植物ウイルス
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/04/09 09:39 UTC 版)
植物ウイルスの伝染
樹液を通して
ウイルスは、傷ついた植物と健康な植物の接触による樹液の直接的な移動によって伝染していくことができる。道具や手によるダメージ、自然に受けたダメージ、あるいは動物が植物を常食することなどによって傷ついた植物と、健康な植物との接触は、農作業の間に起こりうる。一般的に、タバコモザイクウイルス(TMV)とジャガイモウイルスとキュウリモザイクウイルス(CMV)は樹液を通して伝染する。
昆虫
植物ウイルスは病原体媒介生物によって伝染する必要があり、これはたいていの場合ヨコバイ[6]やアブラムシ[7])、感染植物との接触した人・農機具・刃物によっておきるヨコバイなどの虫である。ウイルスの種類の一つであるラブドウイルス科は、実は植物の中で増殖するように進化した昆虫ウイルスであるということが提唱されている。植物ウイルスの病原菌媒介生物として選ばれる昆虫が、しばしばそのウイルスの宿主となる対象の範囲がどのようになるかを左右する要素となる。病原菌媒介生物としての昆虫が常食とする植物にしか感染することはできない。これは旧大陸のコナジラミ科が、新しい宿主に多くの植物ウイルスを移した場所であるアメリカ合衆国にまで活動範囲を広げたことに、示されていた。それらが伝染する方法次第で植物ウイルスは非持続性型、半持続性型、持続性型に分類される。非持続性伝染の場合、ウイルスは昆虫の穿刺のための針の先端に付着し、その昆虫が常食とする次の植物に、その昆虫がその植物にウイルスを注入することで移動する[8]。半持続性ウイルス伝染はウイルスが前腸に入り込むことを必要とする。腸を通して血リンパに入り込み、唾液腺にまで至るようなウイルスは持続性のものとして知られている。持続性ウイルスには二つの下位分類が存在する。すなわち増殖型と循環型である。増殖型のウイルスは植物と昆虫の両方において増殖することができるが、一方循環型にはそれができない(増殖型のウイルスはもともと昆虫ウイルスだったのかもしれない)。循環型ウイルスは細菌性の共生生物によって生み出され、タンパク質シャペロンであるシンビオニンによってアブラムシの中で守られている。多くの植物ウイルスはそれらのゲノムのうちで昆虫による伝染にとって極めて重要な領域に関するポリペプチドをコードする。非持続性、半持続性ウイルスの場合、これらの領域は外皮タンパク質やヘルパー成分として知られる他のタンパク質にある。昆虫を媒介としたウイルスの伝染においてこれらのタンパク質がどのように助けとなるのかを説明するために架け橋となる仮説が提唱された。ヘルパー成分が外皮タンパク質の特定の領域に結合し、昆虫の口器にまで至るのである――架け橋を作るように。トマト黄化えそウイルス(TSWV)のような持続性増殖型ウイルスにおいて、しばしば植物ウイルスの他の分類には見られないタンパク質を覆う脂質の外皮がある。TSWVの場合、二つのウイルスのタンパク質はこの脂質外皮において発現される。それらウイルスがこれらのタンパク質を通して結合し、受容体を媒介とした細胞内取り込み作用によって昆虫の細胞に入り込む、ということが提唱されている。
線虫
土壌を媒介した線虫もウイルスの伝染をすることが示されている[9]。それらは感染した根を常食とすることでウイルスを獲得し、伝染させる。ウイルスの伝染の持続性はまちまちだが、ウイルスが線虫の中で増殖することができるという証拠はない。ウイルス粒子は他の植物に感染するために、線虫が感染された植物を常食としているとき、器官に穿刺するための針、あるいは腸に付着し、その後付着した線虫が植物を食べるときに解離することができ。線虫によって伝染され得るウイルスの例として、タバコ輪点ウイルス、タバコ茎えそウイルスなどがある。
ネコブカビ類
多くのウイルスの属は、持続性、非持続性を問わず、土壌を媒介とする遊走子をもつ原生動物によって伝染する。これらの原生動物はそれ自体植物病原性のものではないが、寄生性のものである。そのウイルスの伝染は植物の根と関連付けられたときに起こる。例えば、ポリミキサ・グラミニスやポリミキサ・ベタエが挙げられる。前者は穀物における植物ウイルスによる病気を伝染させることが示され[10]、後者はビートえそ性葉脈黄化ウイルス(BNYVV)を伝染させる。ネコブカビ類も他のウイルスがそこを通して侵入できるような傷を植物の根に作る。
種と花粉を媒介とするウイルス
植物ウイルスの世代間の伝染は約20%の植物ウイルスにおいて起こる。ウイルスが種によって伝染するとき、種は雄原細胞で感染し、そのウイルスは生殖細胞や、しばしばとは言えないまでも時折、種皮の中で維持される。好ましくない天候のような状況によって植物の成長や発達が遅れたとき、種におけるウイルス感染の量は増加する。また、植物における種の位置と感染する見込みとの間には相関関係はないように思われる。種を媒介とした植物ウイルスの伝染が環境に影響を受けるということと、種子伝染は胚珠を媒介とした胚嚢への直接的な侵略によって、あるいは感染した配偶子によって仲介された胚嚢への攻撃を含んだ間接的なやり方によって発生する、ということが知られているが、種を媒介とした植物ウイルスの伝染において伴う仕組みはほとんど知られていない。これらの過程は宿主の植物次第で同時に起こることもあれば、別々に起こることもある。ウイルスがどのように直接的に胚嚢を侵略し、胚珠における親子間の境界線を越えていくのかは知られていない。マメ科、ナス科、キク科、バラ科、ウリ科、イネ科に限らず、多くの植物種が種を通して感染し得る。インゲンマメモザイク病(BCMV)は種を通して伝染する。
植物から人間への直接伝染
フランスのマルセイユにある地中海大学からの研究者たちは、ピーマンのたぐいに共通のウイルスであるトウガラシマイルドモットルウイルス(PMMoV)が人間に伝染し得る、という証拠を希薄ながら発見した[11]。これは滅多にないことであり、他にほとんど類をみない。
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- 1 植物ウイルスとは
- 2 植物ウイルスの概要
- 3 植物ウイルスの伝染
- 4 脚注
- 5 関連人物
植物ウイルスと同じ種類の言葉
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