漢数字 漢数字の概要

漢数字

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/11/18 17:00 UTC 版)

漢数字で目が書かれたサイコロ
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中日新聞東京新聞など、記事中(スポーツ面など一部を除く)でアラビア数字でなく漢数字を用い続けているメディアもある[1][2]

漢数字には 0 から 9 を表す数字、10 のを表す位の字、それらを合わせた複合字がある。複合字は現在では一般的に使われていない。

小字と大字

漢数字には「一」「二」「三」と続く小字と、「壱」「弐」「参」と続く大字がある[3]。通常は小字を用いるが改竄を防ぐため重要な数字の表記では大字を用いることがある[3]

一覧

以下に漢数字を示す。これらの字は零を除き、甲骨文字の時から使われており、意味に変化がない。ただし四と万は字形が変わっている。

種類 算用数字 漢数字 日本語 中国語 朝鮮語 越南語
標準[4] 音読み[5] 訓読み 中古音[注 1][6] 普通話 上海語[注 2] 広東語 閩南語 客家語 朝鮮漢字音[7][8] 固有語 漢越語 固有語
文読 白読
呉音 漢音
ヘボン式片仮名現代/字音仮名遣 ヘボン式(平仮名現代/歴史的仮名遣 漢語拼音[5]注音符号 耶魯粤拼 白話字 韓国・2000年式ハングル

/北朝鮮・M-R式(ハングル)

字国語字喃[9][10]
一の位 0 れい ryō(リョウ/リャウ) rei(レイ) leng líng(ㄌㄧㄥˊ) lin1 ling4 lêng khòng làng yeong(
/ryŏng(
linh
1 いち ichi(イチ) itsu(イツ) hito(ひと) ʔjit yī(ㄧ) ih4 yat1 i̍t chi̍t yit il( hana(하나 nhất một(𠬠)
2 ni(ニ) ji(ジ) futa(ふた) nyijH èr(ㄦˋ) r3(文)

/nyi3(白)

yi6 jī/lī nn̄g ngi i( dul/tul( nhị hai(𠄩)
3 さん san(サン/サム) san(サン/サム) mi(み) sam sān(ㄙㄢ) sae1 saam1 sam saⁿ sâm sam( set( tam ba(𠀧)
4 よん(し) shi(シ) shi(シ) yo(よ) sijH sì(ㄙˋ) sy3 sei3/si3 si sa( net( tứ bốn(𦊚)
5 go(ゴ) go(ゴ) istu, i(いつ, い) nguX wǔ(ㄨˇ) u2(文)

/ng2(白)

ng5 ngó͘ gō͘ ńg o( daseot

/tasŏt(다섯

ngũ năm(𠄼)
6 ろく roku(ロク) riku(リク) mu(む) ljuwk liù(ㄌㄧㄡˋ) loh4 luk6 lio̍k la̍k liuk yuk(

/ryuk(

yeoseot

/yŏsŏt(여섯

lục sáu(𦒹)
7 なな(しち) shichi(シチ) shitsu(シツ) nana(なな) tshit qī(ㄑㄧ) tshih4 chat1 chhit chhit chhit chil( ilgop(일곱 thất bảy(𦉱)
8 はち hachi(ハチ) hatsu(ハツ) ya(や) pɛt bā(ㄅㄚ) pah4 baat3 pat poeh pat pal/phal( yeodeol

/yŏdŏl(여덟

bát tám(𠔭)
9 きゅう(く) ku(ク) kyū(キュウ/キウ) kokono(ここの) kjuwX jiǔ(ㄐㄧㄡˇ) cieu2 gau2 kiú káu kiú gu/ku( ahop(아홉 cửu chín(𠃩)
10のN乗 10 じゅう jū(ジュウ/ジフ) shū(シュウ/シフ) tō, so(とお/とを, そ) dzyip shí(ㄕˊ) zeh4 sap6 si̍p cha̍p sṳ̍p sip( yeol/yŏl( thập mười(𨒒)
100 ひゃく hyaku(ヒャク) haku(ハク) momo, o(もも, お/ほ) pæk bǎi(ㄅㄞˇ) pah4 baak3 pek pah pak baek/paek( on( bách trăm(𤾓)
1000 せん sen(セン) sen(セン) chi(ち) tshen qiān(ㄑㄧㄢ) tshie1 chin1 chhian chheng chhiên cheon

/chŏn(

jeumeun

/chŭmŭn(즈믄

thiên nghìn(𠦳、北)
/ngàn(𠦳、南)
10000 まん mon(モン)[注 3] ban(バン) yorozu(よろず/よろづ) mjonH wàn(ㄨㄢˋ) vae3 maan6 bān van man( gol/kol( vạn
複合 20 廿 にじゅう nyū(ニュウ/ニフ) jū(ジュウ/ジフ) hata(はた) nyip niàn(ㄋㄧㄢˋ) nyae3 yaa6/ye6/
yap6/nim6
jia̍p ip(),

isip(이십

seumul

/sŭmul(스물

nhập
30 さんじゅう sō(ソウ/ソフ) sō(ソウ/サフ) miso(みそ) sop sà(ㄙㄚˋ) sah4 sa1/sa4 siap sap(),
samsip(삼십
seoreun

/sŏrŭn(서른

tạp
40 しじゅう shū(シュウ/シフ) shū(シュウ/シフ) yoso(よそ) xì(ㄒㄧˋ) se3 siap sip(),
sasip(사십
maheun

/mahŭn(마흔

tấp
200 にひゃく hiki(ヒキ) hyoku(ヒョク) futao(ふたお/ふたほ) bì(ㄅㄧˋ) bik1 pyeok/phyŏk(),

ibaek(이백

bức

混同や改竄を防ぐための特別な漢数字については大字を参照されたし。

字源

他の漢数字と異なり「〇」は新しい字であり、より前には現れない。唐の武則天(在位:690年 - 705年)が制定した則天文字に初めて「〇」が現れるが、これは「星」の代替字であり 0 の意味はなかった。星の球形を表した典型的な象形字で、楷書とは言いがたい文字であった(則天文字には、このように楷書的でない形の字がいくつかある)。

後漢に完成した『九章算術』には「(引き算の時)同符号は引き、異符号は加える。正を無入から引いて負とし、負を無入から引いて正とする」とある[11][12]。この「無入」とは 0 のことであるが、専用の字はなく、表記には空白を用いていた。

718年、太史監(天文台長)の瞿曇悉達が『九執暦』を漢訳し、0 を点で記すインドの数字を導入した。しかし算木を用いていた中国の天文学者や数学者は受け入れなかった[13]。『旧唐書』(945年)は 3040 および 0 を「三千四十」、「空」と記し[14]、また『新唐書』(1060年)は 3201 および 0 を「三千二百一」、「空」と記している[15]。この「空」は仏教と同じく、サンスクリット語शून्य(シューニャ)の訳語である。現在も、朝鮮語ベトナム語は「空」を 0 の意味に用いる(/gong と không)。また江戸時代和算家も 0 を「空(くう)」と呼んでいた。

南宋の時代、蔡元定(1135年 - 1198年)は『律呂新書』の中で、118098 および 104976 を「十一萬八千□□九十八」、「十□萬四千九百七十六」と書いている[16]。この「□」は、以前から欠字を示すのに使われてきた記号、虚欠号である(中国語版: 虚缺号)。秦九韶の『数学九章』(1247年)では、算木数字で空位および 0 に「〇」を用いている。この「〇」は「□」が変化したものであり、アラビア数字の「0」ならびに則天文字の「〇」を借用したのではない[13]。もっとも、インドの数字のゼロに触発された可能性もある[11]

現在、位取り記数法では主に「〇」を使うが、後述の通り、熟語には必ず「零」を用い、「〇」は使われない。そもそも「〇」の部首は不明である。このことから、「〇」は独立した文字ではなく記号とみなされており、一般に漢和辞典では漢字ではなく記号の扱いとなっており、「〇」の文字コードも、漢字領域ではなく記号領域で定義されている。

「零」は『説文解字』にも出ている古い字で、音符の「令」と意符の「雨(あめかんむり)」を合わせた形声字である。元々は小雨(零雨)を意味し、後にわずかな量(零細、零余)の意味にもなったが、0 の意味はなかった。『孫子算経』(4世紀頃)では「零」が余りの意味で使われている[17]李冶は、『測圓海鏡』(1248年)の中で 1024 を「一千〇二十四」、2220302 を「二百二十二万零三百零二」と書き、「〇」と「零」を同一視している[11]。それぞれ「一千とんで二十四」、「二百二十二万あまり三百あまり二」の意味である。

現在、熟語には必ず「零」を用いて、「零下」、「零封」などと書き、「〇」は使われない。

一、二、三、(亖)

「一」、「二」、「三」、および「四」の古字の「」は、それぞれ 1 本、2 本、3 本、4 本の指または棒を示した指事字である。これらを「十」、「廿」、「卅」、「」の甲骨文字と比べると、横か縦かの違いだけである。これから、算木の横式と縦式を記したものだとも言われる[18]。もしそうなら、算木の歴史はにまでさかのぼることになる。

古い異体字に「弌」、「弍」、「」がある。なお、「弍」を音符、「」を意符とする形声字が「貳」であり、それが変化して「貮」になり、さらに簡略化して「」になった。

元々甲骨文字では「(U+4E96)」が使われた。しかし「三」と紛らわしい字であるため、後になって、仮借で「四」を使うようになった。

この「四」の本義は口から息が出る様子を表す象形字であり、金文で初めて使われた。なおこの「四」は後に意符の「」を加えて「(U+546C)」という形声字で書かれることになった。

「五」は交差する木で作られたを表す象形字である[18]5 として使うのは仮借である。祝祷を収めた器に蓋をして守ることを表す象形字が「吾」であり、「」、「圄」にその音と意味が残っている。

「六」は小さい幕舎(テント)を表す象形字だと考えられるが、その意味で使われたことはない[18]6 として使うのは仮借である。大字では「六」と同音の「陸」を用いるが、「六」を重ねた字が「」であり、これに(こざとへん)を加えて形声字の「陸」が造られた。

「七」は小刀で骨を切る様子を表す象形字である。7 として使うのは仮借である。「七」に意符の「」を加えた「切」が、元の意味に充てられている。

「八」は二つに分けることを表す指事字である。8 が 8 → 4 → 2 → 1 と二分できることを示すとされる。二分するという意味の「八」を含む字が、「分」や「半」である。

「九」は体を曲げたを示す象形字とも(原義を示す字は「」か)[18]、伸ばした手の状態を示す象形字とも、小さな木の芽を示す象形字とも言われる。9 として使うのは仮借である。

十、廿、卅

これらは、甲骨文字では「一」、「二」、「三」、「(=四の古字)」を縦にしたものである。ただし縦線の下端で互いにつながっている。甲骨文字では五十~九十を表す場合、五~九の下に縦線を加えて表された。金文では、線の中央に点が加えられるようになった。この点が横に伸び、現在の字形になった。

「廿(20)」の異体字に「(U+5344)」がある。また、「卅(30)」の異体字に「丗(U+4E17)」があるが、「世」の異体字とも言われる。殷代では平均寿命が30歳ほどであったため、30年で1世代と考えられたためである。

現在では「廿」、「卅」、「(40,U+534C)」は一般的でなく、一般的にはそれぞれ「二十」、「三十」、「四十」と漢字2文字で書かれる。

「百」は「一」と「白」を合わせた形声字である。「白」は単に音を示す。甲骨文字では二百を「二」と「白」、三百を「三」と「白」というように組み合わせる。

「千」は「一」と「人」を合わせた形声字である。「人」は単に音を示すとも[18]、人数の多さを表すとも言われる。甲骨文字では、二千を「二」と「人」、三千を「三」と「人」というように組み合わせる。

日本新字体および中国簡体字では、10000 は「万」となっている。古くは「萬」と書いたが、10000の意味に「万」字を使うことも古くから行われている。

「万」は、「萬」の略字として生じたとする説もあれば、もともと別の字だったとする説もある。「万」が別字であるとしてもその字源には諸説あり、浮き草の象形とも、の変形ともいうが定説はなく、これも仮借して 10000 の意味に使われている。ウィクショナリーも参照。

因みに仏教の吉祥の印であるは、当初は徳と訳されたが、北魏菩提流支は『十地経論』の中で、萬徳の意味を表す字として卍を萬(万)と訳した。693年武則天は卍を萬と読むことを定め、以降、卍は萬(万)と通用するようになった。

日本でも中国でも大字で 10000 を表現する場合は今も「萬」と書く。

「萬」はサソリを表す象形字であり、仮借して 10000 の意味に使うようになった。なお、「萬」の下に「虫」のついた「(U+8806)」という字もあるが、この字は「タイ」と読む別字である。


注釈

  1. ^ 無印は平声または入声、-X は上声、-H は去声を指す。
  2. ^ (文)(白)はそれぞれ文読と白読を指す。
  3. ^ 本表音読みの出典である『漢字源改訂第6版』において、標準の読み「man(マン)」は慣用音とされている。

出典

  1. ^ 第8回 新聞の算用数字 - 新・お言葉ですが… 高島俊男
  2. ^ 洋数字と漢数字~“原則”が分かったぜ~ 15/04/28 : 岩佐徹のOFF-MIKE
  3. ^ a b 小島浩之「漢籍整理備忘録 -中国の古典籍・古文書の理解のために-」『大学図書館研究』第106巻、国公私立大学図書館協力委員会、2017年、 1-11頁、 doi:10.20722/jcul.1493ISSN 0386-0507NAID 1300060887922022年2月23日閲覧。 p.7 より
  4. ^ a b NHK 放送文化研究所, ed. (2005), 『NHK ことばのハンドブック』, 日本放送出版協会, ISBN 978-4140112182 
  5. ^ a b 藤堂明保, 松本昭, 竹田晃, 加納喜光 『漢字源 : 上級漢和辞典』(改訂第6)学研プラス、2018年。ISBN 9784053046192 
  6. ^ Baxter, William H. (2000), An Etymological Dictionary of Common Chinese Characters, http://www-personal.umich.edu/~wbaxter/etymdict.html 2008年5月1日閲覧。 
  7. ^ 弘字出版社編集部 (1989), 漢国最新大字源 (改訂版 ed.), 民衆書林, ISBN 4891741066 
  8. ^ 張三植 (1996), 漢韓大辭典 : 韓・中・日・英, 敎育出版公社, ISBN 8973490036 
  9. ^ http://www.nomfoundation.org/nom-tools/Nom-Lookup-Tool
  10. ^ http://vietnamtudien.org
  11. ^ a b c d 王青翔 (1999), 『「算木」を超えた男』, 東京: 東洋書店, ISBN 4-88595-226-3 
  12. ^ 九章算術』: 正負術曰: 同名相除,異名相益,正無入負之,負無入正之。其異名相除,同名相益,正無入正之,負無入負之。
  13. ^ a b c d e f 銭宝 (1964), 『中国数学史』, 北京: 科学出版社 
  14. ^ 『旧唐書』 志第十四 暦三
  15. ^ 『新唐書』 志第二十上 暦六上
  16. ^ 『律呂新書』一 律呂本原 十二律之實第四: 丑林鐘十一萬八千□□九十八 / 卯南呂十□萬四千九百七十六
  17. ^ 孫子算経』: 置里數以三百步乘之,內零步,六之,得五萬二千八百二十四尺
  18. ^ a b c d e 白川静 (1999), 字統 新装普及版』, 平凡社, ISBN 978-4582128116 
  19. ^ 國語調査委員會, ed. (1980), “口語法別記”, 口語法・同別記, 勉誠社 
  20. ^ 鈴木博 (1998), “四の字嫌い - 「四」の音「シ」が「死」に通じることを忌む現象について -”, 国語学叢考, 大阪: 清文堂出版, pp. 1-35, ISBN 4-7924-1340-0 
  21. ^ Rodriguez, Ioão (1955), Arte daLingoa de Iapam(日本大文典), 東京: 三省堂 
  22. ^ http://www.coelang.tufs.ac.jp/mt/vi/gmod/contents/explanation/019.html
  23. ^ 算数書』: 一乘十,十也;十乘萬,十萬也;千乘萬,千萬。一乘十萬,十萬也;十乘十萬,百萬。半乘千,五百。一乘百萬,百萬;十乘百萬,千萬。半乘萬,五千;十乘千,萬也;百乘萬,百萬;半乘百,五十。
  24. ^ 『漢書』 律暦志 第一: 一為一分,十分為寸,十寸為尺,十尺為丈,十丈為引,而五度審矣。 / 合龠為合,十合為升,十升為斗,十斗為斛,而五量嘉矣。 / 二十四銖為兩。十六兩為斤。三十斤為鈞。四鈞為石。
  25. ^ 國語調査委員會, ed. (1980), “口語法”, 口語法・同別記, 勉誠社 
  26. ^ 國語調査委員會『口語法』、1916年1926年1936年、第四章 数詞。
  27. ^ 算数書』: 少半乘少半,九分一也;半步乘半步,四分一;半步乘少半步,六分一也;少半乘大半,九分二也
  28. ^ 九章算術』: 又有積一百九十三萬七千五百四十一尺、二十七分尺之一十七。問為立方幾何? 答曰:一百二十四尺、太半尺。


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