炭水化物 炭水化物の生理作用

炭水化物

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/13 02:26 UTC 版)

炭水化物の生理作用

人体が炭水化物を摂取すると、デンプンの場合唾液で加水分解され、胃液膵液二糖類マルトースまで分解され、最終的に小腸上皮細胞に存在するマルターゼスクラーゼ、イソマルターゼ、ラクターゼトレハラーゼなどの二糖類水解酵素により単糖類グルコースフルクトースガラクトースなどにまで分解されて初めて腸管からの吸収を可能とする[12]。これは脂質が脂肪酸モノグリセリド、タンパク質がアミノ酸核酸が塩基や糖にまで分解されるのと同じであり、これら吸収される状態の物質は最終分解産物と呼ばれる[13]。水に不溶性の脂質系最終分解産物と異なり、ミセルなどを作らず吸収されるとそのまま門脈血の中に溶け込む[13]

体内における糖質の主な働きは細胞においてエネルギー源となる事である。血液中に溶けたグルコースは血糖と呼ばれ、細胞に適宜取り込まれると内呼吸(好気呼吸)もしくは嫌気呼吸によって各種生体活動のエネルギー源となるATPを合成する[14]

エネルギー源として重要であるグルコースは、ホメオスタシスによって体内濃度が調整される。上昇すると膵臓のβ細胞からインスリンが分泌され肝臓や[15]細胞が[16]取り込む動きを活発にしたり、グリコーゲンや脂肪への変換を促す[16]。逆に低下すると膵臓のα細胞からグルカゴン副腎皮質のクロマフィン細胞からカテコールアミンが分泌され、細胞中のグリコーゲンが分解して血糖値が上がる[15]

グルコースは植物ではデンプンとして体内に蓄えられる。植物の体はセルロースという多糖によって構成されている。セルロースはデンプンと同じグルコースの多量体であるが、結合様式が異なるため、化学的に極めて強靭な構造を持つ。セルロースは細胞壁の主成分として活用されている。

また、細胞の表層には、糖鎖と呼ばれる糖の多量体が結合している。これはタンパク質に対する受容体ほど強くは無いものの、生体内である種の「標識」としてはたらいている。


注釈

  1. ^ 2015年時点で砂糖の摂取量が低い母集団に関する疫学研究が不足しているため、WHOは5%未満ないし一日25g未満への抑制は「条件付き」の推奨であるとしている。
  2. ^ 栄養表示基準において「食品の重量から、たんぱく質脂質灰分及び水分の量を控除して算定」した値と規定されている。従って、体内での働きが一般の炭水化物とは異なる成分、例えばクエン酸なども炭水化物の含有量として表示される事に注意が必要である。
  3. ^ 正式には「食品の重量から、たんぱく質、脂質、食物繊維、灰分及び水分の量を控除して算定」した値と規定されている。
  4. ^ 低い:生活の大部分が座位で、静的な活動が中心の場合
  5. ^ 普通:座位中心の仕事だが、職場内での移動や立位での作業・接客等、あるいは通勤・買物・家事、軽いスポーツ等のいずれかを含む場合
  6. ^ 高い:移動や立位の多い仕事への従事者。あるいは、スポーツなど余暇における活発な運動習慣をもっている場合

出典

  1. ^ a b c d e f g h i j k l m 生化学辞典第2版、p.908 【糖質】
  2. ^ 渡邊昌『運動・からだ図解 栄養学の基本』2016年、92頁。 
  3. ^ 食事バランスガイド 厚生労働省・農林水産省決定 フードガイド(仮称)検討会報告書』(PDF) 第一出版、2005年12月。ISBN 4-8041-1117-4
  4. ^ Report of a Joint WHO/FAO Expert Consultation Report of a Joint WHO/FAO Expert Consultation 2003
  5. ^ BURKITT D.P, TROWELL H.C Refined Carbohydrate Foods and Disease: Some Implications of Dietary Fibre, 1975 . ISBN 978-0121447502
  6. ^ Marquart L, Jacobs DR Jr, Slavin JL. "Whole Grains and Health: An Overview" Journal of the American College of Nutrition Vol.19(90003), 2000, pp289-290. PMID 10875599
  7. ^ Burros, Marian; Warner, Melanie (2006年5月4日). “Bottlers Agree to a School Ban on Sweet Drinks (Published 2006)” (英語). The New York Times. ISSN 0362-4331. https://www.nytimes.com/2006/05/04/health/04soda.html 2021年2月27日閲覧。 
  8. ^ Guidelines on reducing sugar in food published for industry” (英語). GOV.UK. 2021年2月27日閲覧。
  9. ^ WHO guideline : sugar consumption recommendation” (英語). www.who.int. 2021年2月27日閲覧。
  10. ^ 生活習慣病予防のための各学会のガイドラインの整理 (PDF) (厚生労働省)
  11. ^ 「食料の世界地図」p78-81 エリック・ミルストーン、ティム・ラング著 中山里美・高田直也訳 大賀圭治監訳 丸善 平成17年10月30日発行
  12. ^ 山田和彦、「炭水化物の消化・吸収・発酵とその利用」『栄養学雑誌』 2001年 59巻 4号 p.169-176, doi:10.5264/eiyogakuzashi.59.169
  13. ^ a b 佐藤・佐伯(2009)、p.122-141、第6章 2.消化digestionと吸収absorption
  14. ^ 佐藤・佐伯(2009)、p.148-151、第7章 2.生体内の物質代謝 1)糖質
  15. ^ a b 佐藤・佐伯(2009)、p.379、第17章 ホメオスタシスと生体リズム 1.ホメオスタシス 4)血糖値blood suar(blood glucose)調整
  16. ^ a b 佐藤・佐伯(2009)、p.337、第14章 内分泌 2.内分泌器官の構造と機能 4)肝臓のランゲルハンス島Langerhans isletの構造とホルモン (1)インスリン
  17. ^ 日本人の食事摂取基準(2005年版) (厚生労働省)
  18. ^ a b 「日本人の食事摂取基準」(2010年版)厚生労働省 (PDF)
  19. ^ Report of a Joint WHO/FAO Expert Consultation Diet, Nutrition and the Prevention of Chronic Diseases 2003
  20. ^ 体力・運動能力調査 2010年度”. 政府統計の総合窓口 (2011年10月11日). 2012年4月14日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年12月13日閲覧。


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