本棚 本の収納

本棚

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/01/29 09:53 UTC 版)

本の収納

良くないやり方の写真

本棚に冊子本を置くときは、多くの場合、縦向きに本を置き、背表紙を手前側に向ける。そうすることで、背表紙に書かれている書名や書籍番号が一目瞭然で、望みの書籍に辿りつくための平均時間が短くなり、見つかった時も、1冊だけ単独で、簡単に取り出せる。背表紙が見えない状態で置いてしまったり、平らに置いてしまったりすると、個々の書名が判らず、結局は書籍(の山)をわざわざ取り出しては確認するという作業を繰り返さないと見つけられず、相当な重労働になり、検索時間も長くなる。
ただし、糸で縫うように綴じた古い和書などは構造が柔らかくて立たず、背表紙に書名は書かれていないので、平らに置くほうが向いている。和書の場合、かわりに、棚にしっかりと分類項目を書く(ラベルなどを貼る)などして検索しやすくする。江戸時代の行政機関などでも、書籍や帳簿類などを書棚に平らに積んでいた。

留め金や装飾が多い初期の本が作られていた頃は、並べたり、重ねたりすると傷がつくため、一冊ごとに平置きにされた[57][58]

その他の種類

一般の家庭ではあまり利用されない本棚の種類としては以下のようなものがある[59]。通常は図書館の書庫のように、限られたスペースに大量の本を収める必要がある際に使用される[59]

移動書架

移動書架を採用した図書館の書庫

本棚下部や上部に取り付けたローラーやレールで、本棚や開口部を移動させることで収納することに特化した本棚を移動書架、可動書架などと呼ぶ[60]ウィリアム・グラッドストンは適切な方法で建設された部屋であればその体積の五分の三を本で埋め尽くすことが出来ると自著で発表している[61]。こうした方式は1930年ごろにトロント中央貸出図書館の書庫で採用された[62]。しかし、必要な本棚が飛び出す方式は、本が飛び出して別の棚に引っかかるという問題を孕んでいたため、人間が通る通路を可変させる現代の方式が広く普及した[63]。現代では誤って本棚に押しつぶされたりしないよう、これらに精巧な安全装置を取り付けたものが本を多数収納する必要がある施設などでは利用されている[64]

全自動書架

大規模な図書館等で人員の省力化や防災管理のために運搬ロボットが専用の書庫から図書の入ったコンテナを窓口まで運ぶものがある[65]。通常人間がその書庫に入室することは設備保守の時以外はない[65]

回転式書架

利便性の向上という観点からは、どの方向からでも本を取ることができるようにした回転式書架がある[66]。これヴィクトリア朝後期に開発された書架で、参考図書の収納を主目的に製作された[66]。キャスターを取り付けて移動を可能にした種類もあり、図書館や書斎の中を移動させることができる場合もある[66]


  1. ^ ラテン語armariumはキケロウィトルウィウスなどによって貴重品や本、家財道具などをしまい込む家具を指して使用されていた[25]
  1. ^ 本棚『デジタル大辞泉』”. goo辞書. 2020年9月24日閲覧。
  2. ^ 本棚『類語例解辞典』”. goo辞書. 2020年9月24日閲覧。
  3. ^ 『本棚の歴史』p.17
  4. ^ a b 『本棚の歴史』p.18
  5. ^ ブックエンド『デジタル大辞泉』”. goo辞書. 2020年9月24日閲覧。
  6. ^ 『本棚の歴史』pp.18-19
  7. ^ 『清く正しい本棚の作り方』pp.16-17
  8. ^ a b c d 『清く正しい本棚の作り方』p.16
  9. ^ 『清く正しい本棚の作り方』p.19
  10. ^ 『清く正しい本棚の作り方』p.27
  11. ^ a b 『清く正しい本棚の作り方』p.17
  12. ^ 『本棚の歴史』p.91
  13. ^ 『清く正しい本棚の作り方』p.18
  14. ^ 『本棚の本』p.31
  15. ^ 『本棚の本』p.48
  16. ^ 『本棚の本』p.43
  17. ^ 『本棚の本』p.47
  18. ^ 『本棚の本』p.13
  19. ^ 『本棚の本』p.8
  20. ^ 『本棚の歴史』p.25
  21. ^ 『本棚の歴史』p.27
  22. ^ 『本棚の歴史』p.28
  23. ^ 『本棚の歴史』p.29
  24. ^ 『The Medieval Book: Illustrated from the Beinecke Rare Book and Manuscript Library』p.8
  25. ^ 『The Care of Books: An Essay on the Development of Libraries and Their Fittings, from the Earliest Times to the End of the Eighteenth Century』p.37
  26. ^ 『本棚の歴史』p.32
  27. ^ 『本棚の歴史』p.42
  28. ^ 『本棚の歴史』p.46
  29. ^ 『本棚の歴史』pp.46-47
  30. ^ 『本棚の歴史』p.67
  31. ^ 『The Care of Books: An Essay on the Development of Libraries and Their Fittings, from the Earliest Times to the End of the Eighteenth Century』p.132
  32. ^ 『本棚の歴史』p.69
  33. ^ 『The Chained Library: A Survey of Four Centuries in the Evolution of the English Library』pp.xiii-xiv
  34. ^ 『本棚の歴史』p.78
  35. ^ 『本棚の歴史』p.81
  36. ^ 『本棚の歴史』p.79
  37. ^ 『本棚の歴史』p.82
  38. ^ 『本棚の歴史』p.85
  39. ^ a b 『本棚の歴史』p.86
  40. ^ 『本棚の歴史』p.88
  41. ^ 『本棚の歴史』p.89
  42. ^ a b c 『本棚の歴史』p.96
  43. ^ 『本棚の歴史』p.97
  44. ^ a b 『本棚の歴史』p.100
  45. ^ a b 『本棚の歴史』p.111
  46. ^ 『The Various and Ingenious Machines of Agostino Ramelli (1588). Translated and edited by Martha Teach Gnudi and Eugene S.Ferguson』p.508
  47. ^ 『本棚の歴史』p.116
  48. ^ 『The Origins of the English Library』p.130
  49. ^ 『本棚の歴史』p.134
  50. ^ 『本棚の歴史』p.137
  51. ^ 『本棚の歴史』p.140
  52. ^ 『本棚の歴史』pp.140-141
  53. ^ a b 『マス・コミュニケーション研究-第73号』p.47
  54. ^ 『家具』pp.241-245
  55. ^ 『マス・コミュニケーション研究-第73号』p.48
  56. ^ 横浜国大国語研究「所蔵される書物 : 円本ブームと教養主義」塩原亜紀、2002年
  57. ^ 本棚の歴史 著:ヘンリー ペトロスキー 出版社:白水社
  58. ^ 本の歴史 (「知の再発見」双書) 著:Bruno Blasselle 訳:木村 恵一、監修:荒俣 宏
  59. ^ a b 『本棚の歴史』p.219
  60. ^ 『本棚の歴史』p.228
  61. ^ 『On Books and the Housing of Them, Nineteenth Century XXVII』p.396
  62. ^ 『本棚の歴史』p.237
  63. ^ 『本棚の歴史』p.238
  64. ^ 『本棚の歴史』p.239
  65. ^ a b 『本棚の歴史』p.245
  66. ^ a b c 『本棚の歴史』p.262


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