東海地震に関連する情報
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/10 09:13 UTC 版)
前兆と見られる現象の程度に応じて3段階の情報があり、いずれも政府機関やマスコミを通じて国民に周知される。2番目に重い「東海地震調査情報」では防災関連機関が準備を開始し、最も重い「東海地震予知情報」については強制力を伴った住民の避難や交通規制など大規模な対策が行われる。
ただし、情報が発表されないまま地震が発生する(突発型東海地震)可能性も少なくないとされている。気象庁などはこの情報だけを頼りにするのではなく、不意に東海地震が発生した場合の対策も同時に行うべきだと促している。
2017年11月からは、東海地震に限定した本情報の発表は行なわず、南海トラフ巨大地震を対象にした「南海トラフ地震に関連する情報」が運用されており、さらに2019年5月には「南海トラフ地震臨時情報」等に改められている(詳細は「南海トラフ巨大地震#警戒態勢」を参照)。
概要
「東海地震に関連する情報」の3つの段階[1] | |
東海地震に関連する調査情報 | 観測された現象が東海地震の前兆現象であると直ちに判断できない場合や、前兆現象とは関係がないとわかった場合 |
東海地震注意情報 | 観測された現象が前兆現象である可能性が高まった場合 |
東海地震予知情報 | 東海地震の発生のおそれがあると判断した場合 |
「東海地震の前兆現象」を観測するとともに、前兆現象または前兆と疑われる現象が観測された場合はその段階に応じて情報を発表する仕組み。
- 予知対象である「東海地震」:静岡県西部からその南側海域にかけての地域(想定震源域)の地下を震源として発生する、マグニチュード(M)8前後の海溝型地震。
- 「東海地震の前兆現象」:東海地方に設置されているひずみゲージ(歪計)の「有意な変化」(後述)や、東海地震の想定震源域で発生する大きな地震 などが対象。
- 情報を発表する機関:気象庁(東海地震の警戒宣言は内閣総理大臣)。
- 東海地震の発生のおそれの判定を行う機関:地震防災対策強化地域判定会。
- 予知情報・警戒宣言発表時に防災行動の対象となる地域:地震防災対策強化地域(静岡県全域、山梨県のほぼ全域、愛知県のほぼ全域、岐阜県・長野県・神奈川県の静岡・山梨隣接部、三重県沿岸部、東京都の伊豆諸島の一部)。ただし、交通やインフラ停止の影響は周辺地域にも及ぶ。
- 予知情報・警戒宣言発表時の防災行動:大規模地震対策特別措置法およびそれに基づく政令・条例などで規定。
沿革
1944年に発生した昭和東南海地震では、2〜3日前から明確な地殻変動が観測され、研究によりこれは地震の前兆現象ではないかと考えられるようになった。その後の地震研究の進展により、この考え方は「プレスリップモデル」として地震学で広く認知されるようになった。
ただし、プレスリップモデルの根拠とした地震予知は、高感度で高密度の観測網を設置する必要があり、かつ正常範囲内のデータの誤差を知るために長期間運用して実績を上げなければいけない。1854年の安政東南海・東海地震以来東海地震は発生しておらず、1944年の東南海地震により東海地震の震源域にかかるひずみが増したとされることから、東海地震はプレスリップモデルによる予知に最もふさわしいとされ、東海地震を対象として体制を構築することになった。
1971年に、その体制の基礎となる大規模地震対策特別措置法が成立した。
しかし、研究の進展によって、近年になって高感度・高密度の観測網が増え、少しずつ実績も積まれ始めている。だが東海地震以外でも、地震予知体制が構築できる可能性は未知数である。
注釈
出典
- ^ 東海地震に関連する情報気象庁、2010年10月9日閲覧。
- ^ 東海地震に関する基礎知識 1.東海地震とは気象庁、2010年10月9日閲覧。
- ^ 東海地震に関連する情報が新しくなりました! - 気象庁
- ^ 東海地震に関連する情報の発表基準 気象庁
- ^ 浅田敏『関東・東海地震と予知』第5章「東海地震の予知」p119 岩波書店、1984年
- ^ 全国瞬時警報システム業務規程 (PDF)
- ^ 全国瞬時警報システム(Jアラート)について - 大月市
- 1 東海地震に関連する情報とは
- 2 東海地震に関連する情報の概要
- 3 観測体制と予知の根拠
- 4 3段階の情報
- 5 参考文献
- 東海地震に関連する情報のページへのリンク