炎上 (ネット用語) 炎上の経過

炎上 (ネット用語)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/08/11 23:59 UTC 版)

炎上の経過

炎上の発生から激化までの過程には、藤代裕之は、巨大な電子掲示板サイトやニュースサイトなどが一役買っていることが多いとして、これらをミドルメディアと名付けた。

前者は、ブログやSNSなどに書き込みが集まる中で大型掲示板に記事を投稿し、さらに多くの人の書き込みがそのブログやSNSなどに集中する。後者は、ブログやSNSなどで起こった小規模な炎上が、ネット上の様々な出来事を紹介する中規模なニュースサイトに掲載されて炎上が加速し、さらに大手メディアで紹介されることにより炎上の被害が拡大していく。例えばJ-CASTニュースは、ネット上の炎上事件を積極的に取り上げることから「炎上メディア」と呼ばれることがある[25]。この他、探偵ファイルガジェット通信Narinari.comトレビアンニュースといったニュースサイトや各種まとめサイトなどで、炎上の話題が取り上げられる[26]

この両者が複合して極めて大きな炎上に至る場合や、発火点がブログなどの書き込みではなく、現実世界での何らかの出来事から、大型掲示板やニュースサイトでの報道を経由する場合もある[27]

伊地知晋一によれば、炎上が激化すると、抗議はブログ・SNSのコメント欄や掲示板への書き込みに留まらず、多様な方法が見られるとしている。電子メール電話(いわゆる電凸)、発展すると関係者への抗議やデモ活動といった事態に至ることもあるとする[28]。その途中、有志がまとめサイトと呼ばれるWiki形式のサイト(ウィキペディアの項目ではないが体裁が似ている)を立ち上げることが、しばしばある。そこでは、炎上に至った事件とその後の経過が整理されて解説されている他、電話やメールなどで抗議する際のテンプレートまで用意されている。まとめサイトが設置されるようになると、炎上はかなり深刻な事態に達していると言える[29]。企業ではなく一般の個人を対象とした炎上であっても、それまでのブログやSNSの日記における様々な日常生活の記述を総合し、住所や勤務先などが集合知的に暴かれてしまうことがある[30](いわゆる「特定」)。企業の場合、取引先にまで抗議が及んで営業に支障をきたす場合もある[31]。また、触法行為を自慢するネット上の書き込みによって炎上を誘発してしまった従業員が、それを理由に会社から解雇されるような事例もある[32]

田代光輝は、オールポートとポストマンによる噂の公式のR=i×aを応用し、炎上の広がりを「炎上の広がり∝関心の高さ×状況の曖昧さ」であるとしている。例えば、政治・宗教・スポーツは関心も高く曖昧であるため、炎上しやすいテーマである。特に政策による原発問題、外交(歴史認識領土問題)などは曖昧な状況が続くために炎上しやすく、炎上が継続しやすいともされる[33]。また、特に「食の衛生」は日本で「関心」が高いテーマである。1つのテーマで炎上が起こるとそのテーマに対して「関心」が高くなるため、類似の事例で炎上トラブルが連鎖する現象が起こるともしている。ブログ炎上の最終的な結果としては、元の状態に戻る場合、コメント欄が廃止されて双方向性は失われ、一方的な情報発信となるがブログ自体は継続する場合、そしてブログ自体が閉鎖してしまう場合の、大きく3つがありうる[34]

一方で、ネットの誹謗中傷などは民事訴訟や刑事罰の対象になりうる(詳細は名誉毀損侮辱罪脅迫罪信用毀損罪・業務妨害罪を参照)。このため個人攻撃にあたる内容や不確かな情報は拡散しないよう一般のネットユーザーにも注意が求められる。2017年、東名高速道路で起きた煽り運転事故をめぐり、加害者と同一苗字であり、かつ同一県に在住していた男性が「『容疑者の父親』である」などのデマがネット上に流れた問題で、警察が名誉毀損容疑で捜査に着手し、翌年3月に拡散に関与したとみられる11人を特定。被害を受けた男性はこの11人を刑事告訴した[35]




  1. ^ 田中 & 山口 2016, p. 5.
  2. ^ 田中 & 山口 2016, pp. 12-13.
  3. ^ 「ネット公共圏と炎上をめぐる問題」『ised 情報社会の倫理と設計 倫理篇』238頁
  4. ^ バズる(バズル)とは”. コトバンク. 2017年10月26日閲覧。
  5. ^ 『ウェブ炎上―ネット群集の暴走と可能性』34-36頁
  6. ^ 『ブログ炎上 〜Web2.0時代のリスクとチャンス』84頁
  7. ^ 「ネット公共圏と炎上をめぐる問題」『ised 情報社会の倫理と設計 倫理篇』245頁
  8. ^ 小倉秀夫 (2005年4月16日). “コメントスクラムについて”. 小倉秀夫の「IT法のTop Front」. Wired Vision. 2008年12月27日閲覧。
  9. ^ 「ネット公共圏と炎上をめぐる問題」『ised 情報社会の倫理と設計 倫理篇』245-246頁
  10. ^ a b c 五十嵐祐 吉田俊和、橋本剛、小川一美(編)「メディアコミュニケーションの普及は、私たちに何をもたらしたか?」『対人関係の社会心理学』ナカニシヤ出版 2012 ISBN 9784779506932 pp.193-197.
  11. ^ a b 『ネット炎上であなたの会社が潰れる!―ウェブ上の攻撃から身を守る危機管理バイブル』47頁
  12. ^ 『ブログ炎上 〜Web2.0時代のリスクとチャンス』25-26頁
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  14. ^ 『ネット炎上であなたの会社が潰れる!―ウェブ上の攻撃から身を守る危機管理バイブル』28頁
  15. ^ 『ブログ炎上 〜Web2.0時代のリスクとチャンス』136頁
  16. ^ 『ソーシャルメディア炎上事件簿』18頁・60頁など
  17. ^ 「ポストised、変化したことは何か1」『ised 情報社会の倫理と設計 倫理篇』472頁
  18. ^ 「ポストised、変化したことは何か1」『ised 情報社会の倫理と設計 倫理篇』474頁
  19. ^ SNS炎上、供養します 住職も批判経験「仏教の大義」 - 朝日新聞
  20. ^ [1]
  21. ^ 『効果がすぐ出るSEO事典』岡崎良徳 2016年1月28日
  22. ^ [2]
  23. ^ ネット炎上、参加者わずか2.8% それなのに拡散するのはなぜ?
  24. ^ 「ブログ炎上」『学びとコンピュータハンドブック』68-72頁
  25. ^ 蜷川真夫 『ネットの炎上力』 文藝春秋、2010年、128頁 ISBN 978-4166607396
  26. ^ 『ウェブを炎上させるイタい人たち-面妖なネット原理主義者の「いなし方」』165頁
  27. ^ 『ネット炎上であなたの会社が潰れる!―ウェブ上の攻撃から身を守る危機管理バイブル』102-105頁
  28. ^ 『ネット炎上であなたの会社が潰れる!―ウェブ上の攻撃から身を守る危機管理バイブル』107-108頁
  29. ^ 『ネット炎上であなたの会社が潰れる!―ウェブ上の攻撃から身を守る危機管理バイブル』17頁・20-22頁
  30. ^ 『ネット炎上であなたの会社が潰れる!―ウェブ上の攻撃から身を守る危機管理バイブル』67-68頁
  31. ^ 『ネット炎上であなたの会社が潰れる!―ウェブ上の攻撃から身を守る危機管理バイブル』46-47頁
  32. ^ 『ネット炎上であなたの会社が潰れる!―ウェブ上の攻撃から身を守る危機管理バイブル』65-66頁
  33. ^ AERA』2013年8月26日号「SNS新リスクの護身術」
  34. ^ 『ブログ炎上 〜Web2.0時代のリスクとチャンス』21-22頁
  35. ^ 『「容疑者の父親」とデマ拡散した11人特定、立件へ”. TBSニュース (2018年3月30日). 2018年3月30日閲覧。
  36. ^ 『ウェブを炎上させるイタい人たち-面妖なネット原理主義者の「いなし方」』153頁
  37. ^ 『ネット炎上であなたの会社が潰れる!―ウェブ上の攻撃から身を守る危機管理バイブル』98-101頁
  38. ^ 『ソーシャルメディア炎上事件簿』148-149頁
  39. ^ 『ネット炎上であなたの会社が潰れる!―ウェブ上の攻撃から身を守る危機管理バイブル』110-116頁、『ウェブを炎上させるイタい人たち-面妖なネット原理主義者の「いなし方」』134頁を参照
  40. ^ 『ブログ炎上 〜Web2.0時代のリスクとチャンス』81頁
  41. ^ 「ブログ炎上」『学びとコンピュータハンドブック』71頁
  42. ^ 『ブログ炎上 〜Web2.0時代のリスクとチャンス』45頁
  43. ^ 『ブログ炎上 〜Web2.0時代のリスクとチャンス』19-20頁
  44. ^ a b 『GQ』でボツになった「五輪エンブレム」佐野研二郎さんのネット炎上関連の原稿と経緯について”. Yahoo!ニュース (2015年9月10日). 2015年9月10日閲覧。
  45. ^ a b 五輪エンブレム問題 声あげない業界、陰謀論に憤り 中川淳一郎氏”. withnews (2015年9月2日). 2015年9月2日閲覧。
  46. ^ 「ブログ炎上」『学びとコンピュータハンドブック』69-71頁
  47. ^ 『ソーシャルメディア炎上事件簿』第2章
  48. ^ いわゆるバイトテロ
  49. ^ 『ブログ炎上 〜Web2.0時代のリスクとチャンス』18-20頁
  50. ^ 『ウェブを炎上させるイタい人たち-面妖なネット原理主義者の「いなし方」』145-150頁
  51. ^ 「祭られた人々」(晋遊舎) 20頁
  52. ^ 『ネット炎上であなたの会社が潰れる!―ウェブ上の攻撃から身を守る危機管理バイブル』20頁
  53. ^ 『ネット炎上であなたの会社が潰れる!―ウェブ上の攻撃から身を守る危機管理バイブル』19-20頁・61頁・79頁・113頁
  54. ^ 『ネット炎上であなたの会社が潰れる!―ウェブ上の攻撃から身を守る危機管理バイブル』などで使用されている
  55. ^ 『ブログ炎上 〜Web2.0時代のリスクとチャンス』66-68頁
  56. ^ 『ブログ炎上 〜Web2.0時代のリスクとチャンス』70-71頁
  57. ^ 『ウェブ炎上―ネット群集の暴走と可能性』40-41頁
  58. ^ 『ブログ炎上 〜Web2.0時代のリスクとチャンス』63頁
  59. ^ 『ウェブ炎上―ネット群集の暴走と可能性』41頁
  60. ^ 『ネット炎上であなたの会社が潰れる!―ウェブ上の攻撃から身を守る危機管理バイブル』94-96頁
  61. ^ 『ソーシャルメディア炎上事件簿』166-167頁
  62. ^ 藤代裕之 (2011年9月1日). “まんべくん騒動にみる「炎上マーケティング」の教訓”. 日本経済新聞. 2012年2月9日閲覧。
  63. ^ チャイム(社会面コラム)、『産経新聞』朝刊2018年10月8日(2018年10月24日閲覧)。
  64. ^ 北田暁大「ディスクルス(倫理)の構造転換」『ised 情報社会の倫理と設計 倫理篇』159頁
  65. ^ 濱野智史「まえがき」『ised 情報社会の倫理と設計 倫理篇』4頁
  66. ^ 『ブログ炎上 〜Web2.0時代のリスクとチャンス』146-148頁
  67. ^ 『ウェブを炎上させるイタい人たち-面妖なネット原理主義者の「いなし方」』64-70頁




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