民主党 (日本 1998-2016) 政策

民主党 (日本 1998-2016)

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政策

綱領・基本理念

1998年の第一回党大会で以下の「基本理念」[78]と「基本政策」が決定された。結党以来長らく同党における「綱領」は存在せず、「基本理念」が綱領的文書ともされてきたが、2011年に「党の基本理念・基本政策に代わる「綱領」について検討する」として「綱領検討委員会」を設置[79]

野党転落後の2013年2月14日の党大会において、綱領を採択[13]。それまで綱領と扱われた「基本理念」は『1998年綱領』とされた。

基本理念

長らく綱領的文書とされてきた1998年の「基本理念」は以下の通り[80]

綱領採択後は、「1998年綱領」と扱われている[7]

私たちの基本理念 - 自由で安心な社会の実現をめざして - 1998年4月27日民主党統一(第1回)大会決定より
●私たちの現状認識
日本は、いま、官主導の保護主義・画一主義と、もたれあい・癒着の構造が行き詰まり、時代の変化に対応できていません。旧来の思考と権利構造から抜け出せない旧体制を打ち破り、当面する諸課題を解決することによって、本格的な少子・高齢社会を迎える21世紀初頭までに、「ゆとりと豊かさ」の中で人々の個性と活力が生きる新しい社会を創造しなければなりません。
●私たちの立場
私たちは、これまで既得権益の構造から排除されてきた人々、まじめに働き税金を納めている人々、困難な状況にありながら自立をめざす人々の立場に立ちます。すなわち、「生活者」「納税者」「消費者」の立場を代表します。「市場万能主義」と「福祉至上主義」の対立概念を乗り越え、自立した個人が共生する社会をめざし、政府の役割をそのためのシステムづくりに限定する、「民主中道」の新しい道を創造します。
●私たちのめざすもの
第1に、透明・公平・公正なルールにもとづく社会をめざします。
第2に、経済社会においては市場原理を徹底する一方で、あらゆる人々に安心・安全を保障し、公平な機会の均等を保障する、共生社会の実現をめざします。
第3に、中央集権的な政府を「市民へ・市場へ・地方へ」との視点で分権社会へ再構築し、共同参画社会をめざします。
第4に、「国民主権・基本的人権の尊重・平和主義」という憲法の基本精神をさらに具現化します。
第5に、地球社会の一員として、自立と共生の友愛精神に基づいた国際関係を確立し、信頼される国をめざします。
●理念の実現に向けて
私たちは、政権交代可能な政治勢力の結集をその中心となって進め、国民に政権選択を求めることにより、この理念を実現する政府を樹立します。

党綱領

日本は古来より東西の文化を取り入れ、大いなる繁栄と独自の誇るべき伝統・文化を築き上げた。多大な犠牲をもたらしたさきの大戦からも復興を遂げた。
しかし、経済の長期停滞、少子高齢化、人口減少による国力の低下に加え、新興国の台頭等による国際環境の変化は国民に長期にわたる閉塞感と不安感を与えている。

このような状況下で発生した東日本大震災及び原子力発電所事故は、未曾有の被害をもたらし、私たちに生き方や、科学・技術、物質文明のあり方までも問い直している。大きな変革期を迎えた今、公正・公平・透明なルールのもと、生きがいを持って働き、互いに負担を分かち合う持続可能な社会を再構築しなければならない。そして政党と国民が信頼関係を築かなければならない。

私たちは、政権交代の実現とその後の総選挙の敗北を受け、あらためて原点を見つめ直し、目指すものを明らかにする。そして道半ばとなった改革を成し遂げるため、必ずや国民政党として再生し、政権に再挑戦する。

●私たちの立場
我が党は、「生活者」「納税者」「消費者」「働く者」の立場に立つ。同時に未来への責任を果たすため、既得権や癒着の構造と闘う改革政党である。私たちは、この原点を忘れず、政治改革、行財政改革、地域主権改革、統治機構改革、規制改革など政治・社会の変革に取り組む。
●私たちの目指すもの
一. 共生社会をつくる
私たちは、一人一人がかけがえのない個人として尊重され、多様性を認めつつ互いに支え合い、すべての人に居場所と出番がある、強くてしなやかな共に生きる社会をつくる。
1. 「新しい公共」を進める
私たちは、公を担う市民の自治を尊び、近代以降、官が独占してきた「公共」をそれぞれの主体に還す。地方自治体、学校、NPO、地域社会やそれぞれの個人が十分に連携し合う社会を目指す。
2. 正義と公正を貫く
私たちは、互いの人権を尊重し、正義と公正を貫き、生涯を通じて十分な学びの機会と環境を確保する。男女がその個性と能力を十分に発揮する男女共同参画を実現し、不公正な格差の是正と、将来にわたって持続可能な社会保障制度により、すべての国民が健康で文化的な生活を送ることができる社会をつくる。
3. 幸福のために経済を成長させる
私たちは、個人の自立を尊重しつつ、同時に弱い立場に置かれた人々とともに歩む。地球環境との調和のもと経済を成長させ、その果実を確実に人々の幸せにつなげる。得られた収入や時間を、自己だけでなく他者を支える糧とする、そんな人々の厚みを増す。
ニ. 国を守り国際社会の平和と繁栄に貢献する
我が国の発展は開かれた交流の中からもたらされた。私たちは、外交の基軸である日米同盟を深化させ、隣人であるアジアや太平洋地域との共生を実現し、専守防衛原則のもと自衛力を着実に整備して国民の生命・財産、領土・領海を守る。国際連合をはじめとした多国間協調の枠組みを基調に国際社会の平和と繁栄に貢献し、開かれた国益と広範な人間の安全保障を確保する。
三. 憲法の基本精神を具現化する
私たちは、日本国憲法が掲げる「国民主権、基本的人権の尊重、平和主義」の基本精神を具現化する。象徴天皇制のもと、自由と民主主義に立脚した真の立憲主義を確立するため、国民とともに未来志向の憲法を構想していく。
四. 国民とともに歩む
私たちは、地域社会に根差した活動の中から課題を見出し行動する。積極的な議論と結論の遵守を旨として、健全な党内統治を徹底する。公開・参画・対話を重んじ、広く国民との協働による政策の決定と実行を目指す。

経済財政

1998年基本政策では、次のような主張をしていた[78]

  • 財政 - 企業会計的視点の導入、数値目標の設定。経済成長と財政再建の両立
  • 行財政 - 中央集権的な政府を「市民へ・市場へ・地方へ」再構築
  • 税制 - 「簡素・公平・透明」。所得・消費・資産のバランス、税と社会保険料の役割分担。消費税のインボイス制導入、納税者番号制導入
  • 財政投融資特殊法人 - 評価システムの導入。役割の終わった特殊法人等の廃止
  • 公共事業 - 入札制度改革、公共事業単価引き下げ。長期計画や単年度主義の見直し。包括交付金制度の導入、土木型から新社会資本型へのシフト
  • 経済 - 市場原理貫徹による経済構造改革。持続可能な経済成長
  • 規制改革 - 経済的規制は原則廃止。環境・消費者・勤労者保護などの社会的規制は透明化
  • 新産業 - 成長分野に戦略的基盤整備。ベンチャー企業へのインセンティブ
  • 中小・零細企業 - 中小企業を重視、モノづくりの基盤整備、第3次産業の自立を支援
  • 金融 - 裁量行政から決別、競争を原則。透明で公正なルールと消費者保護。債権の証券化。不良債権処理
  • 農林水産業 - 誇りと将来展望ある農業、定住や環境・国土保全の農村政策。森林保全政策。資源管理型漁業
  • 雇用・労働 - 雇用安定・勤労者保護の充実。公的能力開発制度の拡充など。仕事と家庭の両立、労働基準法制の整備。女性や高齢者の雇用機会拡大。

鳩山由紀夫内閣における平成22年度一般会計総額は過去最高の92兆2992億円[81][82]菅直人内閣における平成23年度一般会計は92兆4116億円[83]

政権交代前は、将来的にも消費税を財政赤字の穴埋めには使わないと明記していた。しかし、菅政権以降は消費税の引き上げによる財政再建を明確に主張した。

2012年以降の消費税引き上げを否定していない。民主党の当初の案では2013年に8%としていたが、2014年4月に8%、2015年10月に10%まで消費税を増税する修正案を民主党内では容認した[84]


アベノミクスの『3本の矢』について、2013年2月12日の衆院予算委員会で民主党衆院議員後藤祐一は「3本の矢は元々は我々民主党が言い出したもの」と主張した。一方、安倍晋三内閣総理大臣は「そもそも3本の矢と言い始めたのはあなた(後藤)でも日銀でもなく私であり、総裁選を通じて申し上げてきたもの」と反論した[85][86]

予算見直し

  • マニフェストで示された各種政策を実行するために、事業の効率化や歳出削減を断行して2013年度には16.8兆円の財源を生み出すとした。
  • 不要不急の公共事業やハコモノ建設の凍結・廃止を表明した。
  • 高速道路の原則無料化により、交通・流通コスト軽減による内需拡大や、渋滞の解消による地球温暖化対策などの効果を見込んだ。

外交・安全保障

民主党の構成員は保守からリベラルまで幅広く分布しており、自民党を批判することで結束を保っていた。そのため、外交政策で一致を図るのが難しく、民主党の外交防衛政策は自民党を批判するために作り上げられた「個別論点の集積」に過ぎないとみる向きもあった[87]

1998年基本政策では、次のような主張をしていた[78]

  • 外交・安全保障 - 「外交立国・日本」。平和主義に則った防衛政策を継続、日本外交の自立性とダイナミズム。
  • 外交姿勢 - 積極外交、国連中心、世界平和。米国との関係成熟化。近隣諸国との信頼関係。中国との友好協力関係。EU・ロシアとの友好関係。
  • 非軍事的貢献 - 政府開発援助(ODA)、地球環境重視・自立支援・人道主義。市民、NGO、企業、シンクタンクなどの参加。
  • 国連政策 - 核の廃絶、軍縮、地球環境、人口・エネルギー問題、国際人権問題、貧困の撲滅などに積極的外交。国連の問題解決、安全保障理事会の常任理事国入り。国連平和維持活動に憲法の枠内で積極参加。
  • 防衛政策の諸原則 - 専守防衛集団的自衛権反対、非核3原則、海外武力行使反対、文民統制
  • 安全保障体制 - 日米安全保障条約を基軸。アセアン地域フォーラム(ARF)充実、アジア太平洋多国間安全保障の確立。基地問題の協議。沖縄米軍基地の整理・縮小・移転。
  • 有事対応体制 - シビリアンコントロール基本的人権を原則に、関連法制を整備。

国際政治では「対等な日米関係」を掲げ、「対米追従」をしないことを目指していた。コソボ紛争イラク戦争など、アメリカの単独行動主義的な武力行使に対しては批判的で、国連における安保理プロセスを経た軍事出動には賛成の立場を取っていた。小沢一郎ISAF参加発言やテロ根絶法案に見られるように国連中心主義を基調とした自衛隊の海外派遣に比較的積極的であるとされる。ただし、民主党が1998年に制定した基本政策では、党内左派に配慮し「海外における武力行使を行わないこと」と明記されていた[88][87]

米国を含む世界各国と自由貿易協定(FTA)、経済連携協定(EPA)の締結を推進するとしていた

2013年8月16日、新華社日本語経済ニュースにより、民主党代表の海江田が人民日報中国共産党機関紙)系の国際情報紙・環球時報の取材の中で『「歴史認識問題で、安倍首相は戦後の国際秩序を再び戦前に戻そうとしている。だが、そんなことはアジア各国のみならず国際社会全体が賛同しない」』と述べた事が報道され、また同記事の中で環球時報が海江田を『日本で「親中派」と呼ばれる海江田代表』と評している事が報道された[89]

行政刷新・地域主権

1998年基本政策では、中央政府の役割を外交・防衛・司法とナショナル・ミニマムの分野に限定し、それ以外の行政サービスを「基礎的自治体」が担うとしていた。また、官僚の仕事を事前調整から事後チェックへとシフトさせ、企業や市民の自立を促すとしていた。行政法分野では、行政手続法行政事件訴訟法などを整備・強化し、行政裁量を減らすとともに公務員の責任明確化を掲げた。国家公務員人事制度では、天下り規制の強化、一括人事制度の導入など、抜本的改革を訴えた。そのほか、特殊法人、行政代行的業務に関わる公益法人も情報公開法の対象に加えるとした[78]

政策INDEX2009では、首相直属の「国家戦略局」が各省縦割りを排除して予算の骨格を作り、各大臣が連携する「閣僚委員会」が政策決定を行い、「行政刷新会議」が行政全般を見直し、国会議員100人近くを行政に送り込むなどして、官僚依存から政治主導への移行を訴えた。地方に対しては、ひも付き補助金の地方移転や国直轄事業に対する地方負担金制度の廃止により、地方自治体の財源を移すとともに、国と地方の対等な関係を築くとした。国家公務員の天下りや、中央省庁による再就職の斡旋を禁止し、官製談合や随意契約の原因を根絶するとしていた。独法については、非効率であるとして、それぞれ廃止か民営化・国直轄化するとしていた。

社会保障

1998年基本政策では、次のような主張をしていた[78]

  • 育児・介護のNPO活用。医療・医療保険の市場原理活用、情報公開、制度改革。高齢者医療は税を主財源
  • 公的年金は、税の比重を高める。バリア・フリー社会。

また社会保険庁を廃止・解体し、業務を国税庁に吸収させて歳入庁を設置し、年金保険料の無駄遣いを無くすと主張していた。社会保険庁は解体されたが、自民党が成立された根拠法を元に日本年金機構が予定通り2010年1月1日に設置された。

野党時代は障害者自立支援法による福祉サービスの負担増が障害者の自立を妨げているとして、マニフェストに廃止を掲げた。2009年の政権交代後、自民党・公明党と同法案を継続することで合意し、2010年11月17日、障害者自立支援法一部改正案を衆院厚生労働委員会で可決した。なお、野党時代は障害当事者を参画させた機関を設置して「障がい者総合福祉法(仮称)」を制定し、能力に応じた負担額に見直すことや、中小企業を含めた雇用促進に取り組むとしていた。

労働政策では格差是正緊急措置法案により、欧米並みの最低賃金全国平均1,000円を目指していた。また、製造業の派遣労働を原則禁止とし、専門業務(高い給与水準)の労働派遣に限って認める方向で労働者派遣法の改正を行うとしていた。違法な派遣が行われた場合、派遣労働者が直接雇用を通告できるようにすると主張した。

医療制度

後期高齢者医療制度廃止する法案を共産・社民・国民新の3党とともに参院で可決させ(2008年6月)、第45回衆議院議員総選挙のマニフェストにも掲げたが、前提となる老人保健制度復活は全国の自治体・医療関係者の反対が強いため断念し、時間をかけて新制度に移行する方針を固めた[90]第22回参議院議員通常選挙のマニフェストで2013年に後期高齢者医療制度を廃止することを掲げたが、野田佳彦首相は2012年7月18日、自民・公明両党の反発を受け、超党派で社会保障制度改革国民会議に棚上げし、廃止する法案の提出先送りを認めた[91]

またマニフェストに従い、電子レセプト請求の完全義務化について、原則にすると後退させた[92]

一方でマニフェストにおける、被用者保険国民健康保険の順次統合、包括払い制度の導入、クリニカルパスの制定は実現できなかった。2013年までに介護労働者の賃金を月4万円程度引き上げ、介護事業者に対する介護報酬も7%加算することも政権交代の実現後に反故にした。

年金

年金制度を一元化し、全ての職業の人が「所得が同じなら、同じ保険料の負担」となる仕組みに改めるとしていた。この制度の給付は「所得比例年金」と「最低保障年金」の二階建てから成る。

  • 所得比例年金は所得から徴収される保険料を財源とし、職業を問わず納めた保険料に応じて給付額が決定される。制度の『二階部分』にあたる。会社員は負担・給付額共にほぼ変わらず、公務員は給付額が下がる。自営業者は負担・給付額共に増える。
  • 最低保障年金はどんな低所得者であってもおおむね最低7万円の年金を受給できるようにするものである。制度の『一階部分』にあたる。ただし、「所得比例年金」の給付水準が高い高額所得者へは減額、又は支給されない。制度導入前(〜2013年)に年金未納だった者もその分だけ減額される。最低保障年金の財源には消費税5%分が充てられる。そのため、2033年〜53年までに年金目的の消費税を段階的に引き上げる必要があるとしていた。
  • 年金保険料は年金給付以外に使わず、事務費や広報費に費やされてきた年間約2000億円の経費は圧縮した上で国庫負担とすることにしていた。
  • 「消えた年金」「消された年金」問題を早期に解決するため、2009年から約2000億円を投入して2年間集中的に取り組むとしていた。

少子化対策

  • 高額所得者に有利とされる扶養控除を2011年に廃止し、同年から中学卒業までの子供1人当たりに年31万2000円(月額2万6000円)の「子ども手当」を直接給付することを決定し、2010年度は半額にて実施したが、2012年3月に自民党と公明党の要求するミーンズテスト型の「児童手当」を復活させた[93]
  • 高校授業料無償化。公立高校の授業料を無料化し、私立高校生にも授業料を補助(年12万〜24万円程度)する制度を2010年度から開始させた。
  • 出産一時金の給付額を42万円から55万円に増額する方針だった
  • 不妊治療への医療保険適用を検討し、支援拡充する方針だった
  • 保育所に入所できないいわゆる待機児童の解消に向け、認可保育所の増設と共に、小中学校の空き教室の活用した施設の拡充や保育ママ制度の積極活用などを推進する方針だった

エネルギー・原発

民主党の原子力発電に関する記述は以下のように推進から廃止へ変化した。

1998年の「基本政策」では「原子力発電の安全性向上と国民的合意を形成する」[94]とし、1999年8月の「政権政策委員会提言」では温室効果ガス削減の考慮、老朽化の廃炉、新規原子力発電所の建設検討、原子力安全委員会の独立性、原子力の安全確保、「原子力情報公開ガイドライン」などを列挙した[95]。2003年マニフェストでは「安全を最優先し、原子力行政の監視を強めます」[96]、2005年マニフェストでは「過渡的エネルギーとして慎重に推進」[97]、2007年および2009年の政策集では「着実に取り組みます」[98][99]とした。

2009年の政権獲得後、鳩山由紀夫内閣がCOP15温室効果ガス排出の1990年比25%減を掲げたが、原子力発電の増設を前提とした数値であった。2010年マニフェストでは「総理、閣僚のトップセールスによるインフラ輸出」に「原発」を含め[100]、2010年10月にニントゥアン第二原子力発電所への原発輸出の技術協定を締結した。

2011年3月の福島第一原子力発電所事故発生後は、菅直人が浜岡原子力発電所の停止要請を行い「脱原発」を主張したが、退陣条件の1つに再生可能エネルギー特別措置法を挙げ、成立後に退陣した。同年6月、海江田経済産業大臣(当時)は東京電力ホールディングスが求めていた福島第一原子力発電所事故の汚染水流出を防ぐ遮水壁設置の先送りについて、「中長期的課題」とすることを条件に認めた[101]

2011年5月25日、菅がフランス・パリで開かれた経済協力開発機構(OECD)設立50周年記念行事で講演し、日本国が太陽光や風力など自然エネルギーの総電力に占める割合を「大胆な技術革新」により2020年代の早期に20%へ拡大する方針を表明した[102]

2011年9月に党代表となった野田は「脱原発依存」を掲げる一方、2012年7月に大飯発電所の再稼動を行った。2012年9月、民主党は「原発ゼロ社会を目指して」を了承[103]し、2012年マニフェストで「2030年代に原発稼働ゼロを可能とするよう、あらゆる政策資源を投入」と記載した[104]

農業・環境

農業政策では、戸別所得補償制度を掲げ、現在の農業協同組合への支援を中心とした政策を改めることを目指した。

2005年の第162回国会環境委員会では福山哲郎(旧)立憲民主党初代幹事長)ら民主党議員20人を含めた29名の国会議員が「有用微生物群を活用した環境改善の取組に対する国の支援に関する請願」を提出している[105]

情報公開

  • 1998年基本政策では、情報公開の徹底、公益法人の情報公開を主張していた[78]
  • 2010年9月7日に尖閣諸島付近で起きた中華人民共和国の漁船と海上保安庁巡視船との衝突事件において、海上保安庁職員(当時)の一色正春が船上で撮影した映像を、菅内閣の了承を得ないまま11月4日にインターネット上で公開した。この映像公開を琉球新報読売新聞産経新聞日本経済新聞などは肯定的に評したものの[106]朝日新聞毎日新聞北海道新聞東京新聞中日新聞)・沖縄タイムス北國新聞など様々な報道機関からこの映像公開に対し『政府や国会の意思に反する行為であり、許されない』(朝日新聞)、『日中関係の修復に水を差そうとする意図があったのだろうか。ゆゆしき問題である』(北海道新聞)、『国家公務員が政権の方針と国会の判断に公然と異を唱えた「倒閣運動」』(毎日新聞)、など否定的な声が上がり、日本政府の外交機密・情報・危機などの管理体制や法整備の甘さが指摘された[106]。菅内閣総理大臣は11月5日(公開翌日)の閣僚懇談会で、馬淵国土交通大臣に「情報管理の徹底と、事実関係の確認をするように」と述べ、流出の経緯などについて調査し、原因究明を図るよう指示した[107]。また、同日夜には総理大臣官邸で記者団に対し、「国の情報管理がしっかりとした形になっていないことに危機感を強く覚えた」と述べた[108]。この映像流出事件を受け、官房長官の仙谷は11月8日の衆院予算委員会で「国家公務員法の守秘義務違反の罰則は軽く、抑止力が十分ではない。秘密保全に関する法制の在り方について早急に検討したい」と述べ、秘密保護法の制定に前向きな姿勢を示し、検討委員会を早期に立ち上げる考えを示した[109][110]。その後、2011年8月に有識者会議が「秘密保全法制を早急に整備すべきである」とする報告書をまとめ、国会提出を目指していた[109]
  • 特定秘密の保護に関する法律(特定秘密保護法案)について、 幹事長大畠章宏は東京銀座での街頭演説で『マスコミもこぞって、特定秘密保護法案については反対しよう、という声を上げている。あとは、国民のみなさんの声をあげてください』と述べた[111]。また民主党は、特定秘密保護法案の廃止法案を2014年1月24日に召集予定の通常国会で共産党社民党などと共に提出する考えを示している[112]

戦後補償問題

民主党の「政策集INDEX 2009」は、冒頭で「戦後諸課題への取り組み」を記載し、国立国会図書館恒久平和調査局を設置するための国立国会図書館法改正や、従軍慰安婦とされた者に金銭の支給を行う戦時性的強制被害者問題の解決の促進に関する法律案の成立を掲げている[113]

他党に先駆け、戦時性的強制被害者問題の解決の促進に関する法律案を国会に8度にわたり提出した[114]。起案者の本岡昭次は「政権交代が実現したら真っ先に実現する法案」と述べている[115][116]

2010年7月16日の朝鮮日報は、日本政府が8月の日韓併合100周年に合わせて発表する談話に最大限の誠意を盛り込むことを検討しており、1995年の村山談話をどれだけ上回るかに関心が集まっていると報じた[117]。8月10日、政府は村山談話をほぼ踏襲する菅首相談話を閣議決定した[118]

選挙・政治

1998年基本政策では、次のような主張をしていた[78]

  • 政治 - 国会改革や参政権の拡充、自立した市民が参画し政治を直接監視。民主主義の質的充実と活性化。憲法の基本精神を守り発展。
  • 国会 - 政府委員制度の廃止、議員立法の緩和、優先審議の制度化、スタッフ充実。二院制のあり方の見直し。政党・民間の政策立案向上。
  • 内閣機能 - 総理大臣及び内閣の政治的リーダーシップ強化。副大臣制度の導入、政治的任命職の拡大。
  • 政治倫理・国会議員 - 資産公開の徹底、政治的地位利用罪の導入。政治献金の公開・透明化、国から助成を受けている団体の政治献金禁止。議員の定数見直し、永年表彰制度の廃止。
  • 選挙制度 - 一票の格差の是正、選挙制度見直し。選挙権・被選挙権年齢の引き下げ、在外投票制度、定住外国人の地方参政権
  • 司法 - 適正で迅速な裁判、裁判官などの増員、法曹養成の充実、手続法の整備、法曹一元化など。法律扶助制度。

その後、次のような政策を掲げるようになった。

  • 企業・団体献金を全面禁止し、税額控除やインターネット献金の推進によって個人献金を普及させるとしている。
  • 世襲議員の制限。現職の国会議員の配偶者および三親等内の親族が、同一選挙区から連続して立候補することを民主党の内規で禁止している。
  • 資産公開の徹底、政治的地位利用罪の導入などにより、政治倫理を確立するなどを基本政策に掲げている[88]
  • 衆議院の比例定数を80議席削減するとしている。
  • 選挙権の年齢を18歳に引き下げる方針を固めている。
  • 2006年に与党の反対で否決された「インターネット選挙運動解禁法案」を成立させ、政策本位の選挙・カネのかからない選挙の実現を図るとしている。
  • 鳩山政権では、地域からの陳情は民主党都道府県連で聞き、党本部幹事長室を通じて関係各省庁に伝えるという仕組みを作った[119]吉田治副幹事長は、地方県知事からの道路建設などの陳情受け付けの条件として「民主党を選挙で応援すること」を挙げた[120]
  • 2009年9月18日、民主党は政府・与党一元化のため、議員立法を禁止し、政府提出法案を原則とすることを決めたが、議員立法の禁止には至っていない。
  • 外国人地方参政権の成立を推進[121]。2009年の第45回衆議院議員総選挙では、鳩山由紀夫内閣は外国人参政権法案の成立を予定したが、鳩山由紀夫内閣の総辞職により頓挫した。後任の枝野幸男幹事長は永住外国人への地方選挙権付与法案(外国人参政権法案)について、早期の提出に慎重な姿勢を示している[122]

難民認定の緩和

先進国中最も冷たいとされる日本の難民受け入れ状況を改善するため、「難民等の保護に関する法律」を制定し、国連難民高等弁務官事務所が認定した難民は原則として受け入れる方針を打ち出していた。

2010年、難民の申請者に申請から六カ月が経過すれば無条件、一律に就労を許可した。しかし実際には難民に該当しないビザなしでの不法就労目的の「偽装難民申請」が相次いだ。そのため、自民党安倍政権時の2015年9月、この規定を見直しししっかりと審査し、該当しない場合には国外退去を求めるようになった[123]

人権

1998年基本政策では、少数民族被差別部落在日外国人障害者・難病患者などへの差別解消、プライバシー保護などを主張していた[78]。人権 -

人権擁護法案(人権侵害救済法案)など[124]

警察の取り調べの可視化や証拠開示義務を法制化し、冤罪の防止を図るとしていた。

男女共同参画・差別撤廃

  • 婚外子(非嫡出子)の相続差別をなくすことをめざし活動を行い、2013年に、婚外子の相続差別撤廃する改正民法が成立した[125]
  • 性同一性障害者の性別変更について、未成年の子供がいてもこれを認めるように法制を見直すとしていた
  • 選択的夫婦別姓の早期実現[126]
  • 「離婚後300日以内に誕生した子を前夫の子と推定する」「推定を覆す申し立ては前夫からしか起こせない」とした現行制度により「戸籍のない子」問題が生じている現実を踏まえ、事実上離婚状態にあった期間を勘案して本当の父親を認定できるよう法改正するとしている[126]
    • 2015年には、これらの問題について最高裁判所が違憲性を判断することとなったことを受け、政調会長の細野豪志が定例記者会見において、「民主党は、選択的夫婦別姓と再婚禁止期間の短縮を含む民法改正案を1998年から2009年まで超党派で提出してきた経緯がある。その経緯も踏まえ、もう一度この問題についてしっかり議論する機会をつくりたい。法務部門で議論が始まると聞いているが、できるだけスピードを上げて民主党としての考え方を提示できるよう努力をしていきたい」と述べた[126]

その他

1998年基本政策では、次のような主張をしていた[78]

  • 官と民 - 簡素なルール、官僚は事前調整から事後チェックへ。公務員倫理法、天下り規制強化など[78]
  • 土地 - 保有から利用へ、土地の流動化、有効利用促進[78]
  • 国民生活 - 公平な機会、多様な価値観や個人の尊厳と権利、活力に満ちた社会。少子・高齢社会に備えたセーフティーネット整備、地球環境、人と自然との共生、「安心・安全・ゆとり・豊かさ」[78]
  • 男女共同参画 - 男女の固定役割や差別、不平等の解消。家族法の整備、女性の権利保障、性的いやがらせ防止、女性政策の強化、男女共同参画社会。
  • 教育 - 教育の地方分権、価値観や能力の多様性、自立した青少年。30人学級、入試や奨学金の見直し。リカレント教育、コンピュータ教育、国際化対応など。地域学習、子育てネットワーク。
  • 科学技術・芸術文化 - 基礎的研究開発や先端技術研究、複合的人文科学研究の推進。多様な芸術文化の活動支援、知的所有権制度の充実。重要文化財の保全。
  • 環境 - 環境教育、資源循環型社会。温暖化・環境破壊対策、不法投棄やダイオキシン問題の解決。
  • 災害対策 - 大規模災害に対する公的支援。危機管理体制の確立。
  • NPO - NPOへの支援。

  1. ^ 2003年9月に合流。
  2. ^ 党の基本理念を採択する際、前身の民主党が「中道左派」を、民政党が「保守中道」を主張した結果編み出された妥協的理念[8]。だが、ラ・レプッブリカフランス通信社AP通信は中道左派と伝えている[9]。民主党内には思想的背景が保守派から社会民主主義まで非常に多様な政治家が存在した[10]
  3. ^ 日本国憲法下での野党第1党党首の国政選挙での落選は、片山哲日本社会党委員長)が第24回衆議院議員総選挙で落選して以来2例目[64]





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