晋書 評価

晋書

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/29 02:24 UTC 版)

評価

『晋書』の志の部分は、晋のみならず後漢三国時代についても記しており、志をもたない『三国志』を補う重要な資料となっている。

また、晋だけでなく五胡十六国の歴史を載記という形で載せているのも貴重である。

いっぽう『晋書』の正確性については、批判的な評価が多い。

史通』「採撰篇」で劉知幾は、『晋書』が『語林』『世説新語』『幽明録』『捜神記』といった書物に記載された怪しげな話を採用していることを指摘した。「分量さえ多ければいい、資料収集が広ければいいという態度だ。小人は喜ばせられるだろうが、君子のあざ笑うところである。」と手厳しく非難している。また、『旧唐書』の著者の劉昫は、「房玄齢伝[2]」の評語で、「以臧栄緒晋書為主、参考諸家、甚為詳洽。然史官多是文詠之士、好採詭謬砕事、以広異聞、又所評論、競為綺艶、不求篤実、由是頗為学者所譏」と、筆を極めて酷評している。つまり、「『晋書』は諸書を参考に詳しく書かれている。ところが、編纂に当たった史官は文士・歌詠みが多く、デマや誤報、くだらないゴシップを喜んで書いているような程度の低い連中で、広く異聞を集め、所々で評論家ぶって美文を書こうとしているが、真実を追求していないので学者はひどくバカにしている」というのである。すなわち、正史であるにもかかわらず後世からあたかもイエロージャーナリズムのような評価しか受けなかった史書、それが『晋書』であった。この評価は後世も概ね踏襲されており、朝の考証学者である趙翼なども、『晋書』はデマや誤報、くだらないゴシップを信じ過ぎると低い評価を行なっている[3]

また、現代日本において『晋書』の部分日本語訳を行った越智重明は「晋書には多くの誤りがあり、敦煌文書に含まれる干宝の『晋紀』や、『世説新語』などで校正しなければならない」「占田制課田制のような重大な歴史学の問題でも、晋書には誤りがあるので鵜呑みにしてはいけない」[4]と批判している。宮川寅雄も「おおかたは逸話や伝承のたぐいで埋められており、枝葉なことがらを洗いおとしてゆくと、家譜や歴任の官職の大まかな推移になってしまう」[5]と述べている。

既存の史書と比較すると、それまで個人が執筆・編纂していたものに対して、複数の編者が存在することで前後矛盾する内容となっている箇所もあり、内藤湖南から批判された。例示すれば「李重伝」の中に「見百官志」(百官志に見える)と記述されるにもかかわらず、『晋書』の中には「百官志」が存在しないこと、などである。

一方で『冊府元亀』の評では、「前代の記録を広く考証し、残存する記録を広く探し、雑草を刈り取るように肝心な部分を抜き出している」と、『晋書』の資料収集を高く評価しているが、そのような好意的評価は非常に少ない。

以上『晋書』は史書としての評価は高くはないが、『三国志』が「地理志」を欠くこともあって、周代以来三国時代に到る地理志の研究家は、『晋書』「地理志」を参考にしている。[要出典]また『三国志』には司馬懿の伝記がなく、『晋書』には司馬懿の伝記「宣帝紀」があるので参考にされることも多い。ただし「宣帝紀」には司馬懿の首が180度回転したといった事実とは考えられない記述が多く、清朝考証学では論難されている。


  1. ^ 『晋書』「賈謐伝」
  2. ^  劉昫. 舊唐書/卷66. - ウィキソース. 
  3. ^ 趙翼・長澤規矩也解題『廿二史箚記』汲古書院・和刻本正史(別巻8)1973.12
  4. ^ 越智『晋書』中国古典新書、明徳出版社
  5. ^ 宮川寅雄 「王羲之と顧覬之」、駒田信二編 『人物中国の歴史〈6〉長安の春秋』〈集英社文庫〉、1987年。 





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