漆器
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最古の漆器
長江河口にある跨湖橋遺跡で発掘された河姆渡文化期の木弓は、放射性炭素年代測定で約7500~7400年前[16]と示されたことから、漆器は中国が発祥地で技術は漆木と共に大陸から日本へ伝わったと考えられていた。ところが、北海道函館市南茅部地区から出土した漆の装飾品6点が、米国での放射性炭素年代測定により中国の漆器を大幅に遡る約9000年前(縄文時代早期前半)の装飾品であると確認された[注釈 3]。縄文時代の集落と生活様式の変遷が確認できる垣ノ島遺跡からは、赤漆を染み込ませた糸で加工された装飾品の他に、黒漆の上に赤漆を塗った漆塗りの注口土器なども発見されている。さらに、福井県(鳥浜貝塚)で出土した漆の枝は、放射性炭素(C14)年代測定法による分析の結果、世界最古の約 12600年前(縄文時代草創期)のものであると確認された[17]。更なる調査で技術的に高度な漆工芸品である「赤色漆の櫛」も出土、この他に、木製品、丸木船、縄、編物、その加工に用いられた工具なども相次いで出土しており、漆工芸品も含めた木材加工の関連品が発見されている[注釈 4]。こういった遺構、遺品から、日本では縄文時代草創期末にはウルシを生育していたと考えられている[18]。
上記の垣ノ島遺跡から出土した漆器は2002年12月28日の深夜、8万点に及ぶ出土文化財や写真、図面とともに火災にあった。幸い形の認識と繊維状の痕跡がはっきりと視認できる部分は焼失を免れ、2004年の4月には12ページの調査報告『垣ノ島B遺跡出土漆製品の分析と保存処理』が出された[19]。
2021年中国浙江省井頭山遺跡で新たに木器2点が発掘され、放射性炭素年代測定で約8200年前のものであることが分かった。この漆器が2021年現在、中国最古の漆器となった[20]。
注釈
- ^ 奈良県にある當麻寺に「念珠箱」がある。
- ^ 深い黒の光沢をたたえる漆 一目見て恋をした(3/6) | nikkei BPnet 〈日経BPネット〉:日経BPオールジャンルまとめ読みサイト archive.isサイト
- ^ よみがえる漆文化(1) 九千年前副葬品に痕跡 デイリー東北新聞社 2003年9月2日 リンク切れ
- ^ 福井・三方五湖 「縄文」「自然」湖底に眠る 世界最古、鳥浜遺跡の漆 日本経済新聞 2012年10月3日
出典
- ^ 和歌山県海南市黒江、紀州漆器伝統産業会館蔵
- ^ セルロースナノファイバー(CNF)と日本の伝統工芸「漆」の融合 日本製紙ニュースリリース(2017年11月29日)
- ^ “樹脂製の漆器について”. 守田漆器 (2022年2月25日). 2024年1月14日閲覧。
- ^ “合成漆器を見分ける方法と特徴について”. 丸山久右衛門商店 (2022年6月22日). 2024年1月14日閲覧。
- ^ 鈴木、ほか 2014, p. 70.
- ^ 鈴木、ほか 2012, p. 67.
- ^ 内田 2014, pp. 71, 72, 74, 76–80.
- ^ 岡田文男, 李恩碩, 林志暎「慶州皇南大塚より出土した漆製品の材質・技法調査」『金大考古』第78巻、金沢大学人文学類考古学研究室、2020年6月、144-156頁、CRID 1390290700178157824、doi:10.24517/00059499。
- ^ 谷田 1972, p. 307.
- ^ 「sơn mài ハノイの漆絵 混沌の艶」『日本経済新聞』朝刊2018年7月8日(NIKKEI The STYLE)
- ^ 英語版一部訳
- ^ Kyi Wai 2009.
- ^ a b 鈴木 2002, p. 2.
- ^ 原田 2002, p. 1.
- ^ 鈴木 2002, p. 3.
- ^ 鈴木三男, 能城修一, 小林和貴「鳥浜貝塚から出土したウルシ材の年代」『植生史研究』第21巻第2号、日本植生史学会、2012年10月、67-71頁、ISSN 0915-003X、NAID 40019477294。
- ^ 鈴木、ほか 2012, pp. 67, 68.
- ^ 鈴木、ほか 2014, p. 71.
- ^ 漆に見る朱色と黒色。
- ^ “井頭山遺跡出土の木器、中国最古の漆器と判明 浙江省”. www.afpbb.com. 2021年11月11日閲覧。
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