朝原宣治 経歴

朝原宣治

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/14 15:10 UTC 版)

経歴

神戸市立小部東小学校神戸市立小部中学校兵庫県立夢野台高等学校同志社大学商学部卒業後、大阪ガス入社。

小中高校時代

小部中時代はハンドボール部レギュラーで全国大会出場果たす。なお、現在同中学校のハンドボール部は廃部となっている。

陸上競技は夢野台高から始め、高校3年時に走幅跳でインターハイ優勝。

100メートル競走選手として開花

元々当初は走幅跳が専門だったが、同志社大学在籍中の1993年10月26日に行われた国体100mにおいて、当時の日本記録である10秒19をマークして優勝し、以後、スプリンターとしても注目されることになった。当時は和製カール・ルイスと呼ばれた[1]

アジア人離れした体格と加速力を持ち、リレーのパートナーであった井上悟に「(朝原の加速力はカール・ルイスリロイ・バレルのそれと同じようなレベルで)あまりにも加速が速過ぎて彼にバトンを渡すのは難しかった」と言わしめた[2]

日本記録更新

100mでの功績は大きく、1993年の10秒19、1996年の10秒14、1997年の10秒08と、日本人として初めて10秒1台、10秒0台を記録し、日本記録を3回更新した。また、オリンピック世界選手権の100mでは、1996年のアトランタ1997年のアテネ2001年のエドモントン2003年のパリ2007年の大阪と、5回準決勝に進出している。しかしながら、世界大会での決勝進出は実現することはなかった。

それまで日本記録を更新し合い、リレーメンバーとしても長い付き合いだった伊東浩司とは、お互いの故障が元で直接対決こそ少なかったが、1990年代後半から相次ぐ2人の日本記録更新が、オリンピックや世界選手権におけるリレー種目での入賞というかたちで現れた。それだけでなく末續慎吾ら次の世代の台頭にも繋がった。

2007年世界選手権では日本代表のアンカーとして4x100mリレーに出場。決勝で5位入賞(38秒03 元アジア新記録・元日本新記録)

北京オリンピック

2008年は年齢をおして(世界陸上大阪大会時で35歳)現役続行を宣言した。記録もさることながら、容姿も若く見られることが多い。また、4月の織田記念陸上では風邪を押して出場したが、10秒17という35歳の年齢では驚異的な記録を樹立した[3]北京オリンピックの代表入りを目指して6月の日本選手権に出場。決勝は10秒37の記録で2位であったが、6月30日日本陸連の理事会で代表に選考され、4大会連続の代表となった。

日本の陸上競技選手ではハンマー投菅原武男に次いで2人目の4大会連続出場となった北京オリンピックの本番は100mでは2次予選で敗退し、アトランタオリンピック以来の準決勝進出はならなかった。

しかし、8月22日の4x100mリレー予選では1組2着に入り決勝進出(なお予選で優勝候補のアメリカイギリスナイジェリアなどがバトンミスで失格となる大波乱があった)。そして翌日、8月22日の4x100mリレー決勝では、最終走者[4] として登場し、3着でフィニッシュ。だがそれから8年経過後、このレースで当初金メダルを獲得だったジャマイカチームのネスタ・カータードーピングの検体の再検査で禁止薬物の陽性反応を示したため、2017年銅メダルから銀メダルに正式に繰り上げとなっている[5]。日本男子トラック種目のオリンピックでのメダル獲得は史上初(男女通じても1928年アムステルダムオリンピックの女子800m銀メダルの人見絹枝以来80年振り)であった。なおその際朝原は興奮の余りに、競技に使用したリレーバトンを宙に放り投げたために、一時バトンの行方が不明になっていたが、数日後に発見されてリレーバトンは日本側に返還された[6]

引退後

その年齢や、メダルを獲得したことから今後の進退が注目されていたが、2008年9月のスーパー陸上等々力陸上競技場)を引退レースにすることが発表され、正式な引退会見も行われた。

9月23日、引退レースとなるスーパー陸上では男子100mに出場、銅メダルメンバーの3人を含むレースで3位に入り、ラストランを飾った。競技終了後、朝原の引退セレモニーが挙行され、特別ゲストとして北京オリンピック三冠王のウサイン・ボルトが登場し、朝原にねぎらいの言葉と花束を贈った。この当時まだ22歳のボルトも「36歳までこの世界で現役を続けることは、私にはできないかもしれない」と話し(実際ボルトは31歳で現役を引退している)、改めて朝原の息の長い現役生活に敬意を示すほどだった。朝原は「選手生活の最後にこんな幸せな最後を迎えられることはそういない。本当に感謝でいっぱいです」と会場のファンの前で挨拶した。また、銅メダルメンバーの末續、塚原、高平、そして為末大福島千里など陸上仲間が朝原を胴上げしてセレモニーの最後を締め括った[7][8]

GQ MEN OF THE YEAR 2008」を受賞[9]

母校の同志社大大学院に在籍(休学中)していて、2008年4月からは同大学に新設されたスポーツ健康科学部のアドバイザーに就任し、陸上のみならずスポーツ全体の貢献に関わっていく意思を表明した[10]。名言は「100mは人間力」[11]

2010年には柳本晶一らとアスリートネットワークを結成。4月には自らが主宰するスポーツクラブ『NOBY TRACK and FIELD CLUB』を旗揚げし、ジュニアやユース世代の選手育成を主眼とした陸上競技教室などを開講している。

2018年に行われた世界マスターズ陸上競技選手権大会の4×100mリレー(45 - 49歳クラス)において43秒77で優勝[12][13]武井壮佐藤政志譜久里武・朝原宣治)。


  1. ^ 夢と感動と愛を与えた日本陸上界の偉人5人”. 【SPAIA】スパイア (2016年7月23日). 2020年11月17日閲覧。
  2. ^ 先駆者・井上悟から見た朝原の功績 ― TBS「世界陸上大阪」
  3. ^ 2007年世界選手権で記録した10秒14は、35歳以上39歳以下のマスターズ世界歴代5位である。Track and Field World Rankings Masters
  4. ^ 第1走者:塚原直貴、第2走者:末續慎吾、第3走者:高平慎士、第4走者:朝原宣治
  5. ^ “男子400リレーのジャマイカ失格=日本は銀に繰り上がり-北京五輪ドーピング再検”. 時事通信. (2017年1月26日). オリジナルの2017年2月2日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20170202035751/http://www.jiji.com/jc/article?k=2017012600009&g=spo 2017年1月26日閲覧。 
  6. ^ 行方不明…あの朝原銅バトンが戻って来る
  7. ^ 朝原が引退 日本選手最高の3位に=スーパー陸上「やり切ったすがすがしい気分」”. スポーツナビ (2008年9月23日). 2016年10月10日閲覧。
  8. ^ 日刊スポーツ 2008年9月24日 6面 他
  9. ^ 過去のMen of the Year受賞者たち【国内編】”. GQ JAPAN. 2014年11月21日閲覧。
  10. ^ 朝原トラック卒業し“教授への道”へ”. 日刊スポーツ (2008年8月31日). 2016年10月10日閲覧。
  11. ^ 「スポーツの力」を活用した街づくり「WANGAN ACTIONスポーツアカデミー」 ~中央区の小学生対象に2016年5月22日(日)から~”. 三井不動産 (2016年4月13日). 2016年10月10日閲覧。
  12. ^ 武井壮 世界マスターズ陸上男子400リレー金 アンカーは朝原氏
  13. ^ 2018世界マスターズ陸上 4×100mリレー 武井壮 譜久里武 佐藤政志 朝原宣治
  14. ^ こういうデコボコの感じでいいのかな 奥野史子さん×朝原宣治さん(朝日新聞)
  15. ^ 参院選戦線波高し!? メダリストらに出馬打診もフラれ続け…”. 2015年11月3日閲覧。
  16. ^ 金メダル遺伝子を探せ!(善家賢 著、角川文庫)第2章「世界で過熱する研究合戦(北京五輪銅メダリスト・朝原宣治氏の遺伝子を解析 三六歳で筋力が衰えなかった秘密)」より
  17. ^ 朝原宣治氏は複雑な心境 ジャマイカ「金」剥奪で「銀」に繰り上がり(産経ニュース・2017年1月26日記事)






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