PMID 811024。
- ^ Capron AM (1978). "Legal definition of death". Annals of the New York Academy of Sciences. 315 (1): 349–62. Bibcode:1978NYASA.315..349C. doi:10.1111/j.1749-6632.1978.tb50352.x。
- ^ a b 大島(1994)、p.46-50、第2章 宇宙の中の生命、(1)生命の三つの特徴
- ^ a b c d e 『岩波 生物学事典』【生命】
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o 山口裕之『ひとは生命をどのように理解してきたか』講談社、2011年 p.80-113
- ^ 『デカルト著作集4』p.286
- ^ 『ひとは生命をどのように理解してきたか』p.64
- ^ a b c d e f g 福岡伸一「第2章」『生物と無生物のあいだ』講談社、2007年、pp.29-46。
- ^ a b c d e f 福岡伸一「第9-第15章」『生物と無生物のあいだ』講談社、2007年、pp.152-272。
- ^ 『生命とは何か 物理学者のみた生細胞』岡小天・鎮目恭夫共訳、岩波書店〈岩波新書 第72〉、1951年。
- ^ "History of life through time". University of California Museum of Paleontology.
- ^ 新しい生物学 p.269
- ^ 「生命の起源 宇宙・地球における化学進化」p6-p7 小林憲正 講談社 2013年5月20日第1刷発行
- ^ a b c 大島(1994)、p.160-171、第5章 地球外生命の可能性、(1)隕石‐太陽系の古文書
- ^ a b 大島(1994)、p.60-66、第2章 宇宙のなかの生命、(3)特徴の2自己を複製する
- ^ "Definition of death". 2009年10月31日時点のオリジナルよりアーカイブ。2010年4月30日閲覧。
- ^ Defining of death.
- ^ Thro, E.: Artificial Life Explorer's Kit, SAMS Publishing.,1993.
- ^ 2週間でウイルス合成 米、「人工微生物」実現に展望
- ^ Virus built from scratch in two weeks - Nature News
- ^ 「生命の起源 宇宙・地球における化学進化」p146-p148 小林憲正 講談社 2013年5月20日第1刷発行
- ^ 「生命の起源 宇宙・地球における化学進化」p164-p165 小林憲正 講談社 2013年5月20日第1刷発行
生命と同じ種類の言葉
- >> 「生命」を含む用語の索引
- 生命のページへのリンク