死刑 各国の死刑

死刑

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/11/11 17:01 UTC 版)

各国の死刑

死刑執行数順位

2021年の執行数(アムネスティ・インターナショナルによる調査)[4]
1位 中華人民共和国 非公表。2021年は3,000人以上の死刑執行がされている[46]。2018年推定では、少なくとも2000人[47]
2位 イラン 少なくとも314人(推定)
3位 エジプト 少なくとも83人(推定)
4位 サウジアラビア 65人
5位 シリア 少なくとも24人(推定)
6位 ソマリア 少なくとも21人(推定)
7位 イラク英語版 少なくとも17人(推定)
8位 イエメン 少なくとも14人(推定)
9位 アメリカ合衆国 11人
10位 南スーダン 少なくとも9人(推定)
11位 バングラデシュ 5人
12位 ボツワナ 3人
12位 日本 3人
14位 ベラルーシ 少なくとも1人(推定)
14位 アラブ首長国連邦 少なくとも1人(推定)
-位 北朝鮮 未発表。2013年は少なくとも推定82人が公開死刑執行されている。

また、2008年には少なくとも推定161人が公開死刑執行されている[48]

-位 オマーン 不明。2020年は、少なくとも4人(推定)[49]
-位 ベトナム 未発表。2018年の執行数は少なくとも推定85人であった。

(参考)19世紀のヨーロッパ諸国(イギリスは別途、18世紀後半も含めた期間のデータ)及び日米の死刑宣告数(日米除く)及び死刑執行数

国名 期間 全体 1年平均 執行率
(%)
死刑廃止年 最後の
死刑執行年
死刑宣告数(人) 死刑執行数(人) 死刑宣告数(人) 死刑執行数(人)
 イギリス 1847年1860年 787 141 56.2 10.1 17.9 1998年 1964年
イングランド
1865年1867年 73 29 24.3 9.7 39.7
 フランス 1861年1865年 108 72 21.6 14.4 66.7 1981年 1977年
 ベルギー 1832年1855年 613 47 18.0 1.4 7.7 1996年 1950年
 ポーランド 1849年1862年 327 65 23.4 4.6 19.9 1997年 1988年
 オーストリア 1860年1863年 103 12 25.8 3.0 11.7 1968年 1950年
 スウェーデン 1857年~1860年 325 29 81.3 7.3 8.9 1972年 1910年
プロイセン 1818年~1865年 1372 449 28.6 9.4 32.7 1987年 1981年
(その他)
 日本 1872年 - - - 1,128 - - -
1897年 - - - 21 - - -
1890年1899年 - 468 - 50.7 - - -
 アメリカ合衆国 1825年1849年 - 894 - 35.8 - - -
1850年1874年 - 1,364 - 54.6 - - -
1875年~1899年 - 2,521 - 100.8 - - -
 イギリス
1770年1830年 35,000 7,000 573.8 114.8 20.0 1998年 1964年
イングランド
  • ヨーロッパ諸国の死刑宣告数及び死刑執行数は、1876年(明治9年)10月13日に行われた元老院会議の改定律例249條1項改正ノ件(號外第16號意見書)第3議会における細川潤次郎の発言による[54]
  • プロイセンの死刑廃止年と最後の死刑執行年は、どちらも東ドイツである。
  • 1770年~1830年に行われたイギリスの死刑宣告数及び死刑執行数は、「死刑の在り方についての勉強会」 の添付資料による[55]
  • 日本の死刑執行数は、明治6年政表[56]と日本政表第2号[57]及び昭和43年版白書[58]で記録の有る1872年(明治5年)~1900年(明治33年)の中で、最多年(1872年[明治5年])と最少年(1897年[明治30年])及び1890年代の累計死刑執行数と1年平均死刑執行数を掲載している。
    但し最多年の死刑執行数は、鞠山騒動によりこの年の4月3日敦賀県の裁判で自裁が下され自裁した4人[59]加賀本多家旧臣の敵討ち(明治の忠臣蔵と言われている。本多政均暗殺事件に関わった人物らを加賀本多家旧臣ら15人により殺される。また、1873年(明治6年)2月7日布達の太政官第37号「復讐禁止令」が出される以前の最後の仇討ちである。)により、この年の11月4日石川県刑獄寮の裁判で自裁が下され自裁した旧臣12人、キリスト教信仰を理由に11月25日の京都で秘密裏に獄内で死刑執行された市川栄之助(公式発表では獄死)がいるが、それら17人の死刑執行は含まれていない[60]
  • アメリカはNPO団体『死刑情報センター(Death Penalty Information Center)』の「EXECUTIONS OVERVIEW Executions in the U.S. 1608-2002: The Espy File」[61]ブリタニカによる運営サイト「ProCon.org 」の「US Executions」の1825年~1899年の間のデータである[62]

アジア

アジア(日本を除く)では中華人民共和国やサウジアラビア、イランなどの死刑執行数が多い。またシンガポールは厳罰主義であり、軽微な触法行為に対しても刑罰を加えていることで有名である。また北朝鮮では裁判によらない即決による公開処刑が行われているとの報道もある。なお、アジア諸国で死刑存置国はイスラム教国や東アジアに多い。

2012年~2021年の間にアジア諸国で死刑執行のあった国は下表より、推定も含めて25カ国あった。その内8カ国は執行執行のあった年は5年未満であった[注釈 4]。また、5年以上執行のあった17カ国の内、11カ国は国民の大多数がイスラム教を占める国・地域であり、5カ国は漢字文化圏儒教)であった。

前者に属する諸国の中で、イランイラクサウジアラビアが数十~数百の執行を行っている。一方で、これら3カ国と同じアジアの中東諸国でもバーレーンヨルダンクウェートオマーンカタールアラブ首長国連邦は、死刑執行の頻度が少なく、ヨルダンを除き1桁の執行である。また、パレスチナは死刑執行の頻度が多いが、基本1桁の執行であり、2018年以降死刑執行されていない。また、他のイスラーム教が多くを占めるマレーシアインドネシアも基本1桁の死刑執行である。マレーシアは2018年10月に死刑廃止の検討を表明し、一時停止しため2018年以降執行されておらず[70]インドネシアも2017年以降執行されておらず、2009年~2012年の間は一時停止していた。そして、パキスタン2015年に推定341人という3桁の死刑執行が行われていたが、2016年~2019年は2桁の執行であり、2008年12月~2014年11月の間は、テロ行為を含めた一般刑法犯に対する死刑執行を一時凍結していた(但しによる執行であることを理由に、2012年10月26日に上官含め3人を殺害した兵士が絞首刑により執行されている[71]。)[72][73]

漢字文化圏の場合、世界で最も多いと推定され、数千単位で執行される中国のみならず、推定であるが北朝鮮ベトナムにおいては、3桁の執行が行われていた。そして、3カ国とも共産主義政党が事実上の一党独裁を行っている。但し、共産主義政党が事実上の一党独裁を行っている国でも、ラオス1989年以降死刑執行を行っておらず[74]キューバ2003年を最後に執行されていない。

なお、2021年5月24日アムネスティ報告書の調査によれば2021年に世界18カ国で少なくとも579人の死刑(但し、中国や北朝鮮、ベトナムやシリアでは未発表の為、含まれていない)が執行された。最多の中国は、執行数を公表していないが、少なくとも3,000人(2021年推定)は執行されていると推定されるため、2021年のアムネスティ・インターナショナルの死刑執行推定数に含めた場合、世界の死刑執行数の約84%を占めることとなる[46][47]。世界人口の5分の1が中国に集中していることを考慮しても、世界の主要国の中では、死刑執行率も格段に高い。そして中華人民共和国では、殺人だけでなく麻薬犯罪や汚職事件で有罪になった場合も死刑になる。但し、死刑になる最も多い犯罪は、主に殺人と数は少ないが薬物関連による犯罪である[4]。また、2008年の北京オリンピック開催直前までは公開処刑が行われていた。中国政府は「犯罪抑止力のために必要だ」と主張しているが、中国の人権問題として国際社会の批判を受けている。

2012~2021年の10年間に死刑執行が行われたアジア諸国の執行数[4][40]
国名 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020 2021
漢字文化圏
漢字文化圏の内、共産主義政党が事実上含めて一党独裁を行っている国
中国 3,000 2,400 2,400 2,400 2,000 2,200 2,000 - 3,000+ 3,000+
北朝鮮 21+ 82+ 2+ 3+ 64+ 5+(?) 2+ 8+ 18+ 5+
ベトナム 0 429+ - 85+ - - 0?
漢字文化圏の内、共産主義政党が事実上含めて一党独裁を行っていない国
日本 7 8 3 3 3 4 15 3 0 3
台湾 6 6 5 6 1 0 1 0 1 0
イスラーム諸国
バングラデシュ 1 2 0 3 10 6 0 1 2 5
インドネシア 0 5 0 14 4 0 0 0 0 0
マレーシア 0 2+ 2+ - 9 4 0 0 0 0
イスラーム諸国の内中東に属する国
バーレーン 0 0 0 0 3 0 0 3 0 0
イラン 580+ 727+ 801+ 1,052+ 545+ 524+ 285+ 273+ 246+ 337+
イラク 129 169+ 61+ 26+ 101+ 125+ 52+ 100+ 45+ 17+
ヨルダン 0 0 11 2 0 15 0 0 0 0
クウェート 0 5 0 0 0 7 0 0 0 0
オマーン 0 0 0 2 0 0 0 0 4 0+
パレスチナ 6 3 27+ 0 3 6 0 0 0 0
カタール 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0
サウジアラビア 79+ 79+ 90+ 158+ 154+ 146+ 149+ 184+ 27 69
シリア - 2 7+ - - - - - - 24+
アラブ首長国連邦 1 0 1[75] 1[76] 0 1 0 0 0 1+
イエメン 28+ 13+ 22+ 8+ 0 2+ 4+ 2+ 5+ 14+
イスラーム諸国の内、伝統的中東諸国では含まれないが、拡大中東の定義により中東に属する国
アフガニスタン 14 2 6+ 1 6 5 3+ 0? 0 0+
パキスタン 1 0 7 341 87 60 14 14 0 0
その他
シンガポール 0 0 2 4 4 8 13 4 0 0
インド 1 1 0 1 0 0 0 0 4 0
タイ 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0
  • 死刑執行数は、一部の例外を除きコーネル大法科大学院の死刑問題研究グループが出しているデータを用いている。2021年は、コーネル大法科大学院の死刑問題研究グループとアムネスティ・インターナショナルが出しているデータで執行数が多い方を採用している。
  • 中国の2020年・2021年の死刑執行数は、アメリカを拠点とする人権団体「中米対話基金」が発表した2020年度・2021年度報告書[77][46]から用いている。
  • 北朝鮮の2011年~2013年は韓国統一研究院で行われた脱北者の面接調査によって推定した公開死刑執行人数である[78]
  • イランは、いくつかの団体が出した推定数の中で、最も多い推定数のデータを用いている。
  • 表の「+」は、死刑執行数が、あくまでメディア等で確認された執行数である為、データよりも多く行われた可能性があることを示している。
  • 表の「?」は、北朝鮮の場合は、司法手続きをした上での執行であるか不明である為、?としており、アフガニスタン(2019年)とベトナム(2020年)は、執行が無かったか確証が無いため?としている。
  • 表の「-」は、執行数は不明である。
  • 表中にないが、ミャンマーで国民民主連盟議員と著名民主活動家の2人、ミャンマー軍の情報提供を疑い女性を殺害した男性2人の計4人を2022年7月23日(推定)に執行している[6][7][8]。また、2021年に起きたクーデター発生から2022年1月26日までの約1年間でヤンゴン管区内において市民など101人が死刑判決を受けている[79]

日本

日本において死刑判決を宣告する際には、永山則夫連続射殺事件で最高裁(昭和58年7月8日判決)が示した死刑適用基準の判例を参考にしている場合が多い。そのため永山基準と呼ばれ、第1次上告審判決では基準として以下の9項目が提示されている。

  1. 犯罪の性質
  2. 犯行の動機
  3. 犯行態様、特に殺害方法の執拗性、残虐性
  4. 結果の重大性、特に殺害された被害者の数
  5. 遺族の被害感情
  6. 社会的影響
  7. 犯人の年齢
  8. 前科
  9. 犯行後の情状

以上の条件のうち、たとえば4項では「被害者2人までは有期、3人は無期、4人以上は死刑」といった基準があるようにいわれるが、実際の判例では事件の重要性などに鑑みながら決定しており、被害者が1人のみの場合でも死刑の可能性は十分にありえる(詳細は日本における死刑#死刑の量刑基準を参照)。

中華人民共和国

執行方法は銃殺刑が基本であるが、薬殺刑を完全導入している地域で死刑執行する場合[80]賄賂の授受等の経済犯罪(全てではないが)は薬殺刑で執行される[81]。なお、死刑が適用される犯罪行為としては、賄賂の授受や、麻薬の密売や、売春及び性犯罪などが挙げられる。しかも、致死の結果が生じない刑事事件でも死刑(または終身刑)が下されることがある。また、「死刑は犯罪を撲滅するための最大の切り札である」と司法当局が確信しているため、死刑の執行が大量に行われている。そのため、暴力による刑事事件だけでなく、「株式相場の混乱」といった経済事件にまで死刑判決が下されたことが実際にある。また、19世紀のアヘン戦争の教訓から、麻薬の密輸や密売といった薬物犯罪にも死刑が数多く適用されている。実際に、覚醒剤を中国から持ち出そうとした日本人4人にも死刑判決が出され、2010年4月6日に1人、同年4月9日に3人の死刑が執行されたことがある。

汚職は近年では、死刑になることは稀であるが、汚職によって得られた金額の大きさや社会的影響、2012年の第18回共産党大会以降に行われたものも含まれているか(この大会の一中全会で習近平中国共産党中央委員会総書記に選出された。更に、習近平は「大トラもハエも一緒にたたけ」とのスローガンを掲げ、権力闘争の一面があると指摘を受けながらも反腐敗運動を展開している)によって、死刑判決が下されることがある[82]

中華人民共和国の刑罰体系では、一部の犯罪に関して下された死刑に執行猶予が付せられる規定(中華人民共和国刑法43条[83])がある(とはいえ、この執行猶予はいわゆる再教育を目指すものである。実際に反革命行為に対する死刑宣告を受けたものを死刑の重圧をかけて『労働改造』する目的があると言われている。著名な執行猶予付き死刑を宣告されたものに江青がいる)。

中国における死刑制度の問題点としては、三権分立が成り立っておらず、量刑の判断基準が政治的な意向に左右されやすいことが挙げられる。しかも、法治主義ではなく役人らの意向が強く反映されている人治主義であるため、近代的刑事訴訟手続が充分に行われていないとの指摘がある。これらの死刑制度の問題点は中国の人権問題として国際的批判の対象となっている。

実際、2018年11月20日に麻薬密輸の罪でカナダ人のロバート・ロイド・シェレンバーグ遼寧省大連市の中級人民法院により懲役15年の刑が下されていたが、控訴後に刑が軽すぎることを理由に差し戻しをされ、2019年1月14日に死刑判決が下されている。その後、控訴したが2021年8月10日遼寧省の高級人民法院(日本の高等裁判所にあたる)により、棄却されている。背景には、アメリが合衆国政府の要請によりカナダ政府によって2018年12月1日ファーウェイ最高財務責任者(CFO)孟晩舟が逮捕されたことに対する報復が指摘されている。この事件とは別に、スパイ容疑で別のカナダ人2人を逮捕されている[84][85][86]
また、2020年において新型コロナウイルス感染症感染拡大防止対策の為に、最高刑が死刑である「公共安全危害罪」を過大解釈し、感染者が隔離治療を拒否して公共の場所に行ったり、公共交通機関を利用した場合も適用されるとし、地方政府によっては病歴や旅行・居住歴などを隠蔽し嘘をついた場合でも適用された。そのため、この罪により逮捕されるケースが生じた。また、この適用を決める過程で議会も通しておらず、三権分立を無視する形で行われている[87]

更に、新型コロナウイルス感染対策として実施が予定されていた移動制限の実務担当者2人を殺害した男性を事件発生から半年足らずで、死刑執行させた[49]

なお、過去にイギリスやポルトガルの植民地であった特別行政区の香港マカオでは、中国への主権返還前に死刑制度が廃止されている。

シンガポール

死刑執行数を公開している国の中で一人当たり死刑執行率が高い国のひとつとして知られ、薬物取引や殺人・強姦などの犯罪に主に適用される。同時に犯罪率が低く治安の良さは世界トップクラスを維持している[88]2016年シンガポール国立大学が実施した同国での意識調査によると、国民の92%が殺人に対する最高刑を死刑とすることを支持している[89]

また、2020年に関しては、6年振りに死刑執行が無かった。これは、訴訟を受けて死刑執行が保留になった背景があるが、新型コロナ感染症流行の影響に対する規制も原因の1つと言われている[49]

そして、2022年4月27日に約2年5ヵ月ぶりに執行されることとなった。執行者の知能指数が69であったため、知的障害ある者を執行したことに対して、物議が生じた[50][51]

朝鮮民主主義人民共和国

北朝鮮では主に1990年代から続く食糧不足や経済的困窮を背景に起きた事件の殺人犯、刑事犯、経済犯や、北朝鮮を脱出しようとして第三国で逮捕され北朝鮮へと送還されたいわゆる脱北者、及び国内で反体制活動などを行ったとされる政治犯に対して死刑を行っている。これらは祖国反逆罪、反国家目的破壊・陰害罪などの刑法によって行われる。

第三国に出国した多くの脱北者の目撃証言や、過去日本のメディアが入手した隠し撮り映像によれば執行方法は銃殺であり、都市の一部地域を使い公開群集裁判と呼ばれる公開裁判の一部で行われている。公開群集裁判には開かれる都市の、青少年を含んだ住民が呼び出され見学を強要される。裁判官によって死刑判決文が読まれた後は即処刑が行われる。

執行の形態としては、死刑囚1人に対し4人の執行官が自動小銃を用いて銃殺する。高射砲や犬を使用する場合もあり、その残虐性から国際社会より人権侵害との批判の声がある[90]。死刑囚はこの時のようにされる事が多い。さらに死刑執行後は周囲の見学者たちに対し死刑囚(の遺体)に石などを投げつけ死刑囚の遺体を更に傷つける事を命令されるという事もあると言われている。処刑は都市部だけでなく強制収容所内においても行われている。正確なデータは存在しないが、かなり多い頻度でこうした死刑は行われていると言われている。

インド

1980年、インドの最高裁は死刑の判断例を「極めて稀な例」のみと制限したほか、2004年~2007年の間は死刑の執行をしなかった。このまま実質的に廃止されるかに思われたが、2008年、160人以上が死亡したムンバイ同時多発テロが発生。2012年、実行犯の死刑を執行したことから、死刑に対する議論は活発になった。最近では、強姦罪にも死刑を適用している[91]。そして、2020年3月20日午前5時半に2012年に起きた集団レイプ事件の加害者4人が絞首刑により執行され、インドにとって1993年に起きたボンベイ爆破事件加害者の死刑執行から5年振りの執行となった[92]。2021年現在の死刑囚は、488人存在するという[4]

中東諸国

人口の大部分がムスリムである中東諸国では、死刑執行数が多い。インドネシアでは銃殺刑が法定刑であるが、イランサウジアラビアではコーランの教えにある斬首刑(サウジアラビアのみ)や石打刑が行われている。

イランにおける実態については明らかではないが、人口当たりの死刑執行数は世界最多であると推測される。公開処刑が少なくとも2020年で1件行われており、18歳未満の死刑執行が3人行われている。更に、反政府的傾向を持つ者や政府に抗議する者や少数民族を政治的に弾圧する為に死刑を利用する傾向を強めている[93]。また名誉の殺人に対する刑罰が軽く、「制度化された暴力」と非難されている[94]。また、背教罪があり国教であるイスラム教シーア派とその下位に位置するとされるゾロアスター教キリスト教ユダヤ教の存在が認められている宗教以外の信者であるという理由だけで死刑になる可能性があり、実際に執行された例がある。コーランには、殺人であっても被害者遺族が許した場合には死刑の執行が免除されるとあるため、ムスリム同士の場合は金銭による示談(いわゆる血の賠償金)で死刑が免除される場合がある[95]

またサウジアラビアでは、出稼ぎ労働者については窃盗などの罪で死刑になる場合もあり、ムスリムと異教徒で刑の軽重に差があるとも言われている。更に、強姦の被害者が逆に犯罪者として死刑になる事例も存在する。

2020年に関しては、サウジアラビアは前年の184人から21人と9割近く減少した。この理由に関してサウジアラビア政府側の説明では、薬物関連の犯罪での死刑執行が一時停止された影響によるものとされているが、新型コロナウイルス感染症流行による社会的混乱G20サミットの自国開催に伴う国際的批判を避けるために、開催期間中は死刑執行しなかったことが原因と見られている[96][97]。 一方で、エジプトは、2020年9月23日に起きたアル・アクラブ刑務所で警官4人と受刑者4人が死亡する脱獄未遂事件があった影響で、推定で32人から107人と前年に比べ3倍以上に増加しており、その年の10月と11月だけで57人(内、10月3日10月13日の10日間で49人)の死刑執行がされている。更に、死刑執行された23人は政治的暴力に関連した事件で有罪とされた人々に対するものであり、拷問や自白の強要がされていると指摘されている[93][98]

ヨーロッパ

過去、イギリスでは、1969年の廃止以降、IRAのテロが多発したため、保守党などから数度死刑復活案が唱えられたことがある。またノルウェーは、1945年にヴィドクン・クヴィスリングを死刑にするために特別に銃殺刑が復活している。1945年5月9日に死刑判決を受け、1945年10月24日に銃殺刑が執行された。

現在、欧州連合 (EU) 各国は、不必要かつ非人道的であることを理由として死刑廃止を決定し、死刑廃止をEUへの加盟条件の1つとしている。また欧州人権条約第3条で死刑を禁止するとともに、欧州評議会においても同様の基準を置いている。このため、現EU加盟国の中で死刑制度を存続している国は、1ヵ国も存在しない[注釈 5]

EU加盟を目指しているトルコ共和国イスラム教国であるが、人権と基本的自由の保護のための条約の第13議定書に従い死刑制度を廃止した。

ベラルーシはヨーロッパで唯一の死刑存置国である。そのため、EU非加盟国であり、人権と基本的自由の保護のための条約第13議定書によって死刑を全廃した欧州評議会から排除されている。

ロシアは、ソ連時代末期の1988年に当時の民主化と人道主義の観点から、死刑の適用対象から60歳以上の高齢者と経済犯罪を除外した。その後は非常に悪質な故意殺人に対してのみ死刑制度が存置されていた[99]1996年の欧州議会加盟時に死刑執行を停止(99年まで執行があったチェチェン共和国を除く)。1999年に憲法裁判所は、陪審制をすべての地方で導入されるまでの暫定措置として死刑執行停止を決定した。しかし、一部の下級裁判所は死刑判決を継続した。執行停止は2007年初めに期限切れとなり、ロシアが2006年5月に欧州評議会議長国に就任したことをきっかけに、ヨーロッパ諸国から欧州人権条約の死刑廃止議定書(第13議定書)批准を求める声があがった[100]。ロシアの憲法裁判所は2009年11月19日に、第13議定書を批准するまで死刑判決と執行を禁止すると決定した。これは、メドベージェフ大統領が死刑の廃止を支持していた背景がある[101]
しかし、ロシア憲法裁判所のワレーリィ・ゾルキン長官は死刑復活の可能性はあるとの認識を示し、廃止の動きは進んでいない[102]。さらに、2022年ロシアのウクライナ侵攻後には、ロシアは欧州評議会脱退を宣言し[103]、ロシアから幹部が送り込まれているといわれている[104]自称ドネツク人民共和国はウクライナ軍捕虜に対し死刑判決を出した[105]

ドイツは、ヴィルヘルム3世の時代(1797年 - 1840年)はオーストリアの影響でブルシェンシャフトなどの市民活動が弾圧され、1836年の市民蜂起では運動家の学生ら数人に死刑が下された(ドイツにおける死刑を参照)。

2001年6月、欧州評議会は、死刑を存続している日米両国に対し2003年1月までに死刑廃止に向けた実効的措置の遂行を求め、それが成されない場合、両国の欧州評議会全体におけるオブザーバー資格の剥奪をも検討する決議を採択した。

アフリカ

アフリカ54カ国のうち2021年10月8日時点で23カ国が死刑廃止している。また、ブルキナファソは通常犯罪のみ廃止している。法的に廃止された国とは別に15カ国が事実上の廃止国(過去10年以上執行がなされておらず、死刑執行をしない政策または確立した慣例を持っていると思われる国。死刑を適用しないという国際的な公約をしている国も含まれる)である。合計すると54カ国のうち死刑を行っていない国は38カ国である。政情が安定している南部諸国における廃止が目立つ。ただし、政情が安定している地域でも、アラブ圏ではイスラム法の影響もあり死刑存続している国が多い。フランスの文化的影響の強い西部アフリカ諸国は、死刑執行を一時停止しているか、国事犯を除く通常犯罪への適用を行っていない国が多い。

2012年~2021年の間で死刑執行された国はアフリカ諸国では9カ国しかなく、その内の赤道ギニアチャドガンビアナイジェリアは執行された年が単年ないし2年のみであり(赤道ギニアは2014年1月に殺人罪で9人執行[106]、チャドは2015年8月29日の首都ヌジャメナで38人が死亡した自爆攻撃を行ったボコハラム戦闘員10人の銃殺刑執行[107]。後の2020年に死刑廃止、ガンビアは2012年8月23日夜から24日朝にかけて行われた国家反逆罪3人を含めた9人の執行[108]、ナイジェリアは2013年の4人と2016年の3人の執行[109])、実質5カ国(ボツワナエジプトソマリア南スーダンスーダン)のみであり、ボツワナを除きアラビア半島の近くに位置する[110]。更に、2016年以降の傾向としては、エジプトが最も多く、次いでソマリアであり、エジプトだけで少なくともアフリカ諸国全体の約5割を占め、ソマリアを含めた場合は少なくとも8割を占めており、どちらもイスラム教徒が9割以上を占めている国である。そして2021年においては、アフリカ大陸諸国で執行が確認された国は前述の5カ国である。エジプトが最も多く死刑執行されていると推測されており、推定ながらアフリカ大陸諸国全体の約70%に当たり、ソマリアを含めた場合約89%となる[4][40]

2012~2021年の10年間に死刑執行が行われたアフリカ諸国の執行数[4][40]
国名 多くの国民が信仰している宗教 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020 2021
北アフリカ諸国
エジプト イスラム教 0 0 15+ 22+ 44+ 35+ 43+ 26 107+ 83+
スーダン イスラム教 19+ 21+ 23+ 3 2 0 2 0? 0? 1+
東アフリカ諸国
ソマリア イスラム教 6+ 34+ 14+ 28+ 7 24 13+ 13+ 20 22
南スーダン キリスト教 5+ 4+ 0 5+ 2+ 4 7+ 7 2+ 9+
その他
ボツワナ キリスト教 2 1 0 0 1 0 2 1 3 3
チャド イスラム教及びキリスト教 0 0 0 10 0 0 0 0 廃止
赤道ギニア キリスト教 0 0 9 0 0 0 0 0 0 0
ガンビア イスラム教 9 0 0 0 0 0 0 0 0 0
ナイジェリア 北部はイスラム教、南部はキリスト教 0 4 0 0 3 0 0 0 0 0
  • 死刑執行数は、一部の例外を除きコーネル大法科大学院の死刑問題研究グループが出しているデータを用いている。2021年は、コーネル大法科大学院の死刑問題研究グループとアムネスティ・インターナショナルが出しているデータで執行数が多い方を採用している。
  • 表の「+」は、死刑執行数が、あくまでメディア等で確認された執行数である為、データよりも多く行われた可能性があることを示している。
  • 表の「?」は、執行が無かったか確証が無いため?としている。
  • 表の「-」は、執行数は不明である。
  • 表の赤色はアフリカ諸国の中でその年に推定であるが最も多く執行された国である。「+」が付いている場合は、その数値で比較していることに注意する。
  • 表の黄色はアフリカ諸国の中でその年に推定であるが2番目に多く執行された国である。「+」が付いている場合は、その数値で比較していることに注意する。

ジンバブエでは2005年に死刑執行人が引退してから後任が決まらない状態が続き死刑が執行されておらず、2021年時点で収監中の死刑囚は66人に及ぶ[4]。2012年には候補者が選定されたものの承認を得られなかった。バージニア・マブヒザ (Virginia Mabhiza) 司法相によると、2017年の死刑執行人の求人では数ヶ月で50人以上の応募が集まったという。AFPの報道ではこの背景としてジンバブエの失業率の高さを挙げており、ある調査ではジンバブエの失業率は90%以上であったと報道した[111]。また、2021年時点でも死刑執行されていない。

南北アメリカ

死刑制度があるのは、アメリカ合衆国(連邦法と軍法と27州法)と中米のグアテマラ、キューバなど少数である。そのうちアメリカは先進国で最大の死刑執行数を記録しているが、多くの死刑執行はテキサス州で行われており、そのためアメリカのメディアが「死刑の格差」と報道しており、同州でこのような姿勢をニューヨーク・タイムズは「執行に対する住民の積極的な支持」、ロイター通信は「犯罪者に厳罰を科すことをいとわない『カウボーイ気質』のほか、一部で根強く残る人種差別意識がある」と報道した[112]。但し、2020年はコロナウイルス感染症流行の影響により、執行停止や執行の延期が相次いだことことによる執行の減少と、トランプ大統領の凶悪犯罪者に対する厳罰志向による連邦政府による死刑執行を17年振りに再会したことにより、連邦政府が最も多く執行した立法行政司法単位となった[49]

ラテンアメリカ(南米)諸国の傾向として、2020年末時点で61%の国(33カ国中20カ国)が一般犯罪に対する死刑を廃止し、45%の国(33カ国中15カ国)が完全な死刑を廃止している[5]。死刑制度存続国も、2008年12月19日セントクリストファー・ネイビスで妻を殺害した罪でチャールズ・エルロイ・ラプラスが絞首刑により執行されたのを最後に10年以上死刑を執行していない。

アメリカ合衆国

アメリカ合衆国の州別の死刑制度
  死刑廃止州
  法律上は死刑制度を維持。ただし、死刑を執行しないという公約をしている州
  法律上は死刑制度を維持。ただし、死刑を過去10年以上実施していない州
  法律上は死刑制度を維持。ただし、特殊な事情が適用される州
  死刑存置州

アメリカ合衆国において最初にミシガン州で死刑が廃止されたのが1847年と、ヨーロッパの死刑廃止の歴史よりも古い。アメリカ合衆国において、死刑を廃止した州や地域は時代の進行とともに増加している。アメリカ合衆国は2022年1月時点で、50州、ワシントンD.C.、5自治領、連邦法、軍法、合計58の立法行政司法単位があり、そのうち2022年1月時点で、23州、ワシントンD.C.、5自治領、合計29の立法行政司法単位で法律上死刑が廃止され、27州、連邦、軍隊の合計29の立法行政司法単位で法律上死刑が定められている。

凶悪犯罪の少ない裕福なニューイングランド諸州や、裕福でこそないが治安が安定している北部内陸州において死刑が行われず、貧しい南部諸州では死刑執行数が多い傾向にある。全米では被告人に対する死刑の宣告ならびに死刑執行は減少傾向にあるが、テキサス州など死刑執行の盛んな地域もある。また、未成年に対する殺害を伴わない性犯罪の再犯者への死刑が適用される州法がサウスカロライナ州フロリダ州ルイジアナ州モンタナ州オクラホマ州の5州で成立したが、殺人を犯していない性犯罪者に対する死刑適用は過酷であり、憲法違反であると法学者から強く批判されていた。連邦最高裁は2008年6月25日にケネディ対ルイジアナ州事件で「非道な犯罪であっても、被害者が死んでいない事件で死刑を適用する法律は、残酷な刑罰であり合衆国憲法に違反し無効」という憲法違反判断を下している。そのため、この法律は見直された。

1990年以降の犯罪捜査でDNA鑑定が導入され、過去に有罪で死刑判決を受けた死刑囚の冤罪が明らかになり、特に2000年代後半以降では再審無罪になる例が多発している。1973年から2001年までにアメリカ国内では96名の死刑囚が釈放されており、特にフロリダ州では21人も釈放されている。同州では、5人の死刑執行が行われる間に2人が無罪放免になったという。

死刑の適用に際して経済的・人種的差別が存在しているとの指摘もある。これは、優秀で報酬の高い弁護士を雇用できるほどの経済力を持つ者が司法取引で減刑される一方で、比較的貧困層の多いアフリカ系アメリカ人に対する死刑の適用が人口比と比べて多いとの指摘がある。

オセアニア

オーストラリアニュージーランド共にいかなる場合も死刑を廃止している。ニュージーランドには死刑廃止後、復活させた事があったが、今日は死刑を非人道的として完全に廃止している。島嶼諸国も死刑廃止している。パプアニューギニアは10年以上死刑停止状態が続いた後、2022年1月に死刑制度が廃止された[113]

各国別の死刑制度の現状については下記ボックスを参照。

注釈

  1. ^ 54カ国中15カ国。但し、通常犯罪のみ廃止の国や事実上の廃止国は含まれていない。
  2. ^ 10年以上死刑執行がなされておらず、死刑執行をしない政策または確立した慣例を持っていると思われる国。死刑を適用しないという国際的な公約をしている国も含まれる。
  3. ^ ただし、現在でもイスラム法を重要視している国では不倫や婚前前性交渉を理由に死刑になる場合が存在する。
  4. ^ インドネシアは2013年・2015年・2016年の3年[63][64]バーレーンは2016年と2019年[65][66]ヨルダンは2014年・2015年[67]・2017年、クウェートは2013年と2017年、オマーンは2015年と2020年、カタールは殺人の罪でネパール人出稼ぎ労働者の死刑執行があった2020年のみ[68]インドは2012年・2013年・2015年・2020年の4年、タイは強盗殺人の罪で執行された2018年の1年のみ[69]であった。
  5. ^ ラトビアはEU加盟に当たって、軍法上で死刑制度を存続させていたが、2012年に死刑を全廃した。
  6. ^ 日本では毎年1000人近い殺人犯が検挙されるが、死刑判決が確定するのは、そのうち数十人である。

出典

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