歌 語源

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/09/18 04:35 UTC 版)

語源

「うた・歌う」の語源は、折口信夫によれば「うった(訴)ふ」であり、歌うという行為には相手に伝えるべき内容(歌詞)の存在を前提としていることもまた確かである[6]。徳江元正は、「うた」の語源として、言霊言葉そのものがもつ霊力)によって相手のに対し激しく強い揺さぶりを与えるという意味の「打つ」からきたものとする見解を唱えている[9]

歌の種類・ジャンル

日本の伝統的なものとして民謡童歌(わらべうた)などがある。

特定集団に属するものとしては、国家の歌としての国歌や、都道府県歌市町村歌など自治体に関するものがある。また、学校の歌として校歌寮歌、教育用の歌として唱歌、会社・企業の歌として社歌、軍隊の歌として軍歌(自衛隊では隊歌)などがある。スポーツ応援などのための応援歌もある。政治集団に関わるものとしては革命歌労働歌などがある。

ほか、宗教音楽における宗教歌(賛美歌など)がある。クラシック音楽においては歌曲オペラ声楽がある。

イタリアにはカンツォーネフランスにはシャンソンがあり、いずれも語源は「うた、歌う」を意味する。ポルトガルにはファドがある。またキューバにはソンがあり、歌曲の一種であるが、語源はスペイン語でを意味する。アメリカ合衆国にはカントリー・ミュージックがある。

歌謡・歌謡曲

歌謡は、広義には和歌などの韻文詩、民謡小唄などの俗謡、童謡国民歌謡戦時歌謡ムード歌謡リズム歌謡テクノ歌謡など[10]、きわめて広範に及んでいる。しかし、昭和以降の日本で誕生した「歌謡」ジャンルのほとんどは歌謡曲または流行歌の範疇に入るため、現代の日常的な場面で「歌謡」といえば、通常は歌謡曲や流行歌、それに類する歌詞のある曲を指す[11]

日本における歌

神道神楽において神楽歌がある。ほか、古代日本の歌謡には大歌などがある。また倭歌(やまとうた)、のち和歌の成立以前にも祭り労働歌などもあったとされるが、記録が残っていない[12]

奈良時代から平安時代初期にかけて民謡を外来楽器で伴奏しながら歌う催馬楽(さいばら)が成立した。のちに雅楽にとりこまれた。また、漢詩をうたった朗詠も同じ頃に成立した。

仏教音楽においてをつけて仏典をうたった声明(しょうみょう)が大原魚山、最澄空海などによって伝えられ、天台声明や真言声明などがつくられた。

日本中世において語りもの歌いものと呼ばれる様式が誕生した。歌いものは音楽・歌唱的な要素を重視したもので、語りものは物語を重視したもの。琵琶法師による平家物語平曲とよばれる独自のメロディで「語られた」。平曲は声明の講式の影響を受けている。

能楽における声楽部門を(うたい)または謡曲(ようきょく)という。

近世には隆達節(りゅうたつぶし)が高三隆達によって作られた。また上方地歌が成立し、義太夫節浄瑠璃長唄などの母体となった。


ポピュラー音楽

ポピュラー音楽には以下のような多様な歌のジャンルがある。

文学としての歌謡

「歌謡」は広義には、または節(リズム)を伴う詩歌を総称する語[10][13]または声楽曲の総称であり[3]、必ずしも文字言語にとらわれるものではないが、声楽曲の歌詞や詞章を文芸とみなして[2]これを歌謡文学として把握した場合には、言葉を仲立ちとするものであり、口承性とともに音楽性をも有し、未だ文学とは意識されない、文学以前の領域にまで踏み込むものである[9]

このような文学ジャンルとしての歌謡は、音楽性をともなう韻文形式の作品のことをいい、韻律文芸の総称である[2]。歌詞をその音楽と分けずに言及する言葉であり、「朗読する詩歌」に対して「歌う詩歌」を指す言葉である。なお民間の歌謡は多くの場合、文字として記録されない口承文学として存在した。

中国において歌謡という言葉は、史記漢書阮籍の音楽論などで使われている[3]。しかし、このような文学概念のひとつとしての歌謡という言葉の使い方は、明治以降の日本文学国文学[2]研究者によるもので、読まれる詩歌に対して、歌われる詩歌を歌謡と呼んだ[3]。今日では、歌詞と音楽は分けられるが、時代によっては、両者が未分化であり、文学研究においては意味を拡大して使うこともある[3]。歌物(うたいもの)、語り物、また古代の記紀歌謡や万葉集のようなかつて歌唱された歌も含める[2]

日本

日本では神楽歌催馬楽今様・早歌(宴曲)・小歌などがある[10]。日本の古代歌謡は、『古事記』『日本書紀』『風土記』や『万葉集』に収載されたものから確認することができる。『古事記』『日本書紀』の2書に記載された歌謡はとくに「記紀歌謡」と呼ばれる。数は、数え方にもよるが、だいたい『古事記』が110余首、『日本書紀』に120余首あり、両書に共通するものが50首ある。年代的な期間は、記述のままに従えば、スサノオの「八雲たつ」の歌から、天智天皇の歌ならびに同時代の童謡にいたる。ただし、仁徳天皇以前の歌謡は、年代的にそのまま決定しがたいものが多い。形式的には、歌体のうえからは、長形式のものと短形式のものとに分けることができる。長形式のものは、反歌を含んだ長歌があり、短形式のものは、短歌を主な形式として、六句形式、四句形式、三句形式などがある。句の音数は、短長連続が多く、五七音が次第に優勢になってきている。技巧的には、意識的な修辞は多くなく、生活に即したものをとって比喩的に歌うことによって効果をあげようとしている。対句、枕詞、重ね詞などの技巧も認められる。題材内容的には、生活を反映して、恋愛と戦闘を扱かったものが多く、ついで酒宴、狩猟、農耕などが多い。のちのような自然を観照した歌は少なく、仁徳天皇時代以降、自然観照の歌が生じてくる。表現的には、叙情的、叙事的、叙景的に分けることができ、詠嘆から、しだいに歌材を深く観照して表現するにいたっており、全体として表現は素朴で力強い感情が中心を占める。
和歌短歌長歌連歌狂歌なども参照。
和歌と古代歌謡に基いて新たに創られた新形式の五行歌も参照。

中国

中国最古の詩集である『詩経』はもともと歌謡であり、音楽・舞踊をともなっていたことが知られている。前漢の時、民間歌謡を収集する楽府という役所が作られた。以後、ここで集められた作品、あるいはそれ以後の民間歌謡を「楽府」(がふ)と呼ぶようになった。なお漢詩は歌謡から独立して朗読する文芸となった。歌と詩の分離は、後漢末、建安頃であったと考えられている(建安文学)。
中葉頃から「」と呼ばれる新しい歌謡文芸が生まれた。詞は宋代に盛行し、宋詞の名がある。詞は後には詩と同様、音楽性から独立して朗読されるようになった。
宋代から「」と言われる歌謡文芸が興り、元代になって隆盛した(元曲)。曲は戯曲といわれる劇中で使われるものと歌謡だけの散曲があり、形式的には小令と套数という2つのものがある。

注釈

  1. ^ 冥界の神ハーデースとその妻ペルセポネーは、地上に出るまで決してオルペウスの妻(ニンフエウリュディケー)の顔を見ないという約束でオルペウスに彼女を連れ戻すことを許した。しかし、地上へ急いだオルペウスは、あと一歩のところで誘惑に負けて後ろを振り返り、エウリュディケーを見てしまったため、再び冥界へ降ろされた。

出典

  1. ^ 吉川(1990)p.38-40
  2. ^ a b c d e f g 大辞林「歌唱」「歌謡」
  3. ^ a b c d e 世界大百科事典,平凡社「歌謡」
  4. ^ 武田梵声『フースラーメソード入門』日本実業出版社、2017年、4頁。ISBN 9784534054746
  5. ^ a b c d 吉川(1990)p.38-40
  6. ^ a b 吉川「歌いもの」(1990)p.75
  7. ^ a b c 波多野 和夫 『重症失語の症状学 ~ ジャルゴンとその周辺 ~』 p.158 金芳堂 1991年1月20日発行 ISBN 4-7653-0592-9
  8. ^ 波多野 和夫 『重症失語の症状学 ~ ジャルゴンとその周辺 ~』 p.157 金芳堂 1991年1月20日発行 ISBN 4-7653-0592-9
  9. ^ a b 徳江「歌謡」(2004)
  10. ^ a b c 松村明監修、「大辞泉」編集部編集『大辞泉(第1版増補)』小学館、1998年10月。ISBN 4095012129
  11. ^ 市川孝・遠藤織枝・進藤咲子・見坊豪紀・西尾寅弥編集『三省堂現代新国語辞典(第3版)』三省堂、2007年10月。ISBN 438514060X
  12. ^ 和歌#歴史参照
  13. ^ 金田一春彦金田一秀穂編集『学研現代新国語辞典(改訂第4版)』学習研究社、2008年12月。ISBN 4053028248
  14. ^ 佐藤(2004)


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