春日大社
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祭事
文化財
春日大社は平安時代に奉納された貴重な刀剣・甲冑・美術工芸品などの国宝、重要文化財を含んだ多数の文化財を所蔵することから「平安の正倉院」と呼称されている[4]。これらの文化財の一部は2016年10月に新装開館した「春日大社国宝殿」(旧称春日大社宝物殿)で鑑賞することができる[5][6]。
2016年(平成28年)度から、1939年(昭和14年)に宝庫の天井裏から発見された12振りの太刀を順次研ぎ直し始めた結果、複数の太刀が国宝・重文級の貴重な文化財であることが判明しており、研ぎ直された貴重な太刀は報道発表に続いて国宝殿で順次公開されている。2016年12月には、延寿国吉作の1振りと北条時村が奉納したとみられる平安末から鎌倉初期の無銘の「古備前物」2振りが報道陣に公開された[7][8]。2018年(平成30年)1月には、4番目に研ぎ直された黒漆山金作太刀(くろうるしやまがねづくりたち)が報道陣に公開された。この太刀は1942年に重要美術品に認定されていたもので[9]、研磨の結果、平安時代後期の「古伯耆」(こほうき、現在の鳥取県で製作された刀剣)とみられ、刀身に反りのある日本刀としては最古級の安綱作の可能性もあるという[10][11]。
国宝
- 建造物
- 本社 本殿 4棟(附:透塀、内鳥居、瑞垣)
- 美術工芸品
- 金地螺鈿毛抜形太刀
- 沃懸地(いかけじ)獅子文毛抜形太刀 中身無銘
- 沃懸地酢漿平文(いかけじかたばみひょうもん)兵庫鎖太刀 中身無銘
- 沃懸地酢漿紋兵庫鎖太刀 中身無銘
- 金装花押散兵庫鎖太刀 中身無銘
- 菱作打刀 中身無銘(附 杉箱)
- 赤糸威鎧 兜、大袖付(梅鶯金物)
- 赤糸威鎧 兜、大袖付(竹虎雀金物)
- 黒韋威矢筈札胴丸(くろかわおどしやはずざねどうまる) 兜、大袖付[12])
- 黒韋威胴丸 兜・大袖付[13]
- 籠手
- 本宮御料古神宝類(明細は後出)
- 若宮御料古神宝類(明細は後出)
- 鼉太鼓(だだいこ)一対[14][15][16]
「本宮御料古神宝類」の明細
- 金銀幣 2枚
- 蒔絵筝 1張
- 梓弓 38張
- 槻弓 16張
- 雑木弓 14張
- 白葛胡籙残闕 3具分
- 黒塗矢(内20隻鏃欠失)91隻
- 鏑矢 4隻
- 木造彩色矢 5隻
- 細身鉄鉾(内7本石突欠失)13本
- 平身鉄鉾(内3本石突欠失)12本
- 木鉾(内2本穂折損)38本
- 鉾柄 3本
- 鉾身 1枚
- 紫檀螺鈿餝劔 1口
- 黒漆平文餝劔(柄白鮫)4口
- 黒漆平文餝劔(柄銀打鮫)5口
- 黒漆平文餝劔(柄欠失)1口
- 黒漆平文太刀 1口
- 平緒残闕 2筋分
- 組紐残闕 1筋分
- 黒漆平文笥(蓋欠失)1口
- 黒漆平文根古志形鏡台 1基
- 黒漆平文鏡台 1基
- 黒漆彩文麻笥 1口
- 黒漆平文線柱 1基
- 白葛箱残闕 1合
- 木彫黒漆彩色太刀 4口
- 黒漆刀子 1口
- 黒漆平文唐櫛笥及台 1具
- 黒漆平文唐櫛笥台 1基
- 木笏及黒漆平文笏箱 1具
- 黒漆平文笏箱残闕 1合分
- 緑地彩絵琴箱 1合
- 青瑠璃壺残闕及金銅蓋 1合分
- 神宝附属残闕類(花形、鈴、木軸、総角)一括
「若宮御料古神宝類」の明細
- 蒔絵弓 1張
- 平胡籙 1具 矢配板に大治六年正月二日の墨書がある
- 水晶鏑矢 7隻 黒漆沃懸地斑箟金銅雁俣鏃付
- 金銅尖矢 23隻 黒漆沃懸地斑箟(内3隻鏃欠失)
(以上保延二年十一月七日藤原頼長献進)
- 蒔絵弓 1張
- 黒漆平文鉾 1本
- 毛抜形太刀 1口
- 黒漆平文飾劔(柄欠失)1口
- 笙 1管
- 和琴 1張
- 銅狛犬 1躯
- 白磁獅子 1躯
- 木造彩色磯形残闕 1基
- 木造彩色磯形残闕 2基
- 金鶴及銀樹枝 1具
- 銀樹枝 1本
- 銀鶴及磯形 1対
- 銀鶴 1箇
- 銀琴 1張
- 水晶珠 1顆
「若宮御料古神宝類」のうち、毛抜形太刀、黒漆平文飾劔(柄欠失)、笙、和琴は2001年に追加指定(平成13年6月22日文部科学省告示第116号)、6行目の蒔絵弓と黒漆平文鉾は2007年に追加指定(平成19年6月8日文部科学省告示第94号)。
重要文化財(国指定)
- 建造物
- 本社 23棟
- 中門(附:稲垣)
- 東御廊
- 西及び北御廊
- 捻廊
- 幣殿
- 直会殿
- 移殿
- 宝庫
- 廻廊 5棟(南門東、南門慶賀門間、慶賀門清浄門間、清浄門内侍門間、内侍門北)
- 南門
- 慶賀門
- 清浄門
- 内侍門
- 車舎
- 着到殿
- 竈殿
- 酒殿
- 板蔵
- 一の鳥居
- 摂社若宮神社 4棟
- 摂社若宮神社本殿(附:鳥居、瑞垣)
- 摂社若宮神社拝舎
- 摂社若宮神社細殿及び神楽殿
- 摂社若宮神社手水屋
- 旧春日大社板倉(円窓)(奈良県所有、奈良公園内所在)
- 美術工芸品
- 木造舞楽面 5面(皇仁、新鳥蘇、地久、納曾利、崑崙八仙(ころばせ))
- 木造舞楽面 7面(納曾利、新鳥蘇3、散手、貴徳鯉口、採桑老)
- 亀甲蒔絵手箱
- 秋草蒔絵手箱
- 禽獣葡萄鏡 春日金竜社伝来
- 古神宝銅鏡(附 黒漆八稜形鏡箱)16面(素文鏡2面(寛弘八年銘)、藤花松喰鶴鏡3面(内1面一部欠損)、瑞花双鳳八稜鏡1面(一部欠損)、唐花鴛鴦八稜鏡1面、牡丹唐草尾長鳥八稜鏡8面(内3面一部欠損)、宝相華唐草八稜鏡残片1面)
- 竹虎双雀方鏡
- 藤花松喰鶴鏡
- 菊造短刀
- 梅花皮(かいらぎ)腰刀
- 柏木兎(かしわみみずく)短刀
- 太刀 銘備州長船住家助 永享八年二月日
- 錦包太刀 中身銘助行
- 金銅柏文兵庫鎖太刀 中身銘□次
- 三鈷柄籐巻剣
- 赤銅造太刀 友成作
- 鉄三十六間四方白(しほうじろ)星兜鉢及鎧金具(歌絵金物)[注釈 2][注釈 3]
- 鉄十八間二方白星兜鉢及鎧金具[17]
- 鉄二十八間四方白星兜鉢及鎧金具(牡丹金物)[18]
- 石燈籠(御間型燈籠)元亨三年銘
- 石燈籠(柚木燈籠)
- 楽所補任 2巻
- 楽書 5巻(高麗曲、輪台詠唱歌外楽記、舞楽古記、舞楽手記、楽記)
- 春日神社文書 40巻
- 大東家文書(324通)27巻、240通[19]
- 皇年代記[19]
- 春日大社神事日記(512通)6巻、506冊[15][20]
典拠:2000年(平成12年)までに指定の国宝・重要文化財の名称は、『国宝・重要文化財大全 別巻』(所有者別総合目録・名称総索引・統計資料)(毎日新聞社、2000)による。
国指定重要無形民俗文化財
- 春日若宮おん祭の神事芸能(保護団体:春日若宮おん祭保存会)
国の特別天然記念物
- 春日山原始林 - 管理団体は奈良県である。
国の天然記念物
- 春日神社境内ナギ樹林
国の史跡
- 春日大社境内
国選択無形民俗文化財
- 春日若宮おん祭の芸能(春日古楽保存会)
奈良県指定有形文化財
- 春日大社貴賓館(旧社務所)
- 紙本著色競馬図 六曲屏風 1双
- 絹本著色鹿島立神影図 1幅
- 瑠璃釣灯籠 1基
奈良市指定有形文化財
- 桂昌殿
- 四脚門 附:土塀2棟
- 絹本著色鹿島立神影図
- 春日権現験記台 6曲1隻
- 絵馬板 附:収納箱 5面
- 一刀彫白鹿 附:台座及び玉1個
奈良市指定有形民俗文化財
- 春日大宮若宮御祭礼図板木 附:木製収納箱
- 春日若宮御祭礼松下図板木
奈良市の天然記念物
現地情報
- 所在地
注釈
- ^ 春日大社の公式サイト(英語版)も"Kasugataisha Shrine"と表記。
- ^ 寛政3年(1791年)の火災で焼けた甲冑の金属部分のみが残ったもの。以下2件も同様。
- ^ 兜の名称は、重要文化財指定名称では「鉄三十六間四方白星兜鉢」であるが、2017年に東京国立博物館で開催された「特別展 春日大社 千年の至宝」では、「鉄二十四間四方白星兜鉢」の名称で展示されていた。「○○間」とは、兜の表面の「筋」(すじ)の数をかぞえたものであり、「四方白」とは、兜の前後左右4方向に鍍金銀の板を伏せたものの意である。鍍金銀の板で覆われた部分の「筋」の数をかぞえるか否かによって、間数の差が生じる。以下2件の兜についても同様である。
出典
- ^ 外国人にわかりやすい地図表現検討会 (2016年1月6日公表) (PDF). 地名の英語表記及び外国人にわかりやすい地図記号について. 国土地理院. p. 17
- ^ 家屋倒壊が続出、恐怖に包まれた大阪『大阪毎日新聞』昭和11年2月22日夕刊(『昭和ニュース事典第5巻 昭和10年-昭和11年』本編p204-205 昭和ニュース事典編纂委員会 毎日コミュニケーションズ刊 1994年)
- ^ 春日大社 第六十次 式年造替記念 奉祝行事実行委員会
- ^ 春日大社公式サイトには「国宝354点、重要文化財1,482点」を収蔵する旨の記載があるが、これは「古神宝類」等の一括指定物件を一点一点かぞえた場合の数字である。春日大社所有の国宝は、指定の「件数」としては建造物1件(4棟)、美術工芸品14件であり(2020年現在)、本記事の「文化財」節には春日大社所有の国宝・重要文化財全件が漏れなく記載されている。
- ^ 春日大社 国宝殿
- ^ 「平安の正倉院」が国宝殿を公開 奈良・春日大社 朝日新聞 2016年9月29日
- ^ 春日大社に鎌倉期の名刀 延寿国吉作、さび落とし判明 奈良 産経ニュース 2016年12月31日
- ^ 春日大社 名刀3本新たに確認 国宝殿で一般公開 奈良/奈良 毎日新聞 2016年12月30日
- ^ 昭和17年5月30日文部省告示第499号(参照:国立国会図書館デジタルコレクション)
- ^ 最古級の日本刀、なぜ天井裏に?春日大社、80年前発見 朝日新聞 2018年1月22日
- ^ 春日大社 最古級の日本刀「古伯耆物」平安時代末期 毎日新聞 2018年1月23日
- ^ 2013年に修理が完了した。(参照:春日大社:楠木正成の甲冑、修理終わり公開:毎日新聞2013年3月29日)
- ^ 平成28年8月17日文部科学省告示第111号。
- ^ 「鼉」(だ)は、「口」を横に2つ並べ、その下に「田」「一」「黽」。
- ^ a b “文化審議会答申 ~国宝・重要文化財(美術工芸品)の指定及び登録有形文化財(美術工芸品)の登録について~”. 文化庁. 2020年3月20日閲覧。
- ^ 令和2年9月30日文部科学省告示第116号
- ^ 兜の名称は、重要文化財指定名称では「鉄十八間二方白星兜鉢」であるが、2017年に東京国立博物館で開催された「特別展 春日大社 千年の至宝」では、「鉄十六間二方白星兜鉢」の名称で展示されていた。これらの名称の差異については前項の脚注を参照。
- ^ 兜の名称は、重要文化財指定名称では「鉄二十八間四方白星兜鉢」であるが、2017年に東京国立博物館で開催された「特別展 春日大社 千年の至宝」では、「鉄二十四間四方白星兜鉢」の名称で展示されていた。これらの名称の差異については前々項の脚注を参照。
- ^ a b 平成28年8月17日文部科学省告示第116号。
- ^ 令和2年9月30日文部科学省告示第118号
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