温室効果 温室効果の増減と気温

温室効果

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/10/01 07:20 UTC 版)

温室効果の増減と気温

地球温暖化を考える際には、二酸化炭素の増加と温室効果・気温上昇に関する複数の問題がよく取り上げられる。大気中の二酸化炭素の増加により、温室効果が増して気温が上昇する(している)可能性が高いとされているが、いくつもの反論が存在する。たとえば、二酸化炭素の主な放射吸収帯である波長15µm付近は、水蒸気も吸収特性を持っており、二酸化炭素が増加しても重複のために気温の上昇が抑えられる[9]といったもの、大気中の存在量や電磁波吸収率から考えて二酸化炭素の温室効果は水蒸気よりはるかに小さく、大きな気温上昇をもたらすことは考えられない、といったものなどがある。一般的には、温室効果気体の排出量を抑制することで、地球温暖化を防ぐことができるとされている。

温室効果のシミュレーション

計算機によるシミュレーション

温室効果気体の増加に対する気候変動のシミュレーションにおいては、いくつかのモデルが用いられている。与える仮定により結果が大きく異なることから、より精度の高い気候変動の評価を行うための研究が続けられている。

最も単純なモデルは灰色大気モデルである。これは、すべての波長に対して吸収率が1である黒体に対し、吸収率が1より小さく波長によらず一定である仮想的な大気(灰色大気)を考えている。その手順の概略は次の通りである。

  1. 大気の鉛直構造を、大気密度に比例する放射の吸収効率を持つ薄い層に分割する
  2. エネルギーの釣合いの式を各層に適用する
  3. それらを大気全体について適用し、解を求める

放射の波長分布や熱の輸送を考慮することにより、より現実に近いモデルとなる。浮力による熱の輸送を考慮する放射-対流モデルエネルギー質量運動量保存の3次元方程式系を解く大気大循環モデルがある。

実験によるシミュレーション

物理学的には、温室効果を実験によって証明することは可能である。

最も一般的な実験方法としては、電磁波を透過する透明な密閉容器を2つ用意し、片方に温室効果ガスを、もう1方に空気や温室効果ガス以外の気体などを封入し、熱源光源)を用意して2つの容器に同じ量の電磁波を一定時間照射する方法が採られる。実験後に温室効果ガスの入った容器のほうが温まっていることから、温室効果は証明される。ただし、ガスボンベ等から気体を封入する際に減圧冷却が起こるのでこれを温めたりして、実験のはじめに2つの容器内の気体の温度を同じにしておかなければならない。

しかし、実験室における実験によって実際の地球の温室効果を再現することは困難である。それには次のような理由が挙げられる。

  • 熱源を用いて気体を加熱する場合、熱伝導のわずかな条件の違いを調べることが難しく、比熱による温度上昇の違いも考えられる。
  • 放射により温度上昇をもたらすには、温室効果気体が十分な光学的厚さを持つことが必要である。実験室のスケールでは、その条件を満たすことは困難である。
  • 地球の温室効果の源となる放射は、実際の地球の表面温度や大気の温度に相当する放射である。ランプ等の熱源は温度がそれよりも高いため、放射される電磁波の波長が異なる。波長が同じ電磁波で実験を行わなければ、地球の温室効果を再現したことにはならない。

これらを十分に検討することなく、実験室における温室効果気体の加熱実験の結果から温室効果が示されると結論付けることは、適切ではないと考えられる。また、地球の温室効果への理解を促すために、一般に向けてあるいは個人で、温室効果気体の加熱実験を行うことがあるが、温室効果気体の加熱を擬似的に表現しているに過ぎない。安易な実験は、誤解を招く恐れがあるとの指摘もある。


  1. ^ a b 温室効果とは”. 気象庁. 2022年3月24日閲覧。
  2. ^ ここが知りたい地球温暖化”. 国立環境研究所. 2022年5月18日閲覧。
  3. ^ 玉置 元則、正賀 充、平木 隆年、守富 寛「地球温暖化ガス: 亜酸化窒素の人為的排出 (1)」『環境技術』第2巻第9号、環境技術学会、1994年、47-53頁、doi:10.5956/jriet.23.575 
  4. ^ 田近英一、『地球環境46億年の大変動史』p28ほか、株式会社化学同人、2009年5月30日、ISBN 978-4-7598-1324-1
  5. ^ a b c 気象庁”. 2014年10月13日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年8月6日閲覧。
  6. ^ JCCCA / 温室効果ガスの特徴”. 2007年9月28日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年8月6日閲覧。
  7. ^ Water vapour: feedback or forcing? « RealClimate
  8. ^ IPCC第4次評価報告書第1作業部会報告書政策決定者向け要約” (PDF). 気象庁. p. 2. 2019年8月6日閲覧。
  9. ^ Jack Barrett (2005). “Greenhouse Molecules, Their Spectra and Function in the Atmosphere”. Energy & Environment 16: 1037-1045. https://doi.org/10.1260/095830505775221542. 


「温室効果」の続きの解説一覧



英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「温室効果」の関連用語

温室効果のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



温室効果のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの温室効果 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS