漫才 漫才の概要

漫才

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/11 13:58 UTC 版)

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平安時代に成立した伝統芸能萬歳」が、江戸時代から昭和時代にかけて、大阪京都を中心とする上方畿内)の寄席において、独自に発展したもの。現在は寄席だけでなくテレビやラジオなど多くの媒体で人気を博し[1]バラエティ番組のいわゆる「ネタ番組」において、コントと並んでポピュラーな演芸の一種である。

上方の漫才を特に上方漫才(かみがたまんざい)という。

漫才を行う者は一般的に「漫才師」と呼ばれるが、所得税法施行令では「漫才家」の表記が使われている[2]

基本形式と構成

漫才は基本的に、演者が「演者自身」として発話し、その会話の流れによって観客を笑わせる演芸である。二人一組で演じられることが多いが、3人組や4人組の例もある。人数の上限について、漫才作家の相羽秋夫は「五、六人ぐらいが妥当ではないでしょうか[3]」としている。

シンプルな会話体を基本とすることから、演者の個性に合わせ、音曲、踊り、物真似など、ネタ中に「何をやっても許される[3]」自由な演芸形式となっている。日常生活、流行文化、政治経済など幅広い題材を扱うことが可能で、時流に合わせてネタを細かく、また大きく変化させることができる。

漫才は明確な定義を定めることができない。よって、「こうでなければ漫才として成立しない」という制約は無い。漫才史研究者の神保喜利彦は、「漫才はなんでもあり」だったからこそ、ここまでの地位に上り詰めることができたと述べている[4]

ボケとツッコミ

漫才は基本的に「ボケ」と「ツッコミ」という2つの役割で成り立っている。それぞれ古典萬歳の「才蔵」と「太夫」に由来する[5]

「ボケ」は、冗談を言う、話題の中に明らかな間違いや勘違いなどを織り込む、笑いを誘う所作を行う、などの言動によって、観客の笑いを誘うことが期待される役割である。ボケは、もともととぼけ役と呼称されていた。芸席において紹介のつど「つっこみ(役)・とぼけ(役)」と称されていたことが、のちに「つっこみ・とぼけ」→「つっこみと、ぼけ」のように転じた。[要出典]

「ツッコミ」は、ボケの間違いを要所で指摘し、観客に笑いどころを提示する役割である。明治・大正の一時期には「シン」と呼称した[6]。ツッコミは、口頭で指摘するほかに、ボケの体のどこかを、平手・手の甲・小道具などで叩く(ドツキ)、または足で蹴ることでそれに代える場合がある。秋田實の論文[要出典]によれば、玉子屋円辰が『曽我物語』を歌った際の、代役の太鼓たたきとのやり取りがツッコミの始まりという。

ボケ・ツッコミの役割分担は必ずしも固定的ではなく、流れによってボケとツッコミが自然に入れ替わる展開を用いるコンビもある[5]。例えば、ボケ役の冗談に対し、ツッコミ役がツッコまずに「ノる」、つまりボケに一時的に同調し、ある程度ノッた後にツッコミを入れてオチを付ける芸(ノリツッコミ)などである。このため、ボケとツッコミは「役柄」というよりは、やり取りのさまを概念化したものと考えるのが妥当である。

トリオ漫才(役割が固定された場合)においては、ボケ2人・ツッコミ1人の比率が主流である。ネタの役割分担によって、フリ(後述)にあたる小さいボケを「小ボケ」、オチに至る大きいボケをする者を「大ボケ」、と区別することもある。

フリ

上記の役割と兼ねて、「筋フリ[7]」または「フリ」という、ネタの構成を進行・展開・転換する役割を、メンバーのいずれかが担わなければならない。『大辞泉』の「ツッコミ」の項は「漫才で、ぼけに対して、主に話の筋を進める役」としており、ツッコミがフリを担う、と定義しているが、ボケがフリを担当するコンビも少なくない。

ボケ・ツッコミが固定したコンビを仮定した場合、ツッコミが進行するコンビ、ボケが進行するコンビ、ボケ・ツッコミ双方が進行するコンビの3種が考えうる。

漫才のスタイル

前田勇は自著において、漫才を、以下の4類10種に分類した[8]。漫才師の芸およびネタは、これら10種の要素を、どれかひとつ特化させているか、または組み合わせている。

しゃべくり漫才・コント漫才

現代の漫才を大きく二つに分けた場合、「しゃべくり漫才」と「コント漫才」に分かれる。

しゃべくり漫才とは、日常の雑談や時事を題材に掛け合いのみで笑わせる漫才を指す。創始者は、横山エンタツ花菱アチャコ。1980年代の漫才ブーム以降、上述の音曲漫才や歌謡漫才は急速に廃れ、しゃべくり漫才が漫才の王道・正統派とされるようになった。しゃべくり漫才の定義について、ナイツ塙宣之は「キッチリ定義することは難しいが、あえて言うならば、しゃべくり漫才とは日常会話だと思います」と語っている[19]

コント漫才とは、「お前コンビニの店員やって、俺は客やるから」とコントに入っていくパターンの漫才を指す。衣装や小道具、効果音を使わずに、立ち位置もそのままで設定した役になりきるという点でコントとは異なる。設定を振ってコントに切り替えることを、符牒でコントインと呼ぶ。センターマイクから離れることも多いため、しゃべくり漫才と比べて邪道とされることもある[注 1]


注釈

  1. ^ 漫才コンテスト番組「M-1グランプリ2020」で優勝したマヂカルラブリーのネタに対して、SNSなどで「あれは漫才なのか」と論争となり、松本人志など他のお笑い芸人もこれに言及した(詳細はM-1グランプリ2020を参照)。

出典

  1. ^ 漫才とは” (日本語). コトバンク. 2020年12月21日閲覧。
  2. ^ 法令集の散策 - 参議院法制局
  3. ^ a b 相羽秋夫『上方漫才入門』(弘文出版、1995年)p.10「漫才とはどんな芸でしょう」
  4. ^ M-1を観て「これは漫才じゃない」という人たちが知らない漫才100年の歴史 「本格派の漫才」とは一体なにか”. 週刊文春 電子版 (2020年12月30日). 2022年5月11日閲覧。
  5. ^ a b 『上方漫才入門』p.12「ボケとツッコミの二役で成り立っています」
  6. ^ 前田勇『上方まんざい八百年史』(杉本書店、1975年)p.162
  7. ^ 『上方漫才入門』p.13「筋ふりとはどんな役でしょう」
  8. ^ 『上方まんざい八百年史』pp.198-203「漫才の種類とその本質」
  9. ^ 『上方漫才入門』p.38「俗曲漫才」
  10. ^ 『上方漫才入門』p.39「語りもの漫才」
  11. ^ 『上方漫才入門』p.40「歌謡漫才」
  12. ^ 『上方漫才入門』p.41「曲弾き漫才」
  13. ^ 『上方漫才入門』p.42「踊り漫才」
  14. ^ 『上方漫才入門』p.43「寸劇漫才」
  15. ^ 『上方漫才入門』p.44「身振り漫才」
  16. ^ 『上方漫才入門』p.45「仮装漫才」
  17. ^ 『上方漫才入門』p.46「掛け合い漫才」
  18. ^ 『上方漫才入門』p.47「ぼやき漫才」
  19. ^ 塙宣之『言い訳 関東芸人はなぜM-1で勝てないのか』 p,22
  20. ^ a b 『上方まんざい八百年史』pp.111-117「常打ち万歳、興行さる」
  21. ^ 小島貞二『漫才世相史 改訂新版』 毎日新聞社、1978年 pp.50-53「ここらで編笠まわそうか」
  22. ^ a b 『上方漫才入門』pp.20-21「御殿漫才と三曲萬歳」
  23. ^ 漫才の歴史:演芸へと移行する万歳 文化デジタルライブラリー
  24. ^ 『上方漫才入門』pp.22-23「万才の時代」
  25. ^ 『上方まんざい八百年史』p.167
  26. ^ 『漫才世相史 改訂新版』pp.130-133「震災以前の万才」
  27. ^ a b 『上方漫才入門』pp.24-25「漫才の時代」
  28. ^ 漫才の歴史:テレビとともに時流へ 文化デジタルライブラリー
  29. ^ ノンスタ石田が語る漫才と競技化(1)「M-1の影響でネタ作りが変わった」
  30. ^ 『言い訳 関東芸人はなぜM-1で勝てないのか』p.55
  31. ^ 『言い訳 関東芸人はなぜM-1で勝てないのか』p.113
  32. ^ 令和2年度 文化功労者 文部科学省
  33. ^ a b c 澤田隆治『上方芸能・笑いの放送史』(日本放送出版協会1994年(平成6年))pp.30-33
  34. ^ a b c 『漫才世相史 改訂新版』pp.112-114「『漫才』に統一」
  35. ^ a b 『わらわし隊の記録』(早坂隆著、中公文庫2010年(平成22年))pp.90 - 91
  36. ^ 澤田隆治『決定版上方芸能列伝』(筑摩書房、2007年)p.235


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