独立国家共同体 沿革

独立国家共同体

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/07/31 02:13 UTC 版)

沿革

  CSTO加盟国
  GUAM加盟国
  その他の加盟国

前史

ソビエト連邦が1980年代後半から機能不全を起こし急速に弱体化が進む中、ソビエト連邦書記長のミハイル・ゴルバチョフは連邦を構成する各共和国に大幅に権限を委譲する新連邦条約1991年8月20日に調印する予定であったが、その前日の8月19日、これに反対する国家非常事態委員会によるクーデターが勃発することでいったん調印は見送られた。このクーデターは数日で鎮圧され、復帰したゴルバチョフは再度新連邦条約の締結をめざしたものの、ソ連政府の威信低下はもはや明らかであり、各共和国でも完全独立論が台頭するようになった。それでも11月にはいくつかの共和国が条約に調印し、「主権国家連邦」の発足が決定したものの、有力共和国のひとつであるウクライナ・ソビエト社会主義共和国が12月に国民投票を行い、90%以上の賛成を得て完全独立を決定すると、ソ連の崩壊は決定的となった[2]

創設

上記のウクライナ国民投票の結果を受けて、1991年12月8日ロシアボリス・エリツィン大統領、ウクライナレオニード・クラフチュク大統領、ベラルーシスタニスラフ・シュシケビッチ最高会議議長はベラルーシベロヴェーシの森で、ソビエト社会主義共和国連邦の消滅と独立国家共同体 (CIS) の創立を宣言した(ベロヴェーシ合意)。続いて12月21日、カザフスタンでの首脳会議にジョージア(グルジア)を除く8か国も参加してアルマトイ宣言に合意した[3]。これにより、加盟国のほとんどを失ったソビエト連邦は崩壊し、ゴルバチョフ書記長は辞任を表明した。

初期の活動

ソ連崩壊によって誕生したCISであるが、各新独立国の体制は整っておらず、軍事面および経済面において問題が噴出し、この調整を行うことがCISの最初の課題となった。

軍事面においては、CIS統一軍の創設を行うかが焦点となった。ロシアは各国による独自軍とCIS統一軍を併存させる考えを有しており、この構想には国力・経済力的に独自軍の整備が困難である中央アジア諸国が賛同していた。一方で、ロシアとの間で黒海艦隊クリミアの帰属問題を抱え、独立を強く志向するウクライナはこの構想に反対であり、これに同じく沿ドニエストル共和国の問題を抱えるモルドバや、アルメニアとのナゴルノ・カラバフ領土紛争を抱えるアゼルバイジャンが同調した。結局1992年5月にロシア連邦軍が創設され、同時に集団安全保障条約をロシア、アルメニア、中央アジア諸国が締結することで軍事的協力体制の構築が図られた[4]。こうした動きによってCIS統一軍は形骸化していき、1993年には消滅した[5][6]

加盟各国および西側諸国にとって最大の懸案は、各地に置かれた膨大な軍事施設、戦略核弾道ミサイルであった。特に核戦力がベラルーシウクライナカザフスタンによって大量に保管されていたことは脅威であったが、CISによってロシアが一括管理することが取り決められた。カザフスタンのICBM用核弾頭650発は1995年4月に撤去。ベラルーシは核弾頭18発を1995年末、ICBM18基を1996年に撤去。ウクライナにはICBM176基、戦略爆撃機46、核弾頭は実に1592発が存在していたが、第一次戦略兵器削減条約リスボン議定書に基づいて、全てロシアの管理下におかれた。またカザフスタンに建設したバイコヌール宇宙基地ロシアカザフスタンに使用料を支払うこととした。

また経済面においては、ルーブル圏の維持が焦点となった。独立当初はソビエト連邦ルーブルが全ての国で流通していたものの、各国に創設された中央銀行がそれぞれ異なった経済政策を取りながらルーブルを発行したため経済的混乱が起こった。そこで1992年10月、ロシア・ベラルーシ・アルメニア・カザフスタン・ウズベキスタン・キルギスの各国があらためてルーブル圏を創設することを決定し協定を結んだ。しかし混乱は収まらず、1993年7月にはロシアが1992年以前に発行された旧ルーブル紙幣の流通を停止し、これを受けてウクライナとキルギスは独自通貨へと移行した。1993年9月には新ルーブル圏創設協定がロシア・ベラルーシ・アルメニア・カザフスタン・ウズベキスタン・タジキスタンによって調印されたものの、わずか2か月後の11月には破綻が明らかとなり、アルメニア・カザフスタン・ウズベキスタンが独自通貨へ移行して、ルーブル圏にはロシア・ベラルーシ・タジキスタンが残るのみとなった[7]

1992年バルセロナ夏季オリンピックアルベールヴィル冬季オリンピックにおいては、統一した選手団を送ることとした。ジョージアが当時はまだ加盟していなかったため、地域名はCISフランス語Communauté des États indépendants (CEI) も用いられず、英語のUnified Team にあたるフランス語のÉquipe Unifiée からEUNと表記された。日本のマスメディアでは、漢字名で「独立国家共同体」或いはCISと呼ばれたりしたが、事実上「旧ソ連統一チーム」として扱われた。その後、1994年に開催されたリレハンメルオリンピック以降は各国がそれぞれ代表団を送ることとなり、EUN選手団は消滅した。

1993年にはCIS憲章が制定され、この憲章を批准した国家がCISの加盟国として認められることとなった。この年にはそれまで反露・親欧米路線を主張してCISへの参加を拒否していたジョージアが、国内の南オセチアアブハジア問題を契機として加盟した[8]。一方で初期加盟国のうち、アゼルバイジャンの憲章批准はやや遅れ[9]、またトルクメニスタンとウクライナは憲章批准を拒否し正式加盟を見送った。

ユーラシア経済共同体 (EurAsEC)と民主主義と経済発展の機構 (GUAM)

設立からしばらくは、ボリス・エリツィンのロシアが安定しなかったこともあり、共同体としての連携は目立たず、その間に、新設国は概ね強大な権力を持った大統領が治める独裁国家となった。

1994年になると、それまで分離傾向が目立っていた加盟各国に統合の動きが現れはじめた。1996年にはベラルーシ、カザフスタン、ロシア、キルギスの4か国が統合強化条約を結んだ[10]

ジョージア、ウズベキスタン、ウクライナ、アゼルバイジャン、モルドバはロシアから距離を置く政策を採り、ウズベキスタンを除く4か国は、ロシアに対抗して1997年にこれら諸国の頭文字を採ったGUAMを結成した[11]。この組織には1999年にウズベキスタンも参加し、GUUAMと呼ばれるようになったが、2005年にウズベキスタンは脱退し、残った4か国は2006年にこの組織を「GUAM 民主主義と経済発展のための機構」へと改称した。これらの国は、2006年7月のCIS首脳会談に欠席している。これに対し、ベラルーシ、カザフスタン、タジキスタン、キルギス、アルメニアはロシアとの緊密な関係を保ち、アルメニアを除く5か国で2000年10月ユーラシア経済共同体 (EurAsEC) を結成した。こうしてCIS内に、ロシアを中心とする統合派と、ウクライナやジョージアなどからなる反統合派の2つのグループが成立することとなった。

バラ革命、オレンジ革命

2000年ウラジーミル・プーチンがロシア大統領となると、周辺国との連携を強化しようと試みるが、2001年アメリカ同時多発テロが発生したため、国内のテロ対策も踏まえ、対テロ戦争に同意してアフガニスタン戦争のため、ウズベキスタンタジキスタンへのアメリカ軍駐留を黙認したが、中央アジアでのアメリカの覇権が強まると考えられた。

プーチンは2003年イラク戦争には反対して米国と対立する。イラクサッダーム・フセイン政権打倒を果たし、西欧のNGOなどと共にCIS域内の民主化勢力の支援を行った。この結果、ジョージア(バラ革命)、ウクライナオレンジ革命)、キルギスチューリップ革命)で独裁政権が倒れて民主化が達成された。しかし、米軍が駐留していたウズベキスタンでは、市民運動が革命に繋がらずに失敗、その結果アメリカはウズベキスタンのイスラム・カリモフ大統領の怒りを買い、(アフガン作戦が一段落したこともあるが)同国から米軍を撤収させることとなった。

ウクライナやジョージアは北大西洋条約機構 (NATO) 加盟の意思を表明しているが、実現していない。以前よりCISへの嫌悪を隠さなかったジョージアは、2008年8月の南オセチア問題をきっかけとしてCISからの脱退を表明した[12]。このときロシアは南オセチアに爆撃を開始したジョージアに対して住んでいるロシア人を守るためと称して爆撃・侵攻したが、CISはこれに対して声明を発せず、また各国も沈黙(賛成も反対もしない)を通している。

2014年にはクリミア危機によってウクライナとロシアの間の関係が極度に悪化し、ウクライナはCISからの脱退を表明した(後述)。




注釈

  1. ^ バルト三国はソ連併合の歴史的経緯からCISに加盟する方針はなく、また軍事同盟である北大西洋条約機構 (NATO) に加盟している。

出典

  1. ^ http://mfa.gov.by/en/organizations/membership/list/c2bd4cebdf6bd9f9.html
  2. ^ 「現代国際関係の基礎と課題」内第1章「第二次世界大戦後の国際関係」河内信幸 p21 建帛社 平成11年4月15日初版発行
  3. ^ 「現代国際関係の基礎と課題」内第8章「ロシア・旧ソ連諸国」野田岳人 p143 建帛社 平成11年4月15日初版発行
  4. ^ 「現代国際関係の基礎と課題」内第8章「ロシア・旧ソ連諸国」野田岳人 p144 建帛社 平成11年4月15日初版発行
  5. ^ 「現代国際関係の基礎と課題」内第8章「ロシア・旧ソ連諸国」野田岳人 p147 建帛社 平成11年4月15日初版発行
  6. ^ 「軍事大国ロシア 新たな世界戦略と行動原理」小泉悠 p98 作品社 2016年4月30日第1刷発行
  7. ^ 「現代国際関係の基礎と課題」内第8章「ロシア・旧ソ連諸国」野田岳人 p148-149 建帛社 平成11年4月15日初版発行
  8. ^ 「現代国際関係の基礎と課題」内第8章「ロシア・旧ソ連諸国」野田岳人 p149-150 建帛社 平成11年4月15日初版発行
  9. ^ 「現代国際関係の基礎と課題」内第8章「ロシア・旧ソ連諸国」野田岳人 p149 建帛社 平成11年4月15日初版発行
  10. ^ 「現代国際関係の基礎と課題」内第8章「ロシア・旧ソ連諸国」野田岳人 p151 建帛社 平成11年4月15日初版発行
  11. ^ 「現代国際関係の基礎と課題」内第8章「ロシア・旧ソ連諸国」野田岳人 p152 建帛社 平成11年4月15日初版発行
  12. ^ http://www.afpbb.com/articles/-/2505376 『「永遠にさらばだ、ソビエト連邦よ」、グルジアがCIS脱退へ』AFPBB 2008年08月13日 2017年3月12日閲覧
  13. ^ CIS Charter, 22 January 1993 (unofficial English translation). Russian text here
  14. ^ Decision on Turkmenistan's associate membership[リンク切れ], CIS Executive Committee meeting in Kazan, Russia, 26 August 2005 (ロシア語).
  15. ^ Turkmenistan reduces CIS ties to "Associate Member", Radio Free Europe/Radio Liberty, 29 August 2005.
  16. ^ Conflict in the Former USSR. https://books.google.com/books?id=O-v2Uhprr7cC&pg=PA44&dq=Ukraine+did+not+choose+to+ratify+the+CIS+Charter&hl=nl&sa=X&ei=PLSgUqm1McGR1AX16IGwAw&ved=0CDMQ6AEwAA#v=onepage&q=Ukraine%20did%20not%20choose%20to%20ratify%20the%20CIS%20Charter&f=false 2014年9月25日閲覧。. 
  17. ^ Russia and Nis Mineral Industry Handbook. https://books.google.com/books?id=to6U__f00b8C&pg=PA16&dq=Ukraine+founding+countries+CIS&hl=nl&sa=X&ei=07SgUvqLIIHJ0AWo2oCwBQ&ved=0CDMQ6AEwAA#v=onepage&q=Ukraine%20founding%20countries%20CIS&f=false 2014年9月25日閲覧。. 
  18. ^ Ratification status of CIS documents as of 15 January 2008 Archived 30 October 2008 at the Wayback Machine. (Russian)
  19. ^ September 2008 Statement by Foreign Minister of Ukraine Volodymyr Ohryzko, “Ukraine does not recognise the legal personality of this organisation, we are not members of the CIS Economic Court, we did not ratify the CIS Statute, thus, we cannot be considered a member of this organisation from international legal point of view. Ukraine is a country-participant, but not a member country”
  20. ^ Economic Interdependence in Ukrainian-Russian Relations. https://books.google.com/books?id=0IMaWuaYRnQC&pg=PA142&dq=CIS+Ukraine+membership&hl=nl&sa=X&ei=urWgUtGoNMLD0QWcwoGgAg&ved=0CHUQ6AEwCTgK#v=onepage&q=CIS%20Ukraine%20membership&f=false 2014年9月25日閲覧。. 
  21. ^ Украина – СНГ: полувыход из полуобъединения, что в итоге?」РИА Новости Украина 2016年11月10日(ロシア語)
  22. ^ http://www.cis.minsk.by/page.php?id=19109 (ロシア語)
  23. ^ Belarus, Kazakhstan may take over CIS presidency from Ukraine (英語)
  24. ^ https://www.jetro.go.jp/biznews/2012/10/506e88c70afc8.html 「CIS自由貿易協定、まず3ヵ国先行で発効 (ウクライナ、ロシア、CIS、ベラルーシ)」 JETRO欧州ロシアCIS課 ビジネス短信 2012年10月09日 2018年9月10日閲覧
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  26. ^ https://www.jetro.go.jp/biznews/2015/01/54b6123d69f50.html 「ユーラシア経済連合が発足、アルメニアも正式加盟(カザフスタン、ロシア、アルメニア、キルギス、ベラルーシ)」JETRO 欧州ロシアCIS課 2015年01月16日 2018年9月12日閲覧
  27. ^ https://www.nikkei.com/article/DGXNASGM18069_Z11C11A0EB1000/ 「旧ソ連8カ国、自由貿易圏創設に調印 ロシア求心力回復か」日本経済新聞 2011年10月19日 2018年9月10日閲覧
  28. ^ https://www.jetro.go.jp/biznews/2012/10/506e88c70afc8.html 「CIS自由貿易協定、まず3ヵ国先行で発効 (ウクライナ、ロシア、CIS、ベラルーシ)」 JETRO欧州ロシアCIS課 ビジネス短信 2012年10月09日 2018年9月10日閲覧
  29. ^ CIS Free Trade Agreement comes into force; Baker & McKenzi, Kyiv, Ukraine, Thursday, 18 October 2012, 18 October 2011
  30. ^ Russia’s Duma ratifies Eurasian Economic Union, odessatalk.com. Retrieved 22 June 2018.
  31. ^ CIS Free Trade Agreement comes into force; Baker & McKenzi, Kyiv, Ukraine, Thursday, October 18, 2012, Retrieved 22 June 2018.
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  33. ^ Armenia ratifies CIS free trade zone agreement, arka.am. Retrieved 22 June 2018.
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  39. ^ The World Factbook”. 2017年3月17日閲覧。
  40. ^ 「軍事大国ロシア 新たな世界戦略と行動原理」小泉悠 p100 作品社 2016年4月30日第1刷発行





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