水酸化カルシウム 水酸化カルシウムの概要

水酸化カルシウム

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/06/30 02:33 UTC 版)

水酸化カルシウム
識別情報
CAS登録番号 1305-62-0
E番号 E526 (pH調整剤、固化防止剤)
特性
化学式 Ca(OH)2
モル質量 74.0927 g mol−1
外観 無色結晶または白色粉末
密度 2.211 g cm−3, 固体
融点

580 °C, 853 K, 1076 °F (分解)

への溶解度 0.17 g / 100cm3(25℃)
熱化学
標準生成熱 ΔfHo -986.09 kJ mol−1
標準モルエントロピー So 83.39 J mol−1K−1
標準定圧モル比熱, Cpo 87.49 J mol−1K−1
危険性
安全データシート(外部リンク) ICSC 0408
引火点 不燃性
関連する物質
関連物質 水酸化マグネシウム
水酸化ストロンチウム
水酸化バリウム
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

天然には、ポートランダイト英語版(ポートランド石ともいうが、同名の岩石とは異なる)として産出する。

生産

酸化カルシウムに加水すると生成する。その水和熱は大きく、乾燥剤としてよく用いられる酸化カルシウム(生石灰)に水を加えることは危険である。

消石灰の2016年度日本国内生産量は 1,342,058 t、消費量は 517,767 t である[1]

ほたての貝殻を焼成・粉砕した焼成カルシウム、またはそれに加水したものを「ほたてカルシウム(貝殻焼成カルシウム)」の名称で販売している商品もある。

用途

水酸化カルシウムは、強塩基であるが劇物指定を受けていないため、酸性化した河川土壌の中和剤、凝集剤として幅広く使われる。ほかに、試薬・農業・食品や化粧品のpH調整剤、カルシウム補充剤、化学合成原料、体質顔料殺菌剤、歯科治療における感染根管処置時の貼薬剤などとしても用いられる。コンニャクの凝固剤としても使用されている。また、火力発電所の排ガス中の硫黄酸化物の除去にも用いられる。漆喰は水酸化カルシウムを主成分とする建築材料である[2]

強塩基であることから、微生物の繁殖を抑制したり不活性化したりする性質がある[2]。中世ヨーロッパでは、ペストの流行時に消石灰を家に撒く対策が行われた[2]。現代でも、高病原性鳥インフルエンザ豚熱などの防疫のため、消石灰が利用されている[2]

小中学校などでは校庭に白線を引くラインパウダーとして用いられていた。他方、強塩基であるため、目に入ると失明する危険性があることから、2007年11月に文部科学省スポーツ・青少年局学校健康教育課長名で通達[3]が出されたこともあり、白線用としては、より安全な炭酸カルシウムに変更されている[4]


  1. ^ 経済産業省生産動態統計年報 化学工業統計編
  2. ^ a b c d 沢辺大輔、鳥越宣宏「漆喰の文化と化学(<シリーズ>教科書から一歩進んだ身近な製品の化学-匠の化学-)」『化学と教育』第64巻第3号、日本化学会、130-131頁、2019年9月26日閲覧 
  3. ^ 運動場のラインなどに使用する石灰の取り扱いについて” (PDF). 日本学校保健会 (2007年11月2日). 2013年11月2日時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年10月2日閲覧。
  4. ^ 平成 24 年度学校での消石灰使用等に関するアンケート調査結果報告 (PDF) - 公益社団法人日本眼科医会


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