機動戦士ガンダム サンダーボルト
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概要
小学館の青年漫画雑誌「ビッグコミックスペリオール」2012年No.8(4月13日号、3月23日発売)より連載を開始。
テレビアニメ『機動戦士ガンダム』などと同じく「宇宙世紀」を舞台とする作品で、物語は「一年戦争」から始まる[1]。本作にも人型機動兵器モビルスーツ(以下「MS」)が登場する。だが、作中に登場するMSや艦艇などの兵器は、独自の設定やデザインを盛り込んで大幅にアレンジされている。これらのデザインについて、作者は「(自身の手法を)あえて変えようと思わず、自分がメカをデザインする上でこだわる部分やラインを、MSに入れ込んだらどうなるか?を考えながらデザインした」「人型でこだわった時に、どこまで合理的にできるか」「(同じく作者が手掛ける)漫画『MOONLIGHT MILE』で現実に近い宇宙開発メカを描いた経験を、『サンダーボルト』の登場MSに反映させている」とコメントしている[2]。
『月刊ホビージャパン』(以下「HJ」)2012年5月号から連載中のコラボレーション企画「サンダーボルトメカニクス」にて、アレンジされたMSのデザイン画と模型作例が掲載されており、それをまとめたムック本も2013年5月30日に発売された。また、バンダイから市販されている「ガンプラ(ガンダムのプラモデル)」では、宇宙世紀カテゴリ「HIGH GRADE UC(HGUC)」とは別個に、本作専用のカテゴリ「HIGH GRADE GUNDAM THUNDERBOLT(HGTB)」シリーズが展開されている。なお、当該シリーズは他シリーズよりも突起やエッジ部分が鋭く造形されており、ST基準に適合しない対象年齢15歳以上向けの商品となっている。商品のパッケージアートは、作者が描き下ろしている。
本作のアニメ化以前の2014年に放送されたテレビアニメ『ガンダムビルドファイターズトライ』の作中では、ガンダムシリーズ作品の1つとして、登場人物が本作のガンプラについて言及している。
外伝『砂鼠ショーン』は、「ビッグコミック」2013年第11号・第12号に前後編で掲載された。その後、『天才たちの競演』第2巻(小学館ビッグコミックススペシャル、2014年3月28日発売、ISBN 978-4-09-186163-4)へ収録され、単行本へは2015年2月27日発売の第5集に収録された。
2016年6月24日発売の『ビッグコミックスペリオール』14号には、ゆうきまさみによる本作のパロディ漫画「ざ・ライバル サンダーボルト」が掲載された[3]。
3DCGの活用など細密な描画が特徴のひとつだったが、 2019年第1号以降は作者の腱鞘炎の悪化によって従来の描画が不可能になったという理由から、画風を大幅に簡略化している。このことについて、同年4月26日発売の単行本第13集には、作者からの謝罪文が掲載されている[4]。
2021年6月時点でシリーズ累計発行部数は400万部を突破している[5]。
連載に至るまでの経緯
本作の連載については、作者が神保町[2]の寿司屋で『スペリオール』編集長から持ちかけられ、二つ返事で承諾したとのことである[6]。
作者は、本作を連載する以前の作品でのコメントで「『ガンダム』はSF作品をやる者にとっては最大の敵。SF作品をやるなら『ガンダム』でやらなかったことをやろうと、『ガンダム』的な要素を排除していた時期がある」と発言していた[2]こともあり、自身が以前は『ガンダム』のいわゆるアンチだと思われていたようだが、Twitter上でガンダムのイラストなどを公開するようになってからはガンダム好きと知られるようになった、と回想している[2][6]。また、「黒澤明の映画作品が好きだがオリジナル作品を作れなくなるので封印している。それと同様に、好きだけどモノマネになるのは嫌なので『ファーストガンダム』映画3部作も10年以上は観ていない。『サンダーボルト』連載のために観返そうとも思ったが、我慢した」とも語っている[2]。
サンダーボルト 外伝
一年戦争や本編の裏側で人知れず展開された、連邦軍やジオン軍、果てはそのどちらでもない者たちによるさまざまな戦いを、オムニバス形式で描く全編フルカラー漫画。ホビージャパン誌「サンダーボルトメカニクス」との連動企画であり、作者の「誌面に登場した素晴らしい模型作例の数々をもっと世に知らしめたい」という意志が発端となったため、MSの大半は内容に合わせたポージングの作例の写真を取り込んで描かれている。
ウェブコミック配信サイト「eBigComic4」(イービッグコミックフォー)で連載され、単行本化もされている。
なお、こちらも作者の腱鞘炎の悪化に伴って「砂漠の掟 2」以降は絵柄が簡略化されており、写真の取り込みも行なわれていない。
注釈
- ^ マーカスがギター。オルフェがトランペットで、デントはベース。
- ^ 第4話では仲間から「中尉」と呼ばれているが、単行本第1巻第2刷以降では「少尉」に修正されている。
- ^ 公国軍のシステムなら文字通りフリーパスでアクセスできる。使用時にはパス自体を端末に接続し暗証コードと掌紋の入力が必要。
- ^ ジャニスからは疑り深いリアリストなどは最初から除外していると評されている。
- ^ 現実世界のパラアスリートが使用しているような単純なもので、可動などはしないが砂漠という環境下ではショーンの義手よりメンテナンスのコストは低い。
- ^ 親分によると、ショーンに払っている報酬でも女房3人は養えるそうでボウゴからも嫁取りを勧められるが、まだ結婚というものに実感が湧かないのかグフのローンが残っているのもあって遠慮している。
- ^ 開戦前からフレミング奨学金を受けており、従軍することが奨学金の受領資格の一つであることが、作中で語られている。
- ^ 本来、技術研究関連の人間は後方向きだが、研究が中断されていたこともあって召集された。
- ^ ただし、本作の連載時点での宇宙世紀世界の設定において、一年戦争時のブリティッシュ作戦などでスペースコロニーが丸ごと砂漠へ落下したという記録は、確認されていない。
- ^ あくまで全身武器庫とも言えるフルアーマーガンダムと比較しての話であり、イオが多大すぎる戦果を挙げるために弾が足りないだけである。
- ^ ペカンバル基地からの出撃時に、コアファイター20機、ガンペリー3機が確認できる。さらにタール火山基地の前でゲター3機、コアブースター偵察型1機を展開している。
- ^ ほかに搬入された新型機にもガンダムの名が連なっており、ボーマン司令は「ガンダムに神通力があるのか?!」と憤慨している。
- ^ この決戦中、軽量化のために投棄した残量30%のプロペラントタンクは、外伝「死ぬにはいい日だ」でジャニスとケイトを救うこととなる。
- ^ 公式設定ではプローバーだが、本作ではブローバーと呼称されている。
- ^ 2017年4月14日にはMSを一部モデリング画像に差し替え、再配信された。
- ^ 「砂漠の掟―プロローグ―」から12ページ描き加えて再構成している。
- ^ プラモデル「1/144 ボール(ガンダムサンダーボルト版)」が付属する。
- ^ フルカラーメカニック設定集小冊子、ボックスアートポストカード6枚、部隊章カラーステッカー、特製収納ボックスの4点が付属する。
- ^ U.C.0079 メモリアルカレンダー[2016]、初期ネーム集、特製収納ボックス、OVA第1話と有料配信セル版特典映像『一年戦争へ挑んだ者たち』プロローグ)を期間限定で無料視聴できるプレミアムSTREAMINGカードが付属する。
- ^ スパルタンのペーパークラフトが付属する。
- ^ 大判絵本「さよなら月曜日」とアニメ特典映像DVDが付属する。
- ^ 画集「THE ART OF THUNDERBOLT」とクリアファイル2枚組が付属する。
- ^ サンダーボルトMSデザインワークス[設定集vol.2]が付属する。
- ^ キャラクターブックが付属する。
- ^ 当初はネイティブ4K(UHD)画質での制作が念頭に置かれ、そう受け取れる情報も公開されたが、制作を進める初期段階で映像生成などの遅延化が懸念されたため、最終的に一般的な720p(1280x720解像度)より少し高めた1440×810解像度で制作された。これをベースに4K解像度にアップコンバートしたのが『DECEMBER SKY』・『BANDIT FLOWER』のUHD BD版(後述)となる[30]。
出典
- ^ 太田垣康男が描く新たなる一年戦争『機動戦士ガンダム サンダーボルト』アニメ化決定! | GUNDAM.INFO | 公式ガンダム情報ポータルサイト
- ^ a b c d e f 「月刊ホビージャパン」2012年5月号 第24 - 25頁インタビュー。
- ^ “ゆうきまさみが「ガンダム サンダーボルト」パロディ描く!スペリオールに掲載”. コミックナタリー (2016年6月24日). 2016年6月29日閲覧。
- ^ “漫画『ガンダム サンダーボルト』作者、画風変更で謝罪 左手腱鞘炎で連載に葛藤「賛否両論あるでしょうが…」”. ORICON NEWS (2019年4月26日). 2019年4月26日閲覧。
- ^ @ohtagakiyasuo (2021年6月10日). "【ご報告】「機動戦士ガンダムサンダーボルト」がシリーズ累計400万部に到達しました!感謝御礼で16巻表紙パーフェクト・ガンダムのラフ画を投下〜!!皆様引き続き宜しくお願いします!!" (ツイート). Twitterより2021年6月11日閲覧。
- ^ a b コミックナタリー - Power Push 太田垣康男『機動戦士ガンダム サンダーボルト』
- ^ a b c d 「月刊ホビージャパン」 2012年9月号 第122頁
- ^ “ジャズ&モビルスーツの組み合わせがステキ! 「機動戦士ガンダム サンダーボルト」ロングバージョンの予告公開”. ねとらぼ (2015年11月25日). 2016年5月16日閲覧。
- ^ アニメ『機動戦士ガンダムサンダーボルト』STAFF&CAST
- ^ @ebigcomic4の2016年3月10日のツイート、2018年2月23日閲覧。
- ^ @ebigcomic4の2016年3月16日のツイート、2018年2月23日閲覧。
- ^ HG GUNDAM THUNDERBOLT 1/144 フルアーマー・ガンダム組立説明書より。
- ^ 『機動戦士ガンダム サンダーボルト立体作品集 サンダーボルトメカニクス』ISBN 978-4-7986-0607-1 [要ページ番号]
- ^ 「月刊ホビージャパン」 2013年2月号 p.74
- ^ 「月刊ホビージャパン」 2012年5月号 p.16
- ^ 「月刊ホビージャパン」 2013年4月号 p.76
- ^ 『機動戦士ガンダム サンダーボルト立体作品集 サンダーボルトメカニクス』ISBN 978-4-7986-0607-1 [要ページ番号]
- ^ 「月刊ホビージャパン」 2012年9月号 p.123
- ^ 「月刊ホビージャパン」 2012年5月号 p.17
- ^ 「月刊ホビージャパン」 2013年2月号 p.71-73
- ^ 「月刊ホビージャパン」 2012年7月号 p.121
- ^ 「月刊ホビージャパン」 2013年8月号 p.75
- ^ 機動戦士ガンダムサンダーボルト外伝の原点「円形劇場〈隠者の一撃/Hermit Shot〉」 2016年8月12日
- ^ “アニメ『ガンダム サンダーボルト』中村悠一、木村良平ら出演!12月から配信。”. コミックナタリー (2015年11月19日). 2015年11月19日閲覧。
- ^ “「機動戦士ガンダム サンダーボルト」アニメ第2シーズン、3月24日より有料配信スタート!”. GUNDAM.INFO (2017年1月20日). 2017年1月20日閲覧。
- ^ UCメモリアル 2018, p. 5.
- ^ a b “アニメ『サンダーボルト』試写、太田垣康男「ガンダムの歴史に入れたのは誇り」”. コミックナタリー (2015年11月23日). 2015年11月23日閲覧。
- ^ 声優・中村悠一ガンダム「サンダーボルト」“なぶり殺し”シーン熱弁が思わぬ裏話に
- ^ “4K/HDRはアニメにも効果大! ガンダム初UHD BD「ガンダム サンダーボルト DECEMBER SKY」を体験- AV Watch(株式会社インプレス)” (2016年12月15日). 2017年1月23日閲覧。
- ^ “機動戦士ガンダム サンダーボルト DECEMBER SKY”. Movie Walker. 2016年6月28日閲覧。
- ^ 『キネマ旬報 2017年3月下旬号』p.66
- ^ “「サンダーボルト BANDIT FLOWER」と「Twilight AXIS 赤き残影」の劇場同時上映が決定!”. GUNDAM.INFO (2017年9月26日). 2017年9月26日閲覧。
- ^ 『キネマ旬報』2018年3月下旬 映画業界決算特別号 p.46
- ^ “ガンダム初の4K UHD BD「機動戦士ガンダム サンダーボルト」がHDR対応で12月発売”. AV Watch(株式会社インプレス) (2016年9月29日). 2016年9月29日閲覧。
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