機動戦士ガンダムF91
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デザイン
サンライズから「F91は(機動戦士ガンダムの)旧スタッフで作って欲しい」という要望が出ていたこともあり、メカニックデザイナーには大河原邦男、キャラクターデザイナーには安彦良和が選ばれた[6][11]。富野由悠季とともに『ガンダム』の象徴的存在とも言える両名が久々に顔を揃えている[注 5]。
メカに関しては、時代設定が一新されて全く新しいMS観を築く必要が出てきたので、新シリーズの第1章であるということも含め、「その時代のベースになるデザインを作ってもらうならやはり大河原邦男だろう」ということになった[10]。キャラクターに関しても、元はTVシリーズということもあってとにかく登場人物が多いため、「これだけ多くの人物を描き分け、しかも魅力的に見せてくれるのは安彦しかいない」ということで安彦良和に決まった[10]。安彦は当初、あまり乗り気でなかったが、きちんと打ち合わせをして話作りに関われるのなら、という条件付きで引き受けた[注 6][11]。また安彦は、本作を最後にアニメ製作の仕事から退いた[11][注 7]。
本作品では、MSのデザインにはモビルスーツの小型化など、新たな要素が数多く投入されている[8]。MSの全高は15メートルにダウンサイジングされ、人とモビルスーツの芝居をより緊密にする取り組みがなされている[17][18]。また、新しいガンダムのデザインには「分身」や「人の顔」というテーマがあり、そのギミックも取り入れられている[8][19]。
主人公機であるガンダムF91は、「原点回帰」であったνガンダムに対し、いかにもガンダムらしい頭部と白を基調とした赤青黄のトリコロールのカラーリング以外、ガンダム的な記号を極力廃したデザインとなっている[8]。当初のデザインはあまりに「ガンダムらしい」イメージだったため、富野監督から「もっとチャレンジングなものにしたい」という要望が出た[8]。そこで大河原は、当時注目を集めていたF1レースなどのフォーミュラカーのようなイメージでデザインを描き、そのデザインがガンダムF91となった[11]。一方、それまで進めていたデザインは模型企画の『機動戦士ガンダムF90』という形でプラモデルで展開することになった[11]。
敵方のクロスボーン・バンガードのMSは、「コスモ・バビロニアのMS」ということから富野監督に「古代バビロニア」をモチーフとすることを提案された[10]。大河原は、歴史上バビロンがあったチグリス・ユーフラテス川周辺の民族衣装などを全て調べ、そこからインスピレーションを得て「モノアイ」に代わるデザインとして「ゴーグル」にたどり着いた[6][20]。TVシリーズ化も視野に入れていたので敵MSに関してもキッチリと作り込もうという方針だったため、偵察型、格闘型、攻撃型の3種類を作り、そしてそれを指揮官用と一般用に分けて全部で6種類のデザインを完成させた[6]。
カラーリングに関しては、スタッフの共通認識として「ガンダムは白い機体にしよう」というのがあり、大河原もそのイメージでデザインを進めた。最終的にはバンダイからの要望で青が入ったが、「白を基調に」というのは変わらなかった[6]。クロスボーン・バンガードの機体色は色指定担当が決めたが、機体のイメージカラーの延長で単色になった[注 8][6]。また当時はデジタルペインティングではなく手塗りだったので、多数の色を揃えたり塗り分けたりするのが大変だったということもある[6]。
大河原は通常作画の手間を考えて線を少なくすることに注意しているが、本作では劇場作品ということもあり、サンライズ側から「線減らしはあとでやるから、敵味方すべて出来るだけ細かくディテールを入れてくれ」との指定があった[6][21]。大河原は細かいディテールを書き込む一方で、シルエットだけで機体の違いが見分けられるようにもデザインしている[6]。
デザイン作業の終盤に大河原が髄膜炎を患って入院してしまい、当時サンライズ企画室所属だった石垣純哉がジェガンのリメイクやバグとラフレシアのラフ案を描き、後者2点は退院した大河原がクリンナップした[10]。
新たにメカをデザインする人手も時間も足りないため、艦船などは旧来のものを流用し、細部のすり合わせのためにディテーラーとしてサンライズ所属の中沢数宣が参加した[10]。
注釈
- ^ SDガンダムを除く。
- ^ いわゆる「貧乏ビスタ」。
- ^ 厳密には派生機である。
- ^ 劇場作品になった理由の一つとして、同じく劇場版の『逆襲のシャア』のプラモデルのセールスが好調だったこともあった[6]。
- ^ 安彦は『機動戦士Ζガンダム』のキャラクターデザイン以来、大河原は『機動戦士ガンダムΖΖ』以来の参加。
- ^ 前回参加の『Ζガンダム』では一切打ち合わせすることなく、キャラクターだけを描かされた。
- ^ これでアニメの仕事は辞めると決めた自身の監督作品『ヴイナス戦記』は1989年3月公開、『F91』への参加が正式に決まったのは同年8月。その後、2015年2月公開の『機動戦士ガンダム THE ORIGIN I 青い瞳のキャスバル』で総監督を務め、約24年ぶりにアニメの現場に復帰した[16]。
- ^ シャアのサザビーなども黒が入っていても印象は真紅というのと同じ。
出典
- ^ 映画販促用ポスターより。
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- ^ “機動戦士ガンダムF91プリクエル 5”. KADOKAWA. 2023年8月25日閲覧。
固有名詞の分類
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