時間 時刻

時間

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/14 22:41 UTC 版)

時刻

時刻とは、ある特定の一瞬のことである。別の言い方をするなら、時の流れの中の一点(時点)ということである。

時刻の表し方は、歴史的に見て様々な方法がある。古くは日の動きで決めた。日の出という時刻があり、日没という時刻がある。また日が南中する時刻が正午 (noon) とされた。つまり、時刻は、自然をもとに決められていた。現在のように機械式の時計を基準に定められたりなどしていなかった。

なお、一日のいつを一日の始まりの時刻と見なすかは文化圏によって異なっている。アラブ人ユダヤ人日の入を一日の始まりとしている。またギリシアにある正教会などでも、他の地域の正教会でも、日没の瞬間が一日の始まりだとされている。今日でもそうだとされている。一日はの中で始まり、やがて夜明けを迎え、を迎え、最後に一日の終わりである夕暮れを迎える。同教会の修道士たちは現代でもそうした時刻観にもとづいた時間割で日々の生活を規則正しく送っている。

一方で、日の出の瞬間を一日の始まりだと見なしている文化も多い。バビロニア人エジプト人は日の出を一日の始まりの時刻だとしていた。

古代宗教における時間

ここから先は時代に沿って、様々な時間観を見てゆく。

古代宗教における時間については、ミルチア・エリアーデが透徹した解釈を行った[11]。聖なる時間によって俗なる時間は隔てられ、中断される[11]。聖なる時間をその前後の俗なる時間から区別するのは、ヒエロファニー(hierophany、聖なるものの顕現)である[11]。周期的に営まれる祭儀は、本来、俗なる時間を中断してが顕現する聖なる時間なのだという[11]

バラモン教そしてヒンドゥー教では全てのものは輪廻しているという。写真はチベット仏教の仏画に描かれた六道輪廻の環。
  • 聖なる時間は可逆的で、反復可能である[11]
  • 人は、通俗的な時間を中断する力をもった祭儀を周期的に営むことで、聖なる時間へ立ち帰り、神々と同一化する。これは真実在への渇望にもとづく[11]
  • 神々による世界創造の時間が、あらゆる時間の原型とされた。聖なる時間は、世界が創造された根源的時間を象徴する。宇宙の原初において聖なるものが顕現した根源的時間を周期的に再現する、ということが宗教暦の基盤である[11]祝祭はたんなる記念日ではなく、神話的出来事を再現している[11]
  • 周期的祝祭のうち、重要なのは新年である。多くの民族の言語で、「世界」をあらわす言葉が同時に「年」をも意味することが指摘されている[11]。これは、世界が新年ごとに再生し更新されている、という観念である。したがって新年は世界創造の再現であり、新年ごとに原初の生命力を更新して再生する[11]
  • ここにあるのは円環的な構造をもち、無限に反復する時間である。こうした円環的時間への信仰は、時間の周期的な全面的再生への願望を生み出している。世界と人は周期的に創造-存続-終末的破滅-創造…を繰り返す(Great Year「大年」)[11]。時間は宇宙の創造から破滅にいたる一周期を終えると、さらに他の周期を始め、完全に再生する[11]。ここには永遠に対する希求があるという[11]

仏教

仏教の時間理解は基本的に現在指向である。それは前世来世も説かなかったブッダの現世指向に起因するものらしい。転生説を容れるとしても、それは円環時間観の存在を示すことにならない。転生が、計測される同一の時間軸の上に起こるものとされていないからである。物事はすべて移ろい行くものであり、不変な存在などない(諸行無常)というのが仏教の根本的な認識である。アビダルマではこれを「すべての存在は極分化された一瞬にのみ存在し、瞬間毎に消滅する」(刹那滅)という思想として展開した。従って、計測される時間の外にある。龍樹に代表される空観における時間もまた、計測時間の外で現在意識を軸に考察されている。


注釈

  1. ^ 認識の基礎形式であり、もともと人間の認識の根底部分に、思考や認識と不可分の状態で横たわっており、逆に言うと、時間を人間の認識から分離して、客観的な対象として認識することがきわめて困難なため。
  2. ^ 時を川にたとえて川が流れていても本当は時間が流れているわけではなく、また時計の針が回っていても、回っているのはあくまで針なのであって、本当は時間がぐるぐる回っているわけではない、とも金田一秀穂は指摘した。
  3. ^ ラテン語形: Caerus
  4. ^ ただし湯川秀樹は、ニュートンは自然の空間や時間が本当は均一ではない、と睨んでいたからこそ、あえて自らの体系の中で仮想されている空間や時間を「絶対空間」や「絶対時間」と呼んだのだ、といったことを指摘している[15]
  5. ^ ヘルマン・ミンコフスキーにより示された通り、ローレンツ変換はこの4次元空間の座標軸の回転と見なせる。
  6. ^ タイムトラベルを扱うSFや疑似科学ではタイムパラドックスの解消のために分岐時間を使う、などという設定、発想が多く見られる。

出典

  1. ^ a b 「日本国語大辞典-第六版」小学館 2001年6月
  2. ^ a b 「広辞苑-第五版」岩波書店 1998年11月
  3. ^ a b c 「国語辞典-第六版」岩波書店 2000年11月
  4. ^ a b 「大辞林-第三版」三省堂 2006年10月
  5. ^ a b 「日本語大辞典」講談社 1989年11月
  6. ^ a b 『大辞泉』
  7. ^ a b c d e 『NHK高校講座 あらためまして ベーシック国語「比喩表現」』金田一秀穂解説担当。
  8. ^ アウグスティヌス『告白』第11巻第14節
  9. ^ a b 曜日の話”. 2011年4月12日閲覧。
  10. ^  国際単位系(SI)第9版(2019)日本語版 p.99、産業技術総合研究所、計量標準総合センター
  11. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q 阿部正雄「時間」『宗教学辞典』東京大学出版会、1973年。
  12. ^ a b 『Newton』別冊「時間とは何か」改訂版 2013年5月13日
  13. ^ アウグスティヌス『告白』第11巻第14節
  14. ^ a b c d e f g h i j k l 安部謹也『世界大百科事典』、1988年。
  15. ^ 出典:『湯川秀樹著作集』岩波書店。
  16. ^ 『アインシュタイン自伝ノート』東京図書、1978年9月。ISBN 448901127X p.77-80
  17. ^ 吉田伸夫 『明解量子重力理論入門』 講談社、2011年、61頁。ISBN 978-4-06-153275-5 
  18. ^ a b ロバート・L・フォワード 『SFはどこまで実現するか 重力波通信からブラック・ホール工学まで』 久志本克己訳 講談社〈ブルーバックス〉、1989年、247頁
  19. ^ 培風館『物理学辞典』
  20. ^ Bizarre quantum experiment suggests time can run backwards”. Daily Mail Online (2015年2月10日). 2017年12月15日閲覧。
  21. ^ 寺田寅彦「映画の世界像」寺田寅彦全集第八巻岩波書店 1997年 所収 p150
  22. ^ ピーター・コヴニー;ロジャー・ハイフィールド「時間の矢、生命の矢」草思社 1995年3月 p28
  23. ^ 田崎秀一「カオスから見た時間の矢―時間を逆にたどる自然現象はなぜ見られないか」(ブルーバックス)講談社 2000年4月 p18
  24. ^ Arthur Stanley Eddington "The nature of the physical world (The Gifford lectures)" MacMillan (1943) ASIN B0006DFTN4
  25. ^ ウィキペディア英語版 "時間の矢"
  26. ^ 戸田盛和「物理読本(1) マクスウェルの魔―古典物理の世界-」岩波書店 1997年10月 p108
  27. ^ 藤原邦男;兵頭俊夫「熱学入門―マクロからミクロへ」東京大学出版会 1995年6月 3章
  28. ^ a b c 長倉三郎、他(編)「岩波理化学辞典 - 第5版」岩波書店 1998年2月 "可逆性"、"時間反転"
  29. ^ 渡辺 慧 「時間の歴史―物理学を貫くもの」東京図書 1987年5月
  30. ^ a b 吉永 良正(編)「時間とは何か?(別冊日経サイエンス 180)」日経サイエンス 2011/08
  31. ^ a b マジョリー・F・ヴァーガス、石丸正訳 『非言語コミュニケーション』 新潮社〈新潮選書〉、1987年、173頁。 
  32. ^ 本川達雄『ゾウの時間、ネズミの時間』中央公論社、1992年、ISBN 4121010876
  33. ^ 鋼屋ジン 古橋秀之 「斬魔大聖デモンベイン 軍神強襲」 角川スニーカー文庫 2006/8
  34. ^ ロバート・L・フォワード 『SFはどこまで実現するか 重力波通信からブラック・ホール工学まで』 久志本克己訳 講談社〈ブルーバックス〉、1989年、259頁
  35. ^ 山本弘「トンデモ本?違う、SFだ!」 洋泉社 2004年7月






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