消費税 各国の制度

消費税

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/02/12 07:23 UTC 版)

各国の制度

アメリカ合衆国

アメリカ合衆国では、連邦政府によるVATにあたる税金はないが、州ごとに業者間取引には課されず、最終的な消費者のみに課される売上税 (Sales Tax)がある。50の州のうち、5つの州において、州ごとの売上税が課せられない。州ごとの売上税 (State Sales Tax)がないのは、アラスカ州デラウェア州モンタナ州ニューハンプシャー州オレゴン州である[32]

アメリカ合衆国議会では何十年にもわたって、VATの導入について議論が持たれてきたが、法人税所得税に代表される直接税に比べて、消費税・付加価値税など間接税が優れているとは見なせないという理由で、国全体での採用は見送りとなっている(アメリカの国税における直間比率は9対1)[33]

VATの場合は特に、輸出に還付金が渡され輸入には課税される点、法人税引き下げとセットにされやすい点など、議論の焦点となってきたことが、アメリカの公文書に多く残っている[33]

ニュージーランド

1986年に広い免税範囲・7種類の従価税率と12種類の特別税率という複雑な税率構造・サービス業非課税・製造業者から直接購入できる大規模小売業者に有利などの従来の卸売売上税の歪みを是正・歳入における個人所得税への極端な依存を是正・社会保障給付の増加と保護主義的な経済政策で拡大した財政赤字の削減などのために10%で導入され、1989年に12.5%へ増税された。1994年からGDP比の財政収支がプラスに転じた。軽減税率を導入せずに[34]消費税の税率が全て一律なため、世界で最も課税ベースが広く、経済に対して最も中立的な付加価値税であるので世界最高の96.4%C効率性[35]を誇る。1999年にニュージーランド政府は最小のコストで安定した税収を得るためには、課税ベースの拡大と単一かつ定率の消費税だとの方針を確認している。1986年の軽減税率無しの10%の消費税導入に日本のような国民の反発はなかった。背景として、ニュージーランドでは社会保障費の制度を中負担中福祉にすることや低所得者への対応を消費税による税収から後で再分配する方が小売店も役所の負担が軽減されて効率的との政府の方針を国民が受け入れたためである。2006年に付加価値税収の総税収に占める割合は24.4%である[30][4]

デンマーク

1967年に福祉国家建設のための公的部門への需要増加に対応して、より広く安定した課税ベースを確立することを目的にデンマーク社会民主党によって10%で導入された。1970年代に20.25%台にまで引き上げられた後に、1992年から現行の25%になった。軽減税率は歳入減少の財政負担・徴収の効率化・軽減税率の適用対象品目の区別などが困難などとして、一律25%の消費税による税収を後で社会保障給付によって逆進性への対処として再分配を行う方が効率的として導入しなかった。デンマークで唯一例外的な軽減税率の対象は新聞のみである。2006年の対総税収比では個人所得税負担の割合が 51.3%と突出しており、付加価値税の割合は21.3%である。これは手厚い社会保障が基本的に国民の所得税と消費税で7割以上も賄われていることによる。同じ北欧で6%の軽減税率ありで、25%の消費税であるスウェーデンの47.3を上回る51.6のC効率性である。スウェーデンの付加価値税がデンマークよりもC効率性は低い理由には、 軽減税率と消費者を顧客とする小売・サービス業で発生しやすい脱税や電子商取引の発達や税率の低い隣国での国境を越えた租税回避がある[4][30]

イタリア

イタリアは1973年に12%で導入された。1997年には20%にまで増税された。欧州危機不況で社会保障費支出は増大して、財政赤字が増加していた。そのため。2011年9月にイタリアのシルヴィオ・ベルルスコーニ政権が付加価値税 (VAT)の税率を20%から1%引き上げたが、同税の受取額は減少し、4月末までの1年間の徴収額は2006年以降で最低に落ち込んだ。「歳出を減らす方がはるかに良い」と提言された。2013年には22%に増税された。2016年予算安定化法案で2017年1月から24%への増税が定められていたが、2017年予算法で増税時期は先送りされ、2018年1月に引き上げ実施予定になった。軽減税率は4%と10%の二つがあることもあり、C効率性は38.2%である[4][30][36]

中華人民共和国

中華人民共和国において付加価値税 (VAT)は増値税と呼ばれている。増値税は1984年に17%で導入された。今において違う納税人と商品に対し、違う税率が適用する(例えば、農産物や自己販売の中古品は免税、現代サービス業納税人は6%、図書・ガスは9%、一般の製品は13%)。2019年4月1日から、一般納税人に対し、税率が2018年5月からの16%から13%まで引き下げる。なお、中国に、値段はほぼ全部税込価格であり、税の数額を明記することは数少ない外国ショップにしか見えない。増値税は中総税収の60%以上を占めている。

日本

日本の税収構造(2014年) [37]

  社会保険 (39.7%)
  給与税 (0%)
  資産税 (8.5%)
  消費税 (27.0%)
  その他 (0.3%)

日本では安定成長期時の、1989年平成元年)4月1日に3%で初めて導入された[4]。この消費税 (VAT)導入に伴う間接税の整理によって、パチンコ場等などの娯楽施設を対象とした地方税の娯楽施設利用税トランプ類税物品税等などの間接税が廃止され、酒税やたばこ消費税などが改定された。税の用途は、社会保障と少子化対策として規定されている(2012年法改正)。

消費税法 第一条2
消費税の収入については、地方交付税法昭和二十五年法律第二百十一号)に定めるところによるほか、毎年度、制度として確立された年金医療及び介護の社会保障給付並びに少子化に対処するための施策に要する経費に充てるものとする。

日本のVATはOECD 諸国中で3番目に低く、OECD平均である19%の半分にすぎない。C効率性は65.3である[4][38]。日本のVAT率が、OECD平均を下回っている理由について、木寺元はシャウプ勧告、フランスで世界初導入された付加価値税が世界に広がったり、自民党が与党だったとしても一般消費税導入・税率引き上げを目指す度に歴代政権が選挙に負け続けたために「相当な覚悟がないと消費税には手を出せないという空気が政界(自民党内部)では支配的となった」ことが消費税の導入自体を遅らせたからだと指摘している[39]

VAT 8%への引き上げで、経済に影響をうける日本に対して、欧州が20%台で平気でいるのは1970年代から日本より元々VATが高かったからだと指摘されている。日本の低いVATでは引き上げ幅分3%が引き上げ前の5%の6割に相当するのに対して、イギリスでは2011年11月4日に実施した17.5%から20%への2.5%の引き上げは、従来の税率の14%相当の上げ幅に過ぎないため、景気後退も招かなかった。スペインはVAT 16%を2010年以降、2段階にわたり3年間で21%に引き上げた。イタリアも2段階の措置を経て、2011年に20%を22%に増税した。 イギリスでも1979年にVATを7.5%から15%に2倍引き上げた時には景気後退を招いている。財政赤字のイギリスが20%に増税した2011年直後にイギリス人記者のコリン・ジョイスは日本のVATが過去に3%から5%への引き上げられただけで、あんなに怒っていた当時の日本人が理解できないと述べた。財政赤字en:fiscal deficit)にはVATを増税して税収を増やすことと、公共支出を減らすことの両方が必要だと指摘した[40][41][42]

その後、2014年4月1日に日本の消費税率は5%から8%に上げられた[43]。また、2019年10月に8%から10%への消費税率引き上げと同時に、複数税率(軽減税率)が導入された。

2020年度において、消費税21.7兆円、所得税19.5兆円、法人税12.1兆円と、歳入の租税及印紙収入において消費税が最大の歳入になっている[44]。なお、国債発行による歳入である公債金は、90.2兆円にまで肥大化し、国債の利払い費用だけで9兆円にも及んでいる。

財政破綻en:Debt crisis日本の福祉日本の医療も参照のこと。


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  17. ^ 財政ポピュリズムの危険” (日本語). 日本経済新聞 (2017年7月6日). 2020年9月10日閲覧。 “マクロン仏大統領の誕生で欧州の極右ポピュリズム(大衆迎合主義)は下火になったが、日本では財政ポピュリズムがはびこる。”
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  22. ^ カナダはなぜ消費税を引き下げることができたのか。カナダ人記者が指摘する、日本の財政問題に必要な視点 - 政治・国際 - ニュース” (日本語). 週プレNEWS[週刊プレイボーイのニュースサイト] (2019年7月18日). 2020年4月28日閲覧。
  23. ^ 標準税率は20%、食品・レストランのサービスなどに軽減税率がある。軽減税率は10%, 5.5%, 2.1%の三つある
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  40. ^ 消費税率8%で痛手受ける日本経済、欧州が20%でも耐える訳 Bloomberg 2014年11月19日
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  42. ^ 税率アップでイギリスは倹約経済へ
  43. ^ 2014年度の実質経済成長率は、マイナス成長に陥った
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