狐火 正体

狐火

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/20 21:16 UTC 版)

正体

『訓蒙天地弁』にある狐火の画。狐が骨を咥えて火をおこしている様子が描かれている。

各地の俗信や江戸時代の古書では、狐の吐息が光っている[21]、狐が尾を打ち合わせて火を起こしている[21][25]、狐の持つ「狐火玉」と呼ばれる玉が光っているなど[26]、様々にいわれている。寛保時代の雑書『諸国里人談』では、元禄の初め頃、漁師が網で狐火を捕らえたところ、網には狐火玉がかかっており、昼には光らず夜には明く光るので照明として重宝したとある[26]

英語のFoxFire(「朽ちた木の火」の意から、実際にはヒカリゴケなどの生物発光)を直訳した説

元禄時代本草書本朝食鑑』には、狐が地中の朽ちた木を取って火を作るという記述がある。英語の「foxfire」が日本語で「狐火」と直訳され、この「fox」は狐ではなく「朽ちる」「腐って変色する」を意味し、「fox fire」は朽ちた木の火、朽木に付着している菌糸キノコの根の光を意味していることから[5][27]、『本朝食鑑』の記述は、地中の朽ち木の菌糸から光を起こすとの記述とも見られる[27]

死体から出るガス等による光説

『本朝食鑑』には、狐が人間の頭蓋骨で光を作るという記述もあり、読本作者・高井蘭山による明和時代の『訓蒙天地弁』、江戸後期の随筆家・三好想山による『想山著聞奇集』にも同じく、狐が馬の骨を咥えて火を灯すとの記述がある[28]。長野県の奇談集『信州百物語』によれば、ある者が狐火に近づくと、人骨を咥えている狐がおり、狐が去った後には人骨が青く光っていたとある[12]。このことから後に、骨の中に含まれるリンの発光を狐火と結び付ける説が、井上円了らにより唱えられた[28]。リンが60度で自然発火することも、狐の正体とリンの発光とを結びつける一因となっている[12]

反論

しかし伝承上の狐火はキロメートル単位の距離を経ても見えるといわれているため、菌糸やリンの弱々しい光が狐火の正体とは考えにくい[27][28]

1977年には、日本民俗学会会員・角田義治の詳細な研究により、山間部から平野部にかけての扇状地などに現れやすい光の異常屈折によって狐火がほぼ説明できるとされた[5]。ほかにも天然の石油の発火、球電現象などをその正体とする説もあるが、現在なお正体不明の部分が多い[5]


  1. ^ 村上 2000, p. 134.
  2. ^ a b 林 1977, p. 5
  3. ^ a b 鈴木 2002, pp. 38–39.
  4. ^ a b きつねび【狐火】”. Yahoo!辞書. Yahoo! JAPAN. 2013年3月20日閲覧。
  5. ^ a b c d e 根本 1985, p. 597
  6. ^ a b 草野 1997, p. 102
  7. ^ 有賀喜左衛門「爐辺見聞」『民族』4巻3号、民族発行所、1929年4月、 144-145頁、 NCID AN00236864
  8. ^ a b c 多田 1990, pp. 344–345
  9. ^ 土井卓治「伯耆大山を眺めつつ歩く」『あしなか』通巻49号、山村民俗の会、1955年11月、 22頁、 NCID AN00406352
  10. ^ 石川県鳳至郡門前町 調査報告書」『常民』27号、中央大学民俗研究会、1991年1月、 75頁、 NCID AN00116782
  11. ^ 宮澤千章「火の玉と狐火」『伊那』51巻1号(通巻896号)、伊那史学会、2003年1月、 30頁、 NCID AN00015559
  12. ^ a b c 清原編 2009, pp. 28–29
  13. ^ 石川正臣「飯田の伝説 飯田の烏」『伊那』32巻1号(通巻688号)、伊那史学会、1984年1月、 15頁、 NCID AN00015559
  14. ^ 中島繁男「狐火」『日本民俗』2巻12号、日本民俗協会、1937年8月、 19頁、 NCID AN00018761
  15. ^ a b 角田 1982, pp. 31–32
  16. ^ a b 宮尾 1963, p. 93
  17. ^ 角田 1979, pp. 174–178.
  18. ^ 日野 1926, p. 256.
  19. ^ 日野 1926, p. 76.
  20. ^ 笹間良彦『図説・日本未確認生物事典』柏書房、1994年1月、109頁。ISBN 978-4-7601-1299-9
  21. ^ a b c 鈴木 1982, pp. 198–199.
  22. ^ a b 井上 1916, p. 160
  23. ^ a b 大藤他 1955, p. 929
  24. ^ 村上 2000, p. 219.
  25. ^ 角田 1979, p. 183.
  26. ^ a b 菊岡 1800, p. 474
  27. ^ a b c 神田 1931, pp. 15–17
  28. ^ a b c 神田 1931, pp. 23–25


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