洗濯機 種類

洗濯機

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/15 04:20 UTC 版)

種類

一槽式
洗濯槽のみの洗濯機。一般的な洗濯機では1960年代までこの種類が存在していた。脱水部分は手で絞るか、洗濯機傍についていたローラーで絞る。現在でも簡易・小型洗濯機でこの種類が存在する[18]。また、脱水槽のみの脱水専用機も存在している[19]
二槽式洗濯機
「洗い」と「すすぎ」を行う槽と「脱水」を行う槽が分離しており、それぞれの作業工程を各槽で行う。洗濯槽と脱水槽の間で洗濯物を移し替える必要がある。1957年、イギリスフーバー[要曖昧さ回避]社によって開発され[10]、1960年に三洋電機によって脱水槽側に熱風乾燥装置を組み込んだ「二槽式脱水乾燥洗濯機」が発売[20]。1970年代から1980年代前期までの主流。現在では少数派であるが、洗濯・すすぎと脱水を同時並行で行えるため時間あたりに洗える量は全自動洗濯機に比べて多く、構造的にも単純で丈夫なため、理容店ガソリンスタンド、工場などでの業務用、あるいは農家などで作業着を別に洗うために2台目として屋外や土間に置くなど、根強い需要がある。脱水能力において一槽式の全自動洗濯機を上回る場合が多い[注 6]。また、脱水槽に注水でき、注水しながら脱水することで、すすぎを助ける機種もある。現代の日本においては、下述の全自動洗濯機の普及率が高まっていて、住宅の設計・建設においてもこれを前提としている物件が多いため、全自動洗濯機に比べて横幅が広い機種が多い二槽式を置くためには予めそのスペースの確認を要するケースが多く、注意を要する。
全自動洗濯機の普及により国内向けの需要は減少し、東芝は生産を中止したが[21]、慣れ親しんだ年配や洗濯にこだわる層により5%は二槽式とされ、業務用と合わせ一定のニーズが存在することから、日本国内ではパナソニック日立グローバルライフソリューションズ・ハイアールジャパン・AQUAの4社が販売を継続している[22]。またペットや介護など汚れ物が出るニーズに合わせ、二台目として小型の二槽式が販売されている[23]
価格の安さにより新興国では主流であり[21]インドネシアでは高温多湿な気候と丹念に洗濯する国民性にマッチしているため、経済的に発展した現在でも洗濯板が付いた二槽式が主流とされる[24]
以上の2方式の操作方法は一時期ボタン操作式(マイコン制御)のものもあったが、現在に至るまで回転スイッチ式である。
三槽式洗濯機
日立製作所がかつて製造していた、二槽式洗濯機の亜種。同社が製造していた攪拌棒付異型パルセーター「からまん棒」(後述)の特長を生かしたもので、洗濯槽の上部中央に、もうひとつ小さなバケツ状の小型洗濯槽を取り付けている。「からまん棒」の内側に駆動軸を通し、小型洗濯槽のパルセーターを駆動していた。
自動二槽式洗濯機
二槽式洗濯機の洗濯槽での行程である「洗い」から「すすぎ」までをプログラムタイマーにより自動化した形態。脱水槽の側ですすぎから脱水までを行える機種も出現した。もとは自動洗濯機の商品名で登場したが、後に下記全自動洗濯機の登場により現在の呼称に変わった。全自動の登場後はニッチ商品化したが、それでも日本が好景気であった時代には松下『スピンリンス』、東芝『シャワーリンス』、三菱『スピンシャワー』など、定番ラインアップとして存在していた。しかし、全自動の普及に加えてバブル経済崩壊後の機種整理の流れのなかで、かつて自動二槽を製造していた各社はすべて撤退している。現在国内で生産を継続している日立は、逆に全自動の普及期に一度撤退していたが1995年に復帰して現在に至る。通常の二槽式よりは遥かに手間が省ける一方、脱水能力は二槽式のそれであるため部屋干しや乾燥機の使用が恒常化している場合にメリットとなる。かつては機械式プログラムタイマーであったが、1980年代後半以降はマイコン式が主流となった。
全自動洗濯機
「洗い」、「すすぎ」、「脱水」をすべて1つの槽で行うもの。注水から最後の脱水までをすべて自動で行う。1965年に松下電器産業(現・パナソニック)によって第1号機が開発・販売された[25]。使用する水の量が多くなる問題があり、普及は遅れた(1970年代初頭、全自動洗濯機普及率4.7-8.6%[25])。1980年代以降改良が重ねられ、現在までの主流となっている。
乾燥機付洗濯機(洗濯乾燥機)
一般的に洗濯乾燥機と呼称される、全自動洗濯機にさらに乾燥機能がついたもの。乾燥機が分けられたものと「洗い」「すすぎ」「脱水」「乾燥」まで1つの槽で全自動で行えるものがある。前者は乾燥機のみ横倒しの槽になっている。2000年代前半から需要・台数が伸びている[26]。一般的に家庭用の乾燥機付洗濯機は、洗濯できる量より乾燥できる量が少ないため、洗濯物全てを乾燥させる場合は、乾燥手前で、洗濯物を取り出す必要がある。乾燥可能な量の洗濯物であっても全自動で乾燥させると衣類がしわだらけのまま乾燥されたり、乾燥ムラがおきるなどの問題が発生することもある。このため、加熱をせず、送風のみで簡易乾燥を行い、ある程度水分を飛ばしてから自分で干すといった使い方をすることもできる。また、2022年現在では、脱水後、加熱されていない空気で送風を行いつつ洗濯物を回転させることで、洗濯物の水分をある程度まで除去し(完全に乾燥させることはできない)干した際の乾燥時間を短縮させ、また部屋干し時の嫌な匂いを低減させる「風乾燥」という簡易式の乾燥機能が普及し、縦型洗濯機の多くの機種に搭載されている。また、一部の高級機種には、ドラム式ではない縦型洗濯機にも、この室温での「風乾燥」ではなく、ヒーターで加熱させた空気を使い、完全に乾燥させる温風乾燥機能を実装している機種も存在する。
ヒートポンプ式の乾燥機能は、室温が低すぎるといった場合性能が発揮できず完全に乾燥できない場合がある。そういった場合は暖房して室温を調整すればよい。一方、除湿冷却方式の同機能は、そのようなことはないが、除湿水の温度をリアルタイムに監視しているサーミスタに糸くずなど異物が付着すると、正確に温度を読み取れなくなり、乾燥不良が発生することがある。基本的には、熱に耐える素材で仕上がりがしわになっても支障ないものであれば洗濯から乾燥まで全自動でよい。前述のとおり乾燥も配慮した量の範囲で洗濯するようにする。
ドラム式はすべての工程において使用水量が少ないため、投入洗剤量を指定分に抑えないと残洗剤が過多となり濯ぎ不足状態となる可能性がある。
手回し式洗濯機
初期には、非電動洗濯機も存在した。洗濯物と水を球形の金属製洗濯槽に密閉して人力で回転させることで攪拌し洗浄する。構造的には現在のドラム式洗濯機に近い。現在でも少量の洗濯向けに「手動洗濯機」「簡易洗濯機」と称してわずかに生産されている。

注釈

  1. ^ 「せんたっき」と発音することが多く、日本語入力システムでも概ね「せんたっき」で変換できる。
  2. ^ 後述のように諸説があり、1906年のT.J. Winansの特許(特許図面にはプーリーはあるが動力源が書かれていない 1907年に1900Co. Nineteen Hundred Washer Company、現Whirlpool Co.から発売)、1908年のOliver B. Woodrowの特許(特許請求の範囲は「モーターあるいはその他の動力源を備えた洗濯機」)、1910年のAlva J. Fisherの特許(1908年にHurley Machine Companyから「Thor」として発売)がある。
  3. ^ Hurley Machine Companyから技術導入をして開発された。
  4. ^ NHKの『プロジェクトX』で「家電元年・最強営業マン立つ~勝負は洗濯機~」として2002年(平成14年)7月16日に放送された。(プロジェクトX 4Kリストア版2021年(令和3年)5月25日放送 NHK)
  5. ^ 1919年の洗濯工場の図。水平型の洗濯機と垂直型の脱水機が見える。 -- Don't Waste Waste, Popular Science monthly, January 1919, page 73, Scanned by Google Books: https://books.google.co.jp/books?id=HykDAAAAMBAJ&pg=PA73&redir_esc=y&hl=ja
  6. ^ 全自動タイプは洗濯槽と一体の為遠心力が弱く脱水時間が長い(3分から10分程度の時間を要する)事に対して、二層式の脱水槽は遠心力が高く短時間(1分から2分)で脱水が完了しやすい。
  7. ^ 日本国内では2022年現在、アイリスオーヤマ、アクアが乾燥機能なしのドラム式洗濯機を発売している。
  8. ^ 注 - ある独特のこだわりがある人の主張によると『バスポンプ非搭載の従来型洗濯機と組み合わせて使うバスポンプ単体機を生産している国内大手電機メーカーは現在パナソニックのみとなっており、他社系列電器店では「工進」や「センダック」製品を主に販売している(バスポンプ搭載機の延長風呂水ホース及び交換用フィルター付き風呂水ホースは各メーカーで純正品を生産しており、サービスルート扱いで購入可)。[要出典]

出典

  1. ^ Vatican’s praise for washing machine. The Hindu. 10 March 2009.
  2. ^ 洗剤の力 - 酵素の科学 第3回松柏軒バイオカフェ、くらしとバイオプラザ21
  3. ^ Mothers and Daughters of Invention: Notes for a Revised History of Technology, Autumn Stanley, Rutgers University Press, 1995, p. 301
  4. ^ Die bequeme und höchstvortheilhafte Waschmaschine Deuches Museum
  5. ^ Mario Theriault, Great Maritme Inventions 1833-1950, Goose Lane, 2001, p. 28
  6. ^ ルイ・フィギエ著『産業の驚異』第2巻(1873年)より
  7. ^ "Electric Washing Machine the Latest. Housewives can do Washing in one-third the Time," Des Moines Daily Capitol, November 12, 1904, p. 13.
  8. ^ アメリカ合衆国特許第 966,677号
  9. ^ アメリカ合衆国特許第 921,195号 など
  10. ^ a b 東芝一号機ものがたり「1930年 日本初の電気洗濯機」 東芝未来科学館
  11. ^ 洗濯機「初」物語 1950年代 三洋電機公式[リンク切れ]
  12. ^ 三菱電機,洗濯機事業から撤退《追加あり》 | 日経クロステック(xTECH)”. 日経BP. 2022年1月2日閲覧。
  13. ^ 電気機械器具品質表示規程”. 消費者庁. 2013年5月23日閲覧。
  14. ^ 内閣府経済社会総合研究所景気統計部 「消費動向調査(全国、月次) 平成21年3月実施調査結果」 2009年4月17日
  15. ^ タコの茹で方[リンク切れ]
  16. ^ アメリカ合衆国特許第 2,165,884号
  17. ^ http://www.oldewash.com/cf/images/IMAGES/327.jpg
  18. ^ ただのバケツじゃありま洗(せん) N-BK2 ASCII24 2001年6月20日、など
  19. ^ 家電製品ミニレビュー/トーマス「高速脱水機」 家電Watch(Impress Watch)2008年1月10日、家電製品ミニレビュー/ソメラ「高速脱水機 C-14LSS」 家電Watch(Impress Watch)2007年11月14日、など
  20. ^ 洗濯機「初」物語 1960年代 三洋電機公式
  21. ^ a b INC, SANKEI DIGITAL (2016年1月2日). “【経済インサイド】東芝もやめてしまうのか 洗濯機メーカーは3〜4社に 「白物家電王国」の落日(1/4ページ)”. 産経ニュース. 2023年10月31日閲覧。
  22. ^ 洗濯こだわれば二槽式”. ヨミドクター(読売新聞) (2010年6月9日). 2023年10月31日閲覧。
  23. ^ 二槽式洗濯機が今売れる理由 ペットの世話や介護で威力”. 日本経済新聞 (2014年9月15日). 2023年10月31日閲覧。
  24. ^ 【60秒解説】洗濯板付二槽式が大ヒットしたワケ(METI/経済産業省)”. www.meti.go.jp. 2023年10月31日閲覧。
  25. ^ a b 洗濯機/衣類乾燥機の歴史 パナソニック公式
  26. ^ 洗濯乾燥機の実使用性〜消費生活相談からみた問題点を探る〜 (PDF) 国民生活センター
  27. ^ Nippon_Style
  28. ^ 佐々木洋一郎「新型電機洗濯機(W361型)」(PDF)『富士時報』第27巻第4号、富士電機、1954年、77-78頁。 
  29. ^ 定石照夫「普及型二重噴流式電機洗濯機について」(PDF)『富士時報』第28巻第2号、富士電機、1955年、34-40頁。 
  30. ^ 家庭用品」(PDF)『富士時報』第36巻第1号、富士電機、1963年、110頁。 
  31. ^ 佐々木洋一郎「二重水流式W261型電機洗濯機」(PDF)『富士時報』第31巻第2号、富士電機、1958年、76-77頁。 
  32. ^ Ûniversity University of Leeds creating a washing machine that needs but 2% of the water/electricity requirements of a conventional washing machine
  33. ^ 繊研新聞 | No.1ファッションビジネス専門紙”. senken.co.jp. 2023年10月31日閲覧。
  34. ^ JIS L0001(ISO3758)と JIS L0217 との表示記号に関する対比表 経済産業省
  35. ^ ドラム式洗濯機の中で男児死亡「『おやすみ』と言ったのが最後」”. iza(2015年6月26日). 2017年8月31日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年1月28日閲覧。
  36. ^ “ちゃんとやってますか?ドラム式洗濯機の掃除方法” (日本語). タスクル | 暮らしのお悩み解決サイト. https://taskle.jp/media/articles/27 2018年9月26日閲覧。 
  37. ^ 11 Common Laundry Mistakes - Eco Nuts Organic Soap Nuts
  38. ^ [1]
  39. ^ 【そこが知りたい家電の新技術】2015年に白物家電部門をグローバルNo.1ブランドに~LG Electronicsの戦略とは - 家電Watch
  40. ^ “米ITC、韓国2社の中国製洗濯機に反ダンピング税”. ロイター. (2017年1月11日). http://jp.reuters.com/article/usitc-tariff-korea-idJPKBN14V047 2017年1月13日閲覧。 
  41. ^ 洗濯機アイリスオーヤマ
  42. ^ コイン式ふとん専用ガス乾燥機を発売しました。”. www.tosei-corporation.co.jp. 2020年6月16日閲覧。






洗濯機と同じ種類の言葉


固有名詞の分類


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「洗濯機」の関連用語

洗濯機のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



洗濯機のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの洗濯機 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS