法令 法令の概要

法令

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/10/21 06:02 UTC 版)

概要

日本法上、「法令」という語は、一般には「法律」(国会が制定する法規範)と「命令」(国の行政機関が制定する法規範)の総称である。しかし、もろもろの法規では、法律と命令のほか、憲法や条例、規則(地方公共団体が制定する法規範)、最高裁判所規則(最高裁判所が制定する法規範)、訓令(上級官庁が下級官庁に対して発する命令)などを含めて「法令」と呼ぶこともある。このように、「法令」という用語の使い方は、かなりまちまちである。結局、個々の用例に則して、その範囲を決めるほかはない。

日本の法令の数

国立国会図書館の日本法令索引[1]及びデジタル庁のe-Gov法令検索[2]において、現行法令として検索した場合、法令の数は以下の通り<。

分類 日本法令索引 e-Gov法令検索 概要
憲法 1 1 現行の日本国憲法
法律 2,280 2,087 e-Gov法令検索において法律としてカウントする太政官布告※1件(爆発物取締罰則)を除く。
太政官布告 9 7 日本法令索引では、3件(絞罪器械図式、刑法(旧刑法)、爆発物取締罰則)が法律扱いとの記載がある。e-Gov法令検索において法律、政令としてカウントしているものをこちらに計上
政令 3,101 2,247 日本法令索引では、施行日を定める政令を含む。e-Gov法令検索において政令としてとしてカウントする太政官布告6件(明治十四年太政官布告第六十三号(褒章条例)、明治八年太政官布告第五十四号(褒章制定の件) 等)を除く。
勅令 157 66 日本法令索引では、勅令無番号で公布された条約(例えば、メートル条約)を含む。
府令省令 4,252 4,286 e-Gov法令検索において閣令、廃止された機関の規則で現在は省令としての効力を有するものを含む
閣令 13
規則 400 242 日本法令索引では「その他の行政機関の命令」として分類。廃止された機関の規則で現在は省令としての効力を有するもの(公認会計士管理委員会規則、電波監理委員会規則、地方財政委員会規則、外資委員会規則、文化財保護委員会規則、首都圏整備委員会規則、金融再生委員会規則)を含む。
10,213 8,936
  1. 日本法令索引とe-Gov法令検索とでははかなり差がある。実効性喪失の扱いの差等による。
  2. 未施行法令、施行停止法令、整備法令等をふくむかどうかについても相違がある。

このほか、議院規則最高裁判所規則、地方自治体の条例がある。

日本の法令の種類

日本の法令には、種類ごとに優劣関係がある。上位の法令が優先され、上位の法令に反する下位の法令は効力を持たない。優劣関係は、おおむね次のようになっている。

憲法 > 条約 > 法律 > 命令政令 > 省令

(根拠:大前提としての日本国憲法の存在、日本国憲法第7条日本国憲法98条日本国憲法73条6号国家行政組織法12条1項等)
この他、法律または命令に準じる最高裁判所規則、命令に準じる議院規則(衆議院規則、参議院規則)がある。なお、法令の対象となる事項にもよるが、憲法と条約との関係、条約と法律との関係、法律と最高裁判所規則との関係については、優先関係につき争いがある。

地方行政における条例等については、地方自治法を根拠に効力の優劣関係は次のようになっている。

国の法令 > 条例 > 規則(ただしここで規則は普通地方公共団体の長が地方自治法第15条第1項を根拠に制定するもの)

(根拠:日本国憲法94条、地方自治法第14条第1項、地方自治法第15条第1項)
条例において刑事罰が定められる事があるが(例:各都道府県における迷惑防止条例等での罰則規定)、これは地方自治法第14条第3項を根拠とする。

日本の主な法令の条文は、e-Gov法令検索e-Gov法令検索)で参照できる。

現行法令

日本の現行法令には、日本国憲法条約(憲章、協定、議定書などを含む。)のほか、法律命令(政令、府省令など)、最高裁判所規則議院規則(衆議院規則、参議院規則)、ならびに条例、各地方公共団体の首長や行政委員会が定める規則がある。それぞれの内容は下記の通り。

法令名 定義、制定方式など
日本国憲法 国家の基本秩序を定める根本規範である。統治機構や国民の権利義務などを定めている。なお、日本国憲法の改正には「憲法改正」という法形式がとられる。
条約 国際法上で国家どうし、あるいは国際連合などの国際機関で結ばれる成文法である。日本国が同意しているものは、公布され、国内では法律より優先する。条約は憲章条約協定議定書などの名称で締結されるが、法的には条約と扱われる。行政取極については、ここでいう条約には含まれず、いずれに該当するかは個々の内容により決まり、文書の名称により一義的にはきまらない。
法律 国会の議決により成立する成文法の一形式。例外として、地方自治特別法(一の地方公共団体のみに適用される特別法)は、国会の議決のほか、その地方公共団体の住民の投票においてその過半数の同意が必要。

成立した後、主任の国務大臣署名し、内閣総理大臣連署して、天皇公布する。

命令 行政機関が制定する成文法の総称。法律の範囲内において定められる。

政令、府省令、その他の命令の3種がある。

  政令 内閣が制定する成文法。法律の実施に必要な細則や法律が委任する事項を定める。日本国憲法第73条第6号に基づく。

閣議によって決定され、主任の国務大臣署名し、内閣総理大臣連署して、天皇が公布する。法律の委任がある場合を除き、罰則や義務を設けることはできない(内閣法11条)。題名は「云々に関する法律施行令」「云々に関する政令」とされることが多い。

府省令 内閣総理大臣が発する成文法である内閣官房令内閣府令デジタル庁令および復興庁令と、各省大臣が発する成文法である省令の総称。内閣官房令、内閣府令、デジタル庁令、復興庁令および省令の間で上下の序列はない。府省令の題名は「云々に関する法律施行規則」「云々に関する内閣府令」「云々に関する省令」とされることが多い。複数の府省の所掌事務にわたる事項について定められる府省令は、複数の府省の主任の大臣が共同で発する。
内閣総理大臣が内閣官房に係る行政事務について発する成文法。内閣法第25条第3項は、「内閣総理大臣は、内閣官房に係る主任の行政事務について、法律若しくは政令を施行するため、又は法律若しくは政令の特別の委任に基づいて、内閣官房の命令として内閣官房令を発することができる」と定める。内閣官房令には、法律の委任がなければ、罰則を設け、又は義務を課し、若しくは国民の権利を制限する規定を設けることができない(内閣法第25条第4項)。
内閣総理大臣が内閣府に係る行政事務について発する成文法。内閣府設置法第7条第2項は、「内閣総理大臣は、内閣府に係る主任の行政事務について、法律若しくは政令を施行するため、又は法律若しくは政令の特別の委任に基づいて、内閣府の命令として内閣府令を発することができる」と定める。内閣府令には、法律の委任がなければ、罰則を設け、又は義務を課し、若しくは国民の権利を制限する規定を設けることができない(内閣府設置法第7条第4項)。
内閣総理大臣がデジタル庁に係る行政事務について発する成文法。デジタル庁設置法第7条第3項は、「内閣総理大臣は、デジタル庁に係る主任の行政事務について、法律若しくは政令を施行するため、又は法律若しくは政令の特別の委任に基づいて、デジタル庁の命令としてデジタル庁令を発することができる」と定める。デジタル庁令には、法律の委任がなければ、罰則を設け、又は義務を課し、若しくは国民の権利を制限する規定を設けることができない(デジタル庁設置法第7条第4項)。
内閣総理大臣が復興庁に係る行政事務について発する成文法。復興庁設置法第7条第2項は、「内閣総理大臣は、復興庁に係る主任の行政事務について、法律若しくは政令を施行するため、又は法律若しくは政令の特別の委任に基づいて、復興庁の命令として復興庁令を発することができる」と定める。復興庁令には、法律の委任がなければ、罰則を設け、又は義務を課し、若しくは国民の権利を制限する規定を設けることができない(復興庁設置法第7条第4項)。
各省大臣が発する成文法。国家行政組織法第12条第1項は、「各省大臣は、主任の行政事務について、法律若しくは政令を施行するため、又は法律若しくは政令の特別の委任に基づいて、それぞれその機関の命令として省令を発することができる。」と定める。省令には、法律の委任がなければ、罰則を設け、又は義務を課し、若しくは国民の権利を制限する規定を設けることができない(国家行政組織法第12条第3項)。
その他の命令 その他の命令は、その発する機関、根拠法、沿革などにより、政令若しくは府省令に並び、又は政令若しくは府省令の下位に位置する。
  • 会計検査院規則
会計検査院が定める成文法。会計検査院法第38条は、「この法律に定めるものの外、会計検査に関し必要な規則は、会計検査院がこれを定める。」とする。会計検査院が憲法に設置根拠を持ち(憲法第90条第2項)、内閣に対し独立の地位を有するため(会計検査院法第1条)、会計検査院規則は政令または府省令に準じる効力を持つと解される。会計検査院規則には、会計検査院長が年月日を記入した上で署名して、官報で公布する(会計検査院規則の公布に関する規則)。
人事院規則・人事院指令は、いずれも人事院が定める成文法。国家公務員法第16条第1項は、「人事院は、その所掌事務について、法律を実施するため、又は法律の委任に基づいて、人事院規則を制定し、人事院指令を発し、及び手続を定める。人事院は、いつでも、適宜に、人事院規則を改廃することができる。」と定める。 人事院が内閣の所轄の下に置かれる機関であるため(国家公務員法第3条第1項)、人事院規則・人事院指令は政令または府省令に準じる効力を持つと解される。
府省の外局である委員会(行政委員会)の発する特別の命令(規則)または府省の外局であるの長官が発する特別の命令(庁令)。国家行政組織法第13条第1項は、「各委員会及び各庁の長官は、別に法律の定めるところにより、政令及び省令以外の規則その他の特別の命令を自ら発することができる。」と定める。また内閣府の外局については、内閣府設置法第58条第4項に同様の規定がある。国家公安委員会が制定する国家公安委員会規則(警察法第12条)、海上保安庁長官が発する海上保安庁令(海上保安庁法第33条の2)などがある。行政委員会は、すべて規則制定ができることになっているが、庁である外局は、海上保安庁のみである。
  • 外局以外の行政機関の規則等
国立国会図書館の日本法令索引には、「その他の行政機関の命令」として外局の規則のほか、日本ユネスコ国内委員会規則、日本学術会議規則、日本学士院会則・会員選定規則が掲載されている。
議院規則 衆議院参議院が各々定める成文法。衆議院が定める衆議院規則と、参議院が定める参議院規則がある。各議院が、それぞれ単独の決議により、議院における会議その他の手続及び内部の規律について定める。日本国憲法58条2項を根拠とする。
最高裁判所規則 最高裁判所が、裁判官会議の議に基づいて定める成文法。訴訟に関する手続、検察官弁護士、裁判所の内部規律及び司法事務処理に関する事項について定める。日本国憲法77条1項を根拠とする。

なお、最高裁判所規則で定め得る事項については、法律で定めることも許されると解されている(例えば、民事訴訟法民事訴訟規則など。)。法律と規則の規定が矛盾衝突した場合には、その優劣関係が問題となる。この場合、法律の規定が優先されるとするのが多数説である。

地方公共団体の法令
地方公共団体の議会が制定する成文法。憲法第94条は、「地方公共団体は、その財産を管理し、事務を処理し、及び行政を執行する権能を有し、法律の範囲内で条例を制定することができる。」と定める。条例は、当該地方公共団体内でのみ効力を有し、法律の範囲内でのみ制定することができる。地方公共団体は、義務を課し、又は権利を制限するには、法令に特別の定めがある場合を除くほか、条例によらなければならない(地方自治法第14条)。
地方公共団体の首長が制定する成文法(地方自治法第15条)。
地方公共団体の委員会が制定する成文法(地方自治法第138条)。選挙管理委員会規則(地方自治法第194条)、教育委員会規則(地方教育行政の組織及び運営に関する法律第14条第1項)、都道府県公安委員会規則(警察法第38条第5項)など。
告示 内閣、内閣府および各省庁、裁判所、地方公共団体等、公の機関が必要な事項を公示する行為、またはその行為の形式。国の機関が行う告示は官報に掲載する方法によって行われる。地方公共団体が行う告示はそれぞれの地方公共団体の公文式に関する規則により公報に掲載したり掲示板に掲載する方法によって行われる。告示には法令としての性質を含むものもある。

2006年(平成18年)3月、日本国政府の法令外国語訳実施推進検討会議は『法令用語日英標準対訳辞書』を発行し、その中で法令の英訳を以下のように定めた[3]

  • 憲法 - Constitution
  • 法律 - Act(原則)、Code(いわゆる法典)
  • 政令 - Cabinet Order
  • 内閣府令 - Cabinet Office Ordinance
  • 省令 - Ordinance of the Ministry
  • 規則 - Rule
  • 条例 - Prefectural Ordinance(都道府県条例)、Municipal Ordinance(市町村条例)

  1. ^ “日本法令検索”. 国立国会図書館. https://hourei.ndl.go.jp/#/ 2022年8月13日閲覧。 
  2. ^ “e-Gov法令検索 DB登録法令数”. デジタル庁. https://elaws.e-gov.go.jp/registdb/ 2022年8月13日閲覧。 
  3. ^ 法令用語日英標準対訳辞書 - 法務省
  4. ^ 「帝国憲法第八条第一項ニ依リ」又は「帝国憲法第七十条第一項ニ依リ」と記載。





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