水管系
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/06/22 10:04 UTC 版)
発生
棘皮動物の発生は群によっての違いもあるが、まず左右相称の幼生が形成され、多くは固着の形から放射相称に変態が行われる。この際に、右側体腔が退化的になって体がゆがみ、左側の中体腔が管状に伸びて消化管の入り口付近を環状に取り囲んで環状水管となると共に、五つの方向に分枝が伸びて放射水管となり、これによって体全体の五放射相称の軸が決まる。このとき、後体腔も半口側で同様の変形を行い、周血洞系 (perihemal system) が形成される。
群による違い
ウミユリ類
ウミユリ類は棘皮動物の中でも特に原始的なものと考えられているが、水管系にも独自な点が多い。環状水管と放射水管とからなる点は同じであるが、ポーリ嚢も瓶嚢も持たない。また、石管は体腔内に口を開き、したがって多孔板はない。つまり水管内には体腔液が流れていることになる。ただし、口盤にある小孔から海水が体腔内に流れ込むようになっており、実際には海水が混じった液体が流れている。この類以外では多孔板があるから、よりしっかりと海水を取り込むように多孔板が発達したのかも知れない。
ヒトデ類
ヒトデ類は下面に口があり、そこから腕に向かって歩帯溝がある点でウミユリ類と共通する。つまり柄を失ったウミユリ類(ウミシダ)を、口盤を下にして伏せたようなものである。管足型の配置もこれに準じる。ただしその発達ははるかによい。環状水管にはポーリ嚢の他に、より小型のティーデマン嚢(Tiedemann's vesicle)がある。石管は上面に伸び、一カ所の腕と腕の間に位置する多孔板につながる。放射水管からは左右に対をなして管足と瓶嚢が並ぶようになっている。
シャリンヒトデ類では諸事退化傾向で、水管系では放射水管がなくて環状水管から管足が出る。
クモヒトデ類
クモヒトデ類は腕の運動性が高く、管足は運動に使われない。そのためか管足には瓶嚢がない。それ以外は基本的な形である。多孔板は口面にあり、口を囲む大きな骨板である口楯の五枚のうちの一つがこれにあたる。
ウニ類
ウニ類は腕を持たず、放射水管は丸い体壁を下から上の端まで這い登るように並ぶ。管足は瓶嚢があり、吸盤を持つ。多孔板は上の端にある肛門を囲む骨板のひとつである。それにつながる石管には軸器官がある。
ナマコ類
ナマコ類の体制は外見的には蠕虫のような左右対称に見える。これはウニの体を縦に引き延ばして横倒しにしたようなものである。歩帯のうちの三つは下面に、二つは背面に位置する。環状水管にはポーリ嚢があり、そこから出た放射水管はまず触手の基部にゆく。触手は特別に発達した管足であり、その基部には触手瓶嚢と呼ばれる特に発達した瓶嚢がある。仲間によっては触手が五本以上あり、それらではこの部分の放射水管が分枝をしている。石管は体腔内に開く。
その他
上記のように水管系に似たものに胃水管系があるが、名称の上で似たものも他にあるので挙げておく。
- 二枚貝類の水を出し入れする管はそれぞれ出水管・入水管と呼ばれる。
- 巻貝類においては、鰓室への水の出入りを行う管を水管という。これは水管系と同じ語になるが、英語ではこちらは siphon であり、全く別である。なお、貝の種によってはこの管に沿って殻の口の前端が突出し、これを水管突起、あるいはその内側を水管溝という。
水管系と同じ種類の言葉
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