煉瓦
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/01/22 05:29 UTC 版)
寸法・規格
レンガの寸法は、職人が持ちやすい大きさで慣習もしくは規格によって統一されている場合が多い。国・地域・時代によって違いがあり、たとえば現在のアメリカでは203mm(8inch) x 102mm(4inch) x 57mm(2-1/4inch)、イギリスでは215mm(8-15/32inch) x 112.5mm(4-7/16inch) x 75mm(2-15/16inch)、日本では210mm x 100mm x 60mmのものが広く使われている(日本ではJIS規格が定められるまで、様々な寸法のレンガがあった)。この寸法を標準とし、各辺を1/2、1/4、3/4などの単純な分数倍したものを組み合わせて用いる。たとえば、日本で建築用に使われているものには以下のような寸法がある(単位:mm)。
- 全形(210 x 100 x 60)
- ようかん(210 x 50 x 60)
- 半ようかん(105 x 50 x 60)
- 半ます(105 x 100 x 60)
- さいころ(100 x 100 x 60)
また、JIS(日本工業規格)には、以下のものが定められている。
- 普通レンガ(JIS R1250)
- 建築用レンガ(JIS A5213)
- 耐火レンガ(JIS R2204〜2206、JIS R2213) … 炉材として使われる。
- ヨーロッパの規格
- ヨーロッパの規格は、EN 772 にまとめられている。
煉瓦の種類
- 軽量煉瓦 - 粘土に骨材(膨張粘土骨材)を混ぜて比重を軽くした煉瓦
- Engineering brick
- 耐酸性や強度があるレンガ
- 耐火煉瓦(Fire brick)
- クリンカーレンガ - 耐火煉瓦、レンガの表面がガラス化して黒ずんでいる。
- 珪石煉瓦 - 珪石を主原料とする耐火煉瓦[14]
- シャモット煉瓦 - 耐火粘土を焼いた耐火煉瓦。
- マグネシアレンガ ( magnesia brick ) - 酸化マグネシウム( MgO )を用いた高い温度に耐えられる耐火煉瓦
など
- 原産地由来レンガ
- Cream City brick
- London stock brick
- Nanak Shahi bricks
- Roman brick
など
無焼成レンガ
- 日干し煉瓦
- 日乾煉瓦と表記されることもある日干し煉瓦は、粘土を固めた後に天日で乾燥させて造る煉瓦である。よく成形して乾燥させた日干し煉瓦は、見かけ以上に耐候性に優れ、普及している地域には希な規模の集中豪雨や長雨に晒されない限り、建設資材としての機能を保持し続ける。地震に弱いという欠点もあるものの、乾燥地帯では理想的な建築材料の一つであり、歴史的にも広く使われている。
- 中国語では、墼 と呼ばれる。
- Compressed earth block
- 粘土などを加熱せずに圧縮することで作られたレンガ。二酸化炭素を排出しないなどのメリットがある。
焼成レンガ
石材と違い柔らかいうちに規格の決まったサイズで製造でき、無焼成レンガと違い水に強く洪水被害が多い地域でも使用できるメリットがある反面、焼成するプロセスがあるためコスト・焼成温度管理・燃料調達・二酸化炭素排出などのデメリットがある。
煉瓦の問題
- 大気汚染
- インドでは、大気汚染物質の排出の主要原因としてレンガ工場が上げられている(調理30%、レンガ工場15%、車両15%、工業活動15%、野焼き5%)[16]。
- 中国、明代の皇帝が、万里の長城用レンガを焼くために森林破壊を行ったという話もある[20]。
- しかし科学の発展で、燃料も原材料も多様化しており、型枠として木材を用いるコンクリート造よりも木材が節約できる場合がある。コンクリートの打ち込み型枠としてブロックを利用し、そのまま取り外さずに躯体として一体化する型枠ブロック工法や圧縮してブロックにする方法も確立され、環境への配慮が行われている。
- ^ デジタル大辞泉,世界大百科事典内言及. “磚とは” (日本語). コトバンク. 2022年5月18日閲覧。
- ^ 「煉瓦という建築材料は、日本の建築の歴史の中では、ごく最近建築に用いられはじめた材料」(清水慶一『建設はじめて物語』大成建設、16頁)
- ^ a b 建設コンサルタンツ協会誌 Consultant VOL.269 October 2015 著:水野信太郎 p013
- ^ “brick” (英語). www.etymonline.com. 2022年5月19日閲覧。
- ^ “Brickwork: Historic Development - Gerard Lynch”. www.buildingconservation.com. 2022年5月19日閲覧。
- ^ “Brick making” (英語). Heritage Crafts (2017年4月30日). 2022年5月19日閲覧。
- ^ ヴィッキー・レオン『古代仕事大全』原書房、2009年、292頁。
- ^ “消えた煉瓦の行方 - なぶんけんブログ”. www.nabunken.go.jp. 奈良文化財研究所. 2022年5月18日閲覧。
- ^ 日本煉瓦史の研究 〈オンデマンド版〉 著:水野信太郎、発行:法政大学出版
- ^ れんがの歴史(全国赤煉瓦協会)
- ^ フランドルはベルギー全土からフランス東北部の地名。日本では明治期に「フランス積み」と誤訳された。
- ^ a b わが国における鉄道用煉瓦構造物, p. 123–164.
- ^ “建築基準法施行令”. elaws.e-gov.go.jp. 2022年6月1日閲覧。
- ^ 須賀音吉, 滑石直幸「珪石煉瓦のMatrixの研究 (第1報)」『窯業協會誌』第62巻第695号、日本セラミックス協会、1954年、 335-339頁、 doi:10.2109/jcersj1950.62.695_335。
- ^ 20. Mud Bricks and a Flood. A Little History of Archaeology. Yale University Press. (2019-12-31). pp. 128–134. doi:10.12987/9780300235289-020 2022年5月20日閲覧。
- ^ a b c d e f g h 青山, 美和「インドにおけるレンガセクターからの大気汚染削減策に関する分析」『生産研究』第73巻第3号、東京大学生産技術研究所、2021年5月1日、 151-156頁、 doi:10.11188/seisankenkyu.73.151、2022年5月20日閲覧。
- ^ Syed Ashraful Alam and Mike Starr (2009). “Deforestation and greenhouse gas emissions associated with fuelwood consumption of the brick making industry in Sudan”. Science of The Total Environment 407 (2): 847-852. doi:10.1016/j.scitotenv.2008.09.040. ISSN 0048-9697 .
- ^ “驚くべき計画都市、モヘンジョ・ダロ”. www.eorc.jaxa.jp. 2022年5月20日閲覧。
- ^ “モヘンジョダロ/パキスタン” (日本語). [世界遺産] All About. 2022年5月20日閲覧。
- ^ “【動画】黄砂はどこから 万里の長城越えて行ってみた” (日本語). 西日本新聞me. 2022年5月20日閲覧。
- ^ Twitter (2015年10月9日). “How L.A. conquered an earthquake danger zone: Brick buildings” (英語). Los Angeles Times. 2022年5月18日閲覧。
- ^ 村松貞次郎『日本近代建築技術史』彰国社、58頁。
- ^ わが国における鉄道用煉瓦構造物, p. 325–355.
- ^ 旧本庄商業銀行煉瓦倉庫―保存再生活用に関わる第一期報告書―(平成24年、早稲田大学建築学科)
- ^ “Brick Tax 1784 -1850” (英語). 2022年5月20日閲覧。
煉瓦と同じ種類の言葉
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